第1節 エネルギー国際協力体制の拡大・深化

世界のエネルギー情勢が大きく変化する中、各国のエネルギー需給構造をより安定化・効率化するためには一国での取組だけでなく、多国間及び二国間のエネルギー協力を戦略的に組み合わせつつ、国際的な協力を拡大することが重要となってきています。

そのため、2016年度においては、多国間の国際エネルギー枠組みを活用し、エネルギーの安定供給確保に向けた取組を進めるとともに、二国間の協力を通じて、アジア各国等との国際協力やエネルギー供給国との関係強化を行いました。

<具体的な主要施策>

1.多国間枠組みを通じた協力

(1)主要消費国における多国間協力

①国際エネルギー機関(IEA)における協力

IEAは、1974年11月、第一次石油ショックを契機として、米国の提唱により石油消費国間の協力組織として設立されました。当初は、国際エネルギー計画(IEP)協定に基づく石油の90日備蓄義務及び緊急時対応を始めとするエネルギー問題解決のための国際協力が主な活動内容でしたが、現在では、エネルギー安全保障、経済成長、環境保全(3E)の同時達成という観点から、①低炭素技術の開発促進・省エネ、低炭素技術の開発・普及のための政策提言、低炭素技術R&Dのための技術協力、②国際石油市場、世界エネルギー需給、エネルギー技術等の見通しの策定、公表、③中国やインドを含む新興途上国、産油国等との協力の構築、④国別エネルギー政策の審査、勧告の実施など幅広い活動を展開しています。現在の加盟国は、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国、スロバキア、ポーランド、エストニアの計29か国です。

隔年で閣僚理事会を開催しており、2015年11月のIEA閣僚理事会には、我が国から鈴木経済産業副大臣及び武藤外務副大臣が出席しました。同会合では、ガスセキュリティの強化や共同石油安全保障制度、技術協力プログラムの強化の拡大を柱とする議長総括の発出に加え、IEAが新興国等のIEA非加盟国との連携強化を図る上で重要な制度的枠組である「アソシエーション」が中国、タイ、インドネシアとの間で始動しました。2016年には、アソシエーション国にシンガポール、モロッコが加わり、計5か国となりました。

また、IEAは、加盟国のエネルギー政策を総合的に評価する国別詳細審査を概ね5年に1回実施しており、我が国は2014年に震災後初となる審査を受け入れ、2016年9月に報告書が公表されました。3E+Sを考慮したバランスの良いエネルギーミックスの重要性に加え、エネルギー供給の低炭素化、省エネ・低炭素化技術の導入促進、電力・ガス市場改革の実行、再生可能エネルギーの導入支援の継続と支援に伴う負担の制御等について提言がなされました。

(ア) 国際エネルギー機関分担金
【2016年度当初:4.5億円】

同機関の活動・運営費用を、各国分担率に基づき拠出しました。

(イ) 国際エネルギー機関拠出金
【2016年度当初:4.2億円】

「世界エネルギー展望(WEO)」を始めとするエネルギー市場の分析、エネルギー技術ロードマップの策定、低炭素エネルギー技術プラットフォームの活動等を支援すると同時に、IEAが知見を有するエネルギー安全保障にかかる緊急時対応審査(ERR)の実施や、これに関連するワークショップの開催等を支援するために、IEA加盟国として拠出を行いました。

②G7における協力

G7エネルギー大臣会合は先進主要7か国(日・米・加・独・仏・英・伊。2013年まではロシアを含めてG8)のエネルギー担当大臣による閣僚会合として、1998年から不定期にG7サミット議長国が開催しています。2016年5月、日本が議長国となりG7エネルギー大臣会合を北九州市において開催しました(我が国からは、林経済産業大臣が議長を務め、濵地外務大臣政務官が出席)。①エネルギー投資(上流開発投資・質の高いインフラ投資・クリーンエネルギーの技術革新投資)、②天然ガスの安全保障、③原子力安全(福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策の着実な進展)などを主要テーマとして議論を行い、メッセージを世界に発信しました。

G7北九州エネルギー大臣会合でIEAにタスクアウトされたガス強靭性評価について、日本が同年7月に初回の受け入れ国となり、天然ガスの緊急時対応等について議論を実施し、世界的な天然ガスの安全保障強化に関しリーダーシップを発揮しました。

③G20における協力

2016年6月に、中国(北京)において、2015年のトルコでの開催に引き続き第2回目となるG20エネルギー大臣会合が開催され、我が国からは高木経済産業副大臣が出席しました。また、G20エネルギーアクセス閣僚級会合には濵地外務大臣政務官が出席しました。エネルギー大臣会合では、「グローバルなエネルギー開発の見通し」と「エネルギー技術革新」をテーマに、出席閣僚等と世界が直面するエネルギーの課題について議論が行われました。共同声明には、我が国の主張も踏まえ、将来の安定供給に向けたエネルギー投資の継続、LNGを含む天然ガスの柔軟で流動性の高い競争的な市場、原子力の安全性、クリーンな化石燃料技術の活用の重要性が明記されました。また、高効率石炭出力を含む低排出発電技術に関する議論について記載した行動計画が、同宣言において採択されました。

(2)アジア地域における多国間協力

①ASEAN+3・東アジア地域における協力

アジア地域におけるエネルギー需要の急増を踏まえ、アジア規模でのエネルギーの安全保障と持続可能性を確保するため、2004年より、ASEAN+3エネルギー大臣会合(ASEAN、日中韓13か国の代表が出席)、2007年から、東アジアサミット(EAS)エネルギー大臣会合(ASEAN、日中韓、オーストラリア、インド、ニュージーランド、米国、ロシア18か国の代表が出席)が開催されています。

2016年9月に、ミャンマー(ネピドー)において第13回ASEAN+3エネルギー大臣会合及び第10回EASエネルギー大臣会合が開催され、我が国からは中川経済産業大臣政務官が出席しました。今回の会合で、我が国から「アジアにおける天然ガス利用促進」について提案し、より柔軟で透明なLNG市場の構築、ガス関連事業・インフラへの投資促進、新規需要の開拓、の3点が重要であることを各国と共有するとともに、この実現に向けた具体的な政策の検討を関係機関との協力を得ながらEAS参加国と開始していくことで合意しました。

