第1節 各部門における省エネルギーの取組

1.業務・家庭部門における省エネルギーの取組

業務・家庭部門は、産業部門と比べると、支出全体に占めるエネルギーコストの割合が小さく、省エネによる金銭的メリットが必ずしも多くないこと等から、需要家にとっては省エネを推進するインセンティブが弱く、省エネが進みにくい部門です。そのため、「トップランナー制度」により、自動車や家電等のエネルギー消費機器や、断熱材や複層ガラス、サッシ等の建材の高効率化・高性能化を製造事業者や輸入事業者に対して求めるとともに、エネルギー消費効率の表示等によって高効率製品の普及を促進することで、省エネを一層推進しています。

また、住宅・建築物の外皮(壁・窓等)の高断熱化を進めることは、空調をはじめとしたエネルギー消費機器の効率の向上につながります。さらに、住宅の高断熱化は省エネのみならず、高血圧症等からの健康の改善や、ヒートショックリスクの低減等にも効果的であることが注目されています。このように、省エネだけでなく健康にも寄与する住宅の断熱化を進めるため、「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律(平成27年法律第53号)」(以下「建築物省エネ法」という。)に基づき、新築時の断熱化を含む省エネ基準への適合を施主に対して求めるとともに、予算や税を通じた省エネ住宅・建築物の普及拡大支援を進めています。

〈具体的な主要施策〉

(1)省エネ法に基づくベンチマーク制度による業務部門の省エネの推進

省エネ法では、工場・事業場の設置者に対し、省エネの取組を実施する際の目安となるべき判断基準(設備管理の基準やエネルギー消費効率の改善目標(中長期的に見て年平均1%以上低減)等)を示すとともに、一定規模以上の事業者(年度で原油換算1,500kl以上のエネルギーを使用する事業者として経済産業大臣が指定する「特定事業者」、「特定連鎖化事業者」及び「認定管理統括事業者」のことを指し、2023年7月末時点で約12,000者を指定)には、エネルギーの使用状況等の報告を求め、省エネの取組が不十分な場合には指導・助言等を行っています。

また、既に省エネの取組を進めてきた事業者の省エネの状況を踏まえ、エネルギー消費効率を中長期的に見て年平均で1%以上低減していくこととは別に、業種・分野別に中長期的に目指すべき水準(ベンチマーク:業種ごとに上位1〜2割の事業者が達成しているエネルギー消費効率のこと)を設定し、その達成を促す「ベンチマーク制度」を、2009年度から導入しています。

ベンチマーク制度については、2016年度からコンビニエンスストア業が、2017年度からホテル業及び百貨店業が、2018年度から食料品スーパー業、貸事務所業及びショッピングセンター業が、2019年度から大学、パチンコホール業及び国家公務が対象業種に加わっており、産業・業務部門におけるエネルギー消費の7割をカバーしています。2021年度には、国家公務のベンチマークにおいて、事業者の省エネの取組を適切に評価するために指標・目標値の見直しを行うとともに、データセンター業をベンチマーク対象業種としました。

(2)省エネ法に基づくトップランナー制度による機器・建材の効率・性能改善

省エネ法に基づくトップランナー制度を通じて、製造事業者及び輸入事業者に対し、機器・建材の効率・性能改善を促した結果、多くの機器・建材において、基準の策定当初の見込みを上回る効率・性能改善が達成されています。

トップランナー制度については、個別機器・建材のさらなる効率・性能改善を図るため、基準の見直し等について検討を行っています。具体的には、断熱材のうちグラスウールと押出法ポリスチレンフォームについて、2030年以降に新築される住宅・建築物に求められる省エネ性能を踏まえ、2030年度に求められる熱損失防止性能として新たな目標基準値を検討し、2022年10月にとりまとめました。また、2023年10月には、事業用変圧器の新たな省エネ基準を策定しました。

なお、トップランナー制度の対象機器等は、2024年3月時点で、32品目(うち3品目は建材)となっています。

(3)省エネ機器に関する情報提供

家電製品やガス石油機器等について、省エネ機器のさらなる普及を促進すべく、小売事業者表示制度(省エネルギーラベル1及び統一省エネルギーラベル2)を活用し、消費者に対して省エネ情報の提供を行いました。制度をより効果的に実施するため、家電製品や機器のデータの整理を行うとともに、小売事業者等が容易に各機器のラベルを表示・印刷できるウェブサイト(省エネ型製品情報サイト)を運営しています。

(4)業務・家庭部門における省エネを促進するための情報提供事業

省エネへの理解や関心度を高めることによって省エネ行動を促し、業務・家庭部門における省エネを促進することを目的に、一般消費者及び事業者等に対して、省エネに関する客観的な情報や省エネ対策事例等の情報を提供しました。

具体的には、夏季・冬季における省エネの呼びかけ、家庭や企業で実践できる効果的な省エネ行動をまとめた「省エネ・節電メニュー」の作成・周知、省エネ関連のイベント・メディア等を活用した省エネ施策の紹介や省エネ機器・省エネ支援サービスの周知等、省エネに関する情報提供を行いました。

(5)ZEB・ZEHの実現・普及に向けた支援 【2023年度当初:68.0億円の内数(経済産業省)、278.2億円の内数(国土交通省)、58.9億円の内数(ZEB:環境省)、100.0億円の内数(ZEH:環境省)、2023年度補正:61.7億円(ZEB:環境省)、111.0億円(脱炭素ビルリノベ事業:環境省)】

「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」(以下「ZEB」という。)、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」(以下「ZEH」という。)とは、大幅な省エネを実現した上で、太陽光発電等の再エネにより、年間で消費する一次エネルギー量を正味でゼロとすることを目指した建築物及び住宅のことです。省エネと快適性を両立させるとともに、業務・家庭部門におけるエネルギー消費の抜本的改善に資するものと期待されています。

建築物に関しては、2030年度以降に新築される建築物について、ZEB基準の水準の省エネ性能の確保を目指すとする政府目標の達成に向けて、ZEBを推進する設計事務所や建築業者、オーナーの発掘・育成や、さらなるZEBの普及促進等を図っています。経済産業省では、エネルギー消費量が大きい大規模な建築物を対象として、省エネ効果が期待されているものの、現行のエネルギー消費性能の計算プログラムでは評価できない先進的な技術の導入によるZEB化の実証を行いました。また、環境省では、特に災害時に自立的なエネルギー供給が可能となるレジリエンス強化型ZEBや、既存建築物のZEB化改修に注力し、民間建築物や地方公共団体が所有する建築物におけるZEBのさらなる普及拡大を支援するとともに、既存の建築物(オフィス、教育施設、商業施設等)がストック平均でZEB基準の水準の省エネ性能に達するために、空調、照明及び断熱材等の導入を一体的に実施する省エネ改修に対する支援事業(脱炭素ビルリノベ事業)を創設しました。引き続き両省で連携しながら、ZEBの市場拡大及び自立的普及に向けた取組を進めていきます。

住宅に関しては、2030年度以降に新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネ性能の確保を目指すとする政府目標に向けて、経済産業省では、再エネ等のさらなる自家消費拡大を目指した次世代ZEH+(ゼッチ・プラス)や、21層以上の集合住宅におけるZEH-M(ゼッチ・マンション)の実証を支援しました。国土交通省では、中小工務店等が連携して建築するZEHへの支援を、環境省では、ZEH、ZEH+及び20層以下の集合住宅におけるZEH-Mのさらなる普及に向けた支援を実施しました。引き続き3省で連携しながら、ZEHの市場拡大及び自立的普及に向けた取組を進めていきます。

