第2節 「経済と環境の好循環の実現」に向けた日本のエネルギー関連先端技術導入支援や国際貢献

世界のエネルギー需要の重心がアジアにシフトするとともに、エネルギー源は多様化し、そして気候変動問題への対応も求められる等、世界のエネルギーを巡る課題は、より拡大・深化し、一層複雑化しています。気候変動問題に関しては、2020年から「パリ協定」が本格的に実施となり、2050年カーボンニュートラルを表明する国・地域が増加する等、各国での取組が加速しています。

こうした状況の中、排出される温室効果ガスの大宗を占めるエネルギー分野における取組が重要となっており、日本が厳しいエネルギー制約の中で、これまで蓄積してきた技術やノウハウを世界に普及していくため、こうした技術やノウハウを統合化して、再エネ及び省エネ技術、スマートコミュニティ等のインフラという形で国際展開を推進していくことが重要です。また、途上国への温室効果ガス削減技術、製品、システム、サービス、インフラ等の普及や対策の実施を通じて実現した温室効果ガスの排出削減・吸収への日本の貢献を、定量的に評価するとともに、日本における削減目標の達成に活用するため、JCMの構築・実施にも取り組んでいます。

さらに、世界全体のカーボンニュートラルの実現に向けて、個別の挑戦課題とこれらを社会実現する道筋・手法を提示するため、2023年9月〜10月には、「東京GXウィーク」(アジアグリーン成長パートナーシップ閣僚会合、水素閣僚会議、アジアCCUSネットワークフォーラム、カーボンリサイクル産学官国際会議、燃料アンモニア国際会議、GGX×TCFDサミット、東京GXラウンドテーブル、ICEF、RD20国際会議)を開催しました。各国閣僚や各分野をリードする世界の有識者、指導者を招き、GXの実現に向けた個別の挑戦課題とこれらを社会実現する道筋・手法について幅広い議論を行い、「多様な道筋」・「イノベーション」・「途上国とのエンゲージメント」をキーワードとして、「経済と環境の好循環」の実現に向けた現実的かつ具体的な道筋・絵姿を、世界に対して発信しました。

また、ASEAN地域のエネルギー移行と脱炭素化の実現に向けては、2019年9月に、「ASEAN+3エネルギー大臣会合」の下、日本の提案により、官民イニチアティブである「Cleaner Energy Future Initiative for ASEAN」(以下「CEFIA」という。)を立ち上げ、省エネ・再エネ等の分野において、協力プロジェクトを実施しています。協力プロジェクトの進捗等を報告する場として、これまで定期的に「CEFIA官民フォーラム」を開催しており、2023年8月には、「第5回CEFIA官民フォーラム」を開催しました。CEFIAでは、脱炭素技術・制度・ファイナンスの3要素を一体としてプロジェクトを発展させることで、ビジネス環境を整備することに注力しており、今後は、各国政府だけでなく、研究機関、大学、企業、国際機関及び金融機関等との連携をより促進させていきます。

〈具体的な主要施策〉

1.案件形成・実証等の支援

(1)案件形成、事業実施可能性調査

質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査等事業【2023年度当初:8.5億円】

省エネ・再エネ等に関する日本の質の高いエネルギーインフラ技術の導入を通じて、世界のエネルギー起源CO2の排出量を削減するために、エネルギーインフラの導入に係る事業実施可能性調査を実施しました。

(2)人材育成等

新興国等における脱炭素化・エネルギー転換に資する事業委託費【2023年度当初:8.0億円】

省エネや新エネに係る日本の先進的な技術・システムの国際的な普及支援のため、新興国を中心に、人材育成を通じた省エネ対策や新エネ導入に関する制度構築支援、各国の動向調査、政策共同研究等を実施しました。

(3)日本の技術・システムの実証

脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業【2023年度当初:65.0億円】

省エネや新エネに係る日本の先進的な技術・システムの国際的な普及や実用化に向けて、その技術・システムを、相手国の自然条件や規制・制度等に応じて柔軟に設計し、現地における有効性や優位性を可視化するための実証事業を、相手国の政府や企業と共同で実施しました。さらに、実証の成果を商業ベースでの普及拡大につなげるため、相手国の政府による日本の技術・システムの採用や活用を促す等、各種普及支援についても実施しました。