また、我が国よりASEAN各国の進捗レベルに合わせた、よりきめの細かい省エネルギー協力を強化していくことを提案し、各国から歓迎されました。

さらに、各国の政策立案に貢献するエネルギー政策研究を加速するため、2015年我が国から提案し、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)が作成した「EAS中長期エネルギー政策調査研究ロードマップ」について合意しました。

○東アジア経済統合研究協力拠出金
【2016年度当初:4.7億円】

運輸部門における燃料消費の抑制に向けた調査や、石油備蓄を推進するにあたっての政策提言、バイオ燃料の品質管理手法に係る規格・基準の統一化に関する研究、LNG新規市場開拓関連調査等を実施するためにERIAに拠出を行いました。

②アジア太平洋経済協力(APEC)における協力

1989年11月にオーストラリア・キャンベラで開催された第1回APEC閣僚会議において、エネルギー問題に対する域内協力の重要性と、これを専門に議論する場を設定することで一致しました。これを受けて、1990年にエネルギー作業部会(EWG)が設立され、さらに1996年には、よりハイレベルなエネルギー政策対話を行うため、シドニーにおいて第1回APECエネルギー大臣会合が開催され、以後ほぼ隔年に開催されています。

これまでのAPECエネルギー大臣会合において我が国が提案し、合意された事項に基づき、①APECメンバーのエネルギー効率向上に向けた取組状況をレビューする「エネルギー効率ピアレビュー」、②低炭素エネルギー供給を促進するための「低炭素エネルギー供給政策ピアレビュー」、③急速な都市化に直面するAPEC地域において、都市レベルで低炭素技術を統合的に導入することを目指す「APEC低炭素モデルタウンプロジェクト」、④石油及びガスの供給途絶時の対応能力の強化を図るための「APEC石油・ガス・セキュリティエクササイズ」を着実に実施するとともに、「APEC長期エネルギー需給見通し(第6版)」を発行しました。また、2016年APEC閣僚声明において我が国が提案して実施した「APEC質の高い電力インフラガイドライン」及び「エネルギーと競争力に関する調査研究」の完了が歓迎されました。さらに、APEC首脳宣言文においても持続可能な経済成長にとっての質の高いインフラの重要性が再確認されるとともにAPECがエネルギーアクセスとエネルギー安全保障強化のために行動していくことがコミットされました。

(ア) アジア太平洋経済協力拠出金
【2016年度当初:1.1億円】

アジア太平洋地域におけるエネルギー効率の向上やエネルギー源の多様化、低炭素技術の開発・普及のため、域内の新興国・途上国を対象とした低炭素化促進プロジェクト(低炭素モデルタウンプロジェクト等)を支援するために、APEC事務局に拠出を行いました。

(イ) アジア太平洋エネルギー研究センター
  (APERC)拠出金【2016年度当初:6.9億円】

電力インフラの質の確保に資するためのAPEC質の高い電力インフラガイドラインの作成やエネルギーと競争力に関する調査研究、APECに加盟する国・地域の省エネルギー・低炭素化政策の相互審査(ピアレビュー)の実施、「APEC長期エネルギー需給見通し」の作成、アジア太平洋地域のエネルギー統計整備のための研修生受入・専門家派遣、「LNG産消会議」の開催、石油及びガスの供給途絶時におけるAPEC各エコノミーの対応能力強化に向けたエクササイズ開催のために、アジア太平洋エネルギー研究センターに拠出を行いました。

(3)その他の多国間協力(生産国と消費国の対話等)

①国際エネルギーフォーラム(IEF)における対話

IEFは、世界72か国の石油・ガス等の産出国と消費国のエネルギー担当大臣及びIEA、OPECを始めとする国際機関の代表が一堂に会する重要な「産消対話」の場です。産消対話を行うことにより、産消国双方が相互に理解を深め、健全な世界経済の発展や供給と需要の安定確保のために安定的かつ透明性のあるエネルギー市場を促進することを目的として、1991年に第1回会合をパリで開催し、以降1 ~2年ごとに開催されています。

2016年9月に、アルジェリア(アルジェ)において第15回IEF閣僚級会合が開催され、我が国からは高木経済産業副大臣が出席しました。今回の会合では、「変わり行く世界のエネルギー情勢: エネルギー対話の意義」をテーマに、各国政府、エネルギー関連国際機関、企業等が一堂に会し、エネルギー市場の現状と見通し並びにその課題等を議論しました。我が国からは、LNG市場の発展に向けた方策について発表し、流動性のあるLNG市場の必要性が再認識されました。

また、IEFではエネルギー関連の7つの国際機関(APEC、EU、IEA/OECD、IEF、OLADE(中南米エネルギー機関)、OPEC、国連)で協力をし、石油と天然ガスの統計を整備する国際機関共同データイニシアチブ(JODI)を進めています。2005年にJODI-Oil(石油の統計データベース)、2014年5月にJODI-Gas(天然ガスの統計データベース)を開始しました。

国際機関が協力して需給ファンダメンタルズに関する情報共有を進め、エネルギー需給の動向についての正確かつタイムリーな情報が市場に提供されることで、市場の透明性が増し、過度の価格乱高下を抑制できると考えられており、現在、世界の石油・ガス需給の9割以上を網羅しています。我が国は、資金・人材の両面でJODIの発展に寄与しています。

(ア) 国際エネルギーフォーラム(IEF)分担金
【2016年度当初:0.1億円】 

同機関の活動・運営費用を、各国分担率に基づき拠出しました。

(イ) 国際エネルギーフォーラム(IEF)拠出金
【2016年度当初:0.3億円】

我が国は、IEF閣僚会合の開催支援を行うとともに、国際機関共同データイニシアチブ(JODI)事業への貢献のために、IEF事務局に拠出を行いました。

②アジア産油国・消費国閣僚会合

アジア産油国・消費国閣僚会合は、アジアの主要な資源国と消費国が一堂に会し、国際的なエネルギー問題、アジア地域のエネルギー安全保障の課題等に焦点を当て率直な議論を行い、信頼関係構築を図ることを目的として、2005年以降、隔年で開催されています。