(6)高性能建材等の実証・普及に向けた支援 【2023年度当初:68.0億円の内数(経済産業省)、100.0億円の内数(環境省)、2023年度補正:13.9億円(環境省)】

既存住宅の断熱・省エネ性能の向上を図るため、経済産業省においては、工期短縮が可能な高性能断熱建材や蓄熱、調湿等の付加価値を有する省エネ建材の導入の実証を支援しました。また、環境省においては、高性能建材による戸建住宅及び集合住宅の断熱リフォーム支援事業を実施し、断熱改修の一層の普及を支援しました。

(7)3省連携による住宅の省エネリフォームへの支援強化 【2023年度補正:580.0億円(給湯省エネ2024事業:経済産業省)、185.0億円(賃貸集合給湯省エネ2024事業:経済産業省)、2,100.0億円の内数(子育てエコホーム支援事業:国土交通省)、1,350.0億円(先進的窓リノベ2024事業:環境省)】

住宅内の熱の多くが失われている窓の断熱改修と、家庭部門における最大のエネルギー消費源である給湯器の効率化等を促進するため、経済産業省・国土交通省・環境省が連携した住宅省エネ化支援制度について、予算規模を拡大した上で継続するとともに、給湯器に関しては賃貸集合住宅向けの支援事業を創設しました。

(8)住宅・建築物の省エネ基準への適合の確保

住宅以外の一定規模以上の建築物に対する建築物エネルギー消費性能基準(省エネ基準)への適合義務の創設や、建築物エネルギー消費性能向上計画の認定制度の創設等の措置を講ずる建築物省エネ法が、2015年7月に公布され、2017年4月に全面施行されました。

その後、住宅・建築物の省エネ性能の一層の向上を図るため、省エネ基準への適合義務の対象を全ての新築住宅・建築物へ拡大することや、住宅トップランナー制度の対象に分譲マンションを追加すること等を内容とする「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)」が、2022年6月に公布されました。この建築物省エネ法の改正を踏まえ、2023年9月には「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する基本的な方針」や、「建築物のエネルギー消費性能に関し販売事業者等が表示すべき事項及び表示の方法その他建築物のエネルギー消費性能の表示に際して販売事業者等が遵守すべき事項」が公布され、2024年4月に施行されました。また、改正された建築物省エネ法の円滑な施行に向け、住宅・建築物の関連事業者等に対して、全国各地域で改正内容等についての講習会を実施しました。

(9)環境・ストック活用推進事業 【2023年度当初:56.0億円】

住宅・建築物の省エネ対策を促進するため、先導的な省CO2技術を導入する住宅・建築物リーディングプロジェクト、建築物の省エネ改修及び住宅・建築物の省エネ性能に係る診断・表示、複数の住宅・建築物の連携により高い省エネ性能を実現するプロジェクト等に対して支援を行いました。

(10)住宅に係る省エネルギー改修税制【税制】

既存住宅において一定の省エネ改修(高断熱窓への取替や内窓の新設等)を行った場合で、当該改修に要した費用が一定額以上のものについては、所得税の税額控除及び固定資産税の特例措置が講じられています。これらの特例措置については、「令和6年度税制改正の大綱」を踏まえた租税特別措置法及び地方税法の改正に基づき、適用期限が2年間延長されました。

(11)優良住宅整備促進等事業 【2023年度当初:236.2億円の内数】

住宅金融支援機構が行う証券化支援事業の枠組みを活用し、ZEH等の省エネ性能に優れた住宅を取得する際の融資金利の引き下げを行う【フラット35】Sを実施しました。

(12)住宅性能表示制度等の効果的運用

住宅の性能について、消費者等の選択を支援するため、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)」に基づき、省エネ性能を含む住宅の性能をわかりやすく表示する「住宅性能表示制度」の普及に加え、建築物を室内等の環境品質・性能の向上と省エネ等の環境負荷の低減という両面から総合的に評価し、わかりやすく表示するシステムである「建築環境総合性能評価システム(CASBEE)」の開発及びその普及を推進しました。

また、省エネ性能が市場において適切に評価されるよう、建築物省エネ法に基づき、建築物の販売・賃貸時における省エネ性能の表示を推進しています。2022年6月の建築物省エネ法の改正により、販売・賃貸事業者に対して、告示に規定する省エネラベルを用いて表示するよう努力義務を課すとともに、告示に従っていない場合の勧告等の措置を追加する等、制度を強化しました。2023年9月には本制度の告示・ガイドラインを公布・公表し、2024年4月から本制度が施行されています。

(13)低炭素住宅・建築物の認定

「都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)」に基づき、省エネ基準より高い省エネ性能を有し、低炭素化に資する措置等が一定以上講じられている認定低炭素建築物の普及促進を図りました。2022年10月には認定基準を改正し、求める省エネ性能をZEH・ZEB水準に引き上げました。

(14)ライフスタイルの変革による脱炭素社会の構築事業 【2023年度当初:6.0億円の内数】

2050年カーボンニュートラル及び2030年度の削減目標の実現に向けて、国民・消費者の行動変容やライフスタイル転換を促すため、環境省では、2022年10月に「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)を開始しました。「デコ活」とは、CO2を減らす脱炭素(Decarbonization)の「DE」と、環境に良い「エコ(ECO)」を含む「デコ」と、活動・生活の「活」を組み合わせた新しい言葉です。

また、デコ活の開始と同時に発足したデコ活応援団(官民連携協議会)には、1,200者を超える自治体、企業、団体等が参画しており、このデコ活応援団とともに、国民・消費者の豊かな暮らしを後押しするための官民連携プロジェクトを組成・実施・検討しました。2024年3月末時点では、100以上の官民連携プロジェクトの組成・実施・検討が進んでいます。

さらに、国民の暮らしを豊かにより良くする具体的な取組として、省エネに関連するアクションを含めた計13の「デコ活アクション」を決定したほか、組織(企業・自治体・団体)、個人単位で「デコ活宣言」の呼びかけを行う等、「デコ活」の普及・浸透を図りました。2024年3月末時点では、計1,977件(国・自治体:249件、企業:585件、各種団体:163件、個人:980件)のデコ活宣言がなされています。

(15)エネルギー小売事業者の省エネガイドラインの検討

一般消費者が家庭において適切に省エネを進めることができるようにするため、省エネ法では、エネルギー供給事業者に対して、一般消費者へ省エネに資する情報を提供するよう努力義務を求めています。2016年4月からは電力、2017年4月からは都市ガスの小売全面自由化が始まったことで、エネルギー供給事業者がより多様なサービスを提供するようになっており、家庭におけるエネルギーの使用状況も大きく変化しています。そのため、エネルギー小売事業者に対して、省エネ等の情報の提供に関する指針やガイドラインを提示しています。

2020年度には、一般消費者へのアンケート調査等も実施し、省エネ行動をより一層促すための情報提供のあり方について議論を行いました。また、2022年度からは、エネルギー小売事業者の省エネ等の情報提供の取組状況を評価して公表する「省エネコミュニケーション・ランキング制度」の本格運用を開始しました。

