第5節 その他制度・予算・税制面等における取組

〈具体的な施策〉

1.制度

(1)エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律

喫緊の課題である気候変動問題に対応していくためには、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、あらゆる主体が取組を進めることが重要です。特に、産業界においては、徹底した省エネを進めるとともに、産業界全体でカーボンニュートラルに整合的な目標を立てることで、需要サイドの事業者による非化石エネルギーの導入拡大に向けた取組を加速させていくことが重要です。

このため、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」を、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」へと改正し、2023年4月に施行されました。この法律では、需要側における非化石エネルギーへの転換に関する措置が新設され、エネルギーを使用して事業を行う者に対し、その使用するエネルギーに占める非化石エネルギーの割合の向上を求めることとしています。具体的な枠組みとして、下記の内容が挙げられます。

  • 非化石エネルギーへの転換の適切かつ有効な実施を図るため、非化石エネルギーへの転換の目標及び当該目標を達成するために取り組むべき措置に関し、事業者の判断の基準となるべき事項(以下「判断基準」という。)を定めて公表し、事業者に対して判断基準に沿った取組を求める
  • 一定規模以上の事業者(特定事業者等)に対して、非化石エネルギーへの転換の目標に関する中長期的な計画の作成及び非化石エネルギーの使用状況の定期の報告を求める
  • 必要に応じて指導・助言や、非化石エネルギーへの転換の取組状況が判断基準に照らして著しく不十分な場合には、関連する技術の水準等を勘案した上で勧告、公表を行う

なお、判断基準では、特定事業者等ごとに、非化石エネルギーの供給状況等に応じて、2030年度における非化石電気の使用割合に関する定量的な目標を設定しており、その達成に努めるものとしています。また、鉄鋼業(高炉・電炉)、化学工業(石油化学・ソーダ工業)、セメント製造業、製紙業(洋紙製造業・板紙製造業)、自動車製造業の5業種(8分野)については、非化石エネルギーへの転換の定量的な目標に関して、目安となる水準を定めています。

(2)農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再エネ法)

農山漁村再エネ法を積極的に活用し、農林地等の利用調整を適切に行いつつ、市町村や発電事業者、農林漁業者等の地域の関係者の密接な連携の下、再エネの導入とあわせて、地域の農林漁業の健全な発展に資する取組を促進しました。

(3)地域脱炭素化促進事業制度

2021年に改正された地球温暖化対策推進法において、市町村が策定する地方公共団体実行計画(区域施策編)では、地域の合意形成を図りながら、環境に適正に配慮した再エネ促進区域等を定め、地域と共生する再エネの導入を促進する地域脱炭素化促進事業制度が設けられています。2023年10月時点では、全国の計16の市町村で促進区域が設定されるとともに、環境保全と地域経済への発展等を考慮した地域脱炭素化促進事業計画の認定も始まる等、広がりを見せつつあります。

さらに、2023年4月からは、「地域脱炭素を推進するための地方公共団体実行計画制度等に関する検討会」を開催し、地域脱炭素化促進事業制度の施行状況等を踏まえ、地域共生型再エネの推進を中心に、地域脱炭素施策を加速させる地方公共団体実行計画制度等のあり方について議論を行い、同年8月にとりまとめを公表しました。このとりまとめ等も踏まえて、地域共生型再エネの導入促進に向けて、都道府県の関与強化による地域脱炭素化促進事業制度の拡充を含む「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」を2024年3月に閣議決定し、第213回国会に提出しました。

2.予算事業

(1)太陽光発電

①太陽光発電の導入可能量拡大等に向けた技術開発事業【2023年度当初:31.4億円】

太陽光発電の導入可能量の拡大に向けた技術開発や、発電設備の信頼性・安全性の確保、資源の再利用化を可能とするリサイクル技術の開発、先進的共通基盤技術の開発、系統影響を緩和する技術の開発等を実施しました。

②需要家主導太陽光発電導入促進事業費【2023年度当初:105.0億円】

FIT制度等を利用せず、特定の需要家の長期的な需要に応じて新たに太陽光発電設備を設置する者に対して、一定の条件を満たす場合の太陽光発電設備の導入に関する支援を実施しました。

