第5節 次世代革新炉の開発・建設に向けた取組
2023年7月に閣議決定された「GX推進戦略」では、原子力について、安全性の確保を大前提に、原子力発電所の再稼働を進めること、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組むこと等が盛り込まれました。次世代革新炉である「高速炉」については、同年7月に、実証炉の炉概念として三菱FBRシステムズが提案する「ナトリウム冷却タンク型高速炉」を、そして概念設計を実施するとともに将来的にはその製造・建設を担う「中核企業」として三菱重工業を選定し、同年9月より実証炉開発事業を開始しました。また、「高温ガス炉」についても、同年7月に中核企業として三菱重工業を選定し、同年8月より実証炉開発事業を開始しました。
また、「第6次エネルギー基本計画」では、「放射性廃棄物の有害度低減・減容化、資源の有効利用による資源循環性の向上、再生可能エネルギーとの共存、カーボンフリーな水素製造や熱利用といった多様な社会的要請に応えていく」とされており、社会的要請のある原子力技術の高度化に資する技術開発支援も実施しています。
〈具体的な主要施策〉
1.高速炉実証炉開発事業【2023年度当初:75.7億円】
高速炉は、エネルギー供給の脱炭素に貢献するとともに、資源の有効利用・放射性廃棄物の減容化・有害度低減といった意義を有しており、フランスや米国等の諸外国においても、研究開発が進められています。2023年度は、高速炉開発の「戦略ロードマップ」に基づき、概念設計の対象となる炉概念の仕様と中核企業を選定し、高速炉実証炉に適用できる技術基盤の整備を進めるとともに、概念設計のための研究開発を進めました。
2.高温ガス炉実証炉開発事業【2023年度当初:47.7億円】
高温ガス炉は、固有の安全性を有し、従来の軽水炉よりも高温度帯となる800℃以上の高温熱活用や、水素製造等の産業利用が期待されており、英国や米国等の諸外国においても、研究開発が進められています。2023年度は、実証炉の設計に係る研究開発、HTTRを活用した水素製造試験に向けた設計やカーボンフリー水素の要素技術開発等を進めました。
3.社会的要請に応える革新的な原子力技術開発支援事業【2023年度当初:12.0億円】
多様な社会的要請の高まりを見据えた原子力関連技術のイノベーションを促進するため、安全性・経済性・機動性に優れた原子力技術の開発に対する支援を行いました。