さらに、2023年4月に改正省エネ法が施行されたことを受け、同年6月には指針・ガイドラインを改正し、エネルギー小売事業者に対して、一般消費者の非化石エネルギーへの転換及び電気の需要の最適化に資する情報提供の実施に関する事項を定めました。あわせて、省エネコミュニケーション・ランキング制度においても、これらの取組を評価するために評価項目の見直しを実施しました。

(16)ナッジ×デジタルによる脱炭素型ライフスタイル転換促進事業 【2023年度当初:18.0億円】

①ナッジ等の行動科学の知見とAI/IoT等の先端技術の組み合わせ(BI-Tech)

行動科学の理論に基づくアプローチ(ナッジ(nudge:そっと後押しする)等)により、国民ひとりひとりの行動変容を、情報発信等を通じて直接促進し、ライフスタイルの自発的な変革・イノベーションを創出する、費用対効果が高く、対象者にとって自由度のある新たな政策手法を検証しています。具体的には、デジタル技術により、エネルギーの使用実態や環境配慮行動の実施状況等を客観的に収集、解析し、ナッジ等の行動科学の知見とAI/IoT等の先端技術を組み合わせた「BI-Tech」により、ひとりひとりに合った快適でエコなライフスタイルを提案することで、脱炭素に向けた行動変容を促しています。

例えば、電気やガスの使用量や、自家用車や公共交通機関での移動距離等に基づいて個人のカーボンフットプリントが表示されるスマートフォン等のアプリケーションシステムを開発し、日々の環境配慮行動の実践を促したところ、予備的な実証実験では、カーボンフットプリントの表示のみでは効果が見られなかったのに対し、環境配慮行動の実施数についての目標を設定し、その達成状況を表示することで、環境配慮行動の実践度合いが統計的有意に向上することが実証されました。また、環境配慮行動の実施数に応じて金銭的価値のあるポイントを付与することにより、さらに効果が高まることも実証されました。

②日本版ナッジ・ユニット

ナッジを含む行動科学の知見に基づく取組が早期に社会実装され、自立的に普及することを目標に、2017年4月より、環境省のイニシアティブの下、産学政官民連携による日本版ナッジ・ユニット「BEST」を発足しています。2024年3月までに計32回の連絡会議を開催し、行動科学に関する関係府省、地方公共団体及び民間事業者等の取組や、エビデンス(科学的根拠)に基づく政策立案(EBPM:Evidence Based Policy Making)、様々な分野の社会課題の解決に対して行動科学の知見を用いた取組等について議論しています。また、活動の1つとして、ナッジ等の行動科学の理論・知見を活用した幅広い分野の社会・行政の課題解決に向けた取組を表彰する「ベストナッジ賞」コンテストを継続的に実施しており、2023年度には、従来の一般部門に加え、高等学校部門を新設しました。

2.運輸部門における省エネルギーの取組

運輸部門は、「第6次エネルギー基本計画」において最も大きな省エネ量を見込んでいる部門です。2030年度のエネルギーミックスにおける省エネの見通しを確実なものとするためには、乗用車やトラック等の輸送機器単体のエネルギー消費効率の改善を進めるとともに、貨物輸送事業者や貨物を貨物輸送事業者に輸送させる者(以下「荷主」という。)等がAI/IoT等の技術を活用して連携し、省エネを推進していく必要があります。

〈具体的な主要施策〉

(1)自動車の燃費基準

乗用車・トラック等の燃費改善については、省エネ法に基づくトップランナー制度(自動車メーカー等に対し、目標年度までに販売車両の平均燃費値を基準値以上にすること等を求める制度)による規制と、エコカー減税等の支援策の実施により、トップランナー制度の基準策定当初の見込みを上回って進展し、特に乗用車の燃費は大幅に改善してきました。この結果、ガソリン乗用車の平均燃費は、2022年度には19.4km/L(WLTCモード)まで改善しました。さらなる燃費向上を進めるため、2030年度を目標年度とする野心的な燃費基準を定め、その遵守に向けて執行を強化していきます。

(2)自動車重量税の軽減措置【税制】

2023年度税制改正において、自動車重量税のエコカー減税については、半導体不足等の状況を踏まえ、異例の措置として、現行制度を2023年12月末まで維持した上で、電動車の一層の普及促進を図る観点から、2024年1月からは、減免区分の基準となる燃費基準の達成度を段階的に引き上げ、現行制度を維持する期間を含めて、適用期限を3年延長することとなりました(2026年4月末まで)。クリーンディーゼル車の取扱いについても、2023年12月末までは現行制度を維持し、2024年1月以降はガソリン車と同等に取扱うこととなりました。

(3)自動車税・軽自動車税の減免措置【税制】

2023年度税制改正において、自動車税及び軽自動車税の環境性能割については、半導体不足等の状況を踏まえ、現行の税率区分を2023年12月末まで維持することとなりました。その上で、電動車の一層の普及促進を図る観点から、税率区分の基準となる燃費基準の達成度を段階的に引き上げるとともに、次回の見直しは3年後(2025年度末)とされました。クリーンディーゼル車の取扱いについても、2023年12月末までは現行制度を維持し、2024年1月以降はガソリン車と同等に取扱うこととなりました。

また、自動車税及び軽自動車税の種別割のグリーン化特例については、環境性能割の税率区分の次回の見直し期限等も勘案し、3年延長することとなりました。

(4)クリーンエネルギー自動車導入促進補助金 【2022年度補正:700.0億円、2023年度当初:200.0億円、2023年度補正:1,291.0億円】

2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、環境性能に優れた電気自動車やプラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車といったクリーンエネルギー自動車の普及が重要です。また、国内市場における車両の普及をてこにしながら、自動車産業の競争力を強化し、海外市場を獲得していくことも重要です。クリーンエネルギー自動車の購入費を支援し、国内市場における車両の普及を促進することで、CO2排出削減と産業競争力強化を図りました。

(5)クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金 【2022年度補正:200.0億円、2023年度当初:100.0億円、2023年度補正:400.0億円】

クリーンエネルギー自動車の普及のためには、車両と表裏一体にある充電・水素充てんインフラの整備を進めることが重要です。このため、充電設備の購入費及び工事費や、水素ステーションの整備費及び運営費を支援しました。さらに、災害による停電等の発生時において、電動車は非常用電源として活用可能であることから、電動車から電気を取り出すための外部給電機能を有するV2H充放電設備や外部給電器の導入を支援しました。

(6)商用車の電動化促進事業 【2023年度当初:136.0億円】

2050年カーボンニュートラルの実現及び2030年度の温室効果ガス削減目標の達成に向け、運輸部門におけるCO2排出量の約4割を占める商用車のうち、トラック及びタクシーの電動化を支援しました。

(7)スマートモビリティ社会の構築 【グリーンイノベーション基金:国費負担上限1,130.0億円】

運輸部門におけるカーボンニュートラルの実現に向けて、商用電動車の普及を推進する目的で、委託事業においては、様々な業態の商用車の走行データや外部環境データを連携し、充電・充てんインフラ整備最適化や社会全体での最適化の取組を目指したシステムの開発を進め、助成事業においては、電動車を順次導入開始し、運行とエネルギー利用の最適化を行うシステムの開発を進めました。

