第1節 各部門における省エネの取組
1.業務・家庭部門における省エネの取組
業務・家庭部門は、産業部門に比べて、支出全体に占めるエネルギーコストの割合が小さく、省エネによる金銭的メリットが必ずしも多くないこと等から、需要家にとっては省エネを推進するインセンティブが弱く、省エネが進みにくい部門です。そのため、「トップランナー制度」により、自動車や家電等のエネルギー消費機器や、断熱材や複層ガラス、サッシ等の建材の高効率化・高性能化を製造事業者や輸入事業者に対して求めるとともに、エネルギー消費効率の表示等により、高効率製品の普及を促進し、省エネを一層進めています。
また、住宅・建築物の外皮(壁・窓等)の高断熱化を進めることは、空調を始めとしたエネルギー消費機器の効率をより高めることにつながります。さらに、住宅の高断熱化は省エネのみならず、高血圧症等からの健康の改善や、ヒートショックリスクの低減等にも効果的であることが注目されています。このように、省エネだけでなく健康にも寄与する住宅の断熱化を進めるため、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成27年法律第53号)」(以下「建築物省エネ法」という。)に基づき、新築時の断熱化を含む省エネ基準への適合を施主に対して求めるとともに、予算や税を通じた省エネ住宅・建築物の普及拡大支援を進めています。
〈具体的な主要施策〉
(1)省エネ法に基づくベンチマーク制度による業務部門の省エネの推進【制度】
省エネ法では、工場・事業場の設置者に対し、省エネの取組を実施する際の目安となるべき判断基準(設備管理の基準やエネルギー消費効率改善の目標(中長期的に見て年平均1%以上低減)等)を示すとともに、一定規模以上の事業者(年度で原油換算1,500kl以上のエネルギーを使用する事業者として経済産業大臣が指定する「特定事業者」、「特定連鎖化事業者」及び「認定管理統括事業者」のことを指し、2022年7月末時点で約12,000者を指定)には、エネルギーの使用状況等の報告を求め、省エネの取組が不十分な場合には指導・助言等を行っています。
また、既に省エネの取組を進めてきた事業者の省エネの状況を踏まえ、エネルギー消費効率を中長期的に見て年平均で1%以上低減していくこととは別に、業種・分野別に中長期的に目指すべき水準(ベンチマーク:業種ごとに上位1〜2割の事業者が達成しているエネルギー消費効率のこと)を設定し、その達成を促す「ベンチマーク制度」を、2009年度から導入しました。
ベンチマーク制度については、2016年度からコンビニエンスストア業が、2017年度からホテル業、百貨店業が、2018年度から食料品スーパー業、貸事務所業、ショッピングセンター業が、2019年度から大学、パチンコホール業、国家公務が対象に加わっており、産業・業務部門のエネルギー消費量の7割をカバーしています。
2021年度には国家公務のベンチマークにおいて、事業者の省エネの取組を適切に評価するため、指標・目標値の見直しを行うとともに、データセンター業を新たにベンチマーク対象業種としました。
(2)省エネ法に基づくトップランナー制度による機器の効率改善【制度】
省エネ法に基づくトップランナー制度を通じて、製造事業者及び輸入事業者に対して機器の効率改善を促した結果、多くの機器において、基準の策定当初の見込みを上回る効率改善が達成されています。
トップランナー制度については、個別機器のさらなる効率向上を図るため、基準の見直し等について検討を行っています。具体的には、2022年5月に家庭用エアコンディショナーの新たな省エネ基準を策定しました。また、断熱材のうちグラスウールと押出法ポリスチレンフォームについては、2030年以降に新築される住宅・建築物に求められる省エネ性能を踏まえ、2030年度に求められる熱損失防止性能として新たな目標基準値を検討し、2022年10月に取りまとめられました。
なお、トップランナー制度の対象機器等は、2023年3月時点で、32品目(うち3品目は建材)となっています。
(3)省エネ機器に関する情報提供
家電製品やガス石油機器等について、省エネ機器のさらなる普及を促進すべく、小売事業者表示制度(省エネルギーラベル1及び統一省エネルギーラベル2)を活用し、消費者に対して省エネ情報の提供を行いました。制度をより効果的に実施するため、家電製品や機器のデータの整理を行うとともに、小売事業者等が容易に各機器のラベルを表示・印刷できるようウェブサイト(省エネ型製品情報サイト)を運営しています。
また、2022年9月には、エアコンの小売事業者表示制度を改正(統一省エネルギーラベル等を改正)し、デザインや多段階評価制度の評価方法の変更等を行いました。
(4)業務・家庭部門における省エネを促進するための情報提供事業
省エネへの理解や関心度を高めることによって省エネ行動を促し、業務・家庭部門における省エネを促進することを目的として、一般消費者及び事業者等に向けて省エネに関する客観的な情報や省エネ対策の先進事例等に関する情報提供を行いました。
具体的には、夏季・冬季における省エネの呼びかけ、家庭や企業で実践できる効果的な省エネ行動をまとめた「省エネ・節電メニュー」の作成・周知、省エネ関連のイベント・メディア等を活用した省エネ施策の紹介や省エネ機器・省エネ支援サービスの周知、住宅の省エネに関する認知度・理解度向上等、省エネに関する情報提供を行いました。
(5)ZEB・ZEHの実現・普及に向けた支援【2022年度当初:80.9億円の内数(経済産業省)、200.0億円の内数(国土交通省)、55.0億円の内数(ZEB:環境省)、110.0億円の内数(ZEH:環境省)】
ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)とは、大幅な省エネを実現した上で、太陽光発電等の再エネにより、年間で消費する一次エネルギー量を正味でゼロとすることを目指した建築物及び住宅です。省エネと快適性を両立させるとともに、業務・家庭部門におけるエネルギー消費の抜本的改善に資するものと期待されています。
建築物に関しては、2030年度以降に新築される建築物について、ZEB基準の水準の省エネ性能の確保を目指すとする政府目標の達成に向けて、ZEBを推進する設計事務所や建築業者、オーナーの発掘・育成や、さらなるZEBの普及促進等を図っています。経済産業省では、エネルギー消費量が大きい大規模な建築物を対象として、省エネ効果が期待されているものの、現行のエネルギー消費性能の計算プログラムでは評価できない先進的な技術の導入によるZEB化の実証を行いました。また、環境省では、特に災害時に自立的なエネルギー供給が可能となるレジリエンス強化型ZEBや既存建築物のZEB化改修に注力し、民間建築物や地方公共団体が所有する建築物におけるZEBのさらなる普及拡大を支援しました。引き続き両省で連携しながら、ZEBの市場拡大及び自立的普及に向けた取組を進めていきます。
住宅に関しては、2030年度以降に新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネ性能の確保を目指すとする政府目標に向けて、経済産業省では、再エネ等のさらなる自家消費拡大を目指した次世代ZEH+(ゼッチ・プラス)や、21層以上の集合住宅におけるZEH-M(ゼッチ・マンション)の実証を支援しました。国土交通省では、中小工務店等が連携して建築するZEHへの支援を、環境省では、ZEH、ZEH+及び20層以下の集合住宅におけるZEH-Mのさらなる普及を支援しました。引き続き三省で連携しながら、ZEHの市場拡大及び自立的普及に向けた取組を進めていきます。
(6)高性能建材等の実証・普及に向けた支援【2022年度当初:80.9億円の内数(経済産業省)、110.0億円の内数(環境省)】