③需要家主導型太陽光発電及び再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業費補助金【2023年度補正:160.0億円】

FIT制度等を利用せず、特定の需要家の長期的な需要に応じて新たに太陽光発電設備を設置する者に対して、一定の条件を満たす場合の太陽光発電設備の導入と、太陽光発電設備に併設する蓄電池の導入について、支援を実施しています。また、FIP制度の認定を受ける再エネ発電設備に併設する蓄電池の導入について、支援を実施しています。

④地域循環型エネルギーシステム構築のうち営農型太陽光発電のモデル的取組支援【2023年度当初:7.0億円の内数】

地域循環型エネルギーシステムの構築に向け、営農型太陽光発電設備下においても収益性を確保可能な作目や栽培体系、地域で最も効果的な設備の設計(遮光率や強度等)、設置場所の検討等を支援しました。

(2)風力発電

①海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用調整に必要な経費【2023年度当初:5.5億円の内数】

再エネ海域利用法における促進区域の指定に向け、2023年10月には、有望な区域として9区域、一定の準備段階に進んでいる区域として8区域を整理しました。有望な区域において、促進区域の指定基準への適合性を確認するための海域の状況調査の実施及び促進区域の指定等に関し必要な協議を行うための協議会を開催しました。

②洋上風力発電の導入拡大に向けた調査支援事業【2023年度当初:2.5億円】

産業ビジョンで掲げる、2030年までに1,000万kW、2040年までに浮体式も含む3,000万kW〜4,500万kWの案件形成の実現に向けて、計画的・継続的な案件形成及び事業実現を進めるため、国による系統暫定確保スキームの具体化に向けた検討や、これまでの実績を踏まえた案件形成に係る課題検証等を行ったほか、促進区域において洋上風力発電事業を行う者を選定するための公募における評価支援を行いました。

③洋上風力発電等の導入拡大に向けた研究開発事業【2023年度当初:44.8億円】

浮体式洋上風力発電の低コスト化を目的とした実証事業では、北九州市沖において、3MW風車を搭載したバージ型浮体(実証機)の実証運転を過年度から継続して実施し、各種メンテナンスや観測データによる設計検証等の技術開発等を行いました。着床式洋上風力発電においては、資本支出に占める割合が高い基礎・施工費の低コスト化に資する機器の設計、製作等を実施するとともに、実海域における実証試験等を行いました。

④浮体式洋上風力発電による地域の脱炭素化ビジネス促進事業【2023年度当初:3.5億円】

深い海域の多い日本における浮体式洋上風力発電の導入を加速し、脱炭素ビジネスが促進されるよう、浮体式洋上風力発電の早期普及に貢献するための情報の整理や、地域が浮体式洋上風力発電によるエネルギーの地産地消を目指すに当たって必要となる各種の調査、当該地域における事業性・CO2削減効果の見通し等の検討を行いました。

⑤洋上風力発電人材育成事業【2023年度当初:6.5億円】

民間事業者等が洋上風力発電に係る人材を育成するため、事業開発(ビジネス・ファイナンス・法務関連)、エンジニア(設計・基盤技術・データ分析関連)、専門作業員(建設・メンテナンス関連)の各分野において必要となるカリキュラムの策定や、トレーニング施設等の整備に必要な費用に対して補助を行いました。

⑥洋上風力発電の導入促進に向けた採算性分析のための基礎調査事業【2023年度当初:36.0億円】

案件形成の初期段階から政府が主導的に関与し、必要となる調査等を実施する仕組みである「セントラル方式」に基づき、洋上風力発電設備の設置に関する採算を分析するために必要となる事項の基礎調査(風況調査や海底地盤調査等)を実施しました。得られた調査データを発電事業計画の策定を行う事業者に提供することを通じて、洋上風力発電の案件形成の加速化を図ります。

(3)バイオマス発電

木質バイオマス燃料等の安定的・効率的な供給・利用システム構築支援事業【2023年度当初:7.4億円】

新たな燃料ポテンシャルの開拓に資する「エネルギーの森(燃料材生産を目的とした森林)」づくりを実現するため、気候区分ごとに様々な広葉樹・早生樹の活用方法に関する実証事業や、木質バイオマス燃料の製造・輸送システムを効率化するための実証事業を実施しました。

