第4節 既設炉の最大限の活用に向けた取組
1.運転期間の取扱い
2023年5月31日にGX脱炭素電源法が成立し、原子力発電所の運転期間のあり方については、「利用」と「規制」の観点から改めて峻別され、「電気事業法」と「原子炉等規制法」における条文の再整理が行われました。
具体的には、立地地域等における高経年化に対する不安の声や、制度の連続性等にも配慮し、これまでの制度と同様に、「運転する期間を40年、最長で60年に制限する」という枠組みは維持することとしつつ、東日本大震災以降の法制度の変更等、事業者から見て他律的な要素によって停止していた期間に限り、「60年」の運転期間のカウントから除外することを認めるという制限が電気事業法に設けられました。その上で、利用政策の観点からの判断がどのようなものであっても、高い独立性を有する原子力規制委員会が厳格な審査を行い、規制基準への適合性が確認できなければ、運転することができない仕組みとなっています。総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会では、2025年6月6日の制度施行に向けて、審査基準の策定に向けた議論が進められています。
原子炉等規制法においては、運転期間に関する規定を削除した上で、運転開始から30年を超えて運転しようとする場合には、事業者が10年以内ごとに事業者設備の劣化に関する技術的評価を行い、その結果に基づき「長期施設管理計画」を作成し、原子力規制委員会の認可を受けることを新たに義務づけました。
2.設備利用率の向上
エネルギー安定供給の確保とカーボンニュートラルの実現の両立に向け、既設の原子力発電所を最大限活用していく上では、設備利用率の向上の取組を進めることが重要です。2023年4月28日に開催された原子力関係閣僚会議で決定された「今後の原子力政策の方向性と行動指針」では、設備利用率の向上に関して、「エネルギー供給における『自己決定力』の確保や、グリーントランスフォーメーションにおける『牽引役』としての貢献に資するため、安全性確保を大前提に、運転サイクルの長期化、運転中保全の導入拡大及び定期検査の効率的な実施に取り組む」とされています。
運転サイクルの長期化に向けては、ATENAが中心となり、PWRプラントの15か月運転導入に向けた技術的な検討を実施しています。また、運転中保全の導入拡大に向けては、NRRCとATENAが協力して、リスク管理措置や規制上の課題の整理・検討を進めており、作業品質と設備の信頼性の向上を通じて、利用率の向上につなげていくことを目指しています。加えて、事業者は相互に連携しながら、安全性の確保を大前提とした効率的な定期検査の実施に向け、国内外の取組の分析や良好事例の導入を進めています。