第5節 次世代革新炉の開発・建設に向けた取組
2040年より前に既設炉のうち300万kW以上が運転期間60年に到達し、その後に既設炉の脱炭素電源としての供給力を大幅に喪失していくことを踏まえつつ、2040年、そしてそれ以降の経済成長、国民生活の向上のために必要となる脱炭素電源を確保するためには、十数年から20年程度という相当長期のリードタイムが必要であることを考慮しつつ対応を進めることが必要です。政府としては、脱炭素電源としての原子力を活用していくため、原子力の安全性向上を目指し、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組むこととしています。「第7次エネルギー基本計画」では、バランスの取れた電源構成の確保を目指し、廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者の原子力発電所のサイト内での次世代革新炉への建て替えを対象として、地域の産業や雇用の維持・発展に寄与し、地域の理解が得られるものに限り、六ヶ所再処理工場の竣工等のバックエンド問題の進展も踏まえつつ具体化を進めていくことや、その他の開発などは、各地域における再稼働状況や理解確保等の進展等、今後の状況を踏まえて検討していくことが示されています。
次世代革新炉のうち、革新軽水炉については、規制予見性を高める目的で、ATENAと規制当局との間で実務レベルの技術的意見交換会が設置されるなど、事業者による導入を見据えた動きが進展しています。また、新しい安全対策に係る技術開発を促進し、実用化を加速していきます。小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、フュージョンエネルギーといった他の次世代革新炉についても、炉型ごとの用途や開発段階の相違、社会のニーズ等の要素も考慮して、実用化に向けた技術開発に継続的に取り組みます。
<具体的な主要施策>
1.高速炉実証炉開発事業
【2024年度当初:289億円】
高速炉は、エネルギー供給の脱炭素に貢献するとともに、資源の有効利用・放射性廃棄物の減容化・有害度低減といった意義を有しており、フランスや米国等の諸外国においても、研究開発が進められています。日本においても2023年度から実証炉開発を開始しており、米仏との国際連携も活用しながら、研究開発に取り組んでいます。
2.高温ガス炉実証炉開発事業
【2024年度当初:274億円】
高温ガス炉は、固有の安全性を有し、800℃以上の高温熱をいかした水素製造等の産業利用が期待されており、英国や米国等の諸外国においても、研究開発が進められています。日本においても2023年度から実証炉開発を開始しており、英国との国際連携も活用しながら、研究開発に取り組んでいます。