第5節 その他制度・予算・税制面等における取組
〈具体的な施策〉
1.制度
(1)エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律
喫緊の課題である気候変動問題に対応していくためには、2050年カーボンニュートラルの実現に向けてあらゆる主体が取組を進めていくことが重要です。特に産業界では、徹底した省エネを進めるとともに、産業界全体でカーボンニュートラルに整合的な目標を立てることで、需要サイドでの事業者による非化石エネルギーの導入拡大の取組を加速させていくことが重要です。
このため、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」を「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」に改正し、需要側における非化石エネルギーへの転換に関する措置を新設しました。本法律では、エネルギーを使用して事業を行う者に対し、その使用するエネルギーに占める非化石エネルギーの割合の向上を求めることとしています。具体的な枠組みとして、以下が挙げられます。
- 非化石エネルギーへの転換の適切かつ有効な実施を図るため、非化石エネルギーへの転換の目標及び当該目標を達成するために取り組むべき措置に関し、事業者の判断の基準となるべき事項(以下「判断基準」という。)を定め公表し、事業者に判断基準に沿った取組を求める
- 一定規模以上の事業者(特定事業者等)に対し、非化石エネルギーへの転換の目標に関する中長期的な計画の作成及び非化石エネルギーの使用状況の定期の報告を求める
- 必要に応じて指導・助言や、非化石エネルギーへの転換の取組の状況が判断基準に照らして著しく不十分な場合には、関連する技術の水準等を勘案した上で勧告、公表を行う
なお、判断基準では、特定事業者等ごとに、非化石エネルギーの供給状況等に応じて、2030年度における非化石電気の使用割合に関する定量的な目標を設定し、その達成に努めるものとしています。また、鉄鋼業(高炉・電炉)、化学工業(石油化学・ソーダ工業)、セメント製造業、製紙業(洋紙製造業・板紙製造業)、自動車製造業の5業種(8分野)については、非化石エネルギーへの転換の定量的な目標に関して、目安となる水準を定めています。
(2)農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律
「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(平成25年法律第81号)」を積極的に活用し、農林地等の利用調整を適切に行いつつ、市町村や発電事業者、農林漁業者等の地域の関係者の密接な連携の下、再エネの導入とあわせて地域の農林漁業の健全な発展に資する取組を促進しました。
(3)地域脱炭素化促進事業制度
2021年改正地球温暖化対策推進法においては、市町村が策定する地方公共団体実行計画(区域施策編)において、地域の合意形成を図りながら、環境に適正に配慮した再エネ促進区域等を定め、地域と共生する再エネの導入を促進する地域脱炭素化促進事業制度が創設されました。既に太陽光発電に関する促進区域を設定するといった先行事例も生まれています。
2.予算事業
(1)太陽光発電
①太陽光発電の導入可能量拡大等に向けた技術開発事業【2022年度当初:30.5億円】
太陽光発電システムの設置に適した未開発の適地が減少する中、従来の技術では設置できなかった場所への太陽光発電システムの導入を可能とするため、軽量化等の立地制約を克服するための革新的な技術等の要素技術の開発を実施するとともに、太陽光発電の長期安定電源化に資するため、発電設備の信頼性・安全性の確保、資源の再利用化を可能とするリサイクル技術の開発、系統影響を緩和する技術の開発等を実施しました。
②需要家主導による太陽光発電導入促進補助金事業【2022年度当初:125.0億円】
FIT制度等を利用せず、特定の需要家の長期的な需要に応じて新たに太陽光発電設備を設置する者に対して、一定の条件を満たす場合の太陽光発電設備の導入に関する支援を実施しました。
③需要家主導型太陽光発電及び再生可能エネルギー発電設備併設型蓄電池導入支援事業【2022年度補正:255.0億円】
FIT制度等を利用せず、特定の需要家の長期的な需要に応じて新たに太陽光発電設備を設置する者に対して、一定の条件を満たす場合の太陽光発電設備の導入と、太陽光発電設備に併設する蓄電池の導入について、支援を実施しています。また、2022年度から開始したFIP制度の認定を受ける再エネ発電設備に併設する蓄電池の導入について、支援を実施しています。
④地域循環型エネルギーシステム構築のうち営農型太陽光発電のモデル的取組支援【2022年度当初:8.4億円の内数】