③国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における協力

IRENAは、再生可能エネルギーの普及・利用促進を目的として設立された国際機関であり、我が国は、2010年7月から正式に加盟しました。事務局はUAEのアブダビに設置されています。IRENAの主な活動は、①加盟国の政策、制度、技術、成功事例の分析・体系化、②他の政府・非政府機関等との協力、③政策助言、④技術移転、⑤人材育成、⑥資金に関する助言、⑦研究ネットワークの展開、⑧国際的技術基準の作成等です。

2016年5月に行われたG 7エネルギー大臣会合の機会に、林経済産業大臣がアミンIRENA事務局長と会談し、COP21後、世界の気候変動対策の重要性が高まる中、再生可能エネルギーの普及・促進の加速が重要であることを確認するとともに、蓄電池や系統安定化等の分野も含め日本とIRENAとの協力関係を更に強化することで一致しました。

また、日本政府は、島嶼国における再生可能エネルギー普及の観点から、人材育成とプロジェクト形成支援を目的とし、IRENA等との共催により、アジア太平洋地域等の島嶼国の行政官を対象として、国際ワークショップ(2016年12月、フィジー国ナンディ)及び訪日研修(2017年2月、東京及び神戸)を実施しました。

(ア) 国際再生可能エネルギー機関分担金
【2016年度当初:3.4億円】

IRENAを通じ、我が国単独では十分な成果が見込めない大規模な調査や普及活動を実施することにより、再生可能エネルギーを国際的に普及させるため、同機関の活動・運営費用を、各国分担率に基づき、外務省、農林水産省、経済産業省、環境省の4省共同で分担しました。

(イ) 国際再生可能エネルギー機関拠出金
【2016年度当初:0.6億円】

経済産業省からは、我が国に強みのある再生可能エネルギー関連技術に関する調査や蓄電池等の我が国技術の海外展開に向けた市場分析の実施のため、また農林水産省からは、食料供給と競合せずに地域の特性を活かす「日本型バイオマス利活用システム」を広く国際的に普及させるため、分担金に加え同機関の活動費用の拠出を行いました。

④ 国際省エネルギー協力パートナーシップ
(IPEEC)における協力

IPEECは、我が国のイニシアチブにより2009年に設立された、参加各国の省エネルギー対策の自主的な取組を支援するための国際協力枠組みです。現在の加盟国は、日本、米国、カナダ、ドイツ、フランス、英国、イタリア、ロシア、中国、韓国、ブラジル、メキシコ、インド、オーストラリア、南アフリカ、EU、トルコ(加盟手続中)であり、IEAに加盟していない中国やインドといった新興国も加盟していることが特徴です。我が国は、省エネルギー制度や先進的なエネルギー管理事例の情報提供を通じて各国との協力関係を築くとともに、特に、産業分野のエネルギー管理を推進するタスクグループである「エネルギー管理行動ネットワーク(EMAK)」を中国とともに主導しています。

⑤クリーンエネルギー大臣会合

クリーンエネルギー大臣会合(CEM)は、世界の主要25か国及び地域から構成される、クリーンエネルギーの普及促進を目的とした唯一の国際会合です。

2016年6月に、米国(サンフランシスコ)において第7回CEM大臣会合が開催され、我が国からは林経済産業大臣が出席しました。本会合では、米国エネルギー省からIEAへの事務局移管を含む、効率的な運営体制への改革案(CEM2.0)が合意されました。

エネルギー分野の技術革新をリードする日本としては、スマートグリッドの普及・促進や次世代自動車の推進等の活動をはじめ、世界のクリーンエネルギーの普及・促進に積極的に貢献していくことを表明しました。

⑥エネルギー憲章条約

エネルギー憲章条約 (ECT:Energy Charter Treaty)は、エネルギー貿易の自由化を促進し、投資保護の枠組を有する条約であり、2017年3月現在、世界で48か国及び1国際機関が締結しています。2015年5月には、新興国の台頭及びそれに伴う世界のエネルギー需給構造の変化、気候変動問題への危機感の高まり等を踏まえ、条約の基礎となった1991年の政治宣言「欧州エネルギー憲章」を近代化した「国際エネルギー憲章 (International Energy Charter)」が採択されました。その署名には、既存の条約締約国のみならず、中国、韓国、カンボジア、チリ、コロンビア、タンザニア、ニジェール等、まだ条約を批准していない新しい国が20か国以上も参加し、これまでの旧ソ連及び東欧諸国、EU諸国中心のものから、まさに地理的な広がりを持ちつつあります。

2016年11月には、我が国が議長国として東アジアで初めてエネルギー憲章会議を主催し、従来のエネルギー憲章条約(ECT)の締約国・署名国・オブザーバーに加え、「アウトリーチ国」としてアジア及びアフリカ諸国・機関を招待しました。新たに9の国・機関から参加を得たのを含め、69の国及び地域と9の国際機関が参加し、アジア太平洋、アフリカ地域でのエネルギー憲章の認知度の向上、普遍化に貢献しました。また、議長国としてECT締約国等との議論を主導し、「エネルギー憲章に関する東京宣言」をとりまとめて発出しました。東京宣言では、ECTがエネルギー分野における法の支配の強化に貢献し、同分野のビジネス環境改善に資することや、適切で継続的なエネルギー投資の促進と質の高いインフラ投資の推進の重要性が確認され、我が国として、エネルギー憲章の役割や今後の方向性についての議論に大きく貢献しました。

エネルギー憲章条約分担金
【2016年度当初:1.3億円】

エネルギー分野における投資促進、エネルギー貿易及び通過の自由化に関する各種活動(報告書作成、ワークショップの開催等)、締約国会議であるエネルギー憲章会議の開催のため、エネルギー憲章条約の補助機関である事務局に拠出を行いました。

⑦多国間枠組を通じた人材育成等

2016年10月に中東欧地域環境センター(REC)との共催で、ハンガリーにおいて「低炭素技術セミナー」を開催し、中東欧地域における低炭素技術普及に関する見通しや課題を共有すると共に、我が国からは低炭素技術普及に向けた国際協力、都市間連携による取組、民間企業の技術、等を紹介しました。

⑧証券監督者国際機構(IOSCO)との連携

経済産業省は、商品取引所及び取引所外取引における相場操縦行為等の不公正取引の監視強化や透明性向上のために、証券監督者国際機構(IOSCO)の活動に積極的に参画しています。IOSCOは、規制された取引所での現物受渡デリバティブ商品の価格形成プロセスについて調査を実施し、結果を「商品デリバティブ市場価格への倉庫及び受渡施設の影響に関する報告書」として2016年5月に公表しました。

