第3節 石油・天然ガス等国産資源の開発の促進

国内のエネルギー・鉱物資源は、国際情勢等の影響を受けにくい安定した資源であり、その中でも海洋の資源開発は日本のエネルギーの新たな供給源の1つとなりうる重要な存在です。そのため、「海洋基本法(平成19年法律第33号)」に基づく「海洋基本計画」(2008年3月第1期策定、2013年4月第2期策定、2018年5月第3期策定)を踏まえて「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」(2009年3月策定、2013年12月改定、2019年2月改定)を策定し、その開発を計画的に進めてきました。同開発計画では、鉱種ごとに、開発の目標と達成に至る筋道、必要となる技術開発を明記するとともに、各省庁との連携、国と民間の役割分担、さらには、横断的配慮事項として、人材育成、国際連携、海洋の環境保全、国民の理解促進に留意して、適切に開発を進めることとしています。なお、同開発計画における各資源に係る工程表については、進捗に応じて、方向性の確認・見直しを行うこととしています。

在来型の石油・天然ガスについては、日本の周辺海域の資源ポテンシャルを把握するため、2008年に三次元物理探査船「資源」を導入し、日本周辺海域での石油・天然ガスの探査を実施してきました。2018年度までに約6.2万㎢の探査を行い、90か所以上の石油・天然ガスポテンシャルがある構造を発見しました。2019年度からは、より効率的・効果的な探査を実現するため、JOGMECが新たな三次元物理探査船「たんさ」を導入し、民間探査会社・操船会社のオペレーションによる運航を開始しました。「第3期海洋基本計画」及び「第6次エネルギー基本計画」に基づき、三次元物理探査船を活用した国主導での探査(概ね5万㎢/10年)を機動的に実施するとともに、民間企業による探査にも同船を積極的に活用する等、より効率的・効果的な探査の実現を目指します。また、有望な構造への試掘機会を増やすため、2019年度から海域における補助試錐制度(補助試錐)を導入するとともに、2022年度には対象地域を陸域まで広げ、2022年度から2か年事業として陸域での試錐事業を支援しています。今後も引き続き、物理探査及び試錐により得られた地質データ等の成果を民間企業に引き継ぐことで、国内資源開発の促進を図ります。

非在来型の天然ガスである水溶性天然ガスについては、国産天然ガスの約2割を占めています。また、水溶性天然ガスと同時に産出するヨードの生産量は世界の約3割(世界第2位)を占めており、ともに重要な国産資源です。引き続き、日本の貴重な国産資源である水溶性天然ガスの生産量拡大や、地盤沈下対策を進めます。

メタンハイドレートについては、メタンと水が低温・高圧の状態で結晶化した物質であり、日本の周辺海域に相当量の賦存が期待されていることから、日本のエネルギー安定供給に資する重要なエネルギー資源として、将来の商業生産を可能とするための技術開発を進めています。

主に太平洋側で確認されている砂層型メタンハイドレートについては、日米国際共同研究の一環として計画している米国・アラスカ州における長期陸上産出試験に係る実施計画の策定、2023年度の試験開始に向けた坑井掘削等を実施しました。加えて、これまでに取得されている地震探査データの解析を踏まえて抽出した有望濃集帯において、簡易生産実験を含む試掘に向けた事前調査(LWD等)を実施し、簡易生産実験を含む試掘場所を選定しました。

また、主に日本海側で確認されている表層型メタンハイドレートについては、2019年度に特定した有望な回収・生産技術に関する要素技術や共通基盤技術について、本格的な研究開発を引き続き推進しています。加えて、海底の状況や環境影響の評価のための海洋調査等(海底地盤調査、底層流等のモニタリング、海底画像マッピング、海底環境調査等)を酒田沖、海鷹海脚・上越海丘、丹後半島北方をモデル海域として実施しました。

海底熱水鉱床については、概略資源量5,000万トンレベルの把握に向けて、沖縄海域及び伊豆小笠原海域において、既知鉱床のボーリング調査や新鉱床発見に向けた広域調査を実施しました。また、採鉱・揚鉱分野については、2017年度に実施した採鉱・揚鉱パイロット試験により抽出された個別要素技術の課題解決に取り組んでいます。選鉱・製錬分野については、銅主体鉱石、亜鉛主体鉱石を用いた選鉱・製錬試験を実施し、多様な鉱床に適用可能なプロセスの確立に向け取り組んでいます。今後も国際情勢をにらみつつ、2020年代後半以降に民間企業が参画する商業化を目指したプロジェクトが開始されるよう、新鉱床の発見と既知鉱床の概略資源量の評価、採鉱・揚鉱・選鉱・製錬に係る技術開発、環境調査等に取り組んでいきます。

コバルトリッチクラストについては、国際海底機構(以下「ISA」という。)との間で締結した探査契約に基づき、南鳥島沖公海域に保有する探査鉱区について、2021年に第1次絞り込みを行ったところですが、2024年1月の最終絞り込みに向けて引き続き資源量調査を実施しつつ、南鳥島周辺の排他的経済水域内における資源量調査も進めていきます。また、2020年7月に実施した掘削性能確認試験を踏まえ、コバルトリッチクラスト専用の掘削機の製作も進めています。

レアアース泥については、「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」に基づき、関係府省連携の推進体制の下で実施している戦略的イノベーション創造ブログラム(SIP)第2期「革新的深海資源調査技術」において、賦存量の調査・分析等に対する協力を行いました。また、レアアース泥を始めとした海洋鉱物資源全般の開発に資する揚鉱技術として、エアリフト技術について検討を行いました。

マンガン団塊については、ISAと契約しているハワイ沖の探査鉱区について、2021年12月に探査契約の5年間の延長が承認されました。ISAとの契約に基づき、資源量調査、生産技術の検討や環境調査等を行いました。

〈具体的な主要施策〉

1.国内石油天然ガスに係る地質調査・メタンハイドレートの研究開発等事業【2022年度当初:272.7億円】

2022年度は、JOGMECが導入した三次元物理探査船「たんさ」の民間探査会社・操船会社のオペレーションによる運航を実施するとともに、民間企業の試錐調査への補助を実施しました。

砂層型メタンハイドレートについては、日米国際共同研究の一環として2023年度の開始を予定している米国・アラスカ州における長期陸上産出試験に係る生産システムの設計や坑井掘削等を実施しました。

表層型メタンハイドレートについては、回収・生産技術の有望技術に関する要素技術や共通基盤技術の研究開発及び海底の状況や環境影響を把握するための海洋調査等を実施しました。

2.海洋鉱物資源開発に向けた資源量評価・生産技術等調査事業【2022年度当初:93.0億円】

海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊等の海洋鉱物資源について、海洋資源調査船「白嶺(はくれい)」等を使用した資源量評価等や、生産技術に関する基礎的な研究・調査等を実施しました。