第4節 既設炉の最大限の活用に向けた取組
1.運転期間の取扱い
2023年5月にGX脱炭素電源法が成立し、原子力発電所の運転期間の在り方について、「利用」と「規制」の観点から「電気事業法」と「原子炉等規制法」における条文の再整理が行われました。
具体的には、「運転期間を最長で60年に制限する」という従来の枠組みは維持しつつ、東日本大震災以降の法制度の変更等、事業者から見て他律的な要素によって停止していた期間に限り、「60年」の運転期間のカウントから除外することを認めるという規定が電気事業法に設けられました。なお、こうした利用政策の観点での判断にかかわらず、高い独立性を有する原子力規制委員会が厳正な審査を行い、規制基準への適合性が確認できなければ、運転は認められないことは大前提です。
2025年6月6日の本制度の施行に向けて、総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会において、審査基準の策定に向けた議論が行われました。
2.設備利用率の向上
エネルギー安定供給の確保とカーボンニュートラルの実現の両立に向け、既設の原子力発電所を最大限活用していく上では、設備利用率の向上の取組を進めることが重要です。「第7次エネルギー基本計画」では、「設備利用率の向上に向けては、ATENAが中心となり、トラブル低減の取組強化、安全性確保を大前提とした効率的な定期検査の実施、運転中保全の導入拡大、運転サイクルの長期化に向けた技術課題整理に係る規制当局との議論等を引き続き進める。」とされています。
運転サイクルの長期化に向けては、ATENAが中心となり、PWRプラントの15か月運転導入に向けた技術的な検討を実施しています。また、運転中保全の導入拡大に向けては、NRRCとATENAが協力して、リスク管理措置や規制上の課題の整理・検討を進めており、作業品質と設備の信頼性の向上を通じて、利用率の向上につなげていくことを目指しています。運転中保全については、2024年12月に開催されたCNO意見交換会において議論が開始され、2025年1月の原子力規制委員会において、実務者レベルの意見交換の場を設けることや、四国電力・伊方発電所2号機の非常用ディーゼル発電機において実証が行われることが了承されました。他にも、事業者は相互に連携しながら、安全性の確保を大前提とした効率的な定期検査の実施に向け、国内外の取組の分析や良好事例の導入を進めています。