⑨商品先物市場監督当局間の協力

経済産業省は、各国の先物監督当局間で行われる会合に定期的に参加するなどして、積極的に情報交換、協力を行っています。また、IOSCOの包括的な協議・協力及び情報交換に関する多国間覚書の枠組みに参加し、これに基づいて、市場監視のために各国の当局との情報交換を実施する体制を整えています。

2.二国間協力の推進

(1)先進諸国との協力

①日米協力

2016年5月、モニーツ・エネルギー長官が訪日し、林経済産業大臣と会談を行いました。会談では、原子力、石油・天然ガス、クリーンエネルギー等、幅広い分野で協力関係が成熟していることを確認するとともに、更なる協力を進めていくことで一致しました。また、気候変動対策の重要性が高まる中、ミッション・イノベーションを通じて世界のエネルギー技術の革新・普及を両国でリードしていくことを確認しました。

さらに、同年6月、林経済産業大臣が訪米し、モニーツ・エネルギー長官と会談を行いました。会談では、クリーンエネルギー技術の投資、普及・促進や国際的な液化天然ガス(LNG)市場づくりなど、世界のエネルギーを巡る多様で重要な課題に両国がリードして取り組んでいくことに一致しました。

2017年3月には、世耕経済産業大臣が訪米し、ペリー・エネルギー長官と会談を行いました。会談では、これまでの幅広いエネルギー協力関係を確認するとともに、今後、LNG、原子力、CCS等の分野において、協力関係の一層の深化に向けて検討を行っていくことで一致しました。

天然ガス分野については、2014年に我が国企業が関与するすべてのLNGプロジェクトについて米国政府から輸出承認を獲得し、2015年には約40年ぶりに米国からの原油輸出が解禁になったところですが、2016年5月にシェールオイル由来の原油が初めて日本に輸入され、また、2017年1月にはシェールガス由来のLNGが初めて日本に輸入されました。今後米国からの石油・天然ガスの輸入が拡大することは、供給源の多角化によるエネルギーの安定供給に資するだけでなく、仕向地が自由な米国産LNGにより、柔軟かつ透明性の高い国際LNG市場の構築にも寄与することが期待されます。また、2014年11月独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と米国国立エネルギー技術研究所(NETL)との間で署名されたメタンハイドレートの日米共同研究に関する覚書に基づき、日米両国ではアラスカ州での生産試験の実施等に向けたメタンハイドレートについての技術協力が着実に進んでおります。

2011年以降、日米両国は日米クリーンエネルギー政策対話を6回開催し、今後の日米クリーンエネルギー協力の在り方について議論してきています。また、クリーンエネルギー分野の日米官民協力枠組みである、日米再生可能エネルギー等官民ラウンドテーブルについても、これまでに3回開催し、日米両国の企業及び政府関係者が出席し、再生可能エネルギー、省エネルギー及びスマートコミュニティ等の普及拡大に向けた課題等について議論しました。

また、2015年2月、昨今の日米エネルギー協力は化石燃料分野や電力システム分野、クリーンエネルギー分野まで幅広く拡大してきていることを踏まえ、上記政策対話の名称を「日米エネルギー政策対話」に改称し、日米間のエネルギー協力を広く議論する場として、今後とも継続開催していくことを、日米間で一致しました。

②日加協力

2016年5月、トルドー首相が来日し、日加首脳会談を行いました。会談においては、安倍総理から、カナダからのLNG輸出の早期実現やビジネス環境改善に向けて迅速で目に見える動きが必要であり、トルドー首相の指導力に期待する旨述べたのに対し、トルドー首相は、これらの問題を真剣に受け止めており、具体的な対応を進めたい旨述べました。

また、2016年5月、カー天然資源大臣が訪日し、林経済産業大臣との間で会談を行いました。会談では、 世界経済の成長を下支えするために、官民の投資を積極的に促していくことの重要性を確認したほか、天然ガス分野を中心に資源分野において、強固な関係をさらに発展させることで一致しました。

なお、カナダは、西部のブリティッシュ・コロンビア州でLNGプロジェクトが複数検討されており、日本にとって、地理的な近接性を含め、供給源の多角化を進めていく上で期待される供給元の一つです。

2014年11月に、カナダ天然資源省との間で、第1回政策協議を東京にて開催して以降、カナダからのLNGの輸入を実現する上での、迅速な許認可手続等の課題について協議を継続しています。

③日仏協力

日仏両国は、石油・天然ガスの多くを輸入に依存する点、今後のエネルギー源の多様化を追求する点等、エネルギー構造、エネルギー政策に多くの共通点が存在します。この観点から、日仏両国では高級事務レベル対話である日仏エネルギー政策対話を設置しています。2012年以降、これまでに政策対話を3回開催し、両国の最新のエネルギー政策についてアップデートするとともに、エネルギー安全保障の強化策について議論しました。

原子力分野においては、2011年10月の東京での日仏首脳会談における両国首脳の主導により設置された原子力エネルギーに関する日仏委員会の第6回会合を2016年11月にパリにて開催し、両国の原子力エネルギー及び核燃料サイクルに係る政策、高速炉協力、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・除染等に係る協力、原子炉の第三国展開に係る産業協力、原子力安全規制に係る二国間の協力等につき、意見交換を行いました。また、産業協力及び共同研究開発等を強化するため、2017年3月、世耕経済産業大臣とロワイヤル環境・エネルギー・海洋大臣が、民生用原子力協力に関する意図表明に署名しました。

④日英協力

2017年3月、第8回日英エネルギー対話を東京にて開催し、両国のエネルギー政策、電力システム改革、石油・天然ガス調達戦略、再生可能・省エネルギー政策、さらには多国間枠組みにおける日英協力のあり方について議論しました。

原子力分野については、2012 年4 月に発出された日英両国首相による共同声明に基づき、日英原子力年次対話を設置しています。2016年10月及び11月に東京で開催した第5 回日英原子力年次対話では、両国の原子力政策、廃炉及び除染等の東京電力福島第一原子力発電所事故対応、原子力研究開発、広報の在り方、両国の規制の仕組み等について、意見交換を行いました。