(4)水力発電

水力発電の導入加速化事業【2023年度当初:16.0億円】

水力発電の事業初期段階における事業者による調査・設計や、地域における共生促進に対して支援を行うことで、水力発電の新規地点の開発を促進したほか、既存設備の発電出力及び発電電力量の増加のための余力調査、工事等の事業の一部を支援しました。さらに、水力発電の導入加速に寄与することを目的に、国内外の技術情報等を調査し、最新の動向を公開しました。

(5)地熱発電・熱利用

①地熱発電の資源量調査・理解促進事業【2022年度補正:34.0億円(資源量調査のみ)、2023年度当初:102.3億円】

地熱発電は、ベースロード電源であり、日本は世界第3位の地熱資源量を有しています。一方で、資源探査段階の高いリスクやコスト、温泉事業者をはじめとする地域理解の促進といった課題があります。そこで、これらの課題を解決するために、新規地点を開拓するポテンシャル調査や、事業者が実施する初期調査、地域理解促進のための勉強会等の取組に対して支援を行いました。

②地熱資源探査出資等事業【2023年度産投:5.0億円】

JOGMECにおいて、地熱資源の蒸気噴出量を把握するための探査に対する出資や、発電に必要な井戸の掘削、発電設備の設置等に対する債務保証制度を措置し、地熱資源開発を支援しています。

③海外における地熱の探査事業に対する出資事業【2023年度当初:6.3億円】

国内での地熱開発に必要不可欠な技術やノウハウを獲得するため、海外で行われる地熱探査事業に参画する事業者に対して、出資を行う制度を創設しました。

④地熱・地中熱等導入拡大技術開発事業【2023年度当初:24.0億円】

地熱発電には、資源探査段階における高いリスクとコスト、発電段階における出力の安定化といった課題があり、これらの課題を解決するための技術開発を行いました。また、地熱発電の抜本的な拡大に向け、次世代の地熱発電(超臨界地熱発電)に関する資源量評価についての検討を行いました。

地中熱や太陽熱等の再エネ熱については、日本の最終エネルギー消費の約半分が熱需要であることから、再エネ熱の効果的な利用によって電力や燃料の消費量を抑制していくことが重要です。本事業では、再エネ熱利用システムの導入拡大に向け、設計から施工までに関わる事業者の体制を構築し、コスト低減に資する技術開発に取り組みました。

(6)系統制約克服及び調整力・慣性力確保

①再生可能エネルギーの大量導入に向けた次世代型の電力制御技術開発事業【2023年度当初:63.0億円】

再エネのさらなる導入拡大を図り、主力電源化を進めるため、ノンファーム型接続、直流送電システムの基盤技術、系統を安定させる装置やインバーターについての研究開発を支援しました。

②系統用蓄電池等の導入及び配電網合理化等を通じた再生可能エネルギー導入加速化事業

(再掲 第2章第3節 参照)

③再生可能エネルギー導入拡大に資する分散型エネルギーリソース導入支援事業

(再掲 第2章第3節 参照)

④福島県における再生可能エネルギーの導入促進のための支援事業費補助金【2023年度当初:52.0億円】

阿武隈山地や福島県沿岸部における再エネ導入拡大のための共用送電線の整備及び風力等の発電設備やそれに付帯する送電線等の導入を支援するとともに、「福島再生可能エネルギー研究所(FREA)」の再エネに係る拠点としての機能強化等を実施しました。

(7)その他

①地域脱炭素移行・再エネ推進交付金【2023年度当初:350.0億円、2023年度補正:135.0億円】

地域脱炭素に意欲的に取り組む地方公共団体等に対して、複数年度にわたり継続的かつ包括的に支援するスキームで、少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」の実現に向けて、地域特性等に応じた先行的な取組を支援するとともに、全国で実施すべき脱炭素の基盤となる技術の複合的な導入を目指す重点対策への支援を行いました。

