第3節 鉱物資源の安定供給確保に不可欠なリサイクルの推進及び備蓄体制の強化等
鉱物資源については、日本のものづくり産業に必要不可欠な原材料である一方、供給の大宗を海外に依存しており、その安定供給の確保は重要な課題です。そのため、資源外交を通じた資源供給国との関係強化と並行して、鉱物資源の安定供給の確保に向けた総合的な取組として、特に省エネ・再エネ機器等の製造に必要なレアメタルの短期的な供給リスクに備えることを目的としたレアメタルの国家備蓄や、使用済製品からの有用金属の回収・リサイクルを高度化するための技術開発、レアメタルを豊富に含有する代替資源を活用するための技術の開発、レアメタルの使用量を削減するための技術開発等の取組を進めています。
<具体的な主要施策>
1.資源自律経済システム開発促進事業
【2024年度当初:15億円】
排出・回収された廃製品に含まれる金属やプラスチック等の各種素材を、デジタル技術も活用しながら最大限利用可能とする基盤技術開発を実施しました。
2.経済安全保障の確保に資するサプライチェーンの強靭化事業(永久磁石)
【2022年度補正:253億円、2024年度補正:41億円】
永久磁石のサプライチェーンの多様化・強靱化を実現するため、省レアアース型永久磁石の開発や廃磁石からのレアアース原料のリサイクル技術開発等への支援を実施しています。また、重希土類フリー永久磁石及び重希土類フリー永久磁石の特性を踏まえた基幹モーターの設計及び技術開発を行う取組に対し、必要な支援を行っています。
3.経済安全保障重要技術育成プログラム
【2022年度補正:1,250億円の内数】
永久磁石のサプライチェーンリスクの低減を狙い、重希土・ネオジムフリーレアアース磁石及び完全レアアースフリー磁石といった次世代磁石の開発事業への支援を行いました。
4.電気・電子機器廃棄物(e-waste)及び重要鉱物に関する日ASEAN資源循環パートナーシップ(ARCPEC)
2023年の「日ASEAN環境気候変動閣僚級対話」において設立に合意したARCPECに基づき、2024年度は適正なリサイクルを増加させ、サプライチェーンで再利用する国際金属資源循環体制を構築するための施策を進めました。
ASEANにおけるe-waste関連法令の整備や実施・モニタリング、行政及び現地企業の能力開発、現地及び本邦企業の連携の促進等の協力を行い、日本の高度精錬技術を活用した重要鉱物等の金属資源の循環を進めました。
5.日ASEANサーキュラーエコノミーイニシアティブ(AJCEI)
2023年の「日ASEAN経済大臣会合」において発出されたアクションプランのひとつであるAJCEIに基づき、2024年度はマレーシアにおける家電リサイクルのFS事業を推進するなど中古電気電子機器(UEEE)や電気電子機器廃棄物(e-waste)などの電気電子機器(EEE)をパイロット・プロジェクトとして、日本とASEANの緊密な協力により、包括的な方法で循環経済への移行を促進しました。
6.成長志向型の資源自律経済戦略と戦略を踏まえたアクション
近年では、廃棄物問題や気候変動問題といった観点に加え、世界的な資源需要及び地政学的なリスクの高まりといった資源制約の観点や、希少資源・レアアースの確保といった経済安全保障上の観点も踏まえ、市場のライフサイクル全体で、資源を効率的・循環的に有効利用する「循環経済」(サーキュラーエコノミー)への移行が喫緊の課題となってきています。このため、経済産業省では、産官学連携、投資支援、制度整備の3本柱でサーキュラーエコノミーへの移行に取り組んでいます。
産官学連携に関しては、環境省と連携して「サーキュラーパートナーズ」(CPs)、「循環経済パートナーシップ」(J4CE)を活用し、先進的な取組事例の共有・発信、ビジネスマッチングの実施、コミュニケーションの促進等を通じて、産官学の幅広い主体の連携を促進しています。CPsでは、650者を超える多様な会員(2025年3月時点)と、製品・素材ごとの課題の抽出やロードマップの策定、地域循環モデルの構築、情報流通プラットフォームの構築などに向けて議論を深めました。また、J4CEにおいても、先進的な取組事例の共有・発信、ビジネスマッチングの実施、コミュニケーションの促進等を行いました。
投資支援については、「脱炭素成長型経済構造移行債」(以下「GX経済移行債」という。)を活用し、研究開発から実証・実装まで一貫した支援を通して、2024年度からの3年間で100億円の支援を行っています。
制度整備については、再生材の利用に関する計画策定や実施状況の定期報告の義務づけ、環境配慮設計を促進するトップランナー認定制度の創設等の方向性を取りまとめ、第217回通常国会に資源の有効な利用に関する法律を改正する法案を提出しました(第213-6-1)。これらの取組により、日本モデルのサーキュラーエコノミーを実現し、更なる経済成長を目指していきます。
【第213-6-1】再生材利用拡大、環境配慮設計の可視化・価値化等のための制度的枠組み構築
【第213-6-1】再生材利用拡大、環境配慮設計の可視化・価値化等のための制度的枠組み構築(pptx形式:73KB)
- 資料:
- 経済産業省作成