第1節 エネルギー国際協力体制の拡大・深化
世界のエネルギー情勢が大きく変化する中、各国のエネルギー需給構造をより安定化・効率化するためには、一国での取組だけでなく、多国間及び二国間のエネルギー協力を戦略的に組み合わせつつ、国際的な協力を拡大することが重要となっています。
そのため、2024年度においては、多国間の国際エネルギーの枠組みを活用し、エネルギーの安定供給確保に向けた取組を進めるとともに、二国間の協力を通じて、アジア各国や先進国との協力やエネルギー供給国との関係強化を行いました。
<具体的な主要施策>
1.多国間枠組みを通じた協力
(1)主要消費国等における多国間協力
①国際エネルギー機関(IEA)における協力
IEAは当初は、国際エネルギー計画(IEP)に関する協定に基づく石油の90日備蓄義務及び緊急時対応をはじめとする、エネルギー問題の解決のための国際協力が主な活動内容でしたが、現在では、①低炭素技術の開発促進、省エネ・低炭素技術の開発・普及のための政策提言、低炭素技術のR&Dのための技術協力、②国際石油市場・世界エネルギー需給・エネルギー技術等の見通しの策定・公表、③中国やインドを含む新興国や産油国等との協力関係の構築、④国別エネルギー政策の審査・勧告の実施等、幅広い活動を展開しています。2025年3月時点のメンバー国は、日本、米国、豪州、韓国、欧州各国等の計32か国です。閣僚理事会は、おおむね隔年で開催されており、直近の2024年2月に開催された閣僚理事会では、ガス・重要鉱物分野におけるIEAの機能強化の重要性の認識、クリーンエネルギー投資の更なる規模拡大の奨励とトランジション・ファイナンスに関する新たな分析の要請等に関して一致しました。
IEAの設立時には、世界の石油需要の約7割を西側先進国が占めていたため、IEAのメンバー国も西側先進国が中心となっていますが、近年では新興国が経済成長を遂げていることから、IEAは、グローバルなエネルギーの課題に取り組むためには、エネルギー需要が増加している中国等の新興国をIEAの体制に取り込んでいくことが重要と考え、2015年の閣僚理事会以降、メンバー国とは別に、「IEAアソシエーション国」という制度的枠組みが設けられています。現在、中国、インド、ブラジル、インドネシア、ウクライナ等、計13か国がIEAアソシエーション国となっています。
また、IEAは、メンバー国のエネルギー政策及び緊急時の対応に関する政策を審査するため、メンバー国等からなるレビューチームによるピアレビュー(IDR:国別詳細審査、ERR:緊急時対応審査)を、約5年に1回の頻度で実施しています。
(ア)国際エネルギー機関分担金
【2024年度当初:4.1億円】
IEAの活動・運営費用を、各国分担率に基づき拠出しました。
(イ)国際エネルギー機関拠出金
【2024年度当初:7.0億円、2024年度補正:2.0億円※経済産業省・外務省の合計】
「世界エネルギー展望」(World Energy Outlook)、「東南アジアエネルギー展望」(Southeast Asia Energy Outlook)をはじめとするエネルギー市場の分析や、エネルギー技術ロードマップの策定等を支援するとともに、水素、持続可能燃料、原子力、重要鉱物、再エネの季節間・経年変動を踏まえた電力安定供給等に関する各種調査・分析の実施を依頼するため、IEAメンバー国として拠出を行いました。また、日本を含む世界の重要鉱物の供給網の多角化・強靱化を目的として、IEAの重要鉱物作業部会(CMWP)への拠出も行いました。
②G7における協力
「G7エネルギー大臣会合」は、先進主要7か国1(日本、米国、カナダ、ドイツ、フランス、英国、イタリア)とEUのエネルギー担当大臣による閣僚会合として、1998年から不定期に、G7サミットの議長国が開催しています。
2024年4月に、イタリアが主催する「G7気候・エネルギー・環境大臣会合」がイタリア・トリノにて開催され、齋藤経済産業大臣及び伊藤環境大臣、八木環境副大臣が出席しました。気候・エネルギー分野においては、2023年のG7広島サミットからの継続性とCOP28で採択されたグローバル・ストックテイク(GST)の実施に重点を置きつつ、ネット・ゼロの加速、エネルギー安全保障の確保、途上国との連携等について議論が行われ、気候・エネルギー・環境大臣会合としての閣僚声明が採択されました。閣僚声明には、2030年までの世界全体の再エネ容量3倍目標に向けた既存の政策等を通じたエネルギー貯蔵の世界目標1,500GWへの貢献、2030年までの世界全体のエネルギー効率改善率2倍目標に向けた省エネ関連の情報開示や中小企業支援の促進、2025年までの非効率な化石燃料補助金の廃止、2035年までの電力部門の完全又は大宗の脱炭素化、2023年に日本で開催された「G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合」で採択された「重要鉱物セキュリティのための5ポイントプラン」の実施、水素・アンモニアにおける「炭素集約度」の概念を含む国際標準や認証スキーム構築の重要性の確認に加え、天然ガス投資の必要性やガスセキュリティに関するIEAの機能強化、クリーンエネルギー技術のサプライチェーン強靱化の重要性、革新技術(ペロブスカイト、浮体式洋上風力、革新炉、フュージョンエネルギー等)の重要性等が盛り込まれました。