⑤日独協力

ドイツ政府は長期的に大部分のエネルギー供給源を再生可能エネルギーとし、建物・機器を中心に省エネルギーを強化する方針の下、導入コストに配慮した再生可能エネルギー増大とそれに対応した送電網の整備など、大幅にエネルギー政策を転換しています。また、電力小売市場全面自由化から15年以上経ており、電力システム改革について知見・経験を有しています。この観点から、ドイツのエネルギー専門家と議論を深めることは重要であり、2016年9月から日独エネルギー変革評議会を開催しています。2017年1月に開催された第2回評議会では、再生可能エネルギーや省エネルギー、気候変動対策、電力市場改革といった幅広い分野について議論が行われました。

⑥欧州委員会との協力

2016年5月、アリアス・カニェーテ委員が訪日し、林経済産業大臣と会談を行いました。会談では、柔軟で透明性の高い国際LNG市場作りに向け、連携を深めていくことで一致しました。また、世界経済の成長の下支え、またパリ合意の確実な履行に向けて、官民の投資を積極的に促していくことの重要性を確認しました。

また、2007年1月に行われた安倍総理とバローゾ欧州委員会委員長との会談の際に、日EUエネルギー協力の強化の必要性が認識されたことを受け、日EUエネルギー政策対話を設置しています。2007年4月にブラッセルで初めて開催されて以降、これまで5回開催されてきており、エネルギー政策全般、天然ガス市場、再エネ・省エネ等技術協力等の幅広い協力について議論が行われてきています。

⑦日ウクライナ協力

2016年4月、ポロシェンコ大統領が訪日し、安倍総理と会談を行いました。会談では、2015年5月のG7エネルギー大臣会合及びG7サミットにて、各国がウクライナに対してエネルギー効率の向上を含め
エネルギー分野での様々な形の支援を継続することで一致したことを受け、同年10月に我が国が提示した同国のエネルギー政策マスタープランの成果報告や同国における石炭火力の高効率化への支援など、エネルギー分野で着実に協力が進展していることを確認しました。

⑧日豪協力

2016年8月、高木経済産業副大臣が訪豪し、ビクトリア州パラス財務大臣及び同ヌーナン資源大臣と会談を行いました。会談では、日豪両国のイノベーション協力事業である豪州褐炭水素プロジェクトを、円滑に実施・推進するための協力を継続することを再確認しました。

また、2017年1月、安倍総理は、豪州を訪問し、ターンブル首相と会談を行いました。会談では、日本企業が取り組んでいる豪州褐炭水素プロジェクトやLNGプロジェクトについて議論しました。

なお、日豪両国は、石炭、LNG、ウラン等の資源・エネルギーの分野において重要なパートナーであり、1985年以来、国際エネルギー情勢や両国のエネルギー政策等を議論する二国間対話の場として、日豪エネルギー高級事務レベル協議(HLG)を開催しています。HLGでは、両国のエネルギー・鉱物資源分野の協力の推進のため、資源開発やエネルギー技術などについて議論を行ってきています。

(2)アジアとの協力

①日インド協力

インドは、2014年時点で米中に次ぐ世界第3位のエネルギー消費国であり、電力需要は2040年までに2013年比で3倍以上に増加することが見込まれています。インドのエネルギー資源の安定供給確保とエネルギー効率化の向上は、日本のエネルギー安全保障の上でも重要であり、両国の経済発展にも直結する重要な政策課題になっています。また、インドの電力構成は、石炭火力発電が約7割を占めており、発電効率の向上や環境対策も重要な課題となっています。

こうした背景を踏まえ、エネルギー分野における両国の協力拡大を図る観点から、2007年の首脳合意を踏まえ、閣僚級の枠組みである「日印エネルギー対話」を立ち上げ、両国閣僚の相互訪問により、2007年以降、計9回の対話を実施する等、エネルギー協力を進めています。

2016年11月には、モディ首相が訪日し、安倍総理との間で会談を行い、会談後、日印原子力協定の署名が行われました。また、2017年1月には、世耕経済産業大臣が訪印し、インド・ゴヤル電力・石炭・鉱物・新・再生可能エネルギー大臣と会談を行いました。両大臣は、「ガストゥーパワー事業」の実現可能性等の発電事業の課題や「高品質電力供給モデル」の実現に向けた系統対策について日印間で協議を開始すること、日本の省エネ法の各種基準の理解促進のための人材育成を進めインドの制度へ早期に導入すること等で合意しました。

②日インドネシア協力

インドネシアは、日本にとって有数の石油・天然ガス及び石炭の輸入相手国であり、複数の日本企業が多くの上流開発プロジェクトやLNGプロジェクトに参画しています。また、インドネシア政府は2015年から2019年までの35GWの電源整備計画を推進しています。

2016年6月、高木経済産業副大臣がスディルマン・エネルギー鉱物資源大臣と会談を行い、35GW計画の着実な実施や天然ガス協力など、今後のエネルギー協力の強化について議論しました。

2016年10月には、ルフット海洋担当調整大臣が来日し、安倍総理と会談を行いました。会談では、日本企業が投資をする天然ガスプロジェクトの推進等について協議しました。

また、2017年1月には、安倍総理がインドネシアを訪問し、ジョコ・ウィドド大統領と首脳会談を行いました。会談では、35GW計画への協力等について協議しました。

加えて、2017年1月にジャカルタで第4回日インドネシアエネルギーフォーラムを開催しました。同フォーラムでは、電力、天然ガス、再生可能エネルギーなどの分野における、政策、今後の計画や協力事業等について、情報共有と意見交換を行いました。

環境エネルギー協力としては、二国間オフセット・クレジット制度(JCM)の下で2016年5月にJCMの開始以降初めてクレジットを発行しました(合計で40トン)。また、2017年2月に第6回合同委員会(JCM実施に関する協議等)を開催し、JCMプロジェクトを1件登録しました。

③日ベトナム協力

ベトナムは、石炭、石油・天然ガス、鉱物資源を豊富に保有する資源国であり、日本にとって良質な無煙炭の重要な供給国です。現在、両国間においては、日ベトナム共同での石炭地質構造調査、日越石炭政策対話の開催、省エネ促進のための長期専門家の派遣及び受入研修等、多岐の分野にわたる協力関係が進展しています。

