第7節 サプライチェーンの維持・強化に向けた取組
1.国内のサプライチェーンの維持・強化
日本国内の原子力産業・人材基盤は、高い国産化率と技術を誇り、国内経済や雇用に対する貢献度も高く、既設炉の再稼働や革新軽水炉・小型軽水炉等の次世代革新炉の開発・設置に向けてもその維持・強化が不可欠です。震災以降、長きにわたる建設機会の喪失で、その基盤が脅かされつつある中、将来的な建設期間の長期化・コストの増加や、機器・部素材・燃料加工・廃炉を含めた産業基盤・技術の途絶、規制対応の面を含めた原子力人材の不足等を回避する必要があります。
経済産業省は、全国約400社の原子力関連企業にアプローチし、それぞれのニーズに合わせたきめ細かな支援を展開しました。具体的には、産業界、官公庁が連携した「原子力サプライチェーンプラットフォーム」(NSCP)を通じ、戦略的な原子力人材の育成・確保、部品・素材の供給途絶対策・事業承継、海外プロジェクトへの参画支援等、サプライチェーン全般に対する支援態勢を構築しました。2025年3月時点では、約180社の原子力関連企業がNSCPに参画しています(第247-1-1)。
【第247-1-1】原子力サプライチェーンプラットフォーム(NSCP)
【第247-1-1】原子力サプライチェーンプラットフォーム(NSCP)(pptx形式:116KB)
- 資料:
- 経済産業省作成
<NSCPにおいて実施した施策>
- ウェブサイトにて、技術・人材・産業基盤の維持・強化に向けた各社の取組事例や、補助金・税制に関する情報を紹介したほか、海外の建設プロジェクトへの参画に向けた情報提供等、原子力サプライチェーンについてのコンテンツを拡充しました。
- 補助金セミナーを開催し、「原子力産業基盤強化事業」やサプライヤによる補助金の活用事例を紹介したほか、各種支援施策集を解説することで、サプライヤによる補助金の活用を促しました。
- 原子力サプライヤ海外品質規格勉強会を開催し、海外規格の取得に当たっての企業の懸念を払拭すべく、ASME(米国機械学会)規格に関する講義を実施しました。
- 2025年3月10日に、経済産業省主催・日本原子力産業協会共催・文部科学省協力で「第3回原子力サプライチェーンシンポジウム」を開催し、サプライチェーンへの支援拡充を広くPRしました。武藤経済産業大臣が登壇したほか、オンラインを含めて約600人が参加しました。産官学における人材育成の事例、米国等への日系サプライヤ団の派遣をはじめとした国際連携によるサプライチェーン構築の取組、一般産業用工業品の採用(CGD)に関する取組等について議論を行いました。
<具体的な主要施策>
原子力産業基盤強化事業
【2024年度当初:58億円】
原子力利用の安全性・信頼性を支えている原子力産業全体の強化のため、世界トップクラスの優れた技術を有するサプライヤの支援、技術開発・再稼働・廃炉等の現場を担う人材の育成等を実施しました。
2.海外プロジェクトへの参画支援
海外プロジェクトへの参画支援に当たっては、「革新サプライヤチャレンジ」という革新炉向けの機器や部素材の設計・開発・実用化に挑戦する国内サプライヤでチームを組成し、海外の実機プロジェクトへの参画を官民で支援しています。
2024年度には、米国、英国、東欧諸国に対し、経済産業省が主導して日系サプライヤ団を複数回派遣しており、参加企業数は延べ20社超となっています。建設計画を有する欧米のプラントメーカー等に対し、日系サプライヤの実績や技術的な強みをアピールするなど、今後の実機プロジェクトへの参画につながる取組を実施しました。
引き続き、米国をはじめとした価値観を共有する同志国との間で、第三国展開を含め、強固で強靱な原子力サプライチェーンの構築に向けた取組を進めていきます。
3.ウラン燃料の安定供給確保
ロシアによるウクライナ侵略の長期化により、欧米諸国においてロシアからのウラン燃料の調達を低減する動きがあり、ウラン燃料の国際的な需給ひっ迫が顕在化しつつあります。こうした背景を踏まえて、2023年に開催されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合などにおいて、原子力に関するロシア依存度を低減するとのコミットメントなどが発出され、同志国間でのウラン燃料のサプライチェーンに関する国際協力の必要性が確認されました。こうした情勢も勘案し、2024年2月にウランを、経済安全保障推進法に基づく「特定重要物資」に指定し、同年12月に同法に基づき、経済産業大臣が、日本原燃の濃縮ウラン生産能力の向上に関する供給確保計画を認定しました。