(4)官民連携を核とした推進体制の強化

世界省エネルギー等ビジネス推進協議会

世界省エネルギー等ビジネス推進協議会は、2008年に、省エネ・新エネ分野で優れた技術を有する日本の企業・団体によって設立されました。この協議会は、2023年10月時点で、45企業・21団体で構成されており、設立以来、政府と経済界が一体となって、関連製品や技術を基にしたビジネスの国際展開を推進しています。

具体的な活動内容として、地域別・テーマ別にワーキンググループ等を組織し、ミッション派遣やフォーラム開催等によるビジネス機会の獲得、市場分析やプロジェクト発掘に向けた調査、海外での展示会の出展、関連製品・技術をとりまとめた「国際展開技術集」の作成及び周知等を行いました。

2.二国間クレジット制度(JCM)の推進

(1)JCMの構築・実施

2013年1月に、モンゴルとの間で、初めてJCMを構築したことを皮切りに、「二国間クレジット制度(JCM)の拡大のため、2025年を目途にパートナー国を30か国程度とすることを目指し関係国との協議を加速する」という方針4に基づき、JCMパートナー国の拡大に取り組んでいます。

関係国との協議に取り組んでおり、2022年度末時点のパートナー国(モンゴル、バングラデシュ、エチオピア、ケニア、モルディブ、ベトナム、ラオス、インドネシア、コスタリカ、パラオ、カンボジア、メキシコ、サウジアラビア、チリ、ミャンマー、タイ、フィリピン、セネガル、チュニジア、アゼルバイジャン、モルドバ、ジョージア、スリランカ、ウズベキスタン、パプアニューギニアの計25か国)に加え、2023年度には新たに、UAE、キルギス、カザフスタン、ウクライナの4か国(計29か国)と、JCMの構築に係る協力覚書に署名しました。

(2)JCMプロジェクトの形成の支援

①民間主導によるJCM等を通じた低炭素技術国際展開事業【2023年度当初:11.0億円】

JCMの構築に係る協力覚書に署名した相手国において、JCMクレジットの発行を念頭に置きつつ、優れた脱炭素技術の実証及び温室効果ガス排出削減効果の測定・報告・検証に係る実証事業を行いました。

②二国間クレジット取得等のためのインフラ整備調査事業委託費【2023年度当初:8.1億円】

JCMの意思決定機関である合同委員会の運営や、クレジットを管理する登録簿の基盤整備・運用を行うとともに、JCMに関するプロジェクトの実現可能性調査(FS)を実施しました。また、官民イニシアティブ(CEFIA)を通じたASEAN地域における民間主導の脱炭素技術の普及を目的として、プロジェクト組成や調査等を行いました。

③脱炭素移行に向けた二国間クレジット制度(JCM)促進事業【2023年度当初:136.7億円、2023年度補正:29.0億円】

JCMに署名済のパートナー国において、優れた脱炭素技術等を活用したエネルギー起源CO2排出削減設備・機器の導入プロジェクトへの資金支援を実施しました。また、アジア開発銀行(ADB)及び国際連合工業開発機関(UNIDO)へ資金拠出を行い、これらの国際機関のネットワークも活用しながら、JCMスキームによるアジア、アフリカ諸国等への脱炭素技術・製品の普及・拡大に貢献しました。

④アジア等国際的な脱炭素移行支援のための基盤整備事業【2023年度当初:11.9億円】

JCMの効果的・効率的な実施及びJCMプロジェクトの拡大とさらなる展開に向け、JCMの制度構築、JCMに関する国際的な理解の醸成、JCMの実施対象国の拡大に向けた取組、途上国における長期戦略の策定支援、民間セクター全体での排出量把握・情報開示等の透明性向上の推進、途上国における排出削減プロジェクトの組成支援、アジア等の途上国における都市間連携を活用した脱炭素化事業の実現支援、大気汚染・廃棄物処理を促進する脱炭素事業及び高効率ノンフロン機器の国際展開を推進する事業を行いました。

3.「経済と環境の好循環」の実現に向けた国際的な議論・取組

(1)東京GXウィーク

経済産業省は、GXの実現を目指し、2023年9月25日から10月5日にかけて、エネルギー・環境関連の国際会議を集中的に開催する「東京GXウィーク」を開催し、合計で8,000名以上がオンライン及び対面で参加しました。

