第3節 ”水素社会”の実現に向けた取組の加速

前述のとおり水素は環境負荷の低減やエネルギーセキュリティの向上に意義がある一方、水素利活用技術には、技術面、コスト面、制度面及びインフラ面で多くの課題が存在しており、水素の利活用を本格化していくためには、官民一体となった取組を進めていくことが重要です。

このため、産学官の有識者から構成される「水素・燃料電池戦略協議会」において、水素の製造から輸送・貯蔵、そして利用に至る様々な側面で、産学官の役割分担や今後の必要な取組を明確化し、2014年6月に「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を策定しました。また、その後、様々な取組が進展している最新の状況を踏まえて、2016年3月にロードマップの内容を改訂し、新たな目標設定や取組の具体化を行いました。

2009年に世界に先駆けて市場投入された家庭用燃料電池(エネファーム)については、技術開発によるコスト低減や性能向上、導入支援による普及初期の市場の確立などを通じて、2017年2月には約19.6万台が普及しました。

また、2013年から燃料電池自動車の市場投入に向けた水素ステーションの先行整備が開始され、2017年3月末までに90箇所の水素ステーションが開所しました。また、2014年12月に国内初の燃料電池自動車の市販が開始されたことに続き、2016年3月には2車種目の燃料電池自動車の販売が開始され、我が国では世界に先駆けて市場展開が進んでいます。2016年度には燃料電池バス及び燃料電池フォークリフトが市場投入され、今後は、燃料電池船や燃料電池二輪など、引き続き燃料電池システムの応用分野を拡大していきます。引き続き、水素ステーションの整備促進や、低コスト化に向けた技術開発、規制の見直しなどを進めていきます。

また、水素発電については、高効率、高濃度な水素ガスタービンの燃焼技術等の開発が進められています。さらに水素の本格的な利活用のためには、水素をより安価で大量に調達することが必要となります。このため、海外の褐炭や原油随伴ガス等の未利用エネルギーを水素化し、国内に輸送するための様々な技術について、2015年度に引き続き、実証を進めました。また、2016年度には、再生可能エネルギーの導入拡大や電力系統の安定化に資する技術として、太陽光発電や風力発電といった自然変動電源の出力変動を吸収し、水素に変換・貯蔵するPower-to-gas技術の実証を開始しました。

【第383-1-1】 水素社会のイメージ

<具体的な主要施策>

1.クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金

(再掲 第2章第1節 参照)

2.民生用燃料電池(エネファーム)導入支援補助金
【2016年度当初:95.0億円】

省エネルギー及びCO2削減効果が高い家庭用燃料電池(エネファーム)のさらなる普及の促進を図るため、設置者に対し導入費用の補助を行いました。その際、エネファームの早期の自立的市場の確立を目指すべく、事業者に機器価格の低減を促す新たな補助スキームを導入しました。

3.燃料電池利用高度化技術開発実証事業
【2016年度当初:37.0億円】

固体高分子形燃料電池(PEFC)及び固体酸化物形燃料電池(SOFC)のさらなる普及拡大に向けて、高効率・高耐久・低コストの燃料電池システムを実現可能とする技術開発を行うとともに、大量生産可能な生産プロセス及び品質管理等の技術開発、業務・産業用燃料電池の技術実証を行いました。

4.水素利用技術研究開発事業
【2016年度当初:41.5億円】

水素ステーション整備・運営等のコスト低減に向け、金属の代わりに炭素繊維を用いた複合容器の開発や、低コスト鋼材の使用の前提となる性能や安全性に関する評価・検査手法の開発などを行いました。

5.新エネルギーベンチャー技術革新事業

(再掲 第3章冒頭 参照)

6.水素供給設備整備事業費補助金
【2016年度当初:62.0億円】

燃料電池自動車の普及促進のため、四大都市圏を中心に民間事業者等の水素ステーション整備費用及び水素ステーションを活用した燃料電池自動車の新たな需要創出等に必要な活動費用の補助を行いました。2016年3月には仙台市において東北地方で初めて水素ステーションが開所しました。

7. 未利用エネルギー由来水素サプライチェーン構築実証事業
【2016年度当初:28.0億円】

水素サプライチェーンの構築に向けて、海外の未利用エネルギーを活用して水素を製造し、当該水素を安価で安定的に供給する輸送手段の実証を行うとともに、将来の水素利用形態である水素発電に係る技術実証等を行いました。また、2016年度には、再生可能エネルギーの導入拡大や電力系統の安定化に資する技術として、太陽光発電や風力発電といった自然変動電源の出力変動を吸収し、水素に変換・貯蔵するPower-to-gas技術の実証を開始しました。

8.革新的水素エネルギー貯蔵・輸送等技術開発
【2016年度当初:15.5億円】

再生可能エネルギー等から低コスト・高効率で水素を製造する次世代技術や、水素を長距離輸送・大量貯蔵が比較的容易なエネルギー輸送媒体に効率的に転換する技術開発等を行いました。

9.再エネ等を活用した水素社会推進事業
【2016年度当初:65.0億円】

地方自治体との連携による再生可能エネルギー等の地域資源を活用した低炭素な水素サプライチェーンの実証、再生可能エネルギー由来の水素ステーションの導入等を行いました。

10.CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業
【 2016年度当初:65.0億円の内数】

交通分野において、早期の社会実装を目指したエネルギー起源二酸化炭素の排出を抑制する技術の開発及び実証事業として、FCフォークリフト、FCゴミ収集車、FC小型トラック、再エネ由来水素ステーションなどの技術開発・実証を行いました。

11. 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)
エネルギーキャリア【2016年度当初:34.9億円】

CO2フリー水素バリューチェーンの構築に向けて、高温の太陽熱を利用した水素製造技術や、水素を効率的に輸送・貯蔵・利用するためのアンモニアや有機ハイドライド関連技術等の開発を行いました。