第7節 サプライチェーンの維持・強化に向けた取組

1.国内のサプライチェーンの維持・強化

日本国内では、1970年以降に運転を開始した原子力発電所の多くで原子力技術の国産化比率がほぼ90%を超える等、原子炉圧力容器から小さなバルブに至るまで、国内企業に技術が集積されており、国内における発電所の安定利用や経済・雇用等に貢献してきました。一方、東日本大震災以降は、原子力発電所の再稼働の遅れや新規建設プロジェクトの途絶により、国内事業者の多くが将来の事業見通しを立てることができず、要素技術を持つ中核サプライヤ等の撤退が相次いでいます。

そうした中、2023年5月に成立したGX脱炭素電源法により改正された原子力基本法では、「原子力利用に関する基本的施策」として、「原子力発電に係る高度な技術の維持及び開発を促進し、これらを行う人材の育成及び確保を図り、並びに当該技術の維持及び開発のために必要な産業基盤を維持し、及び強化するための施策」が規定されています。

また、同年3月には、地方経済産業局や日本原子力産業協会等の関係機関と連携し、「原子力サプライチェーンプラットフォーム」(以下「NSCP」という。)を立ち上げ、全国約400社の原子力関連企業の個別の実情に応じて積極的にサポートを行うため、戦略的な原子力人材の育成・確保、部品・素材の供給途絶対策・事業承継、海外プロジェクトへの参画支援等、サプライチェーン全般に対する支援態勢を構築しました。2024年3月時点では、約120社の原子力関連企業がNSCPに参画しています(第347-1-1)。

【第347-1-1】原子力サプライチェーンプラットフォーム(NSCP)

347-1-1

【第347-1-1】原子力サプライチェーンプラットフォーム(NSCP)(ppt/pptx形式:112KB)

資料:
経済産業省作成

〈NSCPにおいて実施した施策〉

  • ウェブサイト3を立ち上げ、技術・人材・産業基盤の維持・強化に向けた各社の取組事例や、補助金・税制に関する情報を紹介したほか、海外の建設プロジェクトへの参画に向けた情報提供等、原子力サプライチェーンについてのコンテンツを拡充しました。
  • 補助金セミナーを開催し、「原子力産業基盤強化事業」やサプライヤによる補助金の活用事例を紹介したほか、原子力サプライヤが活用できる補助金等をまとめた各種支援施策集を解説することで、サプライヤによる補助金の活用を活性化しました。
  • 原子力サプライヤ海外品質規格勉強会を開催し、海外規格の取得に当たっての企業の懸念を払拭すべく、ASME(米国機械学会)規格に関する講義を実施しました。
  • 2024年3月14日に、経済産業省主催・日本原子力産業協会共催・文部科学省協力で「第2回原子力サプライチェーンシンポジウム」を開催し、サプライチェーンへの支援拡充を広くPRしました。齋藤経済産業大臣や、グロッシーIAEA事務局長等が登壇したほか、オンラインを含めて計11か国から約400名が参加しました。産官学における人材育成の事例、米国への日系サプライヤ団の派遣をはじめとした国際連携によるサプライチェーン構築の取組、一般産業用工業品の採用(CGD)に関する取組について議論を行いました。

〈具体的な主要施策〉

原子力産業基盤強化事業【2023年度当初:13.5億円】

原子力利用の安全性・信頼性を支えている原子力産業全体の強化のため、世界トップクラスの優れた技術を有するサプライヤの支援、技術開発・再稼働・廃炉等の現場を担う人材の育成等を実施しました。

2.海外プロジェクトへの参画支援

海外プロジェクトへの参画支援に当たっては、「革新サプライヤチャレンジ」という革新炉向けの機器や部素材の設計・開発・実用化に挑戦する国内サプライヤでチームを組成し、海外の実機プロジェクトへの参画を官民で支援しています。

革新サプライヤチャレンジを通じた日系勢によるチーム組成の下、2023年2月には米国・ジョージア州、同年8月には米国・ニュージャージー州、2024年2月にはカナダに対し、経済産業省が主導して日系サプライヤ団を派遣しており、参加企業数は延べ30社となっています。建設計画を有する欧米のプラントメーカー等に対し、日系サプライヤの実績や技術的な強みをプレゼンする等、今後の実機プロジェクトへの参画につながる取組を実施しました。

引き続き、米国をはじめとした価値観を共有する同志国との間で、第三国展開を含め、強固で強靱な原子力サプライチェーンの構築に向けた取組を進めていきます。