①東京GXウィークプレナリーセッション

2023年9月25日に開催し、ビデオスピーチでの参加を含め、37か国・国際機関が参加しました。

日本で開催された「G7サミット」や、その後のG20での議論を踏まえ、経済成長・エネルギー安定供給・脱炭素化の3つの同時達成の重要性や、カーボンニュートラルという共通のゴールを目指しつつ、各国の事情を踏まえ、多様な道筋の下でエネルギー移行を進めることの重要性、イノベーションを通じた課題の解決やそれを支えるファイナンスの必要性について、各国と共有しました。また、各国が有する資源や技術を活かして取り組むだけではなく、国際的に協力して世界規模での脱炭素化に取り組んでいくことの重要性についても確認しました。

②第3回アジアグリーン成長パートナーシップ閣僚会合(AGGPM)

2023年9月25日に開催した第3回アジアグリーン成長パートナーシップ閣僚会合(AGGPM)は、アジアを中心とする新興国において、経済成長・エネルギーセキュリティ・気候変動対策を同時に達成することを目指し、参加国及び国際機関の間での議論や、官民の連携を発信する場として、日本主催で開催されたものです。今回の会合には、アジアや中東諸国、ERIA、産業界、金融セクター、研究機関の登壇者を中心に、計17の国並びに国際機関の代表が参加しました。

今回の会合における閣僚セッションでは、アジアや中東諸国のエネルギー当局や国際機関に加え、日本とシンガポールの金融当局を招き、アジアにおけるトランジション・ファイナンスの重要性について発信を行いました。西村経済産業大臣からは、AETIの下で進めるアジア・トランジション・ファイナンスの確立を引き続き目指すことや、これまでに1,800人以上の人材研修を達成した上で、今後はアジア各国からの要請に応じて、制度設計の支援にも力を入れることを強調しました。また、COP28(同年11月〜12月開催)の議長国であるUAEのジャーベル産業・先端技術大臣兼日本担当特使兼アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEOとの間で、同年7月に日UAEの首脳間で合意した、UAEを含む中東地域をクリーンエネルギー・脱炭素化のハブとする「グローバル・グリーン・エネルギー・ハブ」構想に向けた具体的な取組を、日本の経済産業省とUAEの産業・先端技術省の間の包括的な産業協力枠組みである「エネルギー安全保障と産業化枠組み(ESIA)」の下で進める旨の共同意図表明宣言を締結しました。

加えて、個別セッションでは、「アジア・トランジション・ファイナンス・スタディ・グループ(ATFSG)」の活動報告を行うとともに、産業界や金融界、シンクタンクの代表を交えて、パネルディスカッションを実施し、アジアのエネルギー・トランジションやトランジション・ファイナンスを進めていく上での課題や幅広いセクター間における連携の必要性について、議論を行いました。

また、今回の会合を受けて、「アジア・トランジション・ファイナンス・スタディ・グループ」の取組を歓迎するとともに、多様なステークホルダーの理解醸成のための研究機関の役割を認識する議長サマリーを発出しました。

③第6回水素閣僚会議

(再掲 第8章 冒頭文参照)

④第3回アジアCCUSネットワークフォーラム

アジアCCUSネットワークは、2021年6月に、アジア全域でのCCUSの活用に向けた知見の共有や事業環境整備を目指すための国際的な産学官プラットフォームとして立ち上げられました。

第3回アジアCCUSネットワークフォーラムは、2023年9月27日に、ヒルトン広島においてハイブリッド形式で開催されました。この会合は、経済産業省とERIAの共催で行われ、西村経済産業大臣等のアジアCCUSネットワークのメンバー国の代表からメッセージが寄せられるとともに、吉田経済産業大臣政務官が現地で挨拶を行いました。会場では116名、オンラインでは約350名が参加しました。

第3回アジアCCUSネットワークフォーラムでは、前年に開催した第2回フォーラムにおいて設定した、「2025年に具体的なプロジェクトの創出を目指し、2030年にアジアにおいてCCUSのハブの構築を目指す」という目標を踏まえて、具体的な協力を進めるために、初めて締結文書の調印式を行い、CO2の越境輸送に関する覚書(経済産業省・JOGMEC・マレーシア国営石油会社ペトロナスの三者間で締結)を含む3件が締結されました。

また、今回初めて、アジアのエネルギー・トランジションを進める観点から、CCSが果たす役割についての共同声明を発出しました。共同声明には、経済成長が続く東南アジアにとっては火力発電とCCSの組み合わせがカーボンニュートラルを実現する上で、「様々な手段(various pathways)」の1つとして有力であることや、CO2を地下に吹き込む石油増産技術「EOR」や天然ガス増産技術「EGR」は、適切に管理されればエネルギーセキュリティやエネルギー・トランジションに効果的であること等の内容が盛り込まれました。