地域循環型エネルギーシステムの構築に向け、営農型太陽光発電設備下においても収益性を確保可能な作目や栽培体系、地域で最も効果的な設備の設計(遮光率や強度等)、設置場所の検討等を支援しました。
(2)風力発電・海洋エネルギー
①海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用調整に必要な経費について【2022年度当初:6億円の内数】
再エネ海域利用法における促進区域の指定に向け、2022年9月には、有望な区域として5区域、一定の準備段階に進んでいる区域として11区域を整理しました。有望な区域において、促進区域の指定基準への適合性を確認するための海域の状況調査の実施及び促進区域の指定等に関し必要な協議を行うための協議会を開催しました。
②洋上風力発電の導入拡大に向けた調査支援事業【2022年度当初:2.5億円】
「洋上風力産業ビジョン(第1次)」に掲げる、2030年までに1,000万kW、2040年までに浮体式も含む3,000万kW〜4,500万kWの案件形成の実現に向けて、計画的・継続的な案件形成及び事業実現を進めるため、国による系統暫定確保スキームの具体化に向けた検討や、これまでの実績を踏まえた案件形成に係る課題検証等を行ったほか、促進区域において事業を行う者を選定するための公募における評価支援を行いました。
③洋上風力発電等の導入拡大に向けた研究開発事業【2022年度当初:66.0億円】
浮体式洋上風力発電の低コスト化を目的とした実証事業では、北九州市沖において、3MW風車を搭載したバージ型浮体(実証機)の実証運転を過年度から継続して実施し、各種メンテナンスや観測データによる設計検証等の技術開発等を行いました。また、浮体式のさらなるコスト低減を実現するため、ガイワイヤ支持やタレットを用いた一点係留による先進的な要素技術を用いた浮体式洋上風力発電システムの実証研究に向けて、詳細設計を実施しました。
着床式洋上風力発電においては、資本支出に占める割合が高い基礎・施工費の低コスト化に資する機器の設計、製作等を実施するとともに、実海域における実証試験等を行いました。風車の運用・維持管理における研究開発については、過年度に構築したAIを活用したメンテナンス技術や、それによる効果の検証等に加え、ダウンタイムの低減等を通じたコスト低減に資する技術開発を実施しました。
④浮体式洋上風力発電による地域の脱炭素化ビジネス促進事業【2022年度当初:3.5億円】
深い海域の多い日本における浮体式洋上風力発電の導入を加速し、脱炭素ビジネスが促進されるよう、浮体式洋上風力発電の早期普及に貢献するための情報の整理や、地域が浮体式洋上風力発電によるエネルギーの地産地消を目指すに当たって必要な各種調査、当該地域における事業性・CO2削減効果の見通し等の検討を行いました。
⑤洋上風力発電人材育成事業【2022年度当初:6.5億円】
民間事業者等が洋上風力発電に係る人材を育成するため、事業開発(ビジネス・ファイナンス・法務関連)、エンジニア(設計・基盤技術・データ分析関連)、専門作業員(建設・メンテナンス関連)の分野別に必要となるカリキュラムの策定や、トレーニング施設等の整備に必要な費用に対して補助を行いました。
(3)バイオマス発電
木質バイオマス燃料等の安定的・効率的な供給・利用システム構築支援事業【2022年度当初:13.5億円】
新たな燃料ポテンシャルの開拓に資する「エネルギーの森(燃料材生産を目的とした森林)」づくりを実現するため、早生樹(コウヨウザン・ユーカリ等)の活用方法に関する実証事業や、木質バイオマス燃料の製造・輸送システムを効率化するため、チップ・ペレットの製造方法に関する実証事業を実施しました。さらに、燃料品質の安定化及び品質に基づく商慣行定着のため、木質バイオマス燃料の品質規格を策定しました。
(4)水力発電
水力発電の導入加速化補助金【2022年度当初:20.0億円】
水力発電の事業初期段階における事業者による調査・設計や、地域における共生促進に対して支援を行うことで、水力発電の新規地点の開発を促進したほか、既存設備の発電出力及び電力量の増加のための余力調査、工事等の事業の一部を支援しました。
(5)地熱発電・熱利用
①地熱発電の資源量調査・理解促進事業費補助金【2022年度当初:126.5億円】
地熱発電は、ベースロード電源であり、日本は世界第3位の地熱資源量を有しています。一方で、資源探査段階の高いリスクやコスト、温泉事業者を始めとする地域理解といった課題があります。そこで、これらの課題を解決するために、新規地点を開拓するポテンシャル調査や、事業者が実施する初期調査、地域理解促進のための勉強会等の取組に対して支援を行いました。
②地熱資源探査出資等事業
地熱資源の蒸気噴出量を把握するための探査に対する出資や、発電に必要な井戸の掘削、発電設備の設置等に対する債務保証を行うことで、地熱資源開発を支援しました。
