第4節 再生可能エネルギー導入拡大に向けた系統制約解消
(再掲 第1部 第3章 第1節)
我が国の系統は、これまで主として大規模電源と需要地を結ぶ形で形成されてきており、再生可能エネルギー電源の立地ポテンシャルとは必ずしも一致していません。このため、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、系統に制約が生じる例が見られるようになりました。今後、再生可能エネルギーが「主力電源」となるためには、この「系統制約」が大きなボトルネックとなる可能性があります。
現在のわが国のルールでは、新規に電源を系統に接続する際、まずは系統の空き容量の範囲内で先着順に受入れを行い、空き容量がなくなった場合には系統を増強した上で追加的な受入れを行うこととなっています。再生可能エネルギーの導入量が増えるにつれ、「空き容量がなく、つなげない」「系統増強費用が高い」といった声が発電事業者から上がってくるようになりました。
これらの声に応え、国民負担を軽減しながら再生可能エネルギーを最大限導入するためには、系統の増強には多額の費用と時間が伴うものであることも踏まえれば、まずは既存系統を最大限活用していくことが最優先です。このため、欧州の先進事例も参考にしながら、系統の空き容量を柔軟に活用し、「日本版コネクト&マネージ」の仕組みの具体化に向けた検討に着手しました。「日本版コネクト&マネージ」とは、緊急時用に空けていた容量や、容量を確保している電源が発電していない時間などの「すきま」をうまく活用して、よりたくさんの電気を流せるようにしようというものです。
この「日本版コネクト&マネージ」は多数の再エネ事業者から接続の要望があるところ、スピード感をもって再生可能エネルギーを導入拡大する観点から、関係者間での課題に関する調整が済んだものから実現していく方針で、まずは一般送配電事業者が行う「空き容量の算定方法」を2018年度当初から抜本的に見直すこととしました。これによって、過去の実績をもとに、将来の電気の流れをより精緻に想定して空き容量を算出し、より多くの再エネ等新規電源を連系させることが可能となります。今後も、新たに系統に接続しようとする発電事業者の意見も聞きながら、現行のルールが透明・公平かつ適切なものなのかを確認し、海外の先進的事例を取り入れながら必要な見直しを行うとともに、ルールの明確化を進めてまいります。
これらの取り組みによって既存系統を最大限活用したとしても、2030年以降も見据えれば、再生可能エネルギーの増加等に伴い、なお一定の系統増強や更新投資は必要となると考えられます。「再生可能エネルギーの最大限の導入」と「国民負担の軽減」を両立する観点からも、また、再生可能エネルギー事業者の「系統増強費用が高い」という声に応えるためにも、系統コストを可能な限り低減しつつ、未来に向けた投資を行えるための環境整備も同時に進めることが必要です。これらの点も含め、2030年以降も見据えた次世代電力ネットワークの再構築について引き続き検討を進めてまいります。
<その他の具体的な主要施策>
(1)電力系統の増強に関する費用負担の在り方の整理
再エネの最大限の導入と国民負担の抑制を両立させるため、電力系統の増強に要する発電設備設置者の費用負担の在り方を示した「発電設備の設置に伴う電力系統の増強及び事業者の費用負担の在り方に関する指針」を2015年11月6日に公表しました。加えて、2016年3月及び6月には、電力広域的運営推進機関において、一般負担額のうち、「ネットワークに接続する発電設備の規模に照らして著しく多額」と判断される基準額(一般負担の上限額)を定め、発電設備設置者の費用負担の考え方を明確化しました。
(2)系統情報の公表
再エネ電源などの導入拡大などにより、送配電等設備の増強等が必要になり、これに伴う費用負担を巡って事業者間で調整を要する案件が増加しています。このような状況に鑑み、再生可能エネルギー事業者が発電設備の建設地点を検討するに当たって、どの程度の容量が接続可能かあらかじめ確認できるようにするため、「系統情報の公表の考え方」を改定し、電力広域的運営推進機関及び一般電気事業者が、特別高圧以上の送変電設備に関する空き容量の情報を公開し、更新を行っています。
(3)電源接続案件募集プロセスの整備
再エネ電源などを電力系統に接続する際に大規模な系統増強が必要となり一社では負担が大きすぎる場合があります。このため、電力広域的運営推進機関では、近隣の電源接続案件の可能性を募り、系統増強の工事費負担金を複数の事業者で共同負担するための手続き(電源接続案件募集プロセス)を2015年4月にルール化しました。電源接続案件募集プロセスは、これまでに全国35エリアで実施されています。例えば、東北電力株式会社の管内では、2016年5月に、東北北部(北部3県(青森、岩手、秋田)及び宮城北部)の系統の空き容量がゼロになり、電源接続案件募集プロセスを同年10月13日に開始しています。一部の地域では、入札後に辞退者が出ることで募集プロセスが長期化していますが、負担可能上限額の申請を求めるなど、早期完了を目指した取り組みが行われています
(4)連系線利用ルールの見直し
2017年7月の総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会中間論点整理において、「先着優先」に基づく連系線の利用登録の受付を停止する形で間接オークションが導入されることとされました。2018年度中に、地域間連系線の利用ルールを「間接オークション」に変更するべく必要なルール整備を関係機関で行っています。
(5)広域系統長期方針の策定定
電力広域的運営推進機関は、広域運用の観点から、全国大での広域連系系統の整備及び更新に関する方向性を整理した長期方針(広域系統長期方針)を2017年3月に策定しました。本方針では、広域連系系統の将来のあるべき姿の実現に向けた流通設備投資の考え方の合理化及び解決すべき課題等の整理を行いました。今後、取りまとめた方向性に沿って、具体的な検討を進め、課題の解決に向けた取組を着実に進めていきます。
(6)大型蓄電システム緊急実証事業費補助金
(本章冒頭3. 再掲)
(7)風力発電のための送電網整備実証事業費補助金【2017年度当初:30.0億円】
北海道及び東北地方の風力発電の適地において、送電網の整備及び技術的課題の解決を目的とした実証事業を行いました。