第2節 石油・天然ガス等国産資源の開発の促進

国内のエネルギー・鉱物資源は、国際情勢等の影響を受けにくい安定した資源であり、その中でも海洋の資源は、日本のエネルギーの新たな供給源の1つとなりうる重要な存在です。そのため、「海洋基本法(平成19年法律第33号)」に基づく「海洋基本計画2」を踏まえて「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画3」を策定し、その開発を計画的に進めてきました。この海洋エネルギー・鉱物資源開発計画では、海洋エネルギー・鉱物資源の種類ごとに、開発の目標と達成に至る筋道、必要となる技術開発を明記するとともに、各省庁との連携、国と民間の役割分担、さらには、横断的配慮事項として、人材育成や国際連携、海洋の環境保全、国民の理解促進に留意して、適切に開発を進めることとしています。また、2024年3月の海洋エネルギー・鉱物資源開発計画の改定では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた中でも、石油・天然ガス等のエネルギー資源は引き続き必要であり、CCS等と一体で取り組むことが重要であるため、CCSを新たな分野として追加しました。なお、海洋エネルギー・鉱物資源開発は、世界的にも例が少なく先端的であると同時に、不確実性が高く、極めて難度の高い技術開発という特性があるため、こうした特性を踏まえ、海洋エネルギー・鉱物資源開発計画は、実証実験を実施する等の科学技術力の着実な進展にも注力した上で、商業化に向けた見直しが可能な柔軟性を持たせることとしています。

在来型の石油・天然ガスについては、日本の周辺海域の資源ポテンシャルを把握するため、2008年に三次元物理探査船「資源」を導入し、日本周辺海域での石油・天然ガスの探査を実施してきました。2018年度までに約6.2万㎢の探査を行い、90か所以上の石油・天然ガスポテンシャルがある構造を発見しました。2019年度からは、より効率的・効果的な探査を実現するため、JOGMECが新たな三次元物理探査船「たんさ」を導入し、民間探査会社・操船会社のオペレーションによる運航を開始しました。「第4期海洋基本計画」及び「第6次エネルギー基本計画」に基づき、三次元物理探査船等を活用した国主導での探査(10年間で概ね5万㎢)を機動的に実施するとともに、民間企業による探査にも同船を積極的に活用する等、より効率的・効果的な探査の実現を目指しています。2019年度から2022年度までの累計探査実績は12,207㎢であり、計画に対して遅れが出ていたものの、2023年度については目立ったトラブルもなく、12月末時点の探査実績は約7,300㎢と、順調なデータの取得ができています。また、有望な構造への試掘機会を増やすため、2019年度からは海域における補助試錐制度を導入するとともに、2022年度には対象地域を陸域まで広げ、2022年度から2か年事業として陸域での試錐事業を支援しています。今後も引き続き、物理探査及び試錐により得られた地質データ等の成果を民間企業に引き継ぐことで、国内資源開発の促進を図ります。

非在来型の天然ガスである水溶性天然ガスについては、国産天然ガスの約2割を占めています。また、水溶性天然ガスと同時に産出するヨードの生産量は世界の約3割(世界第2位)を占めており、ともに重要な国産資源です。引き続き、日本の貴重な国産資源である水溶性天然ガスの生産量拡大や、地盤沈下対策を進めます。

メタンハイドレートについては、メタンと水が低温・高圧の状態で結晶化した物質であり、日本の周辺海域に相当量の賦存が期待されていることから、日本のエネルギー安定供給に資する重要なエネルギー資源として、将来の商業生産を可能とするための技術開発を進めています。

主に太平洋側で確認されている砂層型メタンハイドレートについては、日米国際共同研究の一環として計画している米国・アラスカ州における長期陸上産出試験に係る地上設備設置作業等を実施した後、2023年9月から試験を開始しました。加えて、これまでに取得されている地震探査データの解析を踏まえて抽出した有望濃集帯において、簡易生産実験を含む試掘調査を実施しました。

また、主に日本海側で確認されている表層型メタンハイドレートについては、2019年度に特定した有望な回収・生産技術に関する要素技術や共通基盤技術について、引き続き、本格的な研究開発を推進しています。加えて、海底の状況や環境影響の評価のための海洋調査等(海底地盤調査、底層流等のモニタリング、海底画像マッピング、海底環境調査等)を、酒田沖、海鷹海脚・上越海丘、丹後半島北方をモデル海域として実施しました。

海底熱水鉱床については、沖縄海域及び伊豆小笠原海域において、鉱石価値の高い新鉱床の発見のための広域調査や資源量の精緻化に向けた既知鉱床のボーリング調査を実施し、概略資源量5,180.5万トンを把握しました。また、採鉱・揚鉱システムについては、立型採鉱機や循環式スラリー揚鉱方式の実証に向け、取り組んでいるところです。選鉱・製錬分野については、精鉱に含まれる不純物を低減する選鉱プロセスの改良に向けた検討を進めています。これまでに実施した資源量評価や生産技術の検討結果を踏まえ、経済性を含む総合評価を実施し、2023年11月に、その結果を公表しました。今後も、国際情勢をにらみつつ、2020年代後半以降に民間企業が参画する商業化を目指したプロジェクトが開始されるよう、資源量調査や生産技術の検討等に取り組んでいきます。

コバルトリッチクラストについては、国際海底機構(ISA)との間で締結した探査契約に基づき、南鳥島沖公海域に保有する探査鉱区において資源量評価を行い、2024年1月に、鉱区の最終絞り込みを実施しました。排他的経済水域内においても、資源量調査を実施しています。また、2020年7月に実施した掘削性能確認試験を踏まえ、採鉱試験機の開発についても進めています。

レアアース泥については、「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」に基づき、関係府省連携の推進体制の下で実施している戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期「海洋安全保障プラットフォームの構築」において、賦存量の調査・分析等に対する協力を行いました。また、戦略的イノベーション創造プログラム以外の取組では、レアアース泥をはじめとした海洋鉱物資源全般の開発に資する揚鉱技術として、エアリフト技術について検討を行いました。

マンガン団塊については、国際海底機構と契約しているハワイ沖の探査鉱区について、資源量調査や生産技術の検討、環境調査等を進めています。

〈具体的な主要施策〉

1.国内石油天然ガスに係る地質調査・メタンハイドレートの研究開発等事業費 【2023年度当初:272.5億円】

2023年度は、JOGMECが導入した三次元物理探査船「たんさ」の民間探査会社・操船会社のオペレーションによる運航を実施するとともに、民間企業の試錐調査への補助を実施しました。

砂層型メタンハイドレートについては、日米国際共同研究の一環として、米国・アラスカ州における長期陸上産出試験に係る地上設備設置作業等を実施した後、2023年9月から試験を開始しました。

表層型メタンハイドレートについては、回収・生産技術の有望技術に関する要素技術や共通基盤技術の研究開発及び海底の状況や環境影響を把握するための海洋調査等を実施しました。

2.海洋鉱物資源開発に向けた資源量評価・生産技術等調査事業委託費 【2023年度当初:91.0億円】

海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊等の海洋鉱物資源について、海洋資源調査船「白嶺(はくれい)」等を使用した資源量評価等や、生産技術に関する基礎的な研究・調査等を実施しました。

2
「海洋基本計画」は、2008年3月に第1期を策定、2013年4月に第2期を策定、2018年5月に第3期を策定しており、2023年4月には第4期を策定しました。
3
「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」は、2009年3月に策定後、2013年12月、2019年2月、2024年3月に改定しています。