③地熱・地中熱等導入拡大技術開発事業【2022年度当初:28.7億円】
地熱発電は、資源探査段階の高いリスクとコスト、発電段階における出力の安定化といった課題があり、これらの課題を解決するための技術開発を行いました。また、地熱発電の抜本的な拡大に向け、次世代の地熱発電(超臨界地熱発電)に関する資源量評価についての検討を行いました。
地中熱や太陽熱等の再エネ熱については、日本の最終エネルギー消費の約半分は熱需要であることから、再エネ熱の効果的な利用により電力や燃料の消費量を抑制していくことが重要です。本事業では再エネ熱利用システムの導入拡大に向け、再エネ熱の設計から施工までに関わる事業者の体制を構築し、コスト低減に資する技術開発に取り組みました。
(6)系統制約克服及び調整力・慣性力確保への対応
①再生可能エネルギーの大量導入に向けた次世代型の電力制御技術開発事業【2022年度当初:55.0億円】
再エネのさらなる導入拡大を図り、主力電源化を進めるため、ノンファーム型接続、直流送電システムの基盤技術、系統を安定させる装置やインバータについての研究開発を支援しました。
②風力発電のための送電網整備実証事業費補助金【2022年度当初:60.2億円】
風力発電の適地において、送電網の整備及び技術的課題の解決を目的とした実証事業を行いました。
③福島県における再生可能エネルギーの導入促進のための支援事業費補助金【2022年度当初:52.3億円】
阿武隈山地や福島県沿岸部における再エネ導入拡大のための共用送電線の整備及び風力等の発電設備やそれに付帯する送電線等の導入を支援するとともに、「福島再生可能エネルギー研究所(FREA)」の再エネに係る拠点としての機能強化等を実施しました。
(7)その他
①地域脱炭素移行・再エネ推進交付金【2022年度当初:200億円、2022年度第2次補正:50億円】
地域脱炭素に意欲的に取り組む地方公共団体等に対して、複数年度にわたり継続的かつ包括的に支援するスキームで、少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」の実現に向けて、地域特性等に応じた先行的な取組を支援するとともに、全国津々浦々で脱炭素の基盤となる重点対策への支援を行いました。
②地域脱炭素実現に向けた再エネの最大限導入のための計画づくり支援事業【2022年度当初:8億円、2022年度第2次補正:22億円】
地方公共団体等による地域再エネ導入の目標設定・意欲的な脱炭素の取組に関する計画策定、再エネ促進区域の設定等に向けたゾーニング、公共施設等への太陽光発電設備等の再エネの導入調査、官民連携で行う地域再エネ事業の実施・運営体制構築、事業の持続性向上のための地域人材の確保・育成に関する支援等の事業を実施しました。
③地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共施設への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業【2022年度当初:20億円、2022年度第2次補正:20億円】
地域防災計画により災害時に避難施設等として位置づけられた公共施設や、業務継続計画により災害等発生時に業務を維持すべき施設における平時の脱炭素化に加え、災害時にもエネルギー供給等の機能の発揮を可能とする再エネ設備等の導入支援等を行いました。
④地域資源活用展開支援事業【2022年度当初:8.4億円の内数】
地域資源を活用した再エネ導入の検討開始から発電の実施までの各段階における課題解決のため、農林漁業者や市町村からの問い合わせに対してワンストップで対応する現場のニーズに応じた専門家の派遣等や、バイオマス産業都市等におけるバイオマス利活用の促進、普及に向けた情報発信ツールの整備等を支援しました。
⑤戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発【2022年度当初:21.7億円】
2030年の社会実装を目指し、低炭素社会の実現に貢献する革新的な技術シーズ及び実用化技術や、リチウムイオン蓄電池に代わる革新的な次世代蓄電池等の世界に先駆けた革新的低炭素化技術の研究開発を推進しました。
⑥未来社会創造事業(「地球規模課題である低炭素社会の実現」領域)【2022年度当初:11.5億円】
2050年の社会実装を目指し、2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略等を踏まえ、カーボンニュートラル社会の実現に資する、従来技術の延長線上にない革新的技術の研究開発を推進しました。
⑦新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術開発事業【2022年度当初:17.9億円】