2024年6月には、イタリア・プーリアにて「G7サミット」が開催され、岸田総理が出席しました。成果文書として首脳コミュニケが採択され、エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクを一体的に捉え、各国の事情に応じた多様な道筋の下で全ての人に低廉なクリーンエネルギーを確保するための世界的・地域的な取組の推進、各国のネット・ゼロへの道筋に沿って、2030年代前半、又は、気温上昇を1.5度に抑えることを射程に入れ続けることと整合的なタイムラインで排出削減対策が講じられていない既存の石炭火力発電のフェーズアウト、クリーンエネルギーへの投資の加速、安全で責任ある多様なサプライチェーンの構築、LNGの重要性や投資の適切性、水素・アンモニア・炭素管理技術等の利用に向けた産業分野の投資拡大、革新炉やフュージョン施設等の開発の促進等が盛り込まれました。
③G20における協力
2024年10月に、ブラジルが主催する「G20エネルギー移行大臣会合」がブラジル・フォス・ド・イグアスにて開催されました。この会合では、新興国・途上国のエネルギー移行のためのファイナンス、エネルギー移行の社会的側面、持続可能燃料を中心に議論が行われ、閣僚声明及び附属文書が採択されました。
2024年11月には、ブラジル・リオデジャネイロにて「G20サミット」が開催され、石破総理が出席しました。成果文書として首脳宣言が採択されました。エネルギーに関しては、既存の政策等を通じた世界全体の再エネ容量3倍目標や、世界全体のエネルギー効率改善率2倍目標の取組への支援、温室効果ガス排出量の評価のための相互に認知された方法論の奨励、様々な低排出エネルギーや持続可能燃料・技術の開発・導入における技術中立的なアプローチの重要性、多角的で持続可能かつ責任ある重要鉱物等のサプライチェーンへの支持等が盛り込まれました。
(2)アジア太平洋地域における多国間協力
①ASEAN等・東アジア地域における協力
アジア地域におけるエネルギー需要の急増を踏まえ、アジア規模でのエネルギーの安全保障と持続可能性を確保するため、2024年9月、「第21回ASEAN+3エネルギー大臣会合」及び「第18回東アジアサミットエネルギー大臣会合」がラオスで開催されました。これらの会合では、経済成長を達成するためにエネルギーの安定的かつ継続的な供給を確保するには、各国が様々な選択肢を検討し、あらゆる技術や燃料を活用する必要性があることや、低炭素経済を達成するための道筋は1つではなく、各国にとって多様な道筋があることを議論しました。また、「第21回ASEAN+3エネルギー大臣会合」において、AZEC、AETIや「Cleaner Energy Future Initiative for ASEAN」(CEFIA)の取組についても、議論されました。
(ア)カーボンニュートラル実現シナリオ構築等に向けた国際連携事業
【2024年度当初:26億円】
世界全体でのカーボンニュートラルの実現には、米国や欧州等の先進国やアジア等の新興国との国際連携を進めることが必要です。そのため、本事業では、欧米各国とのイノベーション等の協力促進を行うとともに、アジア各国をはじめとする新興国等に対する脱炭素化支援を強化するために、人材育成への支援、脱炭素化シナリオの構築への支援、国際会議の実施、各国との協力可能性のある分野についての調査を行いました。
(イ)東アジア経済統合研究協力拠出金
【2024年度当初:6.3億円】
東アジアにおけるエネルギー供給の安定化を図る上で、燃料消費の抑制、エネルギーセキュリティの確保及びエネルギーの安定的かつ低廉な調達が喫緊の課題です。これらの課題を解決するための調査研究等をERIAに依頼するため、拠出を行いました。
②アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)における協力
【2024年度補正:7.0億円】
AZECは、2022年1月に日本が構想を提唱した、アジア各国が脱炭素化を進めるとの理念を共有し、エネルギー移行を進めるために協力することを目的とした取組です。
2024年8月21日には、インドネシア・ジャカルタにおいて、全AZECパートナー11か国と、国際機関の出席を得て、「第2回AZEC閣僚会合」が開催されました。日本からは、齋藤経済産業大臣、八木環境副大臣、山田AZEC担当大使が出席しました。齋藤経済産業大臣は、AZECの活動方針について報告し、八木環境副大臣は、環境省の取組について報告しました。各国政府及び国際機関の参加者からは、ネット・ゼロの実現に向け、各国の事情に応じた多様な道筋の重要性やエネルギー移行の政策、電力・運輸・産業部門における脱炭素化等の取組について発言がありました。さらに、ERIAからは、アジア・ゼロエミッションセンターの今後の取組が紹介され、また、AZECアドボカシーグループによる政策提言書の議長への手交と報告が行われました。会合の成果として、共同声明が採択され、「脱炭素・経済成長・エネルギー安全保障の同時実現」や「多様な道筋によるネット・ゼロ」といったAZECの原則を再確認するとともに、今後10年を見据えた電力・運輸・産業部門の脱炭素化を促進する分野別イニシアティブを採択しました。また、2023年12月の「第1回AZEC首脳会合」以降、AZECパートナー国と関係機関との間で署名された約70件の協力覚書(MOU)を確認し、公表しました。
加えて、「第2回AZEC閣僚会合」の前日には、AZECアドボカシーグループのラウンドテーブルが初開催され、AZECを通じた脱炭素化に向けた政策提言書が取りまとめられました。