既存住宅の断熱・省エネ性能の向上を図るため、経済産業省において工期短縮が可能な高性能断熱建材や蓄熱、調湿等の付加価値を有する省エネ建材の導入の実証を支援しました。また、環境省においては高性能建材による戸建住宅及び集合住宅の断熱リフォーム支援事業を実施し、断熱改修の一層の普及を支援しました。
(7)三省連携による住宅の省エネリフォームへの支援強化【2022年度第2次補正:1,000億円の内数(先進的窓リノベ事業:経済産業省・環境省)、300.0億円(給湯省エネ事業:経済産業省)、1,500億円の内数(こどもエコすまい支援事業:国土交通省)】
住宅内の熱の多くが失われている窓の断熱改修と、家庭部門における最大のエネルギー消費源である給湯器の効率化等を促進するため、経済産業省・国土交通省・環境省が連携した新たな住宅省エネ化支援制度を創設しました。
(8)住宅・建築物の省エネ基準への適合の確保
住宅以外の一定規模以上の建築物の建築物エネルギー消費性能基準(以下「省エネ基準」という。)への適合義務の創設や、建築物エネルギー消費性能向上計画の認定制度の創設等の措置を講ずる建築物省エネ法が、2015年7月に公布され、2017年4月に全面施行されました。
また、住宅・建築物の省エネ性能の一層の向上を図るため、省エネ基準への適合義務の対象を全ての新築住宅・建築物へ拡大することや、住宅トップランナー制度の対象に分譲マンションを追加すること等を内容とする「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)」(以下「改正建築物省エネ法」という。)が、2022年6月に公布されました。改正建築物省エネ法の円滑な施行に向け、住宅・建築物の関連事業者等に対して、全国各地域で改正内容等についての講習会を実施しました。
(9)環境・ストック活用推進事業【2022年度当初:66.3億円】
住宅・建築物の省エネ対策を促進するため、先導的な省CO2技術を導入する住宅・建築物リーディングプロジェクト、建築物の省エネ改修及び住宅・建築物の省エネ性能に係る診断・表示、複数の住宅・建築物の連携により高い省エネ性能を実現するプロジェクト等に対して支援を行いました。
(10)住宅に係る省エネルギー改修税制【税制】
既存住宅において一定の省エネ改修(高断熱窓への取替や内窓の新設等)を行った場合で、当該改修に要した費用が一定額以上のものについて、所得税の税額控除及び固定資産税の特例措置が講じられています。
(11)優良住宅整備促進事業【2022年度当初:236.23億円の内数】
住宅金融支援機構が行う証券化支援事業の枠組みを活用し、ZEH等の省エネ性能に優れた住宅を取得する際の融資金利引下げを行う「フラット35S」を実施しました。
(12)住宅性能表示制度等の効果的運用【制度】
住宅の性能について消費者等の選択を支援するため、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)」に基づき、省エネ性能を含む住宅の性能をわかりやすく表示する「住宅性能表示制度」の普及に加え、建築物を室内等の環境品質・性能の向上と省エネ等の環境負荷の低減という両面から総合的に評価し、わかりやすく表示するシステムである建築環境総合性能評価システム(CASBEE)の開発及びその普及を推進しました。
また、建築物省エネ法における誘導措置として、省エネ性能に優れた建築物の認定制度及び省エネ基準適合認定マーク、省エネ性能表示のガイドラインに従った「建築物省エネルギー性能表示制度(BELS:Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)」の普及促進を図っています。また、改正建築物省エネ法により省エネ性能表示制度が強化されたことを受け、施行に向けて新たな表示ルール等の検討を行っています。
(13)低炭素住宅・建築物の認定【制度】
「都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)」に基づき、省エネ基準より高い省エネ性能を有し、低炭素化に資する措置等が一定以上講じられている認定低炭素建築物の普及促進を図りました。2022年10月には認定基準を改正し、求める省エネ性能をZEH・ZEB水準に引き上げました。
(14)家庭における脱炭素ライフスタイル構築促進事業【2022年度当初:6億円の内数】
各家庭で省エネや省CO2化を促進するためには、ライフスタイルに応じた具体的なアドバイスが効果的です。さらなる脱炭素ライフスタイルへの転換を促進し、家庭部門からの排出削減を実現することを目的に、「家庭エコ診断制度」を実施し、民間企業や地方公共団体等のネットワークを活用して、家庭における着実な省エネを推進しました。また、個人でも診断実施が可能な「うちエコ診断WEBサービス」を提供することで、診断件数の増加を図りました。
(15)エネルギー小売事業者の省エネガイドラインの検討
一般消費者が家庭において適切に省エネを進めることができるよう、省エネ法ではエネルギー供給事業者に対して、一般消費者へ省エネに資する情報を提供するよう努力義務を求めています。2016年4月から電力、2017年4月からはガスの小売全面自由化が始まり、エネルギー供給事業者がより多様なサービスを提供するようになっており、家庭でのエネルギーの使用方法も大きく変化してきています。現在は、エネルギー小売事業者に対して、省エネ情報の提供に関する指針や、ガイドラインを提示しています。
2020年度には、一般消費者へのアンケート調査等も実施し、省エネ行動をより一層促すための情報提供のあり方について議論を行いました。また、2021年度には、エネルギー小売事業者に求めている一般消費者への省エネ情報の提供に関する指針・ガイドラインを改正しました。さらに、2022年度からは、情報提供の取組状況を評価して公表する「省エネコミュニケーション・ランキング制度」の本格運用を開始しました。
(16)ナッジ×デジタルによる脱炭素型ライフスタイル転換促進事業【2022年度当初:18億円】
①ナッジ等の行動科学の知見とAI/IoT等の先端技術の組合せ(BI-Tech)
行動科学の理論に基づくアプローチ(ナッジ(nudge:そっと後押しする)等)により、国民ひとりひとりの行動変容を、情報発信等を通じて直接促進し、ライフスタイルの自発的な変革・イノベーションを創出する、費用対効果が高く、対象者にとって自由度のある新たな政策手法を検証しています。
具体的には、デジタル技術によりエネルギーの使用実態や環境配慮行動の実施状況等を客観的に収集、解析し、ナッジ等の行動科学の知見とAI/IoT等の先端技術を組み合わせた「BI-Tech」により、ひとりひとりに合った快適でエコなライフスタイルを提案することで、脱炭素に向けた行動変容を促しています。
例えば、ナッジ等を活用した環境教育プログラムを開発し、全国の小学校・中学校・高等学校の教育現場で実践したところ、プログラムの実施後に平均で5.1%のCO2排出削減効果(電気・ガスの合計)が統計的有意に実証されました。また、ナッジの活用を終了した後の効果の持続状況について検証したところ、1年後にも効果が持続していることが確認されました。このプログラムの特筆すべき点としては、一般的にナッジの効果は持続しないとされている中で、ナッジを実施している間はもとより、ナッジ終了後も効果が持続することを明らかにしたことが挙げられます。
②日本版ナッジ・ユニット
ナッジを含む行動科学の知見に基づく取組が早期に社会実装され、自立的に普及することを目標に、2017年4月より環境省のイニシアチブの下、産学政官民連携による日本版ナッジ・ユニット「BEST」を発足しています。2017年度から計29回の連絡会議を開催し、全国の優良事例を評価するベストナッジ賞コンテストを実施するとともに、行動科学に関する環境省及び地方公共団体の取組や、エビデンス(科学的根拠)に基づく政策立案(EBPM:Evidence-based policymaking)、様々な分野の社会課題の解決に対して行動科学の知見を用いた取組等について議論しています。
