第2節 「国内危機」(災害・エネルギー価格高騰等)への対応強化
1.供給サイドの強靱化
(1)石油・LPガスの供給網の強靱化
石油・LPガスについては、大規模災害の発生時においても石油・LPガスの供給を早期に回復させることを目的に、ハード・ソフトの両面で対策に取り組んでいます。
ハード面の対策としては、東日本大震災以降、製油所やSSといった石油供給拠点の災害対応能力の強化に対する支援や、国家石油製品備蓄の維持を行っています。
ソフト面の対策として、資源エネルギー庁では、石油備蓄法に基づく「災害時石油供給連携計画」や「災害時石油ガス供給連携計画」の円滑な実行に向けた訓練を実施しています。
(2)東西の周波数変換設備や地域間連系線の強化
広域系統整備計画が順次策定され、工事が進んでいます。2027年度の使用開始に向けて、東北東京間連系線では計画策定当時の電源稼働状況の想定下で455万kW増強する工事が、北海道本州間連系設備では30万kW増強する工事が、それぞれ行われるとともに、中部関西間連系線では2030年度の使用開始に向けて300万kW程度増強する旨の広域系統整備計画が2024年6月に策定されました。東地域(北海道~東北~東京間)及び関門連系線の増強についても、2024年4月に基本要件が決定された後、広域系統整備計画の策定に向けた対応が進んでいます。
(3)電気・ガス設備の自然災害等への対策等の検討
電力については、「産業構造審議会保安・消費生活用製品安全分科会電力安全小委員会電気設備自然災害等対策ワーキンググループ」を2024年3月、9月及び12月に開催し、令和6年能登半島地震、令和6年台風第10号及び奥能登豪雨における停電復旧対応に関する検証を実施しました。
ガスについては、2025年3月の「産業構造審議会保安・消費生活用製品安全分科会ガス安全小委員会」において、ガス導管の耐震化の進捗等について報告するとともに、今後の対策の在り方について検討しました。
<具体的な主要施策>
①次世代燃料安定供給のためのトランジション促進事業
(再掲 第5章第2節 参照)
②石油製品形態での国家備蓄の確保
石油製品の形態(ガソリン・灯油・軽油・A重油)での国家備蓄を維持しています。
③離島・SS過疎地等における石油製品の流通合理化支援事業費(うち過疎地等における石油製品の流通体制整備事業)
(再掲 第5章第2節 参照)
④休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助事業
【2024年度当初:21億円、2024年度補正:12億円】
採掘活動終了後の金属鉱山等について、地方公共団体等が事業主体となって行う鉱害防止事業に要する費用の一部を補助し、人の健康被害、農作物被害、漁業被害等の深刻な問題(鉱害)の防止を図りました。
⑤SS等の地域配送拠点における災害対応力強化事業
(再掲 第5章第2節 参照)
2.需要サイドへの支援
災害時には、道路等の交通網や都市ガス導管、送電網の寸断により、安定的なエネルギー供給が困難となる事態が発生することが予想されます。このため、災害時に電力やガスの供給が途絶えた場合にも機能の維持が求められる社会的重要インフラ(避難所や医療・福祉施設等)においては、自家発電設備等を稼働させるための燃料を自衛的に備蓄しておくことが重要です。そのため、避難所等の社会的重要インフラに対し、LPガスタンクや石油タンク等の導入を支援しました。
また、世界情勢を背景としたエネルギー価格の上昇による家庭や企業等の負担を軽減するため、燃料油価格、電気料金・都市ガス料金への支援を実施しました。
<具体的な主要施策
(1)災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金
【2023年度補正:20億円、2024年度当初:40億円】
災害や停電等により、電力・都市ガスの供給が途絶した場合であっても、エネルギーの安定供給を確保するため、避難所等の社会的重要インフラにおける燃料備蓄の推進に必要なLPガスタンクや石油タンク等の導入を支援しました。
(2)燃料油価格激変緩和対策事業
【2024年度予備費:7,730億円、2024年度補正:1兆324億円】
原油価格高騰への対策として、時限的・緊急避難的な燃料油価格激変緩和対策事業を行いました。円建ての原油価格の変動による卸価格上昇分について補助を行うことで、燃料油(ガソリン・軽油・灯油・重油等)の価格を抑制するというものです。2024年11月に閣議決定された「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」では、「12月から、出口に向けて段階的に対応する。」とされ、2024年12月、2025年1月と段階的に補助率を引き下げました。足下の物価高に対応するべく、2025年5月からは、現行の燃料油価格激変緩和対策事業を組み直し、定額の価格引下げ措置を実施することとしています。
(3)電気・ガス価格激変緩和対策等事業
【2023年度補正:6,416億円、2024年度予備費:2,124億円、2024年度補正:3,194億円】
物価高が継続する中で、家計や企業の負担を軽減するための緊急対応として、2024年5月までの支援に加えて、小売事業者等を通じた電気・都市ガスの使用量に応じた料金の値引きを、2024年8月から10月まで及び2025年1月から3月まで実施しました1。
(4)小売価格低減に資する石油ガス配送合理化・設備導入促進補助金
【2023年度補正:77億円】
石油ガスの小売価格低減のため、LPガス事業者の経費負担となる遠隔検針が可能なスマートメーターや、バルクローリー、配送トラック、充塡所自動化設備及び需要家側のLPガスタンクの導入を支援しました。
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- 加えて、足下の物価高に対応する観点から、暑くなる夏への対応として、電力使用量が増加する2025年7月、8月、9月の3か月について、電気・ガス料金支援を実施します。