さらに、「第2回AZEC閣僚会合」の開催に合わせて、ERIAに設立されたアジア・ゼロエミッションセンターの立ち上げ式が2024年8月21日に執り行われ、ERIAやAZECにおけるアジア・ゼロエミッションセンターの活動について報告するとともに、参加閣僚に歓迎されました。
また、「第2回AZEC閣僚会合」の同日には、200人を超えるビジネスリーダーが出席する形でAZECビジネスフォーラムが開催され、参加企業が、再エネの導入と火力発電所の脱炭素化、ファイナンスについて活発に議論しました。
2024年10月11日には、ラオス・ビエンチャンにおいて、全AZECパートナー11か国と、国際機関の出席を得て、「第2回AZEC首脳会合」が開催されました。日本からは、石破総理、武藤経済産業大臣が出席しました。石破総理からは、世界の成長エンジンとしてアジアの経済成長の確保が必須であり、人類共通の喫緊の課題である気候変動への対処に取り組むことが重要である旨に言及しつつ、AZEC原則の重要性を改めて発信しました。また、「第1回AZEC首脳会合」以降、日本とAZECパートナー国との間で、約120件のMOU等協力案件が結ばれていることを紹介したほか、将来的には域内のクリーンエネルギーの供給基地として、地域の脱炭素化に貢献するため、ラオスにおけるオファー型協力を検討していきたい旨を述べました。武藤経済産業大臣からは、「第2回AZEC閣僚会合」の成果を報告しました。各国首脳からは、AZECを主導してきた日本の取組に対する支持と、今後もAZEC原則に従って、再エネの推進、火力発電のゼロエミッション化、炭素貯留技術等を活用した排出削減対策に加え、技術革新やエネルギー移行に向けたファイナンスを促進し、地域として温室効果ガスの排出削減を進めていくことの重要性が表明されました。会合の成果として、今後10年のためのアクションプランを含むAZEC首脳共同声明が採択されました。
また、2024年8月には、2回目となる「AZECでの二国間クレジット制度(JCM)利活用促進に関する国際会合(AZEC・JCM国際会合)」が開催され、AZECパートナー国の政府関係者の参加の下で、AZECパートナー国でのJCMの利活用促進や炭素市場の構築に向けて議論を深めました。
③アジア太平洋経済協力(APEC)における協力
2024年8月に、ペルー・リマにおいて「第14回APECエネルギー大臣会合」が開催され、日本から吉田経済産業大臣政務官が出席しました。会合では、①APEC地域のエネルギー移行の促進、②水素開発のための水素政策ガイダンス、③エネルギーアクセスの重要性の3点を中心に議論がなされました。吉田経済産業大臣政務官からは、各エコノミーの事情に応じた多様な道筋によるエネルギー移行及びイノベーション促進が重要であること等について発言しました。また、日本のネット・ゼロ実現に向けた最近の取組として、水素社会推進法や二酸化炭素の貯留事業に関する法律等による取組を紹介し、日本の技術・知見等を共有しながらAPEC地域における水素の供給・利用促進等に貢献していく旨を発言しました。その後、「APEC水素開発のための水素政策ガイダンス」が報告され、出席エコノミーより支持されました。なお、会議終了後、エネルギー大臣会合としては9年ぶりに、共同声明が発出されました。
また、2024年9月にAPEC議長国であるペルーの呼びかけにより、「APEC鉱業ハイレベル対話」が開催され、エネルギー移行に向けて、日本企業の鉱業投資支援とESG基準向上を推進していくことを発信しました。
(ア)アジア太平洋経済協力拠出金
【2024年度当初:0.9億円】
アジア太平洋地域における低炭素技術の普及に向けた「APEC低炭素モデルタウンプロジェクト」や、APEC域内のエネルギー強靱性の向上、エネルギー効率の向上、エネルギー源の多様化に資するプロジェクト等を支援するために、APEC事務局に拠出を行いました。
(イ)アジア太平洋エネルギー研究センター拠出金
【2024年度当初:5.6億円】
省エネ政策ワークショップの開催、「APECエネルギー需給見通し」の作成、アジア太平洋地域のエネルギー統計整備のための研修生受入・専門家派遣、「LNG産消会議」の開催、石油・石炭・ガスレポートの作成等のために、アジア太平洋エネルギー研究センターに拠出を行いました。
(3)その他の多国間協力(生産国と消費国の対話等)
①国際エネルギー・フォーラム(IEF)における対話
国際エネルギー・フォーラム(IEF)は、世界72か国の石油・ガス等の産出国と消費国のエネルギー担当大臣及びIEAや石油輸出機構(OPEC)等の国際機関の代表が一堂に会する、重要な「産消対話」の機会を提供する国際機関です。産消対話を行うことにより、産消国双方が相互に理解を深め、健全な世界経済の発展や安定的かつ透明性のあるエネルギー市場を促進することを目的としています。
IEFは、8つの国際機関・フォーラム(APEC、EU、IEA、IEF、OLADE(中南米エネルギー機関)、GECF(ガス輸出国フォーラム)、OPEC、国際連合)が協力して石油と天然ガスの統計を整備する「国際機関共同データイニシアティブ」(JODI)を進めています。国際機関が協力して関連情報の共有を進め、エネルギー需給の動向についての正確かつタイムリーな情報を市場に提供することで、市場の不確実性が軽減されるとの認識の下、現在、JODIがデータを集計している国々は、世界の石油・ガス需給の9割以上をカバーしています。日本は、資金・人材の両面でJODIの発展に寄与しています。