さらに、パネルディスカッションにおいては、CCUSの重要性や世界的な動向、各国のCCS政策ロードマップに関する意見交換、アジア地域のCCUSプロジェクト、CO2の輸出入メカニズムの構築、CCS技術の知識共有に加え、今後は、関係機関の協力を得ながら、アジアにおける資金調達や炭素クレジットの適切な制度設計を検討することが議論されました。

加えて、アジアCCUSネットワークは、アジアにおけるCCUSのプラットフォームとして、国・地域レベルでの法的・規制的枠組みの重要性や、CO2の輸出入を実現するためのCCUSの経済性を認識し、そして、これらの課題にチャレンジしていくことが表明されました。

⑤第5回カーボンリサイクル産学官国際会議

経済産業省及びNEDOは、2023年9月に、第5回カーボンリサイクル産学官国際会議を広島県で開催し、20の国・地域から、会場及びオンラインの合計で約900名が参加しました。本会合では、各国の産学官による講演・パネルディスカッションを通じ、合成燃料(e-fuel)、合成メタン(e-methane)を含むカーボンリサイクル燃料が、カーボンニュートラル実現に向けて重要な役割を果たすことや、カーボンリサイクル製品のさらなる世界的な市場創造のため、カーボンリサイクルの環境価値の測定・評価の仕組みづくりが必要であることが指摘されました。また、産学官及び企業間・地域間連携が、スタートアップを含む企業のカーボンリサイクルの取組を後押しする可能性や、広島県や大崎上島のカーボンリサイクル実証研究拠点の取組が、社会実装に向けて重要な役割を果たすこと等を確認し、初めて「総括文書」としてとりまとめました。

また、本会合では、「第3回アジアCCUSネットワークフォーラム」と初めて同日開催するとともに、企業・団体等によるポスター展示を通じて、日本のCCUS/カーボンリサイクルの技術を紹介しました。加えて、カーボンリサイクルの社会実装に向けた日本の直近1年間における取組として、G7コミュニケにおけるCCUS/カーボンリサイクル技術を含むカーボンマネジメントの有効性や将来性についての合意や、カーボンリサイクルロードマップの策定、CO2吸収型コンクリートの社会実装に向けた動き等の進捗を「プログレスレポート」としてとりまとめ、発信しました。国際連携を強化し、カーボンリサイクルの普及に向けた取組を加速していきます。

⑥第3回燃料アンモニア国際会議

2022年に続き3回目の開催となった第3回燃料アンモニア国際会議は、2023年9月29日に日本の主催で行われ、燃料アンモニアの生産・利用の中心的な役割を果たす各国政府代表や国際機関、産業界等から計1,300名を超える参加者が、対面及びオンライン上で一堂に会しました。

この会議では、燃料アンモニアの幅広い産業での多用途展開や、燃料アンモニアの供給拡大に向けた安定的かつ低廉で柔軟性のある燃料アンモニアバリューチェーン・市場の構築支援等、脱炭素化に寄与する燃料アンモニアの可能性や将来性に関する議論が行われました。また、各代表による講演及びパネルディスカッションに加え、米国・ルイジアナ州における新たなクリーンアンモニア製造検討の調査に関する協力覚書が締結されました。今回の会議においても、第1回の開催以降の燃料アンモニアに関する国際連携の進展を強く印象づけました。

⑦GGX×TCFDサミット2023

経済産業省は、2019年より行われていた「TCFDサミット」と2022年に開催された「国際GX会合」を統合した「GGX×TCFDサミット2023」を、世界の産業界、金融界、政府、規制当局、国際機関等を含む幅広い分野からの専門家を招いて、2023年10月2日に、対面・オンラインのハイブリッド形式で開催しました。

これまでのTCFDサミット及び国際GX会合で行われていた気候関連財務情報開示のあり方や、トランジション・ファイナンスの推進、脱炭素を実現するイノベーションの社会実装に必要なファイナンスのあり方、グリーン製品の価値を評価するための市場のあり方やその評価のあり方、気候変動対策を進めるための国際協調のあり方に関する議論を踏まえ、今回のGGX×TCFDサミット2023では、「産業の脱炭素化に向けて」、「企業の『課題解決力』と『削減貢献量』」、「気候関連情報開示の今後」、「トランジション・ファイナンスの今後の展望」の4つのセッションが行われました。それぞれのテーマについて、国内外の有識者からの提言があり、パネルディスカッションでは、GXの実現に向けて今後必要な取組について、議論を行いました。