2017年1月には、安倍総理がベトナムを訪問し、フック首相と首脳会談を行いました。会談では、 高効率で環境に優しい石炭火力やLNGの新規導入への協力について議論しました。

環境エネルギー協力については、JCMの下で2016年5月にJCMプロジェクトを2件登録しました。

④日タイ協力

2016年11月には、アナンタポーン・エネルギー大臣と世耕経済産業大臣との間で会談が行われ、アジアで拡大するLNG利用について議論が交わされるとともに、我が国企業が保有する石油・天然ガス田の権益について知見や技術力を有する既存事業者が継続して事業を行えるよう働きかけを行いました。

なお、タイでは、2015年、電源開発計画の改定などエネルギー政策の見直しが行われました。この政策の推進にあたり、我が国が知見や技術を活用して協力することが期待されます。こうした状況を踏まえ、2015年2月の日タイ首脳会談での共同声明における合意に基づき、日タイ・エネルギー政策対話を開催しています。2016年8月の第2回日タイ・エネルギー政策対話では、両国の石炭やLNGにおける政策や、再エネ・省エネ分野の取り組み、電気自動車の促進について議論を行いました。

環境エネルギー協力については、2016年8月に第2回JCM合同委員会を開催し、温室効果ガス排出削減量の算定方法を2件採択しました。

⑤日ミャンマー協力

ミャンマーにおいては経済成長に伴い電力需要が増大しており、ミャンマーの発電電力量の約6割は水力が占めていますが、特に水不足時の電力不足は深刻です。こうした状況を踏まえ、2016年6月に第一回日ミャンマーエネルギー政策対話を開催しました。同対話では、ミャンマーの電力・ガス不足解消に向けて議論を行い、中長期的にLNG導入が必要であることに一致しました。

環境エネルギー協力については、2016年4月に第1回JCM合同委員会を開催し、JCM実施に関するルール及びガイドラインについての協議を行いました。

⑥日中協力

中国は、世界最大のエネルギー消費国であり、2040年までのエネルギー需要が約3割伸びると見込まれていることから、中国のエネルギー効率の向上は、日本のエネルギー安全保障にとって重要な課題です。また、中国においては、近年、石炭火力発電や自動車等を由来とした大気汚染が大きな問題となっており、その解決策の一つとして、省エネ対策に取り組んでいるところです。

こうした状況の中、2016年11月、日中の官民による省エネ・環境協力のプラットフォームである「第10回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」が北京で開催されました。今次フォーラムには、日本側からは世耕経済産業大臣、宗岡正二日中経済協会会長、中国側からは徐紹史国家発展改革委員会主任、高燕商務部副部長を始めとして、両国合わせて約800名を超える官民関係者が参加しました。また、今次フォーラムでは、28件のプロジェクトについての文書が交換され、2006年5月の第1回開催以来の協力プロジェクト数の累計は313件となりました。これに加え、世耕経済産業大臣と徐主任は、経済産業省と発展改革委員会による「省エネルギー・環境分野における日中協力の更なる深化を図るための覚書」に署名しました。覚書には、本フォーラムの継続開催、企業・研究機関の更なる協力の推進、グリーン発展人材の育成強化などの内容が含まれます。

さらに、今次フォーラムでは、日中双方の関心に基づき「省エネルギーサービス産業」、「新エネルギー自動車・自動車知能化」を含む6の分科会が開催され、日中双方の専門家から各分野の省エネ・環境技術等に関するプレゼンテーション等が行われました。

(3)エネルギー供給国等との関係強化

①日サウジアラビア協力

サウジアラビアは、世界有数の産油国かつ日本にとって第1位の原油供給国です。また、産油国の中でも特に主要な位置付けにあり、大きな余剰生産能力を持つことからも、国際原油市場の安定にも大きな影響力を有しています。こうしたことから、石油の大部分を輸入に頼る我が国にとって同国との関係強化は重要な課題であり、2007年に立ち上げた日サ産業協力タスクフォースを通じ、投資促進、人材育成、中小企業支援等、エネルギー分野にとどまらない幅広い協力・関係強化を官民一体となって推進しています。

2016年9月には、ムハンマド副皇太子が訪日し、安倍総理と会談を行いました。会談では、サウジアラビアの成長戦略である「サウジ・ビジョン2030」と日本の成長戦略の実施に向け具体的協力を集中的に議論すべく、閣僚級の「日・サウジ・ビジョン2030共同グループ」を立ち上げることで一致しました。会談後、エネルギー分野を含む7つの協力覚書の署名・交換が行われ、エネルギー分野に関する協力覚書には世耕経済産業大臣が署名しました。

同年10月には、サウジアラビア王国において「日・サウジ・ビジョン2030共同グループ」が開催され、世耕経済産業大臣が出席しました。この場において、具体的な行動に向け集中的に議論するために「貿易・投資機会」、「投資・ファイナンス」、「エネルギー・産業」、「中小企業・能力開発」、「文化・スポーツ」の主要テーマ毎にサブグループを設置することが合意され、併せて、第1回の各サブグループも実施されました。

また、同地訪問にあわせ、世耕経済産業大臣は、サルマン国王及びムハンマド副皇太子への表敬訪問を行い、サウジアラビア側から、今後の両国の関係強化に向けた強い期待が表明されました。アル・ファーレフ・エネルギー・産業・鉱物資源大臣との会談では、従来の石油・ガスに限られず、省エネ、再エネなど重層的なエネルギー協力を進めていくことで一致し、2010年から継続している同国との共同石油備蓄事業についても、事業を拡充し、三年間延長することで合意しました。

さらに、2017年3月には、安倍総理とサルマン・サウジアラビア国王との首脳会談において、二国間協力の基本的な方向性と具体的なプロジェクトをまとめた「日・サウジ・ビジョン2030」が合意されました。また、両首脳立ち会いの下、世耕経済産業大臣及びファキーフ経済企画大臣他による本ビジョンの実行に係る協力覚書への署名が行われたほか、首脳会談に先立ち、世耕経済産業大臣がサルマン国王と会談しました。会談では、世耕大臣から、新たな日サ協力の羅針盤となる「日・サウジ・ビジョン2030」を着実に実行していく意思を表明するとともに、それにより、これまでの石油や石油化学を中心とした両国の関係を拡大させ、包括的かつ戦略的な関係へと発展させていく決意を併せて表明しました。また、第2回「日・サウジ・ビジョン2030共同グループ」を開催し、日本側からは、世耕経済産業大臣ほか、サウジアラビア側からはファキーフ経済企画大臣ほかが出席し、「日・サウジ・ビジョン2030」を着実に実施するための討議が行われました。