(ア)国際エネルギー・フォーラム分担金
【2024年度当初:0.2億円※経済産業省・外務省の合計】
IEFの活動・運営費用を、各国分担率に基づき拠出しました。
(イ)国際エネルギー・フォーラム拠出金
【2024年度補正:3.0億円】
「IEF閣僚級会合」の開催支援を行うとともに、JODI事業に貢献するため、IEF事務局に拠出を行いました。
②国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における協力
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、再エネの普及・持続可能な利用促進を目的として設立された国際機関で、事務局はUAEのアブダビに設置されています。日本は、2010年7月に正式に加盟しました。IRENAの主な活動は、メンバー国の政策・制度・技術・成功事例の分析・体系化、他の政府・非政府機関等との協力、政策助言、技術移転、人材育成、資金に関する助言、研究ネットワークの展開、国際的な技術基準の作成等です。
2024年12月にコートジボワールで開催された「第3回日アフリカ官民経済フォーラム」において、IRENAがサイドイベントを開催しました。同イベントでは、アフリカにおける再エネの普及に向けた可能性や課題、国際協力などについて議論が行われ、日本からは再エネ分野でのアフリカにおける日本の貢献を紹介しました。
(ア)国際再生可能エネルギー機関分担金
【2024年度当初:2.8億円、2024年度補正:0.6億円】※4省合計
IRENAを通じて、日本単独では十分な成果が見込めない大規模な調査や普及活動を実施することにより、再エネを国際的に普及させるため、IRENAの活動・運営費用を、各国分担率に基づき、外務省・農林水産省・経済産業省・環境省の4省共同で分担しました。
(イ)国際再生可能エネルギー機関拠出金
【2024年度当初:0.7億円、2024年度補正:2.0億円】※経済産業省・外務省の合計
経済産業省は、再エネと水素の利活用に関する調査及びレポートの発行、世界の地熱利用促進に向けた活動への協力、東南アジアにおける再エネ導入推進事業等の実施のため、分担金に加えてIRENAの活動費用の拠出を行いました。
また、外務省は、COP28に際して立ち上げられた「アフリカにおける再生可能エネルギー加速パートナーシップ」(APRA)を支援するための拠出を行いました。
③国際的な省エネルギーの新たな枠組み(省エネハブ)における協力
省エネハブは、主要な省エネトピックについて、加盟国間や国際社会での情報交換や連携を奨励・促進する目的で、「国際省エネルギー協力パートナーシップ」(IPEEC)の後継機関として、2019年に設立されました。アルゼンチン、豪州、ブラジル、カナダ、中国、デンマーク、EU、フランス、ドイツ、日本、韓国、ルクセンブルク、ロシア、サウジアラビア、英国、米国の16の国と機関が設立時にメンバーとして参加しており、2025年1月にインドが新規加入しました。事務局はIEAに置かれています。
省エネハブの下で活動を行うタスクグループとして、「EMAK(エネルギー管理行動ネットワーク)」、「DWG(デジタル化ワーキンググループ)」、「SEAD(超高効率機器の普及イニシアティブ)」、「TOP TENs(省エネに関する優秀事例及び最良技術リストの開発・普及プロジェクト)」、「EEB(建築物の省エネ)」があります。2024年度は、産業用ヒートポンプの普及、デジタル化の活用、省エネ設備の民間投資に関するワークショップが開催され、各国の取組やベストプラクティスについて、情報交換や議論が行われました。
④クリーンエネルギー大臣会合(CEM)、ミッション・イノベーション(MI)における協力
クリーンエネルギー大臣会合(CEM)は、世界の主要28か国及び地域から構成されるクリーンエネルギーの普及促進を目的とした国際会合であり、ミッション・イノベーション(MI)は、世界の主要23か国及びEUから構成されるクリーンエネルギーの研究開発及び実証の促進を目的とする国際イニシアティブです。2024年10月には、ブラジルのフォス・ド・イグアスで第15回CEM/第9回MIが開催されました。2024年はCEM発足15年、2025年はMI発足10年の節目の年であることを受け、これらの会合では、これまでの活動成果の共有に加え、クリーンエネルギー移行に関する課題と機会について議論されました。日本からは、脱炭素・経済成長・エネルギー安全保障を同時に達成するため、多様な道筋によるエネルギー移行、イノベーションの促進、世界全体での脱炭素化の必要性を述べるとともに、アジアにおける産業の脱炭素化への支援やCCUS/カーボンマネジメントの普及拡大、CDRの市場拡大に向けた取組等について発信しました。
⑤エネルギー憲章条約(ECT)における協力
「エネルギー憲章条約」(ECT)は、エネルギー貿易の自由化を促進し、投資保護の枠組みを有する条約です。欧州諸国を中心に1998年4月16日に条約が発効し、日本については、条約締結手続を経て、2002年10月に同条約が発効しました。
EUや一部の欧州諸国の脱退表明等を経て、2024年12月、同憲章条約会議が開催され、参加加盟国により、近代化されたエネルギー憲章が採択されました。2024年末時点では、欧州諸国、日本、中央アジア、モンゴルなど44の国及び2つの国際機関が加盟しています。
⑥証券監督者国際機構(IOSCO)との連携及び商品先物市場監督当局間の協力