2.運輸部門における多様な省エネ対策の推進
運輸部門は、「第6次エネルギー基本計画」において最も大きい省エネ量を見込んでいる部門です。2030年度のエネルギーミックスにおける省エネの見通しを確実なものとするためには、乗用車やトラック等の輸送機器単体のエネルギー消費効率の改善を進めるとともに、貨物輸送事業者や貨物を貨物輸送事業者に輸送させる者(以下「荷主」という。)等がAI/IoT等の技術を活用して連携し、省エネを推進していく必要があります。
〈具体的な主要施策〉
(1)自動車の燃費基準【規制】
乗用車・トラック等の燃費改善については、省エネ法に基づくトップランナー制度(自動車メーカー等に対し、目標年度までに販売車両の平均燃費値を基準値以上にすること等を求める制度)による規制と、エコカー減税等の支援策の実施により進展し、トップランナー制度の基準策定当初の見込みを上回り、特に乗用車の燃費は大幅に改善してきました。この結果、1996年度に12.1km/Lだったガソリン乗用車の平均燃費は、2021年度には18.9km/L(WLTCモード)まで改善しました。さらなる燃費向上を進めるため、2030年度を目標年度とする野心的な燃費基準を定め、その遵守に向けて執行を強化していきます。
(2)自動車重量税の軽減措置【税制】
2023年度税制改正において、自動車重量税のエコカー減税については、半導体不足等の状況を踏まえ、異例の措置として現行制度を2023年12月末まで維持した上で、電動車の一層の普及促進を図る観点から、2024年1月からは、減免区分の基準となる燃費基準の達成度を段階的に引き上げ、現行制度を維持する期間を含めて適用期限を3年延長することとなりました(2026年4月末まで)。クリーンディーゼル車の取扱いについても、2023年12月末までは現行制度を維持し、2024年1月以降はガソリン車と同等に取扱うこととなりました。
(3)自動車税・軽自動車税の減免措置【税制】
自動車税及び軽自動車税の環境性能割については、燃費性能に応じた税率区分を設定し、その区分を2年ごとに見直すことにより、燃費性能がより優れた自動車の普及を促進するものであり、2022年度末は見直しの時期に当たりましたが、半導体不足等の状況を踏まえ、異例の措置として現行の税率区分を2023年12月末まで維持することとなりました。その上で、電動車の一層の普及促進を図る観点から、税率区分の基準となる燃費基準の達成度を段階的に引き上げるとともに、次回の見直しは3年後(2025年度末)とされました。クリーンディーゼル車の取扱いについても、2023年12月末までは現行制度を維持し、2024年1月以降はガソリン車と同等に取扱うこととなりました。
また、自動車税及び軽自動車税の種別割のグリーン化特例については、環境性能割の税率区分の次回の見直し期限等も勘案し、3年延長することとなりました。
(4)クリーンエネルギー自動車及び充てんインフラの導入促進【2021年度補正:375.0億円、2022年度当初:140.0億円】
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、電気自動車や燃料電池自動車等のクリーンエネルギー自動車の普及を促進し、運輸部門におけるCO2の排出抑制や石油依存度の低減を図るとともに、災害による停電等の発生時において、電動車から電気を取り出すための外部給電機能を有するV2H充放電設備や外部給電器の導入を支援しました。また、クリーンエネルギー自動車の普及と表裏一体にある、充電・水素充てんインフラの整備を進めました。
(5)バッテリー交換式EVとバッテリーステーション活用による地域貢献型脱炭素物流等構築事業【2022年度当初:12.0億円】
配送等に係る車両を電動化するとともにバッテリー交換式とし、配送拠点等を災害時にも稼働しうるエネルギーステーション化することで、脱炭素物流モデルと配送拠点等の防災拠点化を同時実現する地域貢献型の新たな脱炭素物流モデルを構築する事業に対する補助を行いました。
(6)脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業【2022年度当初:55.0億円】
新たなライフスタイルにあわせた電動モビリティのシェアリングサービスを活用した脱炭素型地域交通モデル構築に対する補助や、地域再エネや蓄電池等を活用した再エネ自給率最大化と防災向上の同時実現を図る自立・分散型エネルギーシステム構築に対する補助を行いました。
(7)交通需要マネジメントの推進
道路交通渋滞を緩和し、道路交通の円滑化を図るため、バイパス・環状道路の整備や交差点の改良等の交通容量の拡大策等に加えて、既存ネットワークの輸送効率を向上させるために、情報提供の充実等の交通量の時間的・空間的平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)を推進しました。
(8)自動走行の実現に向けた取組の推進
車両の効率的な走行を可能とする自動走行技術の社会実装を実現し、世界に先駆けて省エネを推進するため、自動運転レベル4等の先進モビリティサービスの普及に向けて、研究開発から実証実験、社会実装まで一貫した取組を行うプロジェクトを2021年度より開始し、2022年度は、鉄道廃線跡等における遠隔監視のみによる自動運転移動サービスの開始に向けた取組等を実施しました。
また、自動運転車の安全性評価手法の研究開発にも取り組み、2022年11月に自動車専用道を対象としたシナリオに基づく安全性評価フレームワークが、国際標準ISO34502として発行されました。
(9)道路交通情報提供事業の推進
交通管制システム等で収集した道路交通情報を積極的に提供するほか、民間事業者が行う道路交通情報提供サービスの多様化・高度化を支援することにより、渋滞緩和及び環境負荷低減を図りました。
(10)違法駐車対策の推進【規制】【制度】
都市における円滑な交通流を阻害している違法駐車を防止し排除するため、駐車規制の見直しや、地域の実態に応じた取締り活動ガイドラインに基づく取締り等による駐車対策を推進しました。
(11)交通安全施設等の整備【2022年度当初178.3億円】
交通管制システムの高度化及び信号機の改良等を推進し、交差点における発進・停止回数を減少させること等により、道路交通の円滑化等を図るとともに、消費電力が電球式の約6分の1以下であるLED式信号機の整備を推進しました。
(12)道路施設の省エネ化
道路照明灯の新設及び既設の高圧ナトリウム灯等の更新に当たり、省エネ対策や環境負荷の低減に資するLED道路照明灯の整備を実施するとともに、センサー技術の活用等による道路照明の高度化の開発及び導入を推進しました。
(13)モーダルシフト、物流の効率化等
鉄道・内航海運等のエネルギー消費効率が優れた輸送機関の活用を進めるため、「モーダルシフト等推進事業」において、荷主企業と物流事業者が協力して行う事業への支援を実施するとともに、「グリーン物流パートナーシップ会議」において、荷主企業、物流事業者等の関係者の連携による、物流分野における環境負荷の低減、物流の生産性向上等、持続可能な物流体系の構築に資する優れた取組を行った事業者に対して表彰を行いました。あわせて、貨物輸送における環境にやさしい鉄道・海運の利用促進を図ることを目的とした「エコレールマーク」・「エコシップマーク」の普及等によりモーダルシフトを推進しました。
また、物流の効率化に資するよう、トラックの大型化・トレーラー化によるトラック輸送の効率化、国際物流に対応した道路ネットワークの整備、国際コンテナ戦略港湾政策の推進、国際バルク戦略港湾における大型船が入港できる港湾施設の整備や企業間連携による共同輸送の促進、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成17年法律第85号)」による支援等を通じて、効率的な物流体系の構築を推進しました。
