第4節 持続可能な航空燃料(SAF)・合成燃料の促進

1.持続可能な航空燃料(SAF)の促進

SAFの導入促進に当たっては、供給側の石油元売事業者等と利用側の航空会社の連携を強化し、SAFの導入を加速させるため、技術的・経済的・制度的課題や解決策を官民で協議し、一体となって取組を進める場として、2022年4月に「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会」を設置しました。この官民協議会では、3回にわたる検討を経て、2023年5月に「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた施策の方向性について 中間取りまとめ」を公表しました。官民協議会は、2024年1月にも開催しており、2024年度も引き続き実施していく予定です。

また、2023年12月には、GX実行会議において「分野別投資戦略」を策定しました。今後は、「脱炭素成長型経済構造移行債(GX経済移行債)」を活用して、大規模なSAF製造設備の構築に係る設備投資支援を、2024年度から5か年にわたって実施していきます。

加えて、2024年度税制改正において、世界で戦略分野への投資獲得競争が活発化する中、戦略分野のうち、特に生産段階でのコストが高い事業の国内投資を強力に促進するため、「戦略分野国内生産促進税制」を創設し、SAFも対象物資となっています。生産・販売量に応じた税額控除を、10年間の適用期間で措置します。

〈具体的な主要施策〉

(1)化石燃料のゼロ・エミッション化に向けた持続可能な航空燃料(SAF)・燃料アンモニア生産・利用技術開発事業【2023年度当初:70.8億円】

航空分野における脱炭素化の取組に寄与するSAFの商用化に向けて、ATJ技術(Alcohol to JETの略で、触媒技術を利用してアルコールからSAFを製造)や、ガス化・FT合成技術(木材等をH2とCOに気化し、ガスと触媒を反応させてSAFを製造)、カーボンリサイクルを活用した微細藻類の培養技術を含むHEFA技術に係る実証事業等を行いました。

(2)CO2等を用いた燃料製造技術開発【グリーンイノベーション基金:国費負担上限1,152.8億円の内数】

大規模な生産量(数十万kl)が見込めるエタノールからSAFを製造する「ATJ技術」の確立を目指しています。

(3)戦略分野国内生産促進税制【税制】

世界で戦略分野への投資獲得競争が活発化する中、戦略分野のうち、特に生産段階でのコストが高い事業の国内投資を強力に促進するため、過去に例のない新たな投資促進策として「戦略分野国内生産促進税制」を創設しました。具体的には、電気自動車、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAF、半導体(マイコン・アナログ)等を対象に、生産・販売量に応じた税額控除を、10年間の適用期間で措置します。

2.合成燃料の促進

合成燃料は、CO2と水素を合成して製造される燃料です。2022年9月には、合成燃料の導入促進に向けて、「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会」を設立しました。製造技術やコスト面の課題解決に向けた取組に加え、認知度向上のための国内外への発信、サプライチェーンの構築、CO2削減効果を評価する仕組みの整備等の課題に対応するため、官民が一体となって取り組む体制を構築しています。この官民協議会では、2023年6月に「中間とりまとめ」を公表し、具体的な目標として、今後集中的な技術開発・実証を行い、2025年までに製造を開始し、高効率かつ大規模な製造技術を確立して、2030年代前半までに前倒しして商用化を目指すことを掲げました。

こうした目標の達成に向けて、グリーンイノベーション基金によるプロジェクト等を通じた高効率で大規模な生産を可能とする技術の開発や、既存技術を用いて早期の供給を目指した国内外プロジェクトの組成や参画の促進、各国との連携による環境価値の取扱いに関する国際的な合意形成を行っていきます。

〈具体的な主要施策〉

(1)次世代燃料安定供給のためのトランジション促進事業

(再掲 第5章第2節 参照)

(2)CO2等を用いた燃料製造技術開発【グリーンイノベーション基金:国費負担上限1,152.8億円の内数】

CO2と水素から、逆シフト、FT合成、これらの連携技術等を用いて、高効率・大規模に液体燃料に転換するプロセスを開発しています。