経済産業省は、商品取引所及び取引所外取引における規制監督当局として、世界各国・地域の証券監督当局や証券取引所等から構成されている証券監督者国際機構(IOSCO)の活動に積極的に参画し、投資家保護や取引の透明性向上等を図っています。2024年度は、今後の各国の商品先物市場当局の協力等について意見交換が行われました。また、IOSCOの包括的な協議・協力及び情報交換に関する多国間覚書等の枠組みに参加しており、これに基づいて、市場監視のために各国の当局との情報交換を実施する体制を整えています。
⑦クリーンエネルギー関連製品のサプライチェーン強靱化に係るイニシアティブ(RISE)における協力
RISE(Resilient and Inclusive Supply-chain Enhancement:強靱で包摂的なサプライチェーンの強化)は、低・中所得国がEVバッテリーや太陽光パネル等のクリーンエネルギー関連製品のサプライチェーンにおいて大きな役割を果たすことを目指すイニシアティブです。RISEを通じて、サプライチェーンの多様化を通じたクリーンエネルギーの安定供給、さらには、低・中所得国における産業の多角化・高付加価値化の実現、ひいては持続的な経済成長や雇用創出を目指します。
RISEは現在、アフリカ地域等で、クリーンエネルギーのサプライチェーン構築の機会と課題を特定する分析作業や、投資環境整備に向けた技術支援に係る取組を進めています。
2.二国間における協力
(1)先進諸国との協力
①日米協力
2024年4月、齋藤経済産業大臣はワシントンDCにてポデスタ米国大統領上級補佐官と、この10年でエネルギー移行の進展を加速させ、補完的かつ革新的なクリーンエネルギーのサプライチェーンを促進し、産業競争力を向上させるという日米が共有する目標に向け、日本の「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略)と米国の「インフレ削減法」(IRA)のシナジーを最大化するための閣僚政策対話を開催しました。同年12月には、経済産業省、外務省、米国国務省が、「第3回日米エネルギー安全保障対話」を開催し、エネルギー安全保障及び脱炭素の取組に関し、日本の「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号)」(GX推進法)及び米国のIRAを通じ、脱炭素化を加速し、経済成長、産業競争、エネルギー安全保障を強化すること、またこれら二国間の取組のシナジーを最大化していくことを再確認しました。
このほか、2024年4月の日米比商務・産業大臣会合や同年6月の日米韓商務・産業大臣会合において、脱炭素エネルギー等に関する協力で合意する等、日米間の緊密な協力関係をインド太平洋地域の第三国に展開しました。
その後、2025年1月に第2期トランプ政権が誕生しました。同年2月の石破総理訪米時に実施された日米首脳会談において、双方に利のある形で、日本へのLNG輸出増加も含め、両国間でエネルギー安全保障の強化に向けて協力していくことが確認されたほか、共同声明において日米両首脳は、重要鉱物のサプライチェーンの多角化並びに先進的な小型モジュール炉(SMR)及びその他の革新炉に係る技術の開発及び導入に関する協力の取組を歓迎しました。
②日加協力
カナダは、世界有数のエネルギー資源国であり、石油、天然ガス、石炭、ウランに加えて、豊富な水力資源を有しています。日加間においては、原子力、重要鉱物、LNG等を中心に様々な分野でのエネルギー協力が進展しています。
2024年7月に、齋藤経済産業大臣は、イン輸出促進・国際貿易・経済開発担当大臣とイタリアで会談し、2023年9月に日加間で署名したバッテリーサプライチェーンに関する協力覚書について触れ、両国の経済協力の更なる可能性について確認しました。
さらに2024年10月には、バッテリーサプライチェーン協力覚書に基づく第1回局長級対話をカナダで開催しました。日本からは経済産業省野原商務情報政策局長、カナダからはイノベーション・科学産業省グレゴリー次官補が参加し、持続可能で信頼性のあるグローバルなバッテリーサプライチェーンの構築に向けた意見交換を行い、政策情報の共有、貿易・投資促進、研究開発などについて今後の対応策などを議論しました。
同年11月には、武藤経済産業大臣と、イン輸出促進・国際貿易・経済開発担当大臣がペルーで会談し、ここでも重要鉱物に関する協力を確認するとともに、ブリティッシュ・コロンビア州で日本が開発に参画しているLNG輸出プロジェクトであるLNGカナダなど、地域のエネルギー安全保障についても議論し、認識を共有しました。
さらに、同年12月には、「第34回日加次官級経済協議」(JEC)の協力作業部会が開催され、重要鉱物のサプライチェーン強靱化やLNG協力、小型原子炉の導入など、エネルギーを含む6つの優先協力分野について議論しました。
③日英協力
再エネ分野では、2024年2月及び6月に「日英洋上風力ワークショップ」を開催し、日英両国の漁業調整・海洋空間計画・防衛・環境アセス・EEZなどを対象とした洋上風力発電などの開発事業の入札制度について、意見交換を行いました。
原子力分野では、2012年4月に発出された日英両国首相による共同声明に基づき2024年10月に開催した「第13回日英原子力年次対話」において、原子力政策、廃止措置・廃棄物管理・環境回復、原子力研究・開発、パブリック・コミュニケーション、原子力安全及び規制に関する日英両国の考え方や取組について、意見交換を行いました。