②地域脱炭素実現に向けた再エネの最大限導入のための計画づくり支援事業【2023年度当初:8.0億円、2023年度補正:18.9億円】

地方公共団体等による地域再エネ導入の目標設定、意欲的な脱炭素の取組に関する計画策定、再エネ促進区域の設定等に向けたゾーニング、公共施設等への太陽光発電設備等の再エネの導入調査、官民連携で行う地域再エネ事業の実施・運営体制の構築、事業の持続性向上のための地域人材の確保・育成に関する支援等の事業を実施しました。

③地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共施設への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業【2023年度当初:20.0億円、2023年度補正:20.0億円】

地域防災計画により災害時に避難施設等として位置づけられた公共施設や、業務継続計画により災害等発生時に業務を維持すべき施設における平時の脱炭素化に加え、災害時にもエネルギー供給等の機能の発揮を可能とする再エネ設備等の導入支援等を行いました。

④地域資源活用展開支援事業【2023年度当初:7.0億円の内数】

地域資源を活用した再エネ導入の検討開始から発電までの各段階における課題解決のため、農林漁業者や市町村からの問い合わせに対してワンストップで受付・対応する相談窓口の設置、現場のニーズに応じた専門家の派遣等や、バイオマス産業都市等におけるバイオマス利活用の促進、普及に向けた人材育成のための研修会の開催、情報発信ツールの整備、国産バイオマスのフル活用に向けた賦存量・用途の調査等を支援しました。

⑤戦略的創造研究推進事業 先端的カーボンニュートラル技術開発(ALCA-Next)【2023年度当初:10.0億円】

2050年カーボンニュートラル実現等への貢献を目指し、従来の延長線上にない、非連続なイノベーションをもたらす革新的技術を創出するため、重要となる技術領域を複数設定した上で、幅広いチャレンジングな提案を募り、大学等における基礎研究の推進により、様々な技術シーズを育成する探索型の研究開発を推進しました。

⑥未来社会創造事業(「地球規模課題である低炭素社会の実現」領域)【2023年度当初:12.5億円】

2050年の社会実装を目指し、温室効果ガスの大幅削減に資する革新的技術の研究開発を推進しました。

⑦新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業【2023年度当初:17.8億円】

太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス、太陽熱・雪氷熱・未利用熱、燃料電池・蓄電池、エネルギーマネジメントシステム等における、中小・ベンチャー企業が有する潜在的技術シーズを発掘し、その開発及び実用化を支援しました。

⑧下水道革新的技術実証事業【2023年度当初:773.0億円の内数】

下水道事業における省エネで安定的な水処理技術等の導入を促進するため、AI制御による運転操作技術の実証を実施しました。

⑨地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業【2023年度当初:49.8億円の内数】

既存建築物のZEB化の普及拡大のため、高意匠・高性能な建材一体型太陽光発電システムの開発を実施しました。また、出力変動の大きい再エネ由来電力を電源として活用するため、資源として豊富に存在し、安全で安定的に保存可能な亜鉛をエネルギー貯蔵媒体として用いるフロー型亜鉛空気電池技術の開発を実施しました。さらに、園芸施設における気密性と環境制御の精度を向上させた「セミクローズド・パイプハウス」に、電気ヒートポンプ冷暖房及び植物生体情報計測技術を連携させた環境制御システムを開発し、CO2の削減と生産性向上を同時に達成するために必要な技術開発・実証等を実施しました。

⑩民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業【2022年度補正:90.0億円の内数、2023年度当初:42.6億円の内数】

屋根や駐車場を活用した自家消費型の太陽光発電や蓄電池の導入等による再エネ供給側の取組及び変動性再エネを効率的に活用するための調整力の向上等による需要側での取組に対し、支援を行いました。

⑪国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費

(再掲 第2章第1節 参照)

⑫環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進【2023年度当初:687.2億円の内数、2023年度補正:1,558.1億円の内数】

気候変動問題への対応が喫緊の課題となっている中、文部科学省、農林水産省、国土交通省、環境省が連携協力して、環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備を推進しており、文部科学省では、公立学校施設のZEB化に係る断熱性確保等の省エネ化や再エネ設備等の導入費用の一部を補助しました。

