第1節 石油備蓄等による海外からの供給危機への対応強化
石油備蓄政策については、国内の石油需要や様々なリスク等を勘案して、緊急時を想定した訓練や、産油国やアジア消費国との協力強化等の取組を進めています。また、産油国共同備蓄事業として、UAEやサウジアラビア、クウェートの国営石油会社に対して、商用原油の拠点として日本国内の原油タンクを貸し出し、供給危機が発生した際には日本の石油会社が優先して原油供給を受けられる枠組みを構築しています。
こうした中、2022年2月に発生したロシアによるウクライナ侵略に起因する国際エネルギー市場の深刻な需給ひっ迫に対応するため、国際エネルギー機関(IEA)は、2022年3月と4月に二度の閣僚会合を開催し、石油備蓄放出の協調行動について合意しました。これを受けて、日本は、民間備蓄石油の放出(1,350万バレル)に加えて、「石油の備蓄の確保等に関する法律(昭和50年法律第96号)」(以下「石油備蓄法」という。)第31条に基づき、国家備蓄石油の放出(900万バレル)を行いました。石油備蓄法に基づく国家備蓄石油の放出は、1978年の国家備蓄制度の創設以来、初めてのことでした。なお、2023年6月のIEA理事会において協調行動の終了が決定され、民間備蓄石油についての備蓄義務量の引下げは2024年4月30日に終了しました。
LPガス備蓄については、輸入量の40日分に相当する民間備蓄と5基地体制による国家石油ガス備蓄基地による輸入量の50日分程度に相当する国家備蓄の2本立てにより、海外からの供給途絶等による供給危機への体制を構築しています。
<具体的な主要施策>
1.国家石油備蓄の管理委託等
【2024年度当初:875億円】
約4,300万klの国家備蓄石油及び国内10か所の国家備蓄基地について、国から委託を受けたJOGMECが統合管理を行い、緊急時における国家備蓄石油の機動的な放出を可能にすべく、放出体制の確保、油種入替え及び緊急時放出訓練等を実施しました。
2.産油国共同石油備蓄事業費補助金
【2024年度当初:53億円】
日本は、国家備蓄の他にも、主要な原油輸入先であるUAEのアブダビ国営石油会社(ADNOC)、サウジアラビア国営石油会社、クウェート石油公社に対して日本国内の原油タンクを貸与し、それぞれの国営石油会社が所有する原油を国内に蔵置しています。2024年7月には、ADNOCとの間で、原油タンク貸借等に係る契約の更新を行いました。
3.国家石油ガス備蓄の管理委託等
【2024年度当初:209億円】
国内5か所の国家備蓄基地について、国から委託を受けたJOGMECが一元的に管理を行い、緊急時における国家備蓄石油ガスの機動的な放出を可能にすべく、緊急時放出訓練等を実施しました。
4.備蓄石油・石油ガス購入資金への支援
石油備蓄法に基づき、石油精製業者、特定石油販売業者、石油輸入業者、石油ガス輸入業者に対して備蓄義務(石油:70日、石油ガス:40日)を課していますが、この備蓄義務は、これらの民間企業に対して膨大なコスト負担を強いるものであることから、JOGMECが備蓄石油・石油ガス購入資金の低利融資を実施しました。