④欧州委員会との協力
2024年4月に、齋藤経済産業大臣が欧州委員会シムソン委員(エネルギー担当)と会談を行い、水素、再エネ、天然ガス・LNG、CCUS/カーボンリサイクル分野等における日EU協力や、クリーンエネルギー技術のサプライチェーンの強靱化に関して意見交換を行いました。
同年6月には「日EU水素ビジネスフォーラム」を開催し、クリーンエネルギー分野において供給・需要サイドで協力し、透明性、多様性、安全性、持続可能性及び信頼性の原則に基づき、脱炭素、安定供給、サイバーセキュリティといった価格以外の要件の適切な評価について検討する「日EUクリーンエネルギー産業政策対話」の設置や、水素分野における協力に関する共同工程表の作成等の採択を内容とする共同プレス声明を、齋藤経済産業大臣及び欧州委員会シムソン委員により発出するとともに、日EUの水素関係機関における協力文書に署名しました。
同年10月には「第1回EUクリーンエネルギー産業政策対話」を開催し、クリーンエネルギー分野における強靱なサプライチェーンの構築や、価格以外の要素(Non-Price Factors)について議論しました。
⑤日独協力
日独間では、直近では、2024年6月(水素)、同年9月(再エネ、省エネ)にそれぞれWGを実施したほか、太陽光発電、電力の容量市場、LNGバリューチェーンにおけるメタン対策等をテーマとしたオンラインによるワークショップを開催するなど、日独両国のエネルギー政策動向や再エネ・水素等に関する二国間協力等について、意見交換を継続しています。
また、2024年7月に、ドイツを訪問した岸田総理はショルツ首相と会談しました。岸田総理は、貿易、投資、研究協力の促進も重要と指摘し、水素、クリーンエネルギー、半導体、重要鉱物資源等の戦略的部門において、民間セクターを含む両国間の連携に進展が見られること、両国間でスタートアップ企業の誘致や進出促進に向けた取組が進んでいること等を歓迎する旨を述べました。また同月、G7貿易大臣会合に出席するためイタリアを訪問した齋藤経済産業大臣は、ハベック経済・気候保護大臣と会談し、経済安全保障を中心とする二国間関係の連携強化について意見交換を行いました。また、2024年12月には、松尾経済産業審議官と経済・気候保護省フィリップ事務次官との間で、「第22回日独次官級定期協議」を開催し、経済安全保障上の課題や日独両国のエネルギー協力等について、意見交換を行いました。
⑥日仏協力
日仏間には、経済産業省と仏経済財務省による対話の場として日仏産業協力委員会があり、この枠組みの下に「日仏新エネルギー・システム・ワーキンググループ(WG)」が設置されています。2024年11月には、風力、水素、ヒートポンプをテーマとして同WGがオンラインで開催され、この結果は同年12月に日仏産業協力委員会に報告されました。
原子力分野では、2024年4月にパリで原子力エネルギーに関する日仏委員会を開催し、日仏両国の原子力エネルギー政策、原子力安全協力、原子力事故の緊急事態対応、核燃料サイクル、放射性廃棄物の管理、原子力研究・開発、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉、オフサイトの環境回復等について、意見交換を行いました。
⑦日豪協力
オーストラリアは、石炭、LNG、水素等の資源・エネルギーの分野において、重要なパートナーです。
2024年10月には、ラオス・ビエンチャンで開催されたASEAN関連首脳会議及びAZEC首脳会合に出席した石破総理が、アンソニー・アルバニージー豪州連邦首相と会談し、エネルギー安全保障分野や脱炭素化に向けた取組を含む経済分野での協力を一層強化していくことを議論しました。
また、2025年1月には、武藤経済産業大臣がキング資源大臣兼北部豪州担当大臣と会談し、LNGや石炭等の資源の安定供給、予見性・透明性のある投資環境の確保や重要鉱物のサプライチェーンの強化に向けた協力について、意見交換を行いました。
(2)アジアとの協力
①日印協力
インドは、中国、米国に次ぐ世界第3位のエネルギー消費国であり、今後も経済発展や電化の進展により、更なるエネルギー需要の増加が予想されています。このようなインドにおけるエネルギー安定供給の確保とエネルギー効率の向上は、日本のエネルギー安全保障にとっても重要であり、日印両国の経済発展にも直結する重要な政策課題になっています。
こうした背景を踏まえ、エネルギー分野における日印両国の協力の拡大を図る観点から、2006年の首脳合意を受けて、閣僚級の枠組みである「日印エネルギー対話」を立ち上げており、日印両国閣僚の相互訪問により、2007年以降、計10回の対話を実施しています。次回の第11回目の対話については、時宜を捉えて開催すべく、調整を行っています。
省エネ分野については、2018年に日本の支援により成立したインド版の省エネガイドラインの普及や、工場の省エネマニュアル作成の支援に向けて、専門家派遣等の協力を継続しています。
②日インドネシア協力
インドネシアは、日本にとって有数の石油、天然ガス、石炭等の資源の輸入相手国であり、複数の日本企業が、LNGやクリーンエネルギー、再エネ関連の多くのプロジェクトに参画している等、資源・エネルギーの分野において、重要なパートナーです。
2024年5月には、齋藤経済産業大臣が、アリフィン・エネルギー鉱物資源大臣と会談し、AZECの下でアジアのエネルギー移行を強力に推し進めることで一致しました。
