第4節 バイオ燃料・合成燃料の促進
1.バイオ燃料の促進
バイオ燃料は植物、廃食油や廃棄物から製造され、原料の植物等がその成長過程で大気中のCO2を吸収するため、化石燃料と比べて低炭素な燃料です。今後、次世代バイオ原料の国産化に向けた技術開発に関する取組を進めるとともに、次世代バイオ原料の資源国との連携を深め、サプライチェーンの構築・強化を進めていきます。
自動車分野では、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、2030年度までに一部地域でガソリンへの直接混合も含めてバイオエタノールの導入を拡大し、最大濃度10%の低炭素ガソリンの供給開始を目指します。また、対応車両の普及状況やサプライチェーンの対策状況等を見極めて地域や規模拡大を図り、2040年度から最大濃度20%の低炭素ガソリンの供給開始を目指します。
航空分野では、SAFの導入拡大のため、GX経済移行債を活用した大規模なSAF製造設備構築に係る設備投資支援や、「戦略分野国内生産促進税制」による税額控除を通じて、先行投資への後押しを行っています。高度化法において、2030年のSAFの供給目標量を「2019年度に日本国内で生産・供給されたジェット燃料のGHG排出量の5%相当量以上」と設定するなど、中長期的な規制・制度的措置により国際競争力のある価格で安定的にSAFを供給できる体制の構築を進めています。
また、自動車・船舶・鉄道・建設機械等の分野で幅広く使用される軽油については、原料供給制約があることも踏まえた上で、バイオディーゼルの導入を推進していきます。
<具体的な主要施策>
(1)バイオ燃料の導入拡大に向けた取組
①ガソリンへのバイオエタノール導入拡大に向けた方針
2024年11月の「総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会脱炭素燃料政策小委員会」において、ガソリンについては、2030年度までにバイオエタノール濃度が最大10%の低炭素ガソリンの供給開始を目指すこと、2040年度から最大濃度20%の低炭素ガソリンの供給開始を目指すことなど、ガソリンへのバイオエタノール導入拡大に向けた方針を議論しました。
②化石燃料のゼロ・エミッション化に向けた持続可能な航空燃料(SAF)等の生産・利用技術開発事業
【2024年当初:89億円の内数】
航空分野における脱炭素化の取組に寄与するSAFの商用化に向けて、ATJ技術(Alcohol to JETの略で、触媒技術を利用してアルコールからSAFを製造する技術)や、ガス化・合成技術(木材等をH2とCOに気化し、ガスと触媒を反応させてSAFを製造する技術)、カーボンリサイクルを活用した微細藻類の培養技術を含むHEFA技術(Hydroprocessed Esters and Fatty Acidsの略で、バイオマス由来の油脂を水素化処理して航空燃料などに転換する技術)に係る実証事業を行いました。
(2)持続可能な航空燃料(SAF)の製造・供給体制構築支援事業
【2024年度当初:276億円の内数 国庫債務負担含め総額:3,368億円の内数】
国際競争力のある価格で安定的にSAFを供給できる体制の構築に向け、国内で大規模なSAF製造を行う事業者等に対して、設備投資等を支援しています。
(3)CO2等を用いた燃料製造技術開発
【グリーンイノベーション基金:国費負担上限1,685億円の内数】
大規模な生産量(数十万kl)が見込まれるエタノールからSAFを製造する「ATJ技術」の確立を目指しています。
(4)戦略分野国内生産促進税制【税制】
世界で戦略分野への投資獲得競争が活発化する中、戦略分野のうち、特に生産段階でのコストが高い事業の国内投資を強力に促進するため、過去に例のない新たな投資促進策として「戦略分野国内生産促進税制」が創設されました。SAFの生産・販売量に応じた税額控除を、10年間の適用期間で措置しています。
2.合成燃料の促進
合成燃料は、CO2と水素を合成して製造される燃料です。2023年6月の「合成燃料(e-fuel)の導入拡大に向けた官民協議会」において、「今後集中的な技術開発・実証を行い、高効率かつ大規模な製造技術を確立し、2030年代前半までに前倒しして商用化を目指す」という目標が掲げられました。
こうした目標の達成に向けて、グリーンイノベーション基金によるプロジェクト等を通じた高効率で大規模な生産を可能とする技術の開発や、既存技術を用いて早期の供給を目指す国内外プロジェクトの組成や参画を促進しています。また、2024年6月にはドイツのデジタル交通省が主催するE-Fuels対話に経済産業省が共催として参画するなど、各国との連携による合成燃料活用の機運醸成を進めています。
<具体的な主要施策>
(1)水素等の製造・資産買収等事業に対する出資金
【2024年度当初:71億円】
JOGMECは2024年度に合成燃料(e-fuel)分野に初めて出資を行いました。
(2)次世代燃料安定供給のためのトランジション促進事業
(再掲 第5章第2節 参照)
(3)CO2等を用いた燃料製造技術開発
【グリーンイノベーション基金:国費負担上限1,685億円の内数】
逆シフト反応(CO2を水素と反応させてCOに還元する反応)、FT合成(COと水素から触媒反応を用いて炭化水素を合成する技術)、これらの連携技術等を用いて、CO2と水素から、高効率・大規模に液体燃料を製造するプロセスを開発しています。