⑧東京GXラウンドテーブル

世界中からGX関連分野の有識者が日本に集まる「東京GXウィーク」の機会にあわせて、GXを巡る世界の議論の潮流及び日本の官民の取組を共有すべく、2023年10月3日に、東京GXラウンドテーブルを開催し、海外・国内の有識者に加え、岸田総理及び西村経済産業大臣が参加しました。

海外の有識者からは、脱炭素と経済成長の両立を進める上では、世界中でトランジション・ファイナンスの推進や技術開発の加速等が必要であることや、その中で、日本政府が進める世界初の政府によるトランジション・ボンドの発行や先行投資支援の取組、さらには削減貢献量等の産業の脱炭素化に向けたルールメイクは、そうした世界的な潮流に沿ったものであるとの評価がありました。さらに、こうした日本の取組をベストプラクティスとして世界と共有し、世界の脱炭素化に向けて、日本のリーダーシップを期待するとの発言がありました。

また、日本企業からは、各社が取り組む脱炭素に必要な革新的技術の開発について、政府支援も得てさらに強化していくとともに、そうした取組が市場で評価されるためのルール形成等にも取り組んでいくこと、さらにはトランジションを含む脱炭素に必要な技術・取組への投資を、官民のステークホルダーを巻き込みながら加速していくことについて、表明がありました。

岸田総理からは、「新しい資本主義」の考えを掲げ、地球温暖化等の社会課題を成長のエンジンとし、官民の投資によって成長を実現していくことや、そのために政府として、「グリーンスチール」の早期本格導入や日本発の次世代太陽電池である「ペロブスカイト」の2025年からの市場投入をはじめ、カーボンニュートラル実現に重要な技術・製品の開発・普及に向けて、2023年内にGXに向けた分野別投資戦略を策定して大胆な投資促進策を実行していくこと、さらには、こうした取組を通じて世界に対しても貢献していくことについて、発言がありました。

⑨第10回Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)

「Innovation for Cool Earth Forum」(以下「ICEF」という。)は、地球温暖化問題を解決する鍵であるイノベーションの促進のため、世界の産学官のリーダーが議論するための知のプラットフォームとして、2014年から毎年開催している国際会議です。

2023年10月4日〜5日にハイブリッド形式で開催した第10回年次総会では、「Innovation for Just, Secure and Sustainable Global Green Transformation」をメインテーマに掲げ、世界が様々な困難に直面しつつも、カーボンニュートラル達成へと進んでいくために必要なイノベーションに焦点が置かれ、政策イノベーションやグローバル・ストックテイク、気候変動に伴う食料・水資源への影響、核融合技術等について議論が行われました。この会合では、野口聡一宇宙飛行士、スティーブン・チュー元米国エネルギー省長官、ジャン=エリック・パケ駐日EU代表部大使等、エネルギー・環境に関する世界の第一人者が、15のセッションに登壇しました。また、各プレナリ・技術セッションにおいては、若手世代(ヤング・イノベーター)も登壇者として議論に参加しました。2日間の会合を通じて、各国政府機関、産業界、学界、国際機関等、計79か国・地域から約1,700名が参加しました。

また、これまでのICEFの成果、さらなるGX推進に必要な方策、将来に向けた行動及び今回の各セッション等での議論の結果をとりまとめ、ICEF運営委員会によるステートメントを発表しました。さらに、「AIと気候変動緩和」をテーマとした技術動向分析(ロードマップ)のドラフトを公開し、会合終了後に開催されたCOP28において、正式に発表しました。

⑩第5回RD20国際会議

2019年に日本主導により創設された「RD20(Research and Development 20 for Clean Energy Technologies)」は、クリーンエネルギー技術分野におけるG20の研究機関のトップが集まり、国際連携を通じた研究開発の促進により、脱炭素社会の実現を目指すためのイニシアティブです。