さらに、船舶分野のさらなる低炭素化に向けて、LNG燃料船の自立的普及を目指し、導入を支援しました。
(14)カーボンニュートラルポートの形成
我が国の産業や港湾の競争力強化と脱炭素社会の実現に貢献するため、港湾において、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や水素等の受入環境の整備等を図るカーボンニュートラルポート(CNP)の形成を推進しています。2022年12月に施行された「港湾法の一部を改正する法律」により、港湾管理者が、多岐にわたる関係者が参加する港湾脱炭素化推進協議会における検討を踏まえて、港湾脱炭素化推進計画を作成する等、CNPの形成をより一層推進する体制が構築されました。また、港湾管理者による同計画の作成を支援するため、同計画の作成の参考となるマニュアルを公表するとともに、同計画の作成に対する補助、助言等を実施しました。また、LNGバンカリング拠点の整備、停泊中船舶に陸上電力を供給する設備の導入の検討、低炭素型荷役機械の導入、水素を動力源とする荷役機械等導入の検討、洋上風力発電の導入促進、ブルーカーボン生態系の活用等を推進しました。加えて、港湾のターミナルにおける脱炭素化の取組を促進するため、コンテナターミナルにおける脱炭素化の取組状況を客観的に評価するCNP認証(コンテナターミナル)について、国際展開も視野に入れた制度案を取りまとめました。
(15)航空の脱炭素化推進の取組
航空の脱炭素化に向けて、2022年6月に「航空法等の一部を改正する法律」が成立し、航空会社や空港管理者等が主体的・計画的に取組を進めるための制度的枠組みを導入しました。また、同年12月には同法に基づき、今後の航空における脱炭素化の基本的な方向性を示す「航空脱炭素化推進基本方針」を策定しました。当該方針に沿って、航空会社や空港管理者による脱炭素化推進計画の作成を促進します。
国際航空分野では、国際民間航空機関(ICAO)において、2022年10月、日本が議論をリードしてきたCO2排出削減の長期目標について「2050年までのカーボンニュートラル」が採択されました。
また、「航空機運航分野におけるCO2削減に関する検討会」で取りまとめた航空機運航分野の脱炭素化に向けた工程表の取組を着実に進めていくため、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の導入促進、管制の高度化等による運航の改善、機材・装備品等への環境新技術の導入の3つのアプローチごとに、関係省庁と共同して官民協議会を設置しました。SAFの導入促進については、2030年時点の本邦航空会社による燃料使用量の10%をSAFに置き換えるという目標の達成に向け、国際競争力のある国産SAFの製造・供給、中部空港における輸入ニートSAFを用いた実証事業を通じたSAFのサプライチェーンの構築、CORSIA適格燃料の登録・認証取得(ICAOにおける環境持続可能性・GHG排出量の評価等)、シンポジウム開催による利用者等への航空脱炭素化の取組の理解促進等に取り組んでいます。
さらに、空港の脱炭素化推進のため、「空港分野におけるCO2削減に関する検討会」において、空港施設・空港車両等からのCO2排出削減、空港への再エネ導入等の空港脱炭素化に向けた検討を進めるとともに、関係者の協力体制構築を図るため「空港の脱炭素化に向けた官民連携プラットフォーム」を設置しています。また、空港脱炭素化に資する設備導入や実施計画策定を行う空港管理者及び空港関係事業者を支援しました。2022年12月には、空港脱炭素化に向けた計画策定や再エネ・省エネ設備の導入を適切かつ迅速に行うための一助となることを目的として「空港脱炭素化推進のための計画策定ガイドライン(第二版)」及び「空港脱炭素化事業推進のためのマニュアル(初版)」を公表しました。
(16)鉄道分野のさらなる環境性能向上に資する取組
鉄道分野のカーボンニュートラルに向け、「鉄道分野におけるカーボンニュートラル加速化検討会」を開催し、「先進的な鉄道事業者のさらなる取組」、「幅広い鉄道事業者への横展開」を加速化するための検討等を行うとともに、「鉄道脱炭素官民連携プラットフォーム」を開催し、鉄道事業者と省エネ・再エネ関係の技術や知見等を有する民間企業等がそれぞれの情報を共有することを通じて、鉄道分野・鉄道関連分野の脱炭素化の実現を推進しました。
鉄道分野におけるさらなる省エネ化・省CO2化を促進するため、鉄道事業等におけるネットワーク型低炭素化促進事業により、エネルギーを効率的に使用するための先進的な省エネ設備・機器の導入を行う鉄道事業者等を支援しました。
また、エネルギー効率の良い新造車両等の導入については固定資産税の特例措置も講じられていますが、令和5年度税制改正により、適用期限が延長されることとなりました(2025年3月末まで)。
(17)公共交通機関の利用促進
鉄道・バス等の公共交通機関については、混雑緩和、輸送力増強、速達性の向上等を図ることが重要です。鉄道については、三大都市圏において混雑緩和や速達性向上のための都市鉄道新線等の整備を推進しました。また、駅施設の改良やバリアフリー化を支援することによる利用者利便の向上施策を講じました。一方、バスについては、公共車両優先システム(PTPS)の整備、バス専用・優先レーンの設定等により、定時運行の確保を図るとともに、バスロケーションシステムの整備等に対する支援措置による利用者利便の向上施策を講じました。
また、事業所単位でのエコ通勤の取組支援として、エコ通勤優良事業所認証制度により829事業所を認証・登録(2023年3月末現在登録数)し、マイカーから公共交通等への利用転換の促進を図りました。
加えて、多様な交通モードが選択可能で利用しやすい環境を創出し、人とモノの流れや地域活性化のさらなる促進のため、バスを中心とした交通モード間の接続(モーダルコネクト)の強化を推進しています。
2016年4月に開業したバスタ新宿では、トイレ及びベンチの増設等の待合環境の改善や国道20号の線形改良及び左折レーン延伸等の渋滞対策に取り組んできました。今後は、バスタ新宿や品川駅及び神戸三宮駅等を始めとして、官民連携を強化しながら、道路事業による戦略的な集約型公共交通ターミナル「バスタプロジェクト」の整備を全国で展開していきます。
(18)エコドライブの普及・推進
警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省で構成する「エコドライブ普及連絡会」において、行楽シーズンであり自動車に乗る機会が多くなる11月を「エコドライブ推進月間」とし、シンポジウムの開催や全国各地でのイベント等を連携して推進し、積極的な広報を行いました。あわせて、当該連絡会が策定した「エコドライブ10のすすめ」の普及・推進に努めました。
(19)AI・IoT等を活用したさらなる輸送効率化推進事業費補助金【2022年度当初:62.0億円】
発荷主・輸送事業者・着荷主等が連携計画を策定し、物流システムを標準化・共通化した上で、AIやIoT等の新技術の導入によりサプライチェーン全体の効率化を図る取組や、トラック事業者と荷主等が車両動態管理システム等を導入し、連携して輸送効率化を図る取組に対して、実証に必要な経費を支援しました。また、自動車の点検整備に係るビッグデータを分析すること等により、予防整備等が適切に行われる環境を整備し、使用過程車の実燃費の改善を図るため、整備事業者に対して、不具合情報の外部出力が可能なスキャンツールの導入に必要な経費を支援しました。さらに、内航海運事業者等が、革新的省エネ技術のハード対策と運航計画や配船計画の最適化等のソフト対策を組み合わせた省エネ船舶を導入して輸送効率化を図る取組の実証を支援しました。
