はじめに

再エネは、温室効果ガスを排出しない脱炭素エネルギー源であるとともに、日本のエネルギー安全保障にも寄与できる重要な国産エネルギー源です。2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」では、再エネについて、「S+3E」を大前提に、再エネの主力電源化を徹底し、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促すとされています。

世界的には、再エネの導入拡大に伴って発電コストが低減し、それが更なる導入につながるといった「好循環」が実現しています。日本においても、2012年7月に施行され、その後も累次の改正が行われている「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(平成23年法律第108号)」(以下「再エネ特措法」という。)に基づく固定価格買取制度(以下「FIT1制度」という。)の導入以降、再エネの導入が急速に拡大してきました。2024年3月末時点で、FIT制度の開始後に新たに運転を開始した設備は約7,900万kW、FIT制度の認定を受けた設備は約9,900万kWとなっています。一方、日本における再エネの発電コストは着実に低減してきているものの、国際水準と比較すると、依然として高い水準にあります。

太陽光発電は比較的リードタイムが短く、自家消費や地産地消を行う分散型エネルギーリソースとしての活用が期待されるため、更なる導入拡大を進めることが重要です。地域と共生した太陽光発電の導入を促進するため、関係省庁が連携して、公共施設や住宅、工場・倉庫の屋根等への導入等に取り組むとともに、「地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)」(以下「地球温暖化対策推進法」という。)や建築物省エネ法に基づく促進区域等での導入拡大等にも取り組んでいきます。特に、住宅、工場・倉庫の屋根等に設置される需給近接型の太陽光発電については、FIT・FIP(Feed-in Premium)制度において「初期投資支援スキーム」を導入し、国民負担の抑制を前提に、運転開始後初期の調達価格・基準価格を引き上げ、より短期間での投資回収を可能とすることで、導入を後押ししていきます。さらに、耐荷重性の小さい屋根や壁面等、既存の太陽電池では設置が困難であった場所への設置を可能にする、軽量で柔軟性を持つ「ペロブスカイト太陽電池」等の次世代型太陽電池については、グリーンイノベーション基金を活用しながら、研究開発から実証までの支援を進めており、引き続き早期の社会実装に向けた取組を加速させていきます。

また、風力発電、とりわけ、今後コスト低減が見込まれる電源として、日本の電力供給の一定割合を占めることが見込まれる洋上風力発電の導入拡大も重要です。2019年4月に施行された「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成30年法律第89号)」(以下「再エネ海域利用法」という。)に基づき、毎年着実な案件形成を進めるとともに、2025年3月7日には、排他的経済水域(EEZ)における洋上風力発電の設置に係る制度等を創設する改正法案を閣議決定し、第217回通常国会に提出しました。引き続き、事業環境整備を進め、安全保障や環境影響、リサイクル等の観点についても十分に考慮しつつ、コスト効率的な案件の導入を促進していきます。

地熱発電についても、安定的に発電を行うことが可能なエネルギー源であり、国の掘削調査やワンストップでの許認可に係る手続の進捗確認や助言等の支援による地熱発電の導入拡大、次世代型地熱の社会実装加速化などを図ることが重要です。

さらに、系統制約の克服に向けて、全国の送電ネットワークを、再エネ電源の大量導入等に対応しつつ、レジリエンスを抜本的に強化した次世代型ネットワークへと転換する取組を進めてきました。既存系統の最大限活用や地域間連系線の整備、地内基幹系統等の増強、分散型リソースの活用、系統運用の更なる高度化等を進めることで、引き続き、再エネの導入拡大に向けて、系統制約の克服を目指します。

「第7次エネルギー基本計画」等における再エネ主力電源化の基本方針を踏まえ、引き続き、FIT・FIP制度をはじめとしたあらゆる政策を総動員しながら、イノベーションの加速やコストの低減、市場への統合、地域と共生する形での適地確保や事業実施、系統制約の克服等を着実に進め、再エネの最大限導入を実現していきます。

1
FIT:Feed-in Tariffの略。