太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス、太陽熱・雪氷熱・未利用熱、燃料電池・蓄電池、エネルギーマネジメントシステム等における、中小・ベンチャー企業が有する潜在的技術シーズを発掘し、その開発及び実用化を支援しました。
⑧下水道革新的技術実証事業【2022年度当初:614億円の内数】
下水道事業における省エネで安定的な水処理技術等の導入を促進するため、ICT・AI制御による高度処理技術の実証を実施しました。
⑨地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業【2022年度当初:50億円の内数】
再エネを活用した自立分散型エネルギーシステムの普及のため、居住地近傍でも使用できる社会受容性の高い小形風力発電機の開発を実施しました。また、グリーン水素のサプライチェーンの早期実現に向けて、高付加価値の副産物を併産する水電解システムの開発や、ハイブリッド電気自動車や電気自動車に搭載されたリチウムイオンバッテリーを低コストでリユースし、データセンターや他の電力運用システムに適用するために必要な技術開発・実証等を実施しました。
⑩PPA活用等による地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業【2022年度当初:38.0億円の内数、2021年度補正:113.5億円の内数】
屋根や駐車場を活用した自家消費型の太陽光発電・蓄電池の導入等による再エネ供給側の取組及び変動性再エネを効率的に活用するための調整力の向上等による需要側での取組に対し、支援を行いました。
⑪国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費
(再掲 第2章第1節 参照)
⑫環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進【2022年度当初:688.3億円の内数、2022年度補正:1,203.8億円の内数】
気候変動問題への対応が喫緊の課題となっている中、文部科学省、農林水産省、国土交通省及び環境省が連携協力して、環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備を推進しており、公立学校施設における再エネ設備の導入等に係る費用の一部を補助しました。
⑬ESGリース促進事業【2022年度当初:13.3億円の内数】
中小企業等が、再エネ設備等の脱炭素機器をリースにより導入する際に、総リース料の一部を助成しました。
⑭新エネルギー等の導入促進のための広報等事業【2022年度当初:6.5億円】
再エネの普及の意義やFIT制度の内容について、展示会への出展、パンフレットの作成、Webサイト等の活用等を通じて、発電事業者を始めとする幅広い層に対する周知徹底を図るとともに、地域密着型の再エネ発電事業の事業化に向け、各種支援施策の紹介や許認可手続の案内等の支援を実施しました。また、FIT制度の抜本見直しに係る周知や需給一体型の分散型エネルギーシステムの普及促進等についての情報提供等も行いました。
⑮脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業【2022年度当初:55.0億円の内数】
地域の再エネ、蓄電池及び各地域に敷設した自営線により地産エネルギーを直接供給する等により、地域の再エネ自給率を最大化させるとともに、防災性も兼ね備えた地域づくりを行う事業に対して支援を行いました。
⑯分散型エネルギーインフラプロジェクト【2022年度当初:5.0億円の内数】
地方公共団体を核として、需要家、地域エネルギー会社及び金融機関等、地域の総力を挙げて、バイオマス、廃棄物等の地域資源を活用した地域エネルギー事業を立ち上げる地方公共団体のマスタープラン策定を支援するとともに、関係省庁と連携して総務省に事業化ワンストップ窓口を設置し、マスタープランの策定から円滑な事業化までアドバイス等を実施しました。
⑰再エネ調達市場価格変動保険加入支援事業費補助金【2021年度補正:4.0億円】
地域における再エネの導入を促進するため、地域新電力等の小売電気事業者が、FIT制度の支援を受けた再エネ電気を調達する際の市場価格変動リスクに対応する民間保険に加入した場合の保険料の一部を支援しました。
3.税制
(1)再生可能エネルギー発電設備に係る固定資産税の特例措置【税制】
FIT制度の認定を受けた再エネ発電設備(太陽光発電設備については、自家消費型補助金の交付を受け取得したもの)を取得した場合、固定資産税を3年間にわたって軽減する措置を講じました。2022年度税制改正において、本措置の適用期限を2024年3月31日まで、2年間延長しています。
(2)バイオ燃料製造設備に係る固定資産税の軽減措置【税制】