2023年の第5回RD20国際会議(リーダーズセッション)は、前回までの東京開催を離れ、福島県郡山市においてハイブリッド形式で、2023年10月5日に開催されました。国内を含めた19か国、22研究機関のトップが参加し、第4回RD20国際会議で採択された「リーダーズレコメンデーション」に基づき実施された若手の育成を国際的に推進するサマースクールや、水素の大量導入に必要な技術や制度を議論する国際ワークショップ、太陽光発電及び水素に関するタスクフォース等が国際連携の成果として報告され、今後のRD20の活動の方向性が議論されました。エネルギー転換を加速するためのさらなる連携の強化を目指し、RD20のイニシアティブをさらに拡充していくとともに、人材育成を目的としたRD20機関間での研究者交換プログラムや、RD20の活動状況をまとめて今後の連携を促進するためのポータルサイトの創設等が推奨事項として採択されました。

また、リーダーズセッションに先立って行われたテクニカルセッション(同年10月4日開催)では、水素技術、太陽光発電の環境影響評価及びCO2有効利用等について、各機関の研究者等により技術的な共通課題や国際連携の方向性が議論されました。

(2)ゼロエミッション国際共同研究センター

2020年1月29日に、国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)は、「ゼロエミッション国際共同研究センター」を設置しました。研究センター長には、2019年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰博士が就任しました。当該センターにおいては、国際連携の下、次世代太陽電池、蓄電池、水素、CO2分離・利用・固定化、人工光合成等の革新的環境イノベーション戦略の重要技術の基盤研究を実施しているほか、クリーンエネルギー技術に関するG20各国の国立研究所等のリーダーによる国際会議である「RD20国際会議」や、東京湾岸エリアの企業、大学、研究機関、行政機関等と連携してゼロエミッション技術に係る研究開発・実証、成果普及・活用等に取り組む「東京湾岸ゼロエミッションイノベーション協議会(ゼロエミベイ)」の事務局を担う等、イノベーションハブとしての活動を推進しました。

(3)第5回CEFIA官民フォーラム

ASEAN地域において、脱炭素技術の普及と政策・制度の構築をビジネス主導で進めることを目的として、2019年に開催された第16回ASEAN+3エネルギー大臣会合(AMEM+3)において、日本政府の提案により、官民協働イニシアティブである「Cleaner Energy Future Initiative for ASEAN(CEFIA)」の立ち上げが合意され、活動を開始しました。このイニシアティブの下、定期的に「官民フォーラム」を開催することとしており、第5回CEFIA官民フォーラムを2023年8月25日に、インドネシア・バリにて開催しました。

本フォーラムでは、脱炭素技術を導入するためにCEFIAで取り組んでいるフラッグシッププロジェクトとして、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル「ZEB」、IoTによる工場等での動力最適化による省エネを行う連携制御「RENKEI」、日本の優れた省エネ技術の導入による製鉄所の省エネ「SteelEcosol」についての進捗が紹介されるとともに、新たなフラッグシッププロジェクトとして、省エネと快適性を両立する空調の導入「AC-ECP」、バイオマス発電及びバイオ炭の活用「Biochar」が紹介されました。さらに、各プロジェクトを進める上で横断的に重要となるトピックとして、プロジェクトへのファイナンスの動員、削減貢献量、クリーンテックの起業家育成に関する取組の紹介が行われたほか、日本・ASEANの政府、企業、金融機関の関係者により、産業、商業、建物分野における、デジタル技術を活用したエネルギーマネジメントに関する議論が行われました。さらに、日本貿易振興機構(JETRO)ジャカルタ事務所との共催で、ビジネスマッチングイベントを実施し、各登壇企業から、日本・ASEANの政府・企業関係者に対して、新規技術や関連製品の紹介が行われ、交流を深めました。

(4)LNG産消会議2023

LNG産消会議は、LNGの生産国・消費国が、LNGの長期的な需給見通しの共有と、取引市場の透明化に向けた連携を図るプラットフォームとして、2012年より毎年開催しています。

2023年7月、LNG産消会議2023を、APERCの協力を得て、経済産業省及びIEAの共催で開催しました。会議では、IEAメンバー国や産消国との対話を通じて、エネルギー危機の拡大と再発を防ぐための具体的な施策について議論しました。また、LNGセキュリティの強化とLNGのバリューチェーンのクリーン化に向けた課題を整理した上、解決に向けた政策のヒントを得るべく、日本とIEAの共催により開催してきたワークショップと本会議の議論の成果として、議長国サマリーをとりまとめ、西村経済産業大臣から「LNG Strategy for the World」を発表しました。

4
2022年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・フォローアップ」より。