⑬脱炭素社会の構築に向けたESGリース促進事業【2023年度当初:13.3億円】

中小企業等が、脱炭素機器をリースにより導入する際に、総リース料の一部を助成しました。

⑭新エネルギー等の導入促進のための広報等事業委託費【2023年度当初:6.5億円】

再エネの普及の意義やFIT・FIP制度の内容について、展示会への出展、パンフレットの作成、Webサイト等の活用等を通じ、発電事業者をはじめとする幅広い層に対して周知徹底を図るとともに、地域密着型の再エネ発電事業の事業化に向けて、各種支援施策の紹介や許認可手続の案内等の支援を実施しました。また、FIT・FIP制度等の再エネ関連制度に係る周知等の情報提供等も行いました。

⑮脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業【2023年度当初:34.0億円の内数】

地域の再エネ、蓄電池及び各地域に敷設した自営線によって、地産エネルギーを直接供給する等により、地域の再エネ自給率を最大化させるとともに、防災性も兼ね備えた地域づくりを行う事業に対し、支援を行いました。

⑯分散型エネルギーインフラプロジェクト【2023年度当初:5.8億円の内数】

地方公共団体を核として、需要家や地域エネルギー会社、金融機関等、地域の総力を挙げて、バイオマスや廃棄物等の地域資源を活用した地域エネルギー事業を立ち上げる地方公共団体のマスタープラン策定を支援するとともに、関係省庁と連携して総務省に事業化ワンストップ窓口を設置し、マスタープランの策定から事業化までアドバイス等を実施しました。

⑰再エネ調達市場価格変動保険加入支援事業費補助金【2023年度当初:3.0億円】

地域における再エネの導入を促進するため、地域新電力等の小売電気事業者が、FIT制度の支援を受けた再エネ電気を調達する際の市場価格変動リスクに対応する民間保険に加入した場合の保険料の一部を支援しました。

3.税制

(1)再生可能エネルギー発電設備に係る固定資産税の特例措置【税制】

FIT制度の認定を受けた再エネ発電設備(太陽光発電設備については、自家消費型補助金の交付を受けて取得したもの)を取得した場合、固定資産税を3年間にわたって軽減する措置を講じました。2024年度税制改正において、太陽光発電設備に係る適用の対象をペロブスカイト太陽電池を使用した一定の設備又は地球温暖化対策推進法に規定する「認定地域脱炭素化促進事業計画」に従って取得した一定の設備とする見直し等を行った上で、本措置の適用期限を2026年3月31日まで、2年間延長しています。

(2)バイオ燃料製造設備に係る固定資産税の軽減措置【税制】

農林漁業由来のバイオマスを活用した国産バイオ燃料の生産拡大を図るため、「農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律(平成20年法律第45号)」に基づく生産製造連携事業計画に従って新設されたバイオ燃料製造設備に係る固定資産税の課税標準額を、3年間にわたり、ガス製造設備に係る課税標準を価格の2分の1、エタノール、脂肪酸メチルエステル(ディーゼル燃料)の製造設備に係る課税標準を価格の3分の2、木質固形燃料製造設備に係る課税標準を価格の4分の3に軽減する措置を講じました(2026年3月31日までの間)。

(3)バイオ由来燃料税制の整備及び施行【税制】

バイオエタノール等を混和して製造した揮発油については、これまでガソリン税(揮発油税及び地方揮発油税)の課税標準(混和後の揮発油の数量)から混和されたエタノールの数量を控除する措置を講じており、2023年度税制改正において、本措置の適用期限を2028年3月31日まで、5年間延長しています。

4.財政投融資

(1)環境・エネルギー対策資金(非化石エネルギー関連設備)

再エネ発電設備・熱利用設備を導入する際に必要となる資金を、日本政策金融公庫から中小企業や個人事業主向けに低利で貸し付けることができる措置を講じました。

(2)株式会社脱炭素化支援機構による資金供給

(再掲 第2章第1節 参照)