農林漁業由来のバイオマスを活用した国産バイオ燃料の生産拡大を図るため、「農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律(平成20年法律第45号)」に基づく生産製造連携事業計画に従って新設されたバイオ燃料製造設備(エタノール、脂肪酸メチルエステル(ディーゼル燃料)、ガス、木質固形燃料の各製造設備)に係る固定資産税の課税標準額を3年間にわたり、ガス製造設備に係る課税標準を価格の2分の1、それ以外の製造設備を3分の2に軽減する措置を講じました(2024年3月31日までの間)。
(3)バイオ由来燃料税制の整備及び施行【税制】
バイオエタノール等を混和して製造した揮発油については、これまでガソリン税(揮発油税及び地方揮発油税)の課税標準(混和後の揮発油の数量)から混和されたエタノールの数量を控除する措置を講じてきており、2023年度税制改正において、本措置の適用期限を5年間延長しています(2028年3月31日までの間)。
4.財政投融資
(1)環境・エネルギー対策資金(非化石エネルギー関連設備)【財政投融資】
再エネ発電設備・熱利用設備を導入する際に必要となる資金を、日本政策金融公庫から中小企業や個人事業主向けに低利で貸し付けることができる措置を講じました。
(2)株式会社脱炭素化支援機構による資金供給【財政投融資】
(再掲 第2章第1節 参照)
5.その他の取組
(1)再生可能エネルギー推進に向けた規制・制度見直し
2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けて、再エネに係る規制・制度の見直しも本格的に検討が開始されています。2020年11月から、内閣府特命担当大臣(規制改革)の下で、関連府省庁にまたがる再エネ等に関する規制等を総点検し、必要な規制見直しや見直しの迅速化を促すことを目的として、「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」が開催され、これまで24回にわたって、必要な規制・制度の見直しが検討されてきました。
同タスクフォースにおける規制・制度見直しの進捗として、2022年度においては、例えば、再エネ設備の保安に係る規制の合理化が実施されています。
具体的には、大規模な再エネ設備等(電圧5万V以上)について、遠隔監視等のスマート保安技術の活用や第2種電気主任技術者による確実な監督を前提に、「第2種電気主任技術者」に代わり、「担当技術者」が設置場所へ2時間以内に到着できる体制も認めることとする規制の見直しを実施しました。
また、再エネ発電設備を設置する場所は農地、林野等、様々ですが、例えば、都市公園において駐車場屋根置き太陽光発電設備等の設置を進めることも再エネの推進につながります。この点、「公募設置管理制度」(以下、Park-PFI)を活用した都市公園への駐車場屋根置き太陽光発電設備等の導入は、災害時の電源確保及び収益の一部還元による公園整備という観点からも有効であることも踏まえ、当該駐車場屋根置き太陽光発電設備が、Park-PFIの公募対象公園施設に含まれることを、地方公共団体や事業者に周知する措置を実施しました。
なお、その他の分野においても、順次規制・制度の見直しの検討が進められています。
(2)再生可能エネルギーに係る環境影響評価に関する総合的な取組
再エネの地域における受容性を高め、最大限の導入を円滑に進めるためには、環境への適正な配慮と地域との対話プロセスが不可欠であり、環境影響評価制度の重要性は高まっています。
環境省及び経済産業省が開催した「再生可能エネルギーの適正な導入に向けた環境影響評価のあり方に関する検討会」において、「環境影響評価法(平成9年法律第81号)」に基づく風力発電事業の規模要件について、最新の知見に基づき、他の法対象事業との公平性の観点を踏まえ検討した結果、適正な規模要件は第一種事業について5万kW以上、第二種事業について3.75万kW以上5万kW未満という結論を得ました。これを踏まえ、環境影響評価法施行令を改正し、環境影響評価法及び電気事業法に基づく環境影響評価の対象となる第一種事業の規模を「1万kW以上」から「5万kW以上」に、第二種事業の規模を「0.75万kW以上1万kW未満」から「3.75万kW以上5万kW未満」に引き上げる措置を講じました(2021年10月4日公布、10月31日施行)。
本改正によって法の対象とならなくなる規模の事業について、地域の環境保全上の支障のおそれを防ぐため、当面、都道府県・環境影響評価法政令市の条例により適切に手当されることが必要であることから、地域の状況に応じて条例等の検討・整備の期間を確保するための経過措置を2022年9月末まで設けました。
