第3節 需要家側のエネルギーリソースの有効活用

再エネのコスト低下や、デジタル技術の進展によるエネルギーマネジメントの高度化、レジリエンス強化に対する関心の高まり等により、再エネをはじめとする分散型エネルギーリソースの導入拡大は、今後も進展が期待されています。これに伴い、分散型エネルギーリソースが果たす役割は、これまでの需要家のレジリエンス対応やピークカット、熱電併給等による省エネ等の自家消費向けの役割に加え、小売電気事業者向けの供給力や一般送配電事業者向けの調整力等にも拡大していくことが期待されています。また、近時では、分散型エネルギーリソースを制御する技術も進展しています。この技術を活用することで、調整力等を創出することができ、再エネ導入に対応するために電力システム全体で必要となるトータルの費用が抑制されることで、更なる再エネ導入拡大にも資することが期待されます。引き続き、予算支援等を通じて、分散型エネルギーリソースの導入拡大を目指します。

<具体的な主要施策>

1.家庭用蓄電池等の分散型エネルギーリソース導入支援事業

【2023年度補正:100億円】

家庭用・業務産業用の蓄電システムに加え、需要家保有リソースのDR対応化(IoT化)といった調整力等の提供が可能な分散型エネルギーリソース等の導入を支援しました。

2.再生可能エネルギー導入拡大に向けた系統用蓄電池等の電力貯蔵システム導入支援事業

【2024年度当初:85億円 国庫債務負担含め総額:400億円】

再エネ導入の加速化に向け、調整力等として活用可能な系統用蓄電池等の電力貯蔵システムの導入を支援しました。

3.再生可能エネルギー導入拡大に向けた分散型エネルギーリソース導入支援等事業

【2024年度当初:15億円】

配電事業等の参入を見据え、災害等による長期停電時に一般送配電事業者等が運営する電力系統から独立して電力を供給する「地域独立系統」の構築等を支援しました。また、地域に根差し信頼される再エネの拡大を目的に、地域共生に取り組む優良事業の顕彰等を行いました。

4.電気の需要の最適化

近年、太陽光発電等の変動型再エネの導入拡大に伴い、一部の地域では、再エネ電気の出力の制御(以下「出力制御」という。)が実施されています。出力制御が実施されている時間帯の非化石電源比率は8割以上になるケースもあり、こうした時間帯に電力の需要をシフトすることは、余剰再エネ電気の有効活用につながります。また、猛暑や厳冬、発電設備の計画外停止等を起因とする電力の需給ひっ迫時等においては、節電を含む電力の需要抑制が有効な対策の1つとなります。このように、余剰再エネ電気が発生している時間帯に電力の需要をシフト(上げDR)し、逆に、電力の需給状況が厳しい場合には電力の需要を抑制(下げDR)するといった、供給側の変動に応じた電力需要の最適化は、重要な取組となっています。

特に、家庭におけるDRについては、行動変容に頼ったDRでは、高いDR参加率・実施率は見込めず、手動制御ではなく遠隔制御や自動制御といったDRの高度化が必要であることから、API連携のルール作り、機器の通信対応、ERAB6に資するセキュリティ対応化が課題となっています。これらの課題に対応するためには、機器が通信接続機能や外部制御機能、セキュリティに関する機能を具備する、機器のDRready化が必要です。このため、関係者による「DRready勉強会」を設置し、2025年1月、ヒートポンプ給湯器のDRready要件の案を作成しました。

また、電気事業者に対しても、電気の需要の最適化に資する取組を促す電気料金その他供給条件の整備に関する計画の作成及び公表を義務として求める等、引き続き供給側からも電気の需要の最適化を促していきます。

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ERABとは、Energy Resource Aggregation Businessの略称で、蓄電池等の分散型エネルギーリソースを多数束ねてコントロールし、仮想の発電所のように機能させることで、再エネの活用促進、災害時のレジリエンス向上、経済的な電力システムの構築に資する次世代のエネルギービジネスのことを言います。