(8)脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業 【2023年度当初:34.0億円】

新たなライフスタイルにあわせた電動モビリティのシェアリングサービスを活用した脱炭素型地域交通モデル構築に対する補助や、地域再エネや蓄電池等を活用した再エネ自給率最大化と防災向上の同時実現を図る自立・分散型エネルギーシステム構築に対する補助を行いました。

(9)道路におけるカーボンニュートラルの取組

道路交通渋滞を緩和し、道路交通の円滑化を図るため、バイパス・環状道路の整備や交差点の改良等の交通容量の拡大策等に加えて、既存ネットワークの輸送効率を向上させるために、情報提供の充実等の交通量の時間的・空間的平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)を推進しました。また、道路照明灯の新設及び既設の高圧ナトリウム灯等の更新に当たり、省エネ対策や環境負荷の低減に資するLED道路照明灯の整備を実施するとともに、センサー技術の活用等による道路照明の高度化の開発及び導入を推進しました。

(10)自動走行の実現に向けた取組の推進

車両の効率的な走行を可能とする自動走行技術の社会実装を実現し、世界に先駆けて省エネを推進するため、自動運転レベル4等の先進モビリティサービスの普及に向けて、研究開発から実証実験、社会実装まで一貫した取組を行うプロジェクトを、2021年度より開始し、2023年度は、鉄道廃線跡等における遠隔監視のみによる自動運転移動サービスの開始を実現する等の取組を着実に進めました。

(11)道路交通情報提供事業の推進

交通管制システム等で収集した道路交通情報を積極的に提供することに加え、民間事業者が行う道路交通情報提供サービスの多様化・高度化を支援することにより、渋滞緩和及び環境負荷低減を図りました。

(12)違法駐車対策の推進

都市における円滑な交通流を阻害している違法駐車を防止及び排除するため、駐車規制の見直しや、地域の実態に応じた取締り活動ガイドラインに基づく取締り等による駐車対策を推進しました。

(13)交通安全施設等の整備 【2023年度当初:178.5億円】

交通管制システムの高度化及び信号機の改良等を推進し、交差点における発進・停止回数を減少させること等により、道路交通の円滑化等を図るとともに、消費電力が電球式の約6分の1以下であるLED式信号機の整備を推進しました。

(14)モーダルシフト、物流の効率化等

鉄道・内航海運等のエネルギー消費効率が優れた輸送機関の活用を進めるため、「モーダルシフト等推進事業」において、荷主企業と物流事業者が協力して行う事業への支援を実施するとともに、「グリーン物流パートナーシップ会議」においては、荷主企業や物流事業者等の関係者の連携による物流分野における環境負荷の低減や物流の生産性向上等、持続可能な物流体系の構築に資する優れた取組を行った事業者に対して、表彰を行いました。あわせて、貨物輸送における環境にやさしい鉄道・海運の利用促進を図ることを目的とした「エコレールマーク」・「エコシップマーク」の普及等により、モーダルシフトを推進しました。また、鉄道・内航海運へのモーダルシフトを強力に促進するため、輸送力を強化できるよう、輸送需要が高まることが見込まれる貨物駅において施設整備への支援を実施したほか、フェリー・RORO船ターミナルの機能強化を進めました。さらに、中長距離フェリー及びRORO船のトラック輸送に係る積載率の動向を調査し、その結果を公表しました。

また、物流の効率化に資するよう、ダブル連結トラックの導入促進、国際物流に対応した道路ネットワークの整備、国際コンテナ戦略港湾政策の推進、国際バルク戦略港湾における大型船が入港可能な港湾施設の整備や企業間連携による共同輸送の促進、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成17年法律第85号)」による支援等を通じて、効率的な物流体系の構築を推進しました。

(15)カーボンニュートラルポートの形成

日本の港湾や産業の競争力強化と脱炭素社会の実現に貢献するため、港湾において、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や水素・アンモニア等の受入環境の整備等を図るカーボンニュートラルポート(以下「CNP」という。)の形成を推進しています。「港湾法(昭和25年法律第218号)」に基づき港湾管理者が作成する「港湾脱炭素化推進計画」について、計画の作成に対する補助、助言等による支援を行いました。また、横浜港・神戸港において水素を燃料とする荷役機械の現地実証の準備に着手したほか、LNGバンカリング拠点の整備、停泊中船舶に陸上電力を供給する設備の導入、低炭素型荷役機械の導入、洋上風力発電の導入、ブルーカーボンの活用等を推進しました。加えて、コンテナターミナルの脱炭素化の取組状況を客観的に評価するCNP認証の運用に向けて、試行を実施しました。

(16)ゼロエミッション船等の導入・促進に向けた取組

国際海運分野においては、2023年7月に国際海事機関(IMO)において、日本の提案をベースとした「2050年頃までに温室効果ガス(GHG)排出ゼロ」を目標とする新たな国際海運GHG削減戦略が全会一致で合意されました。国際海事機関においては、この目標達成のためのさらなる対策の導入に向け、経済的手法と技術的手法を組み合わせたゼロエミッション船の建造を促す制度の検討が始まっており、日本からは経済的手法として、化石燃料船に対して課金し、ゼロエミッション船に対してインセンティブを与える制度等を提案しており、EUからは技術的手法として、燃料の温室効果ガス強度による規制制度が提案されているところ、引き続き、具体的な対策の策定を主導していきます。

加えて、2021年度より、グリーンイノベーション基金を活用して、水素・アンモニア等を燃料とするゼロエミッション船の実用化に向けた技術開発・実証プロジェクトを行っており、アンモニア燃料船については2026年、水素燃料船については2027年の実証運航開始を目指しています。また、2023年11月には、アンモニア燃料船の社会実装に向けた取組を加速するため、温室効果の高いN2Oの排出低減やアンモニアの燃料補給時の安全対策等に資する開発をプロジェクトに追加しました。

内航海運分野においても、船舶の省エネや低・脱炭素化を促進しており、荷主等と連携して離着桟・荷役等も含めた運航全体で省エネに取り組む連携型省エネ船の開発・導入、バイオ燃料の活用に向けた取組、省エネ性能の見える化(内航船省エネルギー格付制度(2024年3月末時点で172隻認定))を推進しています。また、2013年に策定した「LNGバンカリングガイドライン」については、LNG燃料船への燃料供給実績の蓄積による知見を踏まえた改訂作業を進め、2023年6月に改訂版を公表しました。さらに、関係省庁とも連携して、LNG燃料船、水素燃料電池船、バッテリー船等の導入・実証を支援する等、船舶の低・脱炭素化に向けた取組を一層加速させています。

(17)航空の脱炭素化推進の取組

航空の脱炭素化に向けては、航空会社や空港会社による主体的・計画的な脱炭素化の取組を後押しすることが重要であり、「航空法(昭和27年法律第231号)」等に基づく「航空運送事業脱炭素化推進計画」及び「空港脱炭素化推進計画」の認定等を進めています。航空運送事業脱炭素化推進計画については、2024年1月に、ANAグループ、JALグループの2計画を初認定しました。空港脱炭素化推進計画については、2023年12月に、成田国際空港、中部国際空港、関西国際空港、大阪国際空港の4空港の計画を、さらに2024年3月には、地方自治体が管理する県営名古屋空港の計画を初認定しました。