(20)省エネ法に基づく運輸分野の省エネルギー措置【規制】
省エネ法では、輸送事業者及び荷主を規制対象とし、輸送事業者及び荷主に対して省エネの取組を実施する際の目安となる判断基準(省エネに資する輸送用機械器具の使用、省エネに資する輸送方法の選択、エネルギー消費効率の改善目標(中長期的に見て年平均1%以上低減)等)を示すとともに、一定水準以上の輸送能力を有する輸送事業者及び一定量以上の輸送を行わせる荷主には、エネルギーの使用状況等を毎年度報告させ、省エネの取組が不十分な場合には指導・助言等を行うこととしています。
2022年5月に省エネ法が改正され、従来の省エネに関する措置に加えて、非化石エネルギーへの転換に関する措置が新設されたことから、2023年4月の改正省エネ法の施行に向けて、交通政策審議会交通体系分科会環境部会グリーン社会小委員会及び総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会荷主判断基準ワーキンググループにおいて実施した、輸送事業者及び荷主に対する非化石エネルギーへの転換に関する判断基準についての議論を踏まえ、2023年3月に当該判断基準を策定しました。当該判断基準においては、2030年度における輸送に使用する非化石エネルギー自動車の台数の割合等の非化石エネルギーへの転換目標の目安を示しており、輸送事業者及び荷主は、当該目安を踏まえて非化石エネルギーへの転換の目標を定め、その実現に努めることとしています。
(21)輸送機器の抜本的な軽量化に資する新構造材料等の技術開発事業【2022年度当初:24.0億円】
軽量化による輸送機器の省エネ化を目指し、部素材・製品メーカー、大学、国立研究開発法人等が連携して、強度、加工性等の複数の機能が向上した革新的な鋼材、アルミニウム材、マグネシウム材、チタン材、炭素繊維及び炭素繊維強化樹脂等の高性能軽量材料の開発や、複数の材料を適材適所に複合的に用いるマルチマテリアル化実現のための異種材料の接着を含めた接合技術の開発を行うとともに、本事業成果を一体的に集約した研究開発拠点の運用を開始しました。
(22)電気自動車用革新型蓄電池技術開発【2022年度当初:25.0億円】
電気自動車等の普及に向けては、ガソリン車並みの航続距離と車としての価値(低重量や高積載容量、短時間充電等)の両立を実現するために、高いエネルギー密度や耐久性・安全性を持つ革新型蓄電池の技術開発が必要です。また、資源制約も大きな課題となっています。こうした観点を踏まえ、安価で供給リスクの少ない材料を使用し、高エネルギー密度化や安全性等が両立可能なハロゲン化物電池及び亜鉛負極電池を実用化するため、電池の材料・電極開発やセル化技術等の技術開発を行いました。
(23)蓄電池の国内生産基盤の確保【2021年度補正:1,000.0億円 2022年度当初:15.0億円】
2050年カーボンニュートラル実現のためには、自動車の電動化や再エネの普及拡大の鍵となる蓄電池について、安定・強靱なサプライチェーンを構築することが不可欠です。日本における蓄電池のサプライチェーン強靱化を図るため、国内で大規模に、先端的な蓄電池・材料・部材の生産技術・リサイクル技術を導入する事業者に対し、建物・設備の導入及びこうした生産技術等に関する研究開発を支援しました。
(24)省エネ型電子デバイス材料の評価技術の開発事業【2022年度当初:21.5億円】
電池・素材メーカー間のすりあわせを高度化し、電池の新材料が全固体電池材料として有用かを評価するため、標準電池の開発を行うととともに、標準電池の一部分を新材料に入れ替えて性能評価する共通基盤の構築に取り組みました。
(25)炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発【2022年度当初:6.4億円】
木質バイオマスを原料とするセルロースナノファイバーについて、社会実装・市場拡大の早期実現に向け、製造プロセスにおけるコスト低減や製造方法の最適化、量産効果が期待できる用途に応じた複合化技術・加工技術等の開発を促進し、同時に安全性評価に必要な基盤情報の整備を行いました。
3.産業部門等における省エネの加速
産業部門においては、省エネ法に基づく規制措置や省エネ設備導入支援予算等の支援措置等を通じ、個々の事業者単位で省エネの取組が進んできましたが、エネルギー消費効率の改善は足踏みが続いており、省エネ法の特定事業者の約5割が対前年度比で悪化している状況です。経済成長と両立する徹底した省エネを進めるためには、さらなる省エネ設備への投資促進や、複数事業者の連携による省エネ等、省エネ手段の多様化により、事業者のエネルギー消費効率改善を促すことが必要です。
〈具体的な主要施策〉
(1)省エネ法に基づくエネルギー管理の徹底【制度】
省エネ法では、工場・事業場の設置者に対し、省エネの取組を実施する際の目安となるべき判断基準(設備管理の基準やエネルギー消費効率改善の目標(中長期的に見て年平均1%以上低減)等)を示すとともに、一定規模以上の事業者(年度で原油換算1,500kl以上のエネルギーを使用する事業者として経済産業大臣が指定する「特定事業者」、「特定連鎖化事業者」及び「認定管理統括事業者」を指し、2022年9月現在で約12,000者を指定。)には、エネルギーの使用状況等の報告を求め、省エネの取組が不十分な場合には指導・助言等を行っています。
また、事業者が自らの省エネの取組の立ち位置を把握するとともに、省エネの進捗度合いに応じたメリハリのある省エネの取組を促進するため、「事業者クラス分け評価制度(SABC評価制度)」に基づき、全ての特定事業者等を、当該報告の結果を踏まえて、S・A・B・Cの4段階にクラス分けしています。Sクラス事業者については、経済産業省のホームページ上に事業者名等を公表し、Bクラス事業者については、注意喚起文書を送付しています。また、Bクラス事業者のうち、立入検査・現地調査等を経て省エネの取組が不十分と認められた事業者は、Cクラス事業者に分類の上、省エネ法に基づく指導・助言等を行っています。2019年度には、SABC評価制度の見直しを実施し、ベンチマーク目標の達成状況によるS評価の付与が適切になされるように運用を見直しました。また、事業者のベンチマーク目標達成に向けての省エネの取組を評価するため、省エネの取組をまとめている中長期計画書に記載されている内容の実施状況を、定期報告書にて報告する仕組みを導入することとしました。
さらに、2017年8月に取りまとめられた総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会の意見において、「定期報告や中長期計画を多角的に整理・加工し、各事業者の省エネ取組を客観的に評価できるデータベースとして整備・提供すべき」と示されたことを受け、定期報告書等に係るデータを、より特定事業者等のニーズに沿った形でフィードバックするための検討を行い、事業者が同一業種内における自らの省エネの取組を確認できるツールや、業種別の省エネ取組ファクトシートを公開しました。
また、省エネ法の定期報告情報の任意開示の仕組みを新たに導入することで、事業者の省エネや非化石エネルギー転換等の取組の情報発信を促すこととしました。2023年3月には、この任意開示制度の宣言フォームを整備・公開し、省エネ法の特定事業者等が任意開示制度への参画の意思を表明できるようにしました。
(2)複数企業の連携によるさらなる省エネルギーの促進【制度】
事業者単位の省エネの取組に加えて複数の企業が連携する省エネの取組を促進するため、省エネ法の改正法案を第196回国会に提出し、2018年6月に成立、同年12月に施行されました。この省エネ法の改正により、複数企業が連携する省エネの取組を「連携省エネルギー計画」として認定し、省エネ量を企業間で分配して報告することを認めるとともに、一定の資本関係のある複数の事業者が一体的に省エネの取組を推進する場合、その管理を統括する事業者を「認定管理統括事業者」として認定し、当該事業者が定期報告等を一体的に行うことを可能としました。
