はじめに 1-3
前章でも確認したとおり、第一次オイルショックが発生した半世紀前と同様に、今も世界各国では、「エネルギーセキュリティの確保」が重要な課題となっています。その一方で、半世紀前と今とを比較すると、エネルギーを取り巻く環境には様々な変化もありました。その変化の1つが、気候変動問題に対する世界的な意識の高まりです。世界中で異常気象が発生し、大規模な自然災害が各地で増加する等、気候変動問題への対応は、今や人類共通の課題になっているといえます。
2015年にフランス・パリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、「パリ協定」が採択されました。この中で掲げられた「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃以内に抑える努力をする」という長期目標の達成に向けて、世界各国は、2030年の温室効果ガスの排出削減目標(以下「NDC1」という。)を定めて、国連気候変動枠組条約事務局に提出しており、また多くの国が、2050年等の年限付きのカーボンニュートラルの実現を表明しています。こうした中、世界各国は、エネルギーセキュリティを確保しながら、温室効果ガスの排出削減を進めるための取組を加速させています。
本章の第1節では、世界全体における温室効果ガス排出量の推移やその内訳等について確認した上で、日本を含む主要国における排出削減に向けた取組の進捗状況や政策動向等について、整理や比較等を行っています。さらに、エネルギーセキュリティを確保しながら、温室効果ガスの排出削減に向けた取組を経済成長へとつなげていく「GX」の実現に向けた取組が世界中で加速しており、第2節では、GXの実現に向けた世界各国及び日本の動向等について記載しています。
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- NDC:Nationally Determined Contributionの略。