航空機運航分野においては、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、官民協議会の場等を活用して、関係省庁や民間事業者と連携しながら、持続可能な航空燃料(以下「SAF」という。)の導入促進、管制の高度化等による運航の改善、機材・装備品等への環境新技術の導入等に取り組んでいます。特に、CO2削減効果の高いSAFについては、2030年時点の本邦航空会社による燃料使用量の10%をSAFに置き換えるという目標を設定しており、経済産業省等と連携して、国際競争力のある価格で安定的に国産SAFを供給できる体制の構築や、国産SAFの国際認証取得に向けた支援等に取り組んでいます。

空港分野においては、各空港において空港脱炭素化推進協議会を設置し、空港脱炭素化推進計画の検討を進めるとともに、空港施設・空港車両等からのCO2の排出削減、空港の再エネの導入等に取り組んでいます。また、「空港の脱炭素化に向けた官民連携プラットフォーム」を活用し、空港関係者等と情報共有や協力体制を構築するとともに、空港関係者の意識醸成や空港利用者への理解促進を図ります。

(18)鉄道分野のさらなる環境性能向上に資する取組

鉄道分野については、2023年5月に公表した「鉄道分野におけるカーボンニュートラル加速化検討会」の最終とりまとめにおいて、鉄道分野のカーボンニュートラルが目指すべき姿をとりまとめ、「鉄道事業そのものの脱炭素化」、「鉄道アセットを活用した脱炭素化」、「環境優位性のある鉄道利用を通じた脱炭素化」の3つの柱に沿った取組を推進することとしました。あわせて、燃料電池鉄道車両の開発や鉄道車両へのバイオディーゼル燃料の導入等による脱炭素化を促進するとともに、省エネ車両や回生電力の有効活用に資する設備の導入を支援することにより、鉄道ネットワーク全体の省エネ化を進めました。

また、2024年度税制改正において、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の対象設備に、脱炭素効果の高い鉄道車両が追加されることになりました。

(19)公共交通機関の利用促進

鉄道・バス等の公共交通機関については、混雑緩和、輸送力増強、速達性向上等を図ることが重要です。鉄道については、三大都市圏において、混雑緩和や速達性向上のための都市鉄道新線等の整備を推進しました。また、駅施設の改良やバリアフリー化を支援することによる利用者利便の向上施策を講じました。一方、バスについては、公共車両優先システム(PTPS)の整備、バス専用・優先レーンの設定等により、定時運行の確保を図るとともに、バスロケーションシステムの整備等に対する支援措置による利用者利便の向上施策を講じました。

また、事業所単位でのエコ通勤の取組支援として、エコ通勤優良事業所認証制度により、839事業所を認証・登録(2024年3月末時点)し、マイカーから公共交通等への利用転換の促進を図りました。

加えて、多様な交通モードが選択可能で利用しやすい環境を創出し、人とモノの流れや地域活性化のさらなる促進のため、バスを中心とした交通モード間の接続(モーダルコネクト)の強化を推進しています。2016年4月に開業したバスタ新宿では、トイレ及びベンチの増設等による待合環境の改善や、国道20号の線形改良及び左折レーン延伸等の渋滞対策に取り組んできました。今後は、バスタ新宿や品川駅及び神戸三宮駅等をはじめとして、官民連携を強化しながら、道路事業による戦略的な集約型公共交通ターミナル「バスタプロジェクト」の整備を全国で展開していきます。

(20)エコドライブの普及・推進

警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省で構成する「エコドライブ普及連絡会」において、行楽シーズンであり自動車に乗る機会が多くなる11月を「エコドライブ推進月間」とし、シンポジウムや全国各地でのイベント等を連携して推進し、積極的な広報を行いました。あわせて、エコドライブ普及連絡会が策定した「エコドライブ10のすすめ」の普及・推進に努めました。

(21)AI・IoT等を活用した更なる輸送効率化推進事業費補助金 【2023年度当初:62.0億円】

発荷主・輸送事業者・着荷主等が連携して策定した計画に基づく物流システムの標準化・共通化やAI・IoT等の新技術の導入によるサプライチェーン全体の効率化を図る取組や、トラック事業者と荷主等が行う車両動態管理システム等の導入による輸送効率化を図る取組に対して、その実証に必要な経費を支援しました。また、自動車の点検整備に係るビッグデータを分析することにより、予防整備等が適切に行われる環境の整備を通じた使用過程車の実燃費の改善を図るため、整備事業者に対して、不具合情報の外部出力が可能なスキャンツールの導入に必要な経費を支援しました。さらに、省エネ化に資する革新的なハード技術(高効率エンジン、高効率プロペラ等)及びソフト技術(最適な運航計画や配船計画等を可能とする技術等)を組み合わせた内航船を建造し、省エネ効果を実証する事業を支援しました。

(22)省エネ法に基づく運輸分野の省エネ措置

省エネ法では、輸送事業者及び荷主を規制対象としており、輸送事業者及び荷主に対して、省エネの取組を実施する際の目安となる判断基準(省エネに資する輸送用機械器具の使用、省エネに資する輸送方法の選択、エネルギー消費効率の改善目標(中長期的に見て年平均1%以上低減)等)を示すとともに、一定水準以上の輸送能力を有する輸送事業者及び一定量以上の輸送を行わせる荷主には、エネルギーの使用状況等を毎年度報告させ、省エネの取組が不十分な場合には指導・助言等を行っています。

2022年5月に省エネ法が改正され、従来の省エネに関する措置に加えて、非化石エネルギーへの転換に関する措置が新設されたことから、2023年4月の施行に向けて、交通政策審議会交通体系分科会環境部会グリーン社会小委員会及び総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会荷主判断基準ワーキンググループでの議論を踏まえ、同年3月に、輸送事業者及び荷主に対する非化石エネルギーへの転換に関する判断基準を策定しました。この判断基準においては、2030年度における輸送に使用する非化石エネルギー自動車の台数の割合等の非化石エネルギーへの転換目標の目安を示しており、輸送事業者及び荷主は、この目安を踏まえて非化石エネルギーへの転換目標を定め、その実現に努めることとしています。

(23)電気自動車用革新型蓄電池技術開発 【2023年度当初:24.0億円】

電気自動車等の普及に向けては、ガソリン車並みの航続距離と車としての価値(低重量や高積載容量、短時間充電等)の両立を実現するために、高いエネルギー密度や耐久性・安全性を持つ革新型蓄電池の技術開発が必要です。また、資源制約も大きな課題となっています。こうした観点を踏まえ、安価で供給リスクの少ない材料を使用し、高エネルギー密度化や安全性等が両立可能なハロゲン化物電池及び亜鉛負極電池を実用化するため、電池の材料・電極の開発やセル化技術等の技術開発を行いました。

(24)蓄電池の製造サプライチェーン強靱化支援事業 【2022年度補正:3,316.0億円、2023年度補正:2,658.0億円】

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、蓄電池は、自動車の電動化や再エネの主力電源化等を推進する上で重要です。日本が競争力を持った形で、蓄電池の製造サプライチェーンを確立するために、2030年に国内で年間150GWhの製造能力を確保することを目的に、経済安全保障推進法に基づき、特定重要物資に蓄電池を指定しました。大規模な生産拡大投資を計画する、又は、現に国内で生産が限定的な部素材や固有の技術を有する蓄電池・蓄電池部素材等の製造事業者に対し、設備投資や生産技術開発の支援を行いました。