(3)省エネ法に基づく産業部門ベンチマーク制度の見直し【制度】
2021年度に、事業者のさらなる省エネ取組を促すため、産業部門のベンチマーク制度について、一部業種の指標・目標値の見直しや、対象業種の拡大を行いました。今後は、ベンチマーク制度の目標年度である2030年度に向けて、支援策も活用しながら事業者の省エネの取組を促していきます。
また、電力供給業におけるベンチマーク制度については、2018年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」において、非効率な石炭火力に対して、新設を制限することを含めたフェードアウトを促す仕組み等を講じていくことが明記されたことを踏まえ、総合資源エネルギー調査会の電力・ガス事業分科会電力・ガス基本政策小委員会及び省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会合同の石炭火力検討ワーキンググループにおいて、石炭火力発電設備に対する規制的措置について議論し、取りまとめを行いました。
(4)先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金【2022年度当初:253.2億円】
工場・事業場におけるエネルギー消費効率の改善を促すため、省エネ性能の高い特定のユーティリティ設備や生産設備、先進的な省エネ設備等の導入等を行う事業者に対する支援を行いました。
(5)省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金【2022年度補正:250.0億円】
工場・事業場における省エネ性能の高い設備・機器への更新や複数事業者の連携、非化石エネルギーへの転換にも資する先進的な省エネ設備・機器の導入等を行う事業者に対する支援策を措置しました。
(6)省エネルギー投資促進支援事業費補助金【2022年度補正:250.0億円】
工場・事業場における省エネ性能の優れたユーティリティ設備や生産設備等への更新を行う事業者に対する支援策を措置しました。
(7)工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業【2022年度当初:37.0億円】
工場・事業場におけるCO2削減計画の策定や当該計画に基づく高効率設備への設備更新、電化・燃料転換等に対する支援を行いました。
(8)低炭素社会実行計画の推進・強化【制度】
産業界は、継続して主体的な温室効果ガス削減計画に取り組んでおり、2013年度以降は、経済団体連合会(以下「経団連」という。)加盟の個別業種や経団連に加盟していない個別業種による低炭素社会実行計画に基づき取組を進めてきました。
2021年6月に経団連は、「経団連低炭素社会実行計画」を「経団連カーボンニュートラル行動計画」へと改め、取組を強化していく旨を表明しています。この計画については、2021年10月に改訂された「地球温暖化対策計画」においても、引き続き産業界における対策の中心的役割と位置づけられており、2030年度の温室効果ガス削減目標の達成に向けて、産業界による自主的かつ主体的な削減貢献の取組を進めていくこととしています。また、同計画において、産業界は新たに中小企業も含めたカバー率の向上、政府の2030年度目標との整合性や2050年のあるべき姿を見据えた2030年度目標の設定、共通指標としての2013年度比のCO2排出削減率の統一的な見せ方やサプライチェーン全体のCO2排出量の削減貢献等に留意しながら、計画の見直しを行うこととしています。現在、114業種がこの自主的取組に参画しており、2020年度以降、2030年度目標を見直した業種が増加しています。
政府としても、透明性・信頼性・目標達成の蓋然性の向上の観点から、低炭素社会実行計画の2021年度実績について、審議会による厳格な評価・検証を実施し、各業界の取組が着実に実施されていることを確認しました。また、審議会による進捗点検等を踏まえ、PDCAサイクルの推進が図られていることを確認しました。さらに、自らの国内事業活動における削減だけでなく、低炭素製品・サービス等による他部門での削減貢献、優れた製品や技術、素材、サービスの普及等を通じた国際貢献、革新的技術の開発や普及による削減貢献といった各業種の取組についても深掘りし、可能な限り定量化することにより、貢献の可視化とベストプラクティスの横展開等を促進しました。
参画している業種は、国内事業活動における排出削減だけでなく、低炭素製品・サービスや優れた技術・ノウハウの普及により、地球規模での削減にも貢献しています。より多くの業種の参加促進や、審議会における業種横断的な意見交換を通じたベストプラクティスの競い合いや主体間連携の促進、国内外に向けた各業種の取組内容の積極的な発信、審議会による厳格な評価・検証を通じて、引き続き産業界の削減貢献に向けた取組を後押しします。
(9)脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム【2022年度当初:75.0億円】
省エネ技術の研究開発や普及を効果的に推進するため、開発リスクの高い革新的な省エネ技術について、シーズ発掘から事業化まで一貫して支援を行う提案公募型研究開発事業を実施しました。「省エネルギー技術戦略2016」に掲げる重要技術(2019年7月改定版)を軸に、個別課題推進スキームでは、技術開発の段階に応じて、FS調査フェーズ3件、インキュベーション研究開発フェーズ3件、実用化開発フェーズ16件、実証開発フェーズ3件の計25件を新規採択しました。重点課題推進スキームでは、1件を新規採択しました。
(10)高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発事業【2022年度当初:100.4億円】
IoT社会の到来により増加した膨大な量の情報を効率的に活用するため、ネットワークのエッジ側で動作する超低消費電力の革新的AIチップに係るコンピューティング技術や、新原理により高速化と低消費電力化を両立する次世代コンピューティング技術(量子コンピュータ、脳型コンピュータ等)等の開発を実施しました。
(11)省エネエレクトロニクスの製造基盤強化に向けた技術開発事業【2022年度当初:25.8億円】
産業のIoT化や電動化が進展し、それを支える半導体関連技術の重要性が高まる中、日本が保有する高水準の要素技術等を活用し、エレクトロニクス製品のより高性能な省エネ化を実現するため、新世代パワー半導体や半導体製造装置の高度化に向けた研究開発を実施しました。
(12)グリーン購入及び環境配慮契約の推進【制度】
国等における環境物品等の率先的な調達や環境に配慮した契約の実施は、日本全体の省エネ等の推進に資するものです。国等は、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号)」(以下「グリーン購入法」という。)及び「国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)」(以下「環境配慮契約法」という。)を踏まえ、照明や空調設備等の物品等を調達する際には、率先して省エネ機器・設備を導入するとともに、電力の供給を受ける契約や建築物に係る契約等において環境配慮契約の推進に取り組みました。
また、2022年度は、グリーン購入法において、新たな特定調達品目として「低放射フィルム」を追加するとともに、「テレビジョン受信機」と「家庭用エアコンディショナー」のエネルギー消費効率に係る判断の基準の見直しを行いました。また、環境配慮契約法においても、基本方針へ調達電力に占める再エネ電力の最低割合や新築建築物のZEB化の検討について明記する等の見直しを行いました。