また、2021年6月に閣議決定された規制改革実施計画で、風力発電について、「立地に応じ地域の環境特性を踏まえた、効果的・効率的なアセスメントに係る制度的対応の在り方について迅速に検討・結論を得る」とされたことを受け、環境省及び経済産業省が主催で「令和4年度再生可能エネルギーの適正な導入に向けた環境影響評価のあり方に関する検討会」を開催し、現行制度の課題を整理した上で、2023年3月に新制度の大きな枠組みについて取りまとめました。この取りまとめに基づき、2023年度は制度の詳細設計のための議論を行う予定です。
さらに、洋上風力発電については、2022年6月に閣議決定された規制改革実施計画で、「環境アセスメント制度について、立地や環境影響等の洋上風力発電の特性を踏まえた最適な在り方を、関係府省、地方公共団体、事業者等の連携の下検討する」とされたことを受け、関係省庁で「令和4年度洋上風力発電の環境影響評価制度の諸課題に関する検討会」を開催し、新たな環境影響評価制度の検討の方向性を取りまとめました。この取りまとめに基づき、検討すべきとされた論点を踏まえ、2023年度は具体的な制度について速やかに検討を進めます。
また、質の高い環境影響評価を効率的に進めるために、環境省では環境影響評価に活用できる地域の環境基礎情報を収録した「環境アセスメントデータベース”EADAS(イーダス)”」において、情報の拡充や更新を行い、公開しました。
(3)バイオマス活用推進基本計画について
「バイオマス活用推進基本法(平成21年法律第52号)」に基づき、2016年に策定された「バイオマス活用推進基本計画」について、バイオマスに関する状況の変化を勘案し、目標の達成状況の検証結果を踏まえ、2022年9月に新たな基本計画を閣議決定しました。
新たな基本計画では、農山漁村だけでなく都市部も含めた地域主体のバイオマスの総合的な利用を推進し、製品・エネルギー産業の市場のうち、一定のシェアを国産バイオマス産業で獲得することを目指すこととしており、「バイオマス年間産出量の約80%を利用」、「全都道府県でバイオマス活用推進計画を策定・全市町村がバイオマス関連計画を活用」、「製品・エネルギー産業のうち国産バイオマス関連産業での市場シェアを2倍(1%→2%)に伸長」を2030年度目標として設定しています。
この目標達成に向け、「バイオマスの活用に必要な基盤の整備」、「バイオマス又はバイオマス製品等を供給する事業の創出等」、「バイオマス製品等の利用の促進」等を推進していきます。
(4)バイオマス産業都市の構築
2012年9月に関係7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)が共同で取りまとめたバイオマス事業化戦略において、地域のバイオマスを活用したグリーン産業の創出と地域循環型エネルギーシステムの構築に向けたバイオマス産業都市の構築を推進することとされ、2022年度までに101市町村をバイオマス産業都市として選定しました。
(5)FIT制度におけるバイオマス燃料の持続可能性
輸入の農産物の収穫に伴って生じるバイオマス液体燃料(パーム油)については、FIT制度の創設時には第三者認証を求めていませんでしたが、認定量の急増を受けて、2018年度より、第三者認証によって持続可能性の確認を行うことになりました。また、PKS等の農産物の収穫に伴って生じるバイオマス固体燃料についても、持続可能性の確認を行うこととなったため、2019年度より、総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会バイオマス持続可能性ワーキンググループにおいて、持続可能性の確認項目の整理等の検討を行いました。
また、調達価格等算定委員会の意見を受けて、前述のバイオマス持続可能性ワーキンググループにおいて、新規燃料の取扱いや、ライフサイクルを通じた温室効果ガス排出量(以下「ライフサイクルGHG排出量」という。)についても検討を行ってきたところです。2023年1月の調達価格等算定委員会において、その検討結果が報告され、これらを踏まえて新規燃料の追加及びライフサイクルGHG排出量基準の導入について意見が出されました。残された論点については、2023年度も引き続き検討を行う予定です。
(6)みどりの食料システム戦略の推進
食料、農林水産業を持続可能なものとしていくため、農林水産省において2021年5月に策定した「みどりの食料システム戦略」に基づき、農山漁村に適した地産地消型エネルギーシステムの構築や、その一環として、バイオマス等の国内の地域資源や未利用資源の活用を促進していくこととしています。また、本戦略の実現に向けた法的な枠組みとして「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律(令和4年法律第37号)」が2022年4月に成立、同年7月に施行され、農林漁業における再エネの活用等に取り組む生産者の取組等を認定する計画認定制度が開始されました。
(7)地域の魅力と質を向上させる地方創生に資する地域脱炭素の推進
(再掲 第2章第1節 参照)