(25)次世代全固体蓄電池材料の評価・基盤技術の開発事業 【2023年度当初:18.0億円】

全固体リチウムイオンバッテリーの早期社会実装と普及に向け、電池材料の製品化に必要なセル作成、評価を実施するための標準電池モデルや分析・解析技術の開発、材料評価共通基盤の構築に取り組みました。

(26)炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発事業 【2023年度当初:6.5億円】

木質バイオマスを原料とするセルロースナノファイバーの早期社会実装と普及に向け、コスト低減に資する製造方法の最適化に加え、量産につながるよう、用途に応じた複合化技術・加工技術等の開発を促進しました。また、安全性評価の実施、LCA評価体制の構築に取り組みました。

3.産業部門等における省エネルギーの取組

産業部門においては、省エネ法に基づく規制措置や、省エネ設備の導入支援等の支援措置等を通じ、個々の事業者単位で省エネの取組が進んできましたが、エネルギー消費効率の改善は足踏みが続いており、省エネ法における特定事業者の約5割が、対前年度比で悪化している状況です。経済成長と両立しながら徹底した省エネを進めるためには、さらなる省エネ設備への投資促進や複数事業者の連携による省エネ等、省エネ手段の多様化により、事業者のエネルギー消費効率の改善を促すことが必要です。

〈具体的な主要施策〉

(1)省エネ法に基づくエネルギー管理の徹底

省エネ法では、工場・事業場の設置者に対し、省エネの取組を実施する際の目安となるべき判断基準(設備管理の基準やエネルギー消費効率の改善目標(中長期的に見て年平均1%以上低減)等)を示すとともに、一定規模以上の事業者(年度で原油換算1,500kl以上のエネルギーを使用する事業者として経済産業大臣が指定する「特定事業者」、「特定連鎖化事業者」及び「認定管理統括事業者」のことを指し、2023年7月現在で約12,000者を指定。)には、エネルギーの使用状況等の報告を求め、省エネの取組が不十分な場合には指導・助言等を行っています。

また、事業者が自らの省エネの取組の立ち位置を把握するとともに、省エネの進捗状況に応じたメリハリのある省エネの取組を促進するため、「事業者クラス分け評価制度(SABC評価制度)」に基づき、全ての特定事業者等を、当該報告の結果を踏まえて、S・A・B・Cの4段階にクラス分けしています。Sクラス事業者については、経済産業省のホームページ上で事業者名等を公表し、Bクラス事業者については、注意喚起文書を送付しています。また、Bクラス事業者のうち、立入検査や現地調査等を経て省エネの取組が不十分と認められた事業者については、Cクラス事業者に分類した上で、省エネ法に基づく指導・助言等を行っています。2019年度には、SABC評価制度の見直しを実施し、ベンチマーク目標の達成状況によるS評価の付与が適切になされるように運用を見直しました。また、事業者のベンチマーク目標の達成に向けた省エネの取組を評価するため、省エネの取組をまとめている「中長期計画書」に記載されている内容の実施状況を、「定期報告書」で報告する仕組みを導入することとしました。

さらに、2017年8月にとりまとめられた総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会の意見において、「定期報告や中長期計画を多角的に整理・加工し、各事業者の省エネ取組を客観的に評価できるデータベースとして整備・提供すべき」と示されたことを受け、定期報告書等に係るデータを、より特定事業者等のニーズに沿った形でフィードバックするための検討を行い、事業者が同一業種内における自らの省エネの取組状況を確認できるツールや、業種別の省エネ取組ファクトシートを公開しました。

また、省エネ法の定期報告情報を企業の同意に基づき開示できる仕組みを新たに導入することで、事業者の省エネや非化石エネルギー転換等の取組に関する情報発信を促すこととしました。2023年8月に、この開示制度における開示シートのフォーマットを公開し、2024年3月末には、2023年度報告分の開示シートを公表しました。

(2)複数企業の連携によるさらなる省エネの促進

事業者単位での省エネの取組に加えて、複数企業の連携による省エネの取組を促進するため、2018年6月に省エネ法が改正され、同年12月に施行されました。この省エネ法の改正により、複数企業が連携する省エネの取組を「連携省エネルギー計画」として認定し、省エネ量を企業間で分配して報告することを認めるとともに、一定の資本関係のある複数の事業者が一体的に省エネの取組を推進する場合、その管理を統括する事業者を「認定管理統括事業者」として認定し、認定管理統括事業者が定期報告等を一体的に行うことを可能としました。

(3)省エネ法に基づく産業部門ベンチマーク制度

事業者の省エネの取組状況を、業種共通の指標を用いて評価するため、産業部門ベンチマーク制度を運用しています。現在、鉄鋼や化学等のエネルギー使用量の大きい製造業をはじめ、6業種12分野を産業部門ベンチマーク制度の対象業種としており、対象となる事業者の省エネの取組を促しています。

(4)先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金 【2023年度当初:260.6億円】

工場・事業場におけるエネルギー消費効率の改善を促すため、省エネ性能の高い特定のユーティリティ設備や生産設備、先進的な省エネ設備等の導入等を行う事業者に対する支援を行いました。

(5)省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費 【2022年度補正:250.0億円、2023年度補正:910.0億円】

工場・事業場における省エネ性能の高い設備・機器への更新や複数事業者の連携、脱炭素につながる電化・燃料転換を伴う設備更新、非化石エネルギーへの転換にも資する先進的な省エネ設備・機器の導入等を行う事業者に対する支援を行いました。

(6)省エネルギー投資促進支援事業費 【2022年度補正:250.0億円、2023年度補正:250.0億円】

工場・事業場における省エネ性能の優れたユーティリティ設備や生産設備等への更新を行う事業者に対する支援を行いました。

(7)工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業) 【2022年度補正:40.0億円、2023年度当初:36.9億円】

工場・事業場におけるCO2削減計画の策定や当該計画に基づく高効率設備への設備更新、電化・燃料転換、企業間で連携したCO2排出量削減に向けた設備更新等に対する支援を行いました。

(8)低炭素社会実行計画の推進・強化

産業界は、主体的な温室効果ガス削減計画に継続して取り組んでおり、2013年度以降は、日本経済団体連合会(以下「経団連」という。)加盟の個別業種や経団連に加盟していない個別業種による「低炭素社会実行計画」に基づき、取組を進めてきました。

2021年6月に経団連は、「経団連低炭素社会実行計画」を、「経団連カーボンニュートラル行動計画」へと改め、取組を強化していく旨を表明しています。この計画については、2021年10月に改訂された「地球温暖化対策計画」においても、引き続き産業界における対策の中心的役割と位置づけられており、2030年度の温室効果ガス削減目標の達成に向けて、産業界による自主的かつ主体的な削減貢献の取組を進めていくこととしています。また、同計画において、産業界は新たに、中小企業も含めたカバー率の向上、政府の2030年度目標との整合性や2050年のあるべき姿を見据えた2030年度目標の設定、共通指標としての2013年度比のCO2排出削減率の統一的な見せ方やサプライチェーン全体のCO2排出量の削減貢献等に留意しながら、計画の見直しを行うこととしています。現在、114業種がこの自主的取組に参画しており、2020年度以降、2030年度目標を見直した業種も増加しています。