5.その他の取組

(1)再生可能エネルギー推進に向けた規制・制度見直し

2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けて、再エネに係る規制・制度の見直しも本格的に検討が開始されています。2023年度の進捗として、例えば、再エネの主力電源化に向けては、系統制約の解消が必要であることから、基幹系統における再給電方式(一定の順序)を開始しました。再給電方式(一定の順序)は、混雑系統に接続される調整電源だけでなく、調整電源以外の電源も対象として、発電コストの安い順(メリットオーダー)に基づき、出力制御するものです。

また、再エネ価値取引市場等から調達するトラッキング付非化石証書について、2023年8月に開催されたオークションから、需要家等が運転開始から15年以内の設備を選択してトラッキング情報を割り当てることができる制度に変更しました。

(2)再生可能エネルギーに係る環境影響評価に関する総合的な取組

再エネの最大限の導入を円滑に進めるためには、環境への適正な配慮と地域との対話プロセスが不可欠であり、環境影響評価制度の重要性は高まっています。

陸上風力発電所については、「規制改革実施計画」において、立地地域の環境特性を踏まえた効果的・効率的なアセスメントのあり方について、「迅速に検討・結論を得る」とされたことを受け、2023年3月にとりまとめた枠組みについて、有識者等へのヒアリングを行う等、制度の実現に向けた検討を行いました。2024年度も、適正な環境配慮を確保しつつ、地域共生型の事業を推進する観点から、環境影響の程度に応じて環境影響評価手続を振り分けること等を可能とする新制度の検討を進めていきます。

また、質の高い環境影響評価を効率的に進めるために、環境省において、地域の環境基礎情報を収録した「環境アセスメントデータベース”EADAS(イーダス)”」について、情報の拡充や更新を行いました。

(3)バイオマス活用推進基本計画

「バイオマス活用推進基本法(平成21年法律第52号)」に基づき、2022年9月に閣議決定された「バイオマス活用推進基本計画」では、農山漁村だけでなく、都市部も含めた地域主体のバイオマスの総合的な利用を推進し、製品・エネルギー産業の市場のうち、一定のシェアを国産バイオマス産業で獲得することを目指すこととしており、「バイオマス年間産出量の約80%を利用」、「全都道府県でバイオマス活用推進計画を策定・全市町村がバイオマス関連計画を活用」、「製品・エネルギー産業のうち国産バイオマス関連産業での市場シェアを2倍(1%→2%)に伸長」を2030年度目標として設定しています。

この目標達成に向け、「バイオマスの活用に必要な基盤の整備」、「バイオマス又はバイオマス製品等を供給する事業の創出等」、「バイオマス製品等の利用の促進」等を推進していきます。

(4)バイオマス産業都市の構築

2012年9月に、関係7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)が共同でとりまとめた「バイオマス事業化戦略」においては、地域のバイオマスを活用したグリーン産業の創出と地域循環型エネルギーシステムの構築に向けたバイオマス産業都市の構築を推進することとされており、2023年度までに103市町村をバイオマス産業都市として選定しました。

(5)FIT・FIP制度におけるバイオマス燃料の持続可能性

バイオマス発電の安定的な運営には、燃料を長期にわたって安定的に調達することが重要であるため、FIT・FIP制度におけるバイオマス燃料の持続可能性について、第三者認証等による確認を2017年度から順次進め、これまで持続可能性の確認項目の整理を行ってきたところです。

さらに、2023年度からは、ライフサイクルを通じた温室効果ガス排出量の基準の整理を行い、制度の運用を開始しました。

(6)みどりの食料システム戦略の推進

食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるため、農林水産省において策定した「みどりの食料システム戦略」に基づき、農山漁村に適した地産地消型エネルギーシステムの構築や、その一環として、バイオマス等の国内の地域資源や未利用資源の活用を促進していくこととしています。また、本戦略の実現に向け、「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律(令和4年法律第37号)」に基づき、農林漁業における再エネの活用等に取り組む生産者の認定や、地域ぐるみで再エネを活用した温室効果ガスの排出量削減等の環境負荷低減に取り組む特定区域の設定が進められています。

(7)地域の魅力と質を向上させる地方創生に資する地域脱炭素の推進

(再掲 第2章第1節 参照)