(13)国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費【2022年度当初:4.9億円】
J-クレジット制度の運営に取り組み、同制度を利用した省エネ・再エネ設備の導入、森林整備等を促進するため、エネルギーマネジメントシステムの導入、水素・アンモニアの利用、再造林活動等に関する方法論の策定を行い、2023年3月時点では69の方法論へと拡充を行いました。また、活用しやすい制度を目指し、制度の改善、方法論の改定に取り組んでいます。
さらには、同制度でクレジットを創出・活用する企業・自治体等に対し、説明会を開催して同制度の周知・広報を行うとともに、制度利用支援等を実施しました。あわせて、同制度におけるクレジット需要を開拓するため、各種制度との連携を図りつつ、クレジット制度利用の推進事業を行いました。
(14)省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金【2022年度当初:12.3億円】
新設・既設事業所における省エネ設備の新設・導入等を行う際、民間金融機関等から融資を受ける事業者に対し、融資に係る利子補給事業によって支援するとともに、さらなる利用拡大のために金融機関と連携した制度利用の推進を行いました。
(15)中小企業等に対するエネルギー利用最適化推進事業費補助金【2022年度当初:8.0億円】
中小企業等に対し、省エネ診断事業を実施するとともに、自治体や学校が実施する省エネ関連セミナーに講師を派遣しました。また、多くの診断事業で得られた優良事例や省エネ技術を様々な媒体を通じて情報発信しました。
加えて、全国47都道府県で活動する自治体、金融機関、中小企業団体等と連携する「省エネお助け隊」(省エネルギー相談地域プラットフォーム)を構築し、きめ細かな省エネ診断や省エネ支援を通じて省エネの取組を促進しました。また、これまでの成果事例を取りまとめ、情報発信を行いました。
(16)中小企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業【2022年度補正:20.0億円】
エネルギー価格の高騰等の影響を受ける中小企業等に対する省エネ診断等を実施・拡充するとともに、省エネ診断・アドバイスを行える専門人材を育成し、専門人材プールの拡充方法や中小企業等への診断を抜本的に拡充するための課題や必要な方策について検討するための予算を措置しました。
(17)環境調和型プロセス技術の開発事業【2022年度当初:9.3億円】
日本の鉄鋼業は、排熱回収利用等の主要な省エネ設備を既に導入しており、製鉄プロセスにおけるエネルギー効率が現在、世界最高水準であることから、既存技術の導入によるエネルギーの削減ポテンシャルは少ない状況です。他方で、高炉法による製鉄プロセスでは鉄鉱石を石炭コークスで還元するため、多量のCO2が排出されることは避けられません。このため、製鉄プロセスにおけるさらなる省エネの実現に向け、製鉄プロセスのエネルギー消費量を約10%削減することを目指し、従来の製鉄プロセスでは活用できない低品位の原料を有効利用して製造したコークス(フェロコークス)を用いて、鉄鉱石の還元反応を低温化・高効率化するための技術開発を行いました。
なお、2021年度まで本事業で実施していた水素還元等プロセス技術の開発事業(COURSE50)については、その成果を踏まえ、グリーンイノベーション基金事業の製鉄プロセスにおける水素活用において、大幅なCO2排出削減を目指し、水素を用いて鉄鉱石を還元する技術のさらなる開発を行っています。
(18)先端計算科学等を活用した新規機能性材料合成・製造プロセス開発事業【2022年度当初:22.0億円】
これまで経験や勘、ノウハウに基づいて行われてきた機能性化学品及びファインセラミックスの合成・製造において、計算科学等を活用した革新的なプロセス開発に取り組みました。
(19)次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発【2022年度当初:14.0億円】
人工知能技術とその他関連技術による産業化に向けて、人工知能モジュールやデータ取得のためのセンサー技術、研究インフラ等を統合し、従来の人による管理では達成できないさらなる省エネ効果を得るとともに、人工知能技術の社会実装を加速し、将来の新たな市場シェアのいち早い獲得を目指します。2022年度は、人工知能技術の社会実装に向けた研究開発・実証、人工知能技術の導入加速化技術、製造業の設計や製造現場に蓄積されてきた「熟練者の技・暗黙知(経験や勘)」の伝承・効率的活用を支え、生産性向上による抜本的な省エネ化を実現する人工知能技術の研究開発を行いました。
(20)CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発プロジェクト【グリーンイノベーション基金:国費負担上限1,262億円】
廃プラスチック・廃ゴムからプラスチック原料を製造するケミカルリサイクル技術等に加えて、CO2から機能性化学品を製造する技術や、光触媒を用いて水とCO2から基礎化学品(オレフィン)を製造する人工光合成技術の開発を進めました。これにより、プラスチック原料製造からのCO2排出削減を目指します。
(21)未来社会創造事業(大規模プロジェクト型)【2022年度当初:90.6億円の内数】
環境中の熱源(排熱や体温等)をセンサー用独立電源として活用可能にする革新的熱電変換技術の研究開発を推進しました。
(22)革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業【2022年度当初:13.5億円】
パワーエレクトロニクス技術は、あらゆる機器の省エネ・高性能化につながる横断的技術であり、温暖化対策に貢献しつつ、日本の産業構造や経済社会の変革をもたらすイノベーションの鍵を握っています。カーボンニュートラルの実現に向けて、学理究明も含めた基礎基盤研究の推進により、窒化ガリウム(GaN)等の次世代パワー半導体を用いた超省エネ・高性能なパワーエレクトロニクス機器等の実用化に向けた一体的な研究開発を推進しました。
(23)次世代X-nics半導体創生拠点形成事業【2022年度当初:9.0億円、2022年度補正:11.2億円】
半導体集積回路は、カーボンニュートラルやデジタル社会の実現、経済安全保障の確保に向けて重要性が増しており、この分野の国際競争は年々激しくなってきています。本事業では、2035〜2040年頃の社会で求められる省エネ・高性能な次世代の半導体集積回路の創生を目指したアカデミアの中核的な拠点を形成し、新たな切り口による研究開発と将来の半導体産業を牽引する人材の育成を推進しました。
4.部門横断的な省エネの取組
各部門における徹底した省エネだけでなく、部門横断的に省エネを促していくことも重要です。そのため、事業者や消費者といった対象を特定せず、広く積極的な省エネを促す取組を行いました。
〈具体的な主要施策〉
(1)省エネルギー促進に向けた広報事業委託費【2022年度当初:2.0億円】
多くの方々から省エネに対する理解と協力を得るため、積極的な省エネを実践していただくためのきめ細かなキャンペーンの実施等、省エネに関する客観的な情報提供を行いました。また、産業・業務部門向けに、2023年4月施行の改正省エネ法の内容を周知するため、動画やパンフレットを活用した情報提供を行いました。さらに、一般消費者向けには、動画を活用した省エネ行動の発信や、WEBページや各種メディアを通じた省エネ政策の周知等を行いました。
(2)地域の魅力と質を向上させる地方創生に資する地域脱炭素の推進