政府としても、透明性・信頼性・目標達成の蓋然性の向上の観点から、低炭素社会実行計画の2022年度実績について、審議会による厳格な評価・検証を実施し、各業界の取組が着実に実施されていることを確認しました。また、審議会による進捗点検等を踏まえ、PDCAサイクルの推進が図られていることも確認しました。さらに、自らの国内事業活動における削減だけでなく、低炭素製品・サービス等による他部門での削減貢献、優れた製品や技術、素材、サービスの普及等を通じた国際貢献、革新的技術の開発や普及による削減貢献といった各業種の取組についても深掘りし、可能な限り定量化することにより、貢献の可視化とベストプラクティスの横展開等を促進しました。

参画している業種は、国内事業活動における排出削減だけでなく、低炭素製品・サービスや優れた技術・ノウハウの普及により、地球規模での削減にも貢献しています。より多くの業種の参加促進や、審議会における業種横断的な意見交換を通じたベストプラクティスの競い合いや主体間連携の促進、国内外に向けた各業種の取組内容の積極的な発信、審議会による厳格な評価・検証を通じて、引き続き産業界の削減貢献に向けた取組を後押しします。

(9)脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム 【2023年度当初:65.0億円】

省エネ技術の研究開発や普及を効果的に推進するため、大きな省エネ効果が見込まれる革新的な省エネ技術について、シーズ発掘から事業化まで一貫して支援を行う提案公募型研究開発事業を実施しました。「省エネルギー技術戦略2016」に掲げる重要技術(2019年7月改定版)を軸に、個別課題推進スキームでは、技術開発の段階に応じて、FS調査フェーズ3件、インキュベーション研究開発フェーズ8件、実用化開発フェーズ17件、実証開発フェーズ5件の計33件を新規採択しました。また、重点課題推進スキームでは、1件を新規採択しました。

(10)高効率・高速処理を可能とする次世代コンピューティングの技術開発事業 【2023年度当初:49.0億円】

IoT社会の到来により増加した膨大な量の情報を効率的に活用するため、ネットワークのエッジ側で動作する超低消費電力の革新的AIチップに係るコンピューティング技術や、新原理によって高速化と低消費電力化を両立する次世代コンピューティング技術(量子コンピュータ、脳型コンピュータ等)等の開発を実施しました。

(11)省エネエレクトロニクスの製造基盤強化に向けた技術開発事業 【2023年度当初:26.5億円】

産業のIoT化や電動化が進展し、それを支える半導体関連技術の重要性が高まる中、日本が保有する高水準の要素技術等を活用し、エレクトロニクス製品のより高性能な省エネ化を実現するため、新世代パワー半導体や半導体製造装置の高度化に向けた研究開発を実施しました。

(12)ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業 【2023年度補正:27.0億円(6,773億円の内数)】

第5世代移動通信システム(5G)は、各国で商用サービスが開始されていますが、さらに超低遅延や多数同時接続といった機能が強化された5G(ポスト5G)については、工場や自動運転といった多様な産業用途での活用が見込まれており、日本の競争力の核となりうる技術と期待されています。今後、通信データ量の増大に伴い、消費電力の削減が求められている基地局の省エネ化のための技術開発を目的に、公募を行いました。今後は、採択された研究開発を進めていく予定です。

(13)グリーン購入及び環境配慮契約の推進

国等における環境物品等の率先的な調達や環境に配慮した契約の実施は、日本全体の省エネ等の推進に資するものです。国等は、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号)」(以下「グリーン購入法」という。)及び「国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)」を踏まえ、照明や空調設備等の物品等を調達する際には、率先して省エネ機器・設備を導入するとともに、電力の供給を受ける契約や建築物に係る契約等においては、環境配慮契約の推進に取り組みました。

また、2023年度は、グリーン購入法において、電気便座、ヒートポンプ式電気給湯器、ガス温水機器、石油温水機器のエネルギー消費効率基準を強化し、乗用車、小型貨物車の燃費基準値を引き上げました。さらに、ハイブリッド給湯器を対象に追加しました。

(14)国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費 【2023年度当初:4.4億円】

省エネ・再エネ設備の導入、森林整備等による温室効果ガスの排出削減・吸収量をクレジットとして認証するJ-クレジット制度について、新規方法論の策定、クレジット創出に向けた中小企業等への説明会の実施、審査費用への支援等を行いました。

(15)省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金 【2023年度当初:13.3億円】

新設・既設事業所における省エネ設備の新設・導入等を行う際に民間金融機関等から融資を受ける事業者に対し、融資に係る利子補給事業によって支援するとともに、さらなる利用拡大のために金融機関と連携した制度利用の推進を行いました。

(16)中小企業等に対するエネルギー利用最適化推進事業費補助金 【2023年度当初:8.0億円】

中小企業等に対して省エネ診断事業を実施するとともに、自治体や学校が実施する省エネ関連セミナーに講師を派遣しました。また、多くの診断事業で得られた優良事例や省エネ技術に関する情報を、様々な媒体を通じて発信しました。

加えて、全国47都道府県で活動する自治体、金融機関、中小企業団体等と連携する「省エネお助け隊」(地域プラットフォーム)を構築し、きめ細かな省エネ診断や省エネ支援を通じて省エネの取組を促進しました。また、これまでの成果事例をとりまとめ、情報発信を行いました。

(17)中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費 【2022年度補正:19.9億円、2023年度補正:20.9億円】

エネルギー価格の高騰等の影響を受ける中小企業等に対して、設備単位の省エネ診断等を実施し、中小企業等が診断を希望する設備のエネルギーに関する無駄や、すぐにできる省エネに関するアドバイス等を行いました。

(18)先端計算科学等を活用した新規機能性材料合成・製造プロセス開発事業 【2023年度当初:22.0億円】

これまで、機能性化学品及びファインセラミックスの合成・製造は、経験や勘、ノウハウに基づいて行われてきましたが、少量多品種オンデマンド生産等への対応が可能となるよう、計算科学等を活用した革新的なプロセス開発に取り組みました。

(19)次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発事業 【2023年度当初:10.9億円】

人工知能技術とその他関連技術による産業化に向けて、人工知能モジュールやデータ取得のためのセンサー技術、研究インフラ等を統合し、従来の人による管理では達成できないさらなる省エネ効果を得るとともに、人工知能技術の社会実装を加速し、将来の新たな市場シェアのいち早い獲得を目指します。2023年度は、人工知能技術の適用領域を広げるための導入加速化技術、製造業における製品の多品種化・短サイクル化・規制強化等に対応するため、これまで設計及び製造現場に蓄積されてきたいわゆる「匠の技」と呼ばれているもののうち、熟練者が有する幅広い知識や経験をモデル化して、非熟練者を支援する人工知能技術の開発を行いました。

(20)CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発プロジェクト 【グリーンイノベーション基金:国費負担上限1,262.0億円】

廃プラスチック・廃ゴムからプラスチック原料を製造するケミカルリサイクル技術等に加えて、CO2から機能性化学品を製造する技術や、光触媒を用いて水とCO2から基礎化学品(オレフィン)を製造する人工光合成技術、ナフサ分解炉の熱源をアンモニアへ転換する燃焼バーナーや炉の開発を進めました。これらのプラスチック原料製造技術を活用して、CO2排出削減を目指します。