同年8月には、齋藤経済産業大臣が、アイルランガ経済担当調整大臣、ロサン投資大臣と会談し、再エネ、廃棄物発電、送配電を含む多くのプロジェクトの進捗確認を行い、その進展を歓迎しました。加えて、経済産業省とインドネシア・エネルギー鉱物資源省との間で包括的なエネルギー協力に関する覚書に署名しました。また、ロサン投資大臣よりAZECへの期待が寄せられ、協力してAZECの推進に取り組むことを確認しました。
同年12月には、日インドネシア間の二国間クレジット制度に関する第10回合同委員会を開催し、パリ協定第6条に沿ってJCMを実施するための改定規則やガイドライン類等を採択するとともに、二酸化炭素回収・貯留(CCS)及び二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)の事業に関するガイドライン類を採択しました。
2025年1月には、石破総理がプラボウォ・スビアント大統領と会談し、エネルギー安全保障の確保と多様な道筋による脱炭素化に向けて、資源・インフラ協力の推進を確認するとともに、AZECの下での地熱発電事業の進展を歓迎しました。
③日シンガポール協力
2024年4月に行われた「第2回日本・シンガポール官民経済対話」において、脱炭素の分野における官民連携の促進等について議論しました。
また、同年6月にシンガポールで開催された「インド太平洋経済枠組み(IPEF)閣僚級会合」に出席した齋藤経済産業大臣は、ガン・キムヨン副首相兼貿易産業大臣と会談し、エネルギー移行の協力の進展等を歓迎し、これらの分野のイノベーション創出に向けた連携強化を促進することで一致しました。
さらに、同年8月にインドネシア・ジャカルタで開催された「第2回AZEC閣僚会合」に出席した齋藤経済産業大臣は、タン・シーレン第二貿易産業大臣と会談し、引き続き、協力して、AZECの推進に取り組んでいくことを確認しました。加えて、CCSに関する協力覚書の署名を歓迎しました。
④日タイ協力
2024年6月、経済産業省とタイ王国エネルギー省は「第6回日タイエネルギー政策対話」を実施しました。政策対話では、両国のエネルギー政策に関して意見交換を行ったほか、3件のカーボンニュートラルに向けた協力に関する覚書等を歓迎しました。
⑤日韓協力
2024年9月に経済産業省と韓国産業通商資源部は、「第3回日韓エネルギー協力対話」を韓国・釜山にて実施しました。本協力対話は、日本と韓国それぞれのエネルギー政策の動向を紹介し、2050年カーボンニュートラル実現に向けて取組を進めるべく、2018年に設置されました。
第3回の対話では、水素・アンモニア等の分野における今後の協力等について議論を行いました。
⑥日中協力
中国は世界最大のエネルギー消費国であり、中国におけるエネルギー利用効率の向上は、日本のエネルギー安全保障にとっても重要な課題です。
2024年9月には、「第3回脱炭素化実現に向けた日中政策対話」を初めて対面開催で実施しました。本対話では、石炭火力の脱炭素化に関する取組や、水素・アンモニアの利用といった、双方のエネルギーの関心事項に基づく意見交換を行い、有意義な議論が繰り広げられました。
同年11月には「第17回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」を開催しました。2019年以来、5年ぶりの対面開催となり、日本側から、武藤経済産業大臣、浅尾環境大臣、岩田経済産業副大臣、進藤日中経済協会会長が、中国側から、趙辰昕国家発展・改革委員会副主任、李飛商務部副部長、呉江浩駐日本中国特命全権大使が参加したほか、両国合わせて約650人の官民関係者が参加しました。フォーラムでは、武藤経済産業大臣から、脱炭素化、経済成長、エネルギー安全保障の3つの同時達成とともに、あらゆる技術やエネルギー源を活用する多様な道筋の下で、ネット・ゼロという共通のゴールを目指すことの重要性について発言しました。また、カーボンニュートラルの実現は日中共通の目標であり、本フォーラムを契機として、日中間の更なる協力強化に期待する旨を表明しました。同フォーラムでは新たに27件の日中企業間の協力案件が創出され、2006年の第1回からの協力案件は累計457件となりました。
また、今回初めて設置した「住宅・建築物グリーン化分科会」をはじめ、「省エネルギー分科会」、「自動車の電動化・スマート化分科会」、「水素・アンモニア分科会」、「日中長期貿易(グリーン貿易・投資)分科会」の5つの分科会を開催し、日中双方の官民関係者が意見交換を行いました。
⑦日ベトナム協力
ベトナムは、石炭、石油、天然ガス、鉱物資源を豊富に保有する資源国であり、日本にとって重要な、良質な無煙炭の供給国です。
また、ベトナムは、日本の経済産業大臣とベトナムの商工大臣を共同議長とする「日ベトナム産業・貿易・エネルギー協力委員会」及び局長級の「日ベトナムエネルギーワーキンググループ」という重層的な政府間対話の枠組みを通じて、協力を推進している国の1つです。2024年12月には、「第7回日ベトナム産業・貿易・エネルギー協力委員会」が開催され、サプライチェーン強靱化、重要鉱物の安定確保に向けた協力及びAZECの下でのエネルギー移行等、多岐にわたる分野におけるエネルギー協力等について議論を行いました。
⑧日マレーシア協力
マレーシアは、日本にとって第2位のLNGの供給国であり(2023年、貿易統計)、日本のエネルギー安全保障上、重要なパートナーです。