②日UAE協力

アラブ首長国連邦(UAE)は、日本にとって第2位の原油調達国であり、我が国の自主開発原油の約4割が存在する資源国です。我が国との間では、要人の往来が活発に行われており、様々な分野での協力を推進してきました。

2016年5月と11月には、高木経済産業副大臣がUAEを訪問し、それぞれ、第4回日本アブダビ経済協議会(ADJEC)、アブダビ国際石油展示・会議(ADIPEC)に出席するとともに、UAE・アブダビ首長国の政府要人との間で会談を行いました。

マンスールUAE副首相兼大統領官房大臣との会談では、我が国企業が保有する石油権益の延長を働きかけたほか、エネルギーをはじめ、産業、投資、先端技術など、幅広い分野における両国間の協力の重要性について意見交換を行い、そうした協力の更なる進展に向けて取り組んでいくことで一致しました。このほか、ジャーベル国務大臣兼ADNOC(国営石油会社)CEOとマズルーイUAEエネルギー大臣とも会談を行い、二国間関係の更なる強化に向けて、エネルギー協力を基礎とした幅広い分野における協力の一層の推進について意見交換を行うとともに、我が国企業が保有する石油権益の延長について働きかけを行いました。

また、2017年1月には、ワールド・フューチャー・エナジー・サミット(WFES)の機会に世耕経済産業大臣がUAEを訪問し、ムハンマド・アブダビ皇太子を含む政府要人等との会談を行いました。ムハンマド・アブダビ皇太子との会談では、長期にわたる石油・ガス分野での協力関係をさらに発展させる観点から、2018年に期限を迎える海上油田権益の更新を働きかけ、ムハンマド皇太子からも一定の理解を得ました。また、首脳レベルを含め、過去からの両国間で築き上げた強固な信頼関係を基礎として、エネルギー分野にとどまらず、産業、投資、先端技術、食料等の幅広い分野における協力を深化させ、具体的な取組につなげていくことで合意しました。ジャーベルUAE国務大臣兼アブダビ国営石油会社CEOとの会談では、2018年に期限を迎える海上油田権益の延長を働きかけ、国際石油開発帝石株式会社(INPEX)が権益を保有するサター油田及びウムアダルク油田について、25年間の権益の延長をすることで基本合意に至りました。今後交渉が本格化すると見込まれる他の海上油田権益の更新の重要性についても、世耕経済産業大臣から重ねて理解を求めました。また、2017年末に期限が到来する日本政府とADNOCによる共同石油備蓄事業については、延長することで合意しました。加えて、ジャーベル大臣から、長期的かつ戦略的なビジョンを持って、石油・ガス・LNG分野の上流(開発)、中流(LNG基地等)、下流(石油精製、石油化学等)にわたる幅広い協力関係を構築していきたいとの提案があり、世耕経済産業大臣は今後検討を深めたいと応じました。マンスーリUAE経済大臣との会談においては、両大臣は、UAEが推進する産業多角化を後押しする観点から、中小企業・イノベーション分野の協力枠組みを創設するための覚書に署名しました。また、中小企業ミッションの相互派遣などまたこの分野協力を深めていくとで合意しました。ハルドゥーン・アブダビ執行関係庁長官、マズルーイUAEエネルギー大臣及びマンスーリ・アブダビ経済開発庁長官との会談では、我が国企業が保有する海上油田権益の延長を働きかけるとともに、産業多角化、投資促進、人材育成、先端技術など、幅広い分野における協力を一層推進していくことで合意しました。

③日カタール協力

カタールは、世界第3位の天然ガス埋蔵量を有する資源国であるとともに、日本にとって第4位の原油輸入国、第3位の天然ガス輸入国です。カタールとは、2006年11月に第1回日・カタール合同経済委員会(麻生外務大臣及び甘利経済産業大臣とアティーヤ第二副首相兼エネルギー工業大臣が出席)を開催し、その後毎年委員会を開催し、二国間経済関係をさらに幅広く包括的なものにしていくために協議を重ねてきました。

2016年9月、安倍総理は、タミーム首長と日・カタール首脳会談を行い、安倍総理からタミーム首長に対して、カタールは日本にとって主要なLNG供給国であり、地域の安定勢力たるカタールを重視している旨発言がありました。

2016年11月には、経済産業省主催の第5回目となるLNG産消会議2016出席のため、アル・サダ・エネルギー工業大臣が来日し、LNG市場の発展に向けた議論が行われました。さらに、第10回日・カタール合同経済委員会が併せて開催され、日本側は、LNG市場の大きな変化に触れつつ、仕向地条項の緩和の重要性やLNG市場の拡大のための両国間の協力について働きかけを行ったのに対し、カタール側は、引き続きLNGをはじめとするエネルギーの安定供給を通じ日本とのパートナーシップを継続する旨を述べました。また、日本側は、日本企業の石油及びガス権益延長について働きかけを行いました。

④日クウェート協力

クウェートは我が国にとって第4位の原油輸入相手国です。原油の安定供給確保のため同国との関係を緊密にすることは非常に重要であり、同国との関係強化を推進しています。

2016年5月、ジャービル首相が訪日し、安倍総理と会談を行いました。会談では、安倍総理から、今後もクウェートからの原油の安定供給に期待する旨述べたのに対し、ジャービル首相は、クウェートは日本への石油の安定供給に努力している旨述べました。また、安倍総理から、日本企業のクウェートへの関心は引き続き高く、是非、電力、運輸分野等のインフラ整備に日本の高い技術力を活用いただきたい旨述べたのに対し、ジャービル首相は、日本には、インフラ、石油、再エネ、下水、廃棄物といった分野での投資を含め参加してほしい旨述べました。

また、2016年9月、高木経済産業副大臣はアルジェリアを訪問した際、サーレフ副首相兼財務大臣兼石油大臣代行と会談を行い、エネルギーやインフラ分野での協力について議論しました。