(21)未来社会創造事業(大規模プロジェクト型) 【2023年度当初:91.6億円の内数】

環境中の熱源(排熱や体温等)をセンサー用独立電源として活用可能にする革新的熱電変換技術の研究開発を推進しました。

(22)革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業 【2023年度当初:13.5億円】

パワーエレクトロニクス技術は、あらゆる機器の省エネ・高性能化につながる横断的技術であり、地球温暖化対策に貢献しつつ、日本の産業構造や経済社会の変革をもたらすイノベーションの鍵を握っています。カーボンニュートラルの実現に向けて、学理究明も含めた基礎基盤研究の推進により、窒化ガリウム(GaN)等の次世代パワー半導体を用いた超省エネ・高性能なパワーエレクトロニクス機器等の実用化に向けた一体的な研究開発を推進しました。

(23)次世代X-nics半導体創生拠点形成事業 【2023年度当初:9.0億円、2023年度補正:3.3億円】

半導体集積回路は、カーボンニュートラルやデジタル社会の実現、経済安全保障の確保に向けて重要性が増しており、この分野の国際競争は年々激しくなってきています。本事業では、2035年〜2040年頃の社会で求められる省エネ・高性能な次世代の半導体集積回路の創生を目指したアカデミアの中核的な拠点を形成し、新たな切り口による研究開発と将来の半導体産業を牽引する人材の育成を推進しました。

4.部門横断的な省エネルギーの取組

各部門における徹底した省エネだけでなく、部門横断的に省エネを促していくことも重要です。そのため、事業者や消費者といった対象を特定せず、広く積極的な省エネを促す取組を行いました。

〈具体的な主要施策〉

(1)省エネルギー促進に向けた広報事業委託費 【2023年度当初:2.2億円】

多くの方々から省エネに対する理解と協力を得て、積極的な省エネを実践いただくため、省エネに関する客観的な情報提供を行いました。また、省エネ行動や効果に関する情報収集と、それらを周知するための広報用データ・コンテンツの作成・周知等を行いました。

(2)地域の魅力と質を向上させる地方創生に資する地域脱炭素の推進

2030年度の温室効果ガス46%削減(さらに50%の高みに向けた挑戦の継続)目標及び2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、「地球温暖化対策計画」及び「地域脱炭素ロードマップ」に基づき、2025年度までを集中期間として、あらゆる分野において関係省庁が連携して、対策・施策を総動員することとしています。これにより、2050年を待たずして、多くの地域で脱炭素を達成し、地域課題を解決した強靱で活力ある次の時代の地域社会への移行を目指しています。また、2023年7月に閣議決定された「GX推進戦略」においても、地域金融機関や地域の企業等との連携の下、地域特性に応じて、各地方公共団体の創意工夫を活かした産業・社会の構造転換や脱炭素製品の面的な需要創出を進め、地域・くらしの脱炭素化を実現することが明記されました。

環境省では、2030年度までに民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出については実質ゼロを実現し、その他の温室効果ガスの排出についても、日本の2030年度の削減目標と照らして十分なレベルの削減を実現する「脱炭素先行地域」を、2025年度までに少なくとも100か所選定し、2030年度までに実現する方針です。2023年度までに4回の募集を行い、計73の地域を選定しました。また、「脱炭素先行地域」に加えて、屋根置き等の自家消費型の太陽光発電の導入、住宅・建築物の省エネ性能の向上、ゼロカーボン・ドライブの普及等の脱炭素の基盤となる重点対策についても、全国で実施していきます。こうした意欲的な取組を行う地方公共団体や事業者等を「地域脱炭素推進交付金」により、複数年度にわたって、継続的かつ包括的に支援していきます。

また、「地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)」(以下「地球温暖化対策推進法」という。)において、都道府県、政令指定都市及び中核市(施行時特例市を含む)には、単独又は共同して、区域における再エネの利用促進、省エネの推進等を盛り込んだ地方公共団体実行計画(区域施策編)の策定が義務づけられています。さらに、中核市未満の市町村についても、再エネの利用促進等の施策の実施目標を含む同計画の策定を努力義務としています。

また、地域における再エネの最大限の導入を促進するため、地方公共団体による脱炭素社会を見据えた計画の策定等を補助する「地域脱炭素実現に向けた再エネの最大限導入のための計画づくり支援事業」を実施しました。

国土交通省では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素に資する都市・地域づくりを推進していくため、「まちづくりのグリーン化」に取り組んでいます。具体的には、都市のコンパクト・プラス・ネットワークや居心地が良く歩きたくなる空間づくりを進め、公共交通の利用促進等を図ることでCO2排出量の削減につなげる「都市構造の変革」、エネルギーの面的利用や環境に配慮した民間都市開発等を推進することでエネルギー利用の効率化につなげる「街区単位での取組」、グリーンインフラの社会実装の推進等により都市部のCO2吸収源の拡大につなげる「都市における緑とオープンスペースの展開」の3つを柱に、取組を進めています。さらに、まちづくりGXとして、都市緑地の多様な機能の発揮及び都市開発における再エネの導入促進やエネルギーの面的利用の推進を図る取組等を進めていきます。

(3)株式会社脱炭素化支援機構による資金供給

株式会社脱炭素化支援機構(JICN)は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国の財政投融資と民間株主からの出資金を活用し、多額の投融資を必要とする環境スタートアップや脱炭素プロジェクト等を積極的に支援することにより、脱炭素化はもとより、企業価値の向上や地域の活性化に貢献しています。2022年10月28日に脱炭素化支援機構が設立されて以降、2024年3月末までに15件の支援決定の公表がなされました。

(4)地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例(地球温暖化対策のための税)【税制】

日本で排出される温室効果ガスの8割以上は、エネルギー利用に由来するCO2(エネルギー起源CO2)となっており、今後温室効果ガスを抜本的に削減するためには、中長期的にエネルギー起源CO2の排出抑制対策を強化していくことが不可欠です。このため、2012年10月から施行されている地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例の税収を活用して、省エネ対策、再エネの普及、化石燃料のクリーン化・効率化等のエネルギー起源CO2の排出抑制の諸施策を着実に実施していきます。

(5)低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業

日本の経済・社会の持続的発展を伴う、科学技術を基盤とした明るく豊かな低炭素社会の実現に貢献するため、望ましい社会の姿を描き、その実現に至る道筋を示す社会シナリオ研究を推進しました。2023年度は、人文社会科学系を含めた幅広い研究者の知の取り込みや研究人材の育成により、さらなる社会シナリオ研究の発展を目指すため、事業の実施主体を科学技術振興機構から大学等へ移行し、公募を行い採択した2つの課題を推進しました。

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トップランナー制度の対象機器のうち、家庭で使用される機器を中心に、トップランナー制度に基づく省エネ基準の達成率等を表示し、基準を達成している機器であることを消費者にわかりやすく表示するためのJISに基づくラベルです。2024年3月時点で、特定エネルギー消費機器29機器のうち、テレビジョン受信機、エアコンディショナー等をはじめとする22機器が対象となっています。
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トップランナー制度の対象機器のうち、家庭で使用され、エネルギー消費が大きい9機器(エアコンディショナー、照明器具、テレビジョン受信機、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気便座、温水機器(ガス、石油、電気))について、省エネルギーラベルや、市場における製品の省エネ性能を1.0から5.0で表示した多段階評価点、年間目安エネルギー料金等を表示したラベルです。