「地球温暖化対策計画」及び「地域脱炭素ロードマップ」に基づき、地域脱炭素が意欲と実現可能性が高いところからその他の地域へと広がっていく「実行の脱炭素ドミノ」を起こすべく、2025年度までの5年間を集中期間として、あらゆる分野において関係省庁が連携して、脱炭素を前提とした施策を総動員していくこととしています。
環境省では、2030年度までに民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出については実質ゼロを実現し、その他の温室効果ガスの排出についても、日本の2030年度の削減目標と照らして十分なレベルの削減を実現する「脱炭素先行地域」を、2025年度までに少なくとも100か所選定し、2030年度までに実現する方針です。2022年度には2回の募集を行い、計46の地域を選定しました。また、「脱炭素先行地域」に加えて、屋根置き等の自家消費型の太陽光発電の導入、住宅・建築物の省エネ性能の向上、ゼロカーボン・ドライブの普及等の脱炭素の基盤となる重点対策についても全国で実施していきます。こうした意欲的な取組を行う地方公共団体や事業者等を複数年度にわたり継続的かつ包括的に支援する「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」を2022年に創設しました。
「地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)」(以下「地球温暖化対策推進法」という。)において、都道府県、政令指定都市及び中核市(施行時特例市を含む)には、単独又は共同して、区域における再エネの利用促進、省エネの推進等を盛り込んだ地方公共団体実行計画(区域施策編)の策定が義務づけられています。さらに、2021年5月に成立した地球温暖化対策推進法の一部を改正する法律(以下「2021年改正地球温暖化対策推進法」という。)では、地方公共団体実行計画(区域施策編)について、再エネの利用促進等の施策の実施目標が記載事項に追加され、また中核市未満の市町村についても同計画の策定を努力義務とする規定が盛り込まれました。
また、地域における再エネの最大限の導入を促進するため、地方公共団体による脱炭素社会を見据えた計画の策定等を補助する「地域脱炭素実現に向けた再エネの最大限導入のための計画づくり支援事業」を実施しました。
さらに、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素に資する都市・地域づくりを推進していくため、「まちづくりのグリーン化」に取り組んでいます。具体的には、都市のコンパクト・プラス・ネットワークや居心地がよく歩きたくなる空間づくりを進め、公共交通の利用の促進等を図ることでCO2排出量の削減につなげる「都市構造の変革」、エネルギーの面的利用や環境に配慮した民間都市開発等を推進することでエネルギー利用の効率化につなげる「街区単位での取組」、グリーンインフラの社会実装の推進等により都市部のCO2吸収源拡大につなげる「都市における緑とオープンスペースの展開」の3つを柱に取組を進めており、特に、「脱炭素先行地域」においては支援の強化等、取組を重点的に推進しています。
(3)株式会社脱炭素化支援機構による資金供給【財政投融資】
2022年5月に改正された地球温暖化対策推進法に基づき、同年10月28日に「株式会社脱炭素化支援機構」(以下「JICN」という。)が設立されました。JICNは、国の財政投融資からの出資と民間からの出資を原資にファンド事業を行う株式会社です。2050年カーボンニュートラルの実現に向け、脱炭素に資する多様な事業への呼び水となる投融資(リスクマネー供給)を行い、脱炭素に必要な資金の流れを太く速くし、経済社会の発展や地方創生、知見の集積や人材育成等、新たな価値の創造に貢献することを目的にしています。
(4)地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例(地球温暖化対策のための税)
日本で排出される温室効果ガスの8割以上は、エネルギー利用に由来するCO2(エネルギー起源CO2)となっており、今後温室効果ガスを抜本的に削減するためには、中長期的にエネルギー起源CO2の排出抑制対策を強化していくことが不可欠です。
このため、2012年10月から施行されている地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例の税収を活用して、省エネ対策、再エネの普及、化石燃料のクリーン化・効率化等のエネルギー起源CO2の排出抑制の諸施策を着実に実施していきます。
(5)低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業
日本の経済・社会の持続的発展を伴う、科学技術を基盤とした明るく豊かな低炭素社会の実現に貢献するため、望ましい社会の姿を描き、その実現に至る道筋を示す社会シナリオ研究を推進しました。2022年度は、情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響や、ゼロカーボン社会実現に向けた産業構造と評価システム等に関するイノベーション政策立案のための提案書等を作成し、国の施策等に活かすための政策提言を行いました。また、人文社会科学系を含めた幅広い研究者の知の取り込みや研究人材の育成により、さらなる社会シナリオ研究の発展を目指すため、研究提案を募り、2つの課題を採択しました。
(6)電気利用効率化促進対策事業(節電プログラム)【2022年度予備費:1,784億円】
電力の需給ひっ迫時に、需要家に簡単に電気の効率的な使用を促す仕組みの構築に向け、小売電気事業者等の①節電プログラムへの登録支援と、②節電の実行への支援を行いました。
①の節電プログラムへの登録支援として、低圧の需要家には2,000円相当、高圧以上の需要家には20万円相当の特典付与を支援しました。また、②の節電の実行への支援については2種類の支援を行いました。1つ目は、「月間型(kWh型プログラム)」で、前年同月比で3%の電力使用量を削減した場合、低圧の需要家には「1,000円/月」相当、高圧以上の需要家には「2万円/月」相当の特典付与を支援しました。2つ目は、「指定時型(kW型プログラム)」で、電力会社が指定する日時における電力使用の削減量に応じて、需給ひっ迫注意報・警報の発令時には40円/kWh、その他の場合は20円/kWhを上限とし、小売電気事業者等による特典と同額を上乗せ支援しました。本事業には、大手電力・新電力あわせて約280社、販売電力量ベースで95%超の小売電気事業者等が参画し、約740万件の需要家(家庭・事業者)が節電プログラムに参加しました。
今後も、電力の需給ひっ迫が生じた際には、本事業を通じて構築された、需要家に電気の効率的な使用を促す仕組みも活用していきます。
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- トップランナー制度の対象機器のうち、家庭で使用される機器を中心に、トップランナー制度に基づく省エネ基準の達成率等を表示し、基準を達成している機器であることを消費者にわかりやすく表示するためのJISに基づくラベルです。2023年3月現在、特定エネルギー消費機器29機器のうちテレビジョン受信機、エアコンディショナー等を始めとする22機器が対象となっています。
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- トップランナー制度の対象機器のうち、家庭で使用される機器でエネルギー消費が大きい9機器(エアコンディショナー、照明器具、テレビジョン受信機、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気便座、温水機器(ガス、石油、電気))について、省エネルギーラベルや、市場における製品の省エネ性能を1.0から5.0で表示した多段階評価点、年間目安エネルギー料金等を表示したラベルです。