⑤日イラン協力

イランは世界有数の原油及びガスの埋蔵量を持つ資源国であり、日本にとって第6位の原油輸入先です。

2016年9月には、安倍総理がローハニ大統領と首脳会談を行いました。会談では、二国間関係に関し、ローハニ大統領から、経済・貿易・投資関係をもっと拡大させたいと口火を切ったのに対して、安倍総理から、日本はイランとの協力強化のため、100億ドルのファイナンスファシリティの設定、投資協定の国会承認、約20年ぶりの円借款となる電力案件の形成等できるだけのことを実施しているとした上で、今後ビジネスを本格化させたいと述べるとともに、イラン側のビジネス環境の整備等更なる努力を働きかけました。

⑥日トルコ協力

近年、我が国とトルコの間では、インフラ案件を始め、様々な分野での協力を推進しています。

2016年9月、安倍総理はエルドアン大統領と首脳会談を行いました。会談では、安倍総理から、シノップ原発の建設進展への期待を述べたのに対し、エルドアン大統領からは、日トルコ間の貿易・投資を拡大したい旨、日本からの円借款等による支援の重要性について指摘がありました。

⑦日露協力

ロシアは世界第3位の産油国であるとともに、世界第2位の産ガス国でもあります。

2016年5月の日露首脳会談において、安倍総理はプーチン大統領と日露首脳会談を行いました。会談では、安倍総理から日露経済交流の促進に向け、エネルギー分野を含む8項目の「協力プラン」を提示し、プーチン大統領から高い評価と賛意が表明されました。

同年9月、安倍総理及び世耕経済産業大臣がロシア(ウラジオストク)を訪問した際、プーチン大統領との日露首脳会談等が行われ、エネルギー協力等の8項目の「協力プラン」の具体化に向けた議論を深めていくこととなりました。

さらに、同年11月、世耕経済産業大臣はロシア(モスクワ)を訪問し、ノヴァク・エネルギー大臣との間で「日露エネルギー・イニシアティブ協議会」第1回会合を開催し、炭化水素、省エネ・再エネ、原子力の3つの分野でそれぞれワーキンググループを設置し、石油ガスの上流共同開発や風力発電の導入促進、福島第一原発の廃炉協力等を加速していくことで一致しました。また、ウリュカエフ経済発展大臣との間で「「協力プラン」の具体化に関する日露ハイレベル作業部会」第1回会合を開催し、エネルギー協力を含む8項目の「協力プラン」の具体化に関する進め方について協議を行いました。

同年12月には、プーチン大統領が訪日し、日露首脳会談が開催されたほか、文書交換式、日露ビジネス対話等が行われ、医療・保健、エネルギー、産業多様化、極東開発、先端技術協力等の政府・当局間文書及び8項目の協力プランのそれぞれの項目の下で企業等が行うプロジェクトに関する文書が署名されました。

2017年1月、世耕経済産業大臣はロシア連邦(モスクワ)を訪問し、ノヴァク・エネルギー大臣との間で「日露エネルギー・イニシアティブ協議会」第2回会合を開催し、2016年12月のプーチン大統領来日の際に炭化水素、原子力、省エネ・再エネの各分野で合意した協力プロジェクトについて、その早期の具体化を目指して協力を進めていくことを確認しました。

⑧日カザフスタン協力

カザフスタンは、世界第2位のウラン資源埋蔵量を有する資源国であり、カザフスタンから我が国へのウラン供給拡大の潜在性は大きなものがあります。また、ウラン鉱山開発のみならず原子力産業・技術の高度化等広範囲な分野への協力関係拡大を目指しているほか、同国は原始埋蔵量が350億バレルを有する世界有数のカシャガン油田の開発を進めており、日本企業がその開発に参画し、石油ガス分野での協力も行われています。2016年4月、核セキュリティ・サミット出席のためワシントンD.C.を訪問した安倍総理は、ナザルバエフ・カザフスタン共和国大統領と首脳会談を行い、原子力をはじめ幅広い分野における民間ベースの協力の拡大、日本企業参入への期待やビジネス環境整備について話し合われました。2016年11月、ナザルバエフ大統領が来日し、日カザフスタン首脳会談が行われ、両首脳は、双方の原子力分野での協力を継続していく意向表明等が含まれた「アジアの繁栄の世紀における拡大された戦略的パートナーシップに関する日本国とカザフスタン共和国の共同声明」に署名しました。また、安倍総理及びナザルバエフ大統領の立会いの下、未来のエネルギーがテーマとされているアスタナ博覧会に関して「2017年アスタナ国際博覧会日本館参加契約署名式」が行われました。

⑨日モザンビーク協力

モザンビークは、優良な原料炭、天然ガス、レアメタル等の天然資源が豊富に埋蔵されており、日本への新たな供給源として期待され、我が国企業もモザンビークにおけるLNGプロジェクトに参画しています。

2016年8月、安倍総理がTICAD VIの機会にケニアを訪問した際、ニュシ大統領との間で日モザンビーク首脳会談を行いました。安倍総理から、モザンビークひいてはアフリカと日本との関係強化に強い意欲を表明しました。これに対し、ニュシ大統領からは、日本の対モザンビーク投資が拡大していることへの歓迎の意を表するとともに、今般のインフラ、人材育成等のTICADの重点分野はいずれもモザンビークの開発にとっても重要であり、こうした分野での協力を進めていきたい旨述べました。

⑩日ナイジェリア協力

2016年8月、安倍総理がケニアを訪問した際、ブハリ大統領との首脳会談を行いました。安倍総理から、ナイジェリアの投資環境整備に協力する意向を示しつつ、水力発電所の改修や都市鉄道の整備等、日本の知見や技術を活かした優良案件の形成に貢献したいとの考えを述べました。これに対して、ブハリ大統領から、日本企業の投資及び高度な技術への期待感、さらにはナイジェリアの投資環境整備に向けた自助努力の必要性への認識を示しました。その上で、特に保健や教育の基盤となるものも含めたインフラ分野への支援を要請しました。

2016年11月、カチク石油国務大臣が訪日し、世耕経済産業大臣と会談を行いました。会談では、世耕経済産業大臣から、ナイジェリアからの輸入は日本にとってLNG調達先の多角化に重要、LNG市場の発展に向けて連携したいと要請し、カチク大臣から、日本企業の参入期待等について説明がありました。