2024年6月にシンガポールで開催された「インド太平洋経済枠組み(IPEF)閣僚級会合」に出席した齋藤経済産業大臣は、ザフルル・アブドゥル・アジズ投資貿易産業大臣と会談し、AZECにおけるプロジェクトの推進等、これからの日マレーシア、日ASEANの経済関係を深化させていくことで一致しました。
また、同年8月にインドネシア・ジャカルタで開催された「第2回AZEC閣僚会合」に出席した齋藤経済産業大臣は、ラフィジ経済大臣と会談し、「国家エネルギー・トランジションロードマップ」策定の契機となったAZECへの強い支持が示され、第3回のAZEC閣僚会合を2025年にマレーシアで日本と協力して開催することを確認しました。さらに、アンモニア、CCUS、SAF等について二国間協力を進めていくことで一致しました。2025年1月には、石破総理が、アンワル・イブラヒム首相と会談し、エネルギー安全保障の確保と多様な道筋による脱炭素化に向けて、資源・インフラ協力の推進を確認するとともに、AZECにおいても協力を一層強化していくことで一致しました。
(3)エネルギー供給国等との関係強化
①日アラブ首長国連邦(UAE)協力
UAEは、日本にとって第2位の原油の供給国です(2023年、貿易統計)。日本企業も石油権益を保有し、50年以上にわたって油田操業に参画してきました。また、UAEには、日本の自主開発原油が最も集中しており、日本にとって極めて重要な資源国です。日本との間では、活発なハイレベルの往来があり、エネルギー分野を中心とした幅広い分野での協力を推進してきました。
2024年4月、吉田経済産業大臣政務官はUAEを訪問して、ジャーベル・アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEO兼UAE産業・先端技術大臣兼日本担当特使(以下「ジャーベル大臣」という。)と面談し、クリーンエネルギーや先端技術分野などの分野で二国間協力を引き続き進めていくことを確認するとともに、日本への原油の安定供給に対する謝意を伝達し、国際原油市場の安定化に向けた働きかけを行いました。同年7月、齋藤経済産業大臣と吉田経済産業大臣政務官は、UAEのジャーベル大臣及びゼイユーディ貿易担当国務大臣を日本に迎え、会談を行いました。会談で齋藤経済産業大臣は、日本への原油の安定供給に対する謝意を伝え、エネルギー移行を含む幅広い分野に協力の裾野を広げていく考えを述べるとともに、日UAE両国が双方にとって重要なパートナーであること確認しました。さらに同年12月、古賀経済産業副大臣は、UAE経済省主催の投資促進イベント「Investopia」に出席するため訪日したアル・マッリ経済大臣と会談し、UAEの再エネのポテンシャル、日本の資源循環に関する技術の活用等について意見交換を行いました。そして2025年1月、武藤経済産業大臣は、訪問したUAEのアブダビにおいて、再エネ・環境技術等をテーマとしたWorld Future Energy Summit(WFES)の開会式に出席し、ムハンマド大統領をはじめ、ジャーベル大臣、マズルーイ・エネルギー・インフラ大臣などと懇談しました。ジャーベル大臣との会談では、日本への原油の安定供給に対する謝意を伝達するとともに、国際原油市場の安定化について議論しました。また、気候変動対策や先端技術分野での協力が進んでいることについても確認しました。
引き続き、足下のエネルギー安定供給の確保に向けて、緊密に連携していくとともに、脱炭素も視野に入れた、水素・アンモニア等を含めた包括的な資源外交を展開していきます。
②日オマーン協力
オマーンは、中東地域の中でも、ホルムズ海峡の外に位置しているという観点から、地政学的リスクが相対的に低いという特徴を有しており、日本にとって、原油は第7位、天然ガスは第9位の供給国です(2023年、貿易統計)。
日本のエネルギー安定供給においても同国は重要であり、同国との間ではエネルギーに加え、産業や投資の分野での協力関係の強化を行っています。2024年4月、岩田経済産業副大臣は、来日中のスナイディ経済特区・フリーゾーン庁(OPAZ)長官と面談し、同年3月のオマーン国訪問時に商工業・投資促進省との間で署名した共同声明を踏まえつつ、今後のビジネスミッション派遣を通じた両国ビジネス関係者の交流やオマーン国内の経済特区・フリーゾーンへの日本企業の進出について意見交換を行いました。
③日サウジアラビア協力
サウジアラビアは、世界有数の産油国であるとともに、日本にとって第1位の原油の供給国です(2023年、貿易統計)。また、産油国の中でも特に主要な位置付けにあり、大きな余剰生産能力を持つことから、国際原油市場に大きな影響力を有しています。こうしたことから、原油の大部分を海外からの輸入に頼る日本にとって、サウジアラビアとの関係強化は重要な課題です。
2025年1月、武藤経済産業大臣は、サウジアラビアのダラーン市を訪問し、アブドルアジーズ・エネルギー大臣と会談を行い、両大臣はサウジアラビアが日本にとって最大かつ最も信頼できる原油の供給源の1つであることを踏まえ、両国が信頼できるかつ信用のあるパートナーであることを強調しました。また会談では、エネルギー移行を進めるに当たっては、エネルギー安全保障・経済成長を損なわない形で、各国の事情に応じた多様な道筋の下に取り組む必要があることや、産油国と消費国の対話と連携が重要であるとの見解を共有しました。二国間では、ライトハウス・イニシアティブをはじめとしたエネルギー協力の進展を歓迎し、今後も幅広い分野で協力していく必要性を確認しました。
- 1
- 2013年まではロシアを含めた8か国によるG8でした。