第3章 再生可能エネルギーの導入加速 ~中長期的な自立化を目指して~

再生可能エネルギー(以下「再エネ」という。)は、温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、エネルギー安全保障にも寄与する、重要な低炭素の国産エネルギー源であり、国民負担を抑制しつつ、最大限の導入を進めていくことが政府の基本方針です。2015年7月に策定した長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)においては、2030年度の総発電電力量に占める再エネ比率を22~24%と見通しています。この水準の実現に向けて、2017年度は、2017年4月に電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法等の一部を改正する法律(以下「改正FIT法」という。)を施行し、改正を踏まえた固定価格買取制度(以下「FIT」という。)の適切な運用を行うとともに、系統制約の克服に向けた取組、発電設備の高効率化・低コスト化等に向けた技術開発、必要に応じた関連規制の合理化等を総合的に進めてきました。

また、再エネにおける政府の司令塔機能を強化するため、2017年4月に第1回再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議を開催し、再エネの推進のために関係省庁間の連携を促進しています。同会議において、関係府省庁が連携して取り組む施策について、今後5年間程度の取組を定めた「再生可能エネルギー導入拡大に向けた関係府省庁連携アクションプラン(以下「アクションプラン」という。)を決定し、2017年12月には、第2回再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議を開催し、アクションプランの進捗状況を確認しました。今後も関係府省庁が連携して課題を克服し、再エネの普及拡大に努めていきます。

<具体的な主要施策>

I 研究開発・実証

(1)戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発【2017年度当初:51.2億円の内数】

2030年の社会実装を目指し、低炭素社会の実現に貢献する革新的な技術シーズ及び実用化技術の研究開発や、リチウムイオン蓄電池に代わる革新的な次世代蓄電池やバイオマスから化成品等を製造するホワイトバイオテクノロジー等の世界に先駆けた革新的低炭素化技術の研究開発を推進しました。

(2)未来社会創造事業(「地球規模課題である低炭素社会の実現」領域)【2017年度当初:4億円の内数】

2050年の社会実装を目指し、エネルギー・環境イノベーション戦略等を踏まえ、従来技術の延長線上にない革新的エネルギー科学技術の研究開発を開始しました。

(3)ベンチャー企業等による新エネルギー技術革新支援事業【2017年度当初:18.5億円】

太陽光発電、風力発電、バイオマス、燃料電池・蓄電池等における中小・ベンチャー企業が有する潜在的技術シーズを発掘し、その開発及び実用化を支援しました。

(4)国内における温室効果ガス排出削減吸収量認証制度の実施委託費【2017年度当初:3.8億円】

J-クレジット制度を活用した再エネの導入を促進するため、中小企業等に対し各種書類作成等に支援を行うとともに、再エネ由来のクレジットの需要を開拓するため、各種制度等との連携を推進しました。

II 導入支援

(1)省エネ再エネ高度化投資促進税制<再生可能エネルギー部分>【税制】

<再生可能エネルギー>

青色申告を行う法人又は個人事業者が固定価格買取制度からの自立化や長期安定発電の促進に大きく貢献する再生可能エネルギー発電設備等を取得等した場合にその取得価格の20%の特別償却ができる税制措置を平成30年度税制改正において、創設しました。

(2)再生可能エネルギー発電設備に係る固定資産税の特例措置【税制】

固定価格買取制度の認定を受けた再生可能エネルギー発電設備(太陽光発電設備については、固定価格買取制度の認定を受けていないもの)を取得した場合、固定資産税を3年間にわたって軽減する措置を平成30年度税制改正において、一部所要の見直しを行った上、その適用期限を2年延長しました。

(3)電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)の整備及び施行【制度】

2016年度にRPS法の義務が課せられた電気事業者は、10電力会社を始めとする計233社、その義務量の総量は29.5億kWhであり、全ての電気事業者が義務を履行しました。また、2017年度は、再生可能エネルギー特別措置法附則第9条における経過措置規定により、24.4億kWhの義務量が課されました。

(4)国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費【2017年度当初:34.8億円】

J-クレジット制度の運営及び同制度を活用する中小企業等に対し、申請書の作成支援等を実施するとともに、同制度におけるクレジット需要を開拓するため、各種制度との連携を図りつつ、クレジット活用推進事業を行いました。

(5)福島県における再生可能エネルギーの導入促進のための支援事業費補助金【2017年度当初:25億円】

阿武隈山地や福島県沿岸部における再生可能エネルギー導入拡大のための共用送電線を整備及び、当該地域における風力、太陽光等の発電設備やそれに付帯する送電線等の導入の支援、また、福島県内の再生可能エネルギー関連技術について、実用化・事業化のための実証研究を支援しました。

(6)新エネルギー等の導入促進のための広報等事業【2017年度当初:9.7億円】

再エネの普及の意義やFITの内容について、展示会への出展、パンフレットの作成、ウェブサイト等の活用などを通じて発電事業者をはじめとする幅広い層に対する周知徹底を図るとともに、事業化に向けた地域発の再エネビジネススクールの開催、各種支援施策の紹介や許認可手続の案内、助言などを通じて事業化までの支援を実施、再エネを深く知るための参加型のイベント等を通じてより深く理解し、主体的な行動につながる普及啓発を実施しました。また、地方自治体と協力しつつ地域の再エネ推進体制を構築し、再エネ発電事業者や地元関係者への再エネ関連の情報提供等を実施しました。

III 系統制約の解消

(1)大型蓄電システム緊急実証事業費補助金【2012年度予備費:295.9億円】

北海道及び東北地方において、電力会社の変電所に大型の蓄電池を設置し、再エネの出力変動を緩和するための実証事業を行いました。

(2)再生可能エネルギー余剰電力対策技術高度化事業【2014年度補正:65.0億円】

再エネの導入拡大による余剰電力対策用蓄電池として、揚水発電と同等の設置コスト(2.3万円/kWh)まで大幅に低減することを目標とした蓄電池技術の高度化を行いました。

(3)再生可能エネルギーの接続保留への緊急対応【2014年度補正:744.0億円】

再エネの受入可能量の拡大方策を緊急的に講ずる必要があるため、① 定置用蓄電池の導入支援、② 原子力災害や津波の被災地における再生可能エネルギー導入支援等を措置しました。