第3節 “水素社会”の実現に向けた取組の加速
水素は、利用段階では二酸化炭素を排出せず、多様なエネルギー源から製造が可能であるなど、環境負荷の低減やエネルギーセキュリティの向上に資する将来の有望な二次エネルギーの一つです。一方、技術面、コスト面、制度面、インフラ面で多くの課題が存在しており、このような水素の利活用を本格化していくためには官民一体となった取組を進めていくことが重要です。
このため、産学官の有識者から構成される「水素・燃料電池戦略協議会」において検討を行い、水素の製造から輸送・貯蔵、そして利用に至る、様々な側面について、産学官の役割分担や今後の必要な取組を明確化した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を2014年6月に策定しました。
2014年6月に閣議決定された『「日本再興戦略」改訂2014』においても、「ロードマップに基づき、水素の製造から輸送・貯蔵、そして家庭用燃料電池(エネファーム)や燃料電池自動車等の利用に至る必要な措置を着実に進める」とされており、本ロードマップに基づき、取組を進めていきます。
2009年に世界に先駆けて市場投入された家庭用燃料電池(エネファーム)については、技術開発によるコスト低減や性能向上、導入支援による普及初期の市場の確立などを通じて、2015年3月には普及台数が11万台を超え順調に普及しています。また、2014年4月には、集合住宅向け家庭用燃料電池の販売開始や、我が国のメーカーによる欧州における家庭用燃料電池の市場投入が行われるなど、市場の更なる拡大に向けて新たな取組も進みつつあります。
燃料電池自動車については、2013年から燃料電池自動車の市場投入に向けた水素ステーションの先行整備が開始され、2014年12月には世界に先駆けて燃料電池自動車の市販が開始されました。引き続き、水素ステーションの整備促進や、低コスト化に向けた技術開発、規制の見直しなどを進めるとともに、燃料電池バスや燃料電池フォークリフト等の実用化に向けた技術開発なども進めていきます。
また、水素発電については、高効率、高濃度な水素ガスタービンの燃焼技術等の開発が進められています。さらに水素の本格的な利活用のためには、水素をより安価で大量に調達することが必要となり、海外の未利用の褐炭や原油随伴ガスを水素化し、国内に輸送するための様々な技術について検討が行われています。
<具体的な主要施策>
1. クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金
(再掲 第2章第1節2.(4) 参照)
2. 民生用燃料電池(エネファーム)導入支援補助金【2014年度補正:222.0億円】
省エネルギー及びCO2削減効果が高い家庭用燃料電池(エネファーム)の更なる普及の促進を図るため、設置者に対し導入費用の補助を行いました。
3. 固体高分子形燃料電池実用化推進技術開発事業【2014年度当初:31.9億円】
燃料電池自動車や家庭用燃料電池(エネファーム)等に利用されている固体高分子形燃料電池(PEFC)の低コスト化を図るため、材料に用いられる白金の量を低減するための技術等の開発を行いました。
4. 固体酸化物形燃料電池等実用化推進技術開発事業【2014年度当初:13.0億円】
今後、業務用や事業用での利用が期待される固体酸化物形燃料電池(SOFC)の普及拡大に向けて、耐久性・信頼性を向上させるための基盤技術開発や技術実証、高効率火力発電システムにSOFCを組み込んだ超高効率火力発電システム(トリプルコンバインドサイクル発電システム)の要素技術開発等を行いました。
5. 水素利用技術研究開発事業【2014年度当初:32.5億円】
水素ステーション整備、水素輸送、燃料電池車製造等のコスト低減に向け、金属の代わりに炭素繊維を用いた水素タンクの開発や、低コスト鋼材の使用の前提となる性能や安全性に関する評価・検査手法の開発などを行いました。
6.新エネルギーベンチャー技術革新事業
(再掲 第3章冒頭8. 参照)
7. 水素供給設備整備事業費補助金【2014年度当初:72.0億円、2014年度補正:95.9億円】
燃料電池自動車の市場投入を踏まえ、四大都市圏を中心に民間事業者等の水素ステーション整備費用の補助を行いました。
8.革新的水素エネルギー貯蔵・輸送等技術開発【2014年度当初:16.0億円】
再生可能エネルギー等を有効利用するため、再生可能エネルギー等から低コスト・高効率で水素を製造・貯蔵する技術や当該水素を長距離輸送が比較的容易なエネルギー輸送媒体(エネルギーキャリア)に効率的に転換する技術開発等を行いました。
【第383-1-1】 水素社会のイメージ