第1節 資源供給国との関係強化と上流進出の促進

1.石油・天然ガスの安定的かつ低廉な確保に向けた取組

石油・天然ガスのほぼ全量を海外からの輸入に頼る日本にとって、石油・天然ガスの安定的かつ低廉な確保は重要な課題です。さらに東日本大震災以降、天然ガスを始め、火力発電のエネルギー源としての化石燃料の需要は高い水準で推移しており、その確保の重要性は高まっています。また昨今、中東情勢が緊迫化している中で、日本は原油の約9割、天然ガスの1割弱を中東地域から輸入していることを踏まえれば、チョークポイントであるホルムズ海峡を通らない輸入先の確保等、供給源の多角化を進めることや、中東産油国を始めとする資源供給国との良好な関係を深化させることが重要です。

(1)エネルギー安定供給とカーボンニュートラル時代を見据えた包括的資源外交の推進

資源外交は、これまで主に石油・天然ガスと金属鉱物資源の安定供給確保を目的として展開してきました。カーボンニュートラルに向け、世界の資源・エネルギー情勢はより複雑化・不透明化しており、すぐに使える資源に乏しい日本は、石油・天然ガスと金属鉱物資源の安定供給確保のため、引き続き資源外交に最大限取り組む必要があります。また、水素・アンモニア、CCS等の脱炭素燃料・技術の将来的な導入や拡大に向けては、今から積極的に取組を開始していくことが必要です。こうした点を踏まえ、石油・天然ガスと金属鉱物資源の安定供給確保、さらには脱炭素燃料・技術の将来的な確保を一体的に推進すべく、「包括的資源外交」を展開しています。

その具体的な取組の1つとして、オマーンのLNGの引取入札を巡り、西村経済産業大臣からも働きかけを行い、2022年12月に西村経済産業大臣がオマーンを訪問した際には、日本企業複数社とオマーンLNG社との間で、LNGの長期引取契約に関する基本合意書への調印に至りました。また、同訪問時には、ウーフィー・エネルギー鉱物資源大臣との間で、水素・アンモニア及びメタネーションを含むカーボンリサイクルに関する協力覚書も締結しました。

また、脱炭素化に向けた東南アジア各国の事情を踏まえ、幅広い技術・エネルギーを活用した現実的かつ多様なトランジションを進めるため、2021年11月にはベトナム、2022年1月にはインドネシア、タイ、シンガポール、同年9月にはマレーシアのペトロナスと、エネルギー・トランジションの実現に関する閣僚級の協力覚書を締結しました。アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(AETI)に基づいて、東南アジア各国のカーボンニュートラル目標の達成に向けたロードマップ作成支援等を進めていきます。

(2)中東諸国との資源外交の強化に向けた取組

日本で消費される原油の大半を中東地域の諸国から輸入している現状を踏まえれば、安定供給の確保に向け、中東産油国との友好関係を深化させていくことは重要です。また世界的な脱炭素化の流れを受け、資源国においても、化石燃料資産の座礁化を防ぐ等の理由で、脱炭素分野への関心が高まりつつあり、従来の石油・天然ガス分野に留まらず、水素・アンモニア、CCSを始めとする脱炭素分野での協力も関係の深化には不可欠です。

世界最大の原油輸出国であり、日本にとっても最大の原油供給国であるサウジアラビアとの間では、2017年3月に安倍総理とサルマン・サウジアラビア国王との首脳会談において合意した「日・サウジ・ビジョン2030」を新たな戦略的パートナーシップの羅針盤として、幅広い分野での協力を進めており、2022年11月には、「第6回日・サウジ・ビジョン2030閣僚会合」を開催しました。その他にも同年9月には、岸田総理がムハンマド皇太子と電話会議を行い、原油市場の安定化及びクリーンエネルギーの活用・促進等を通じたカーボンニュートラルの実現に向けた協力を一層推進させていくことで一致しました。また同年10月には、西村経済産業大臣が、アブドルアジーズ・エネルギー大臣との間でオンライン会議を行い、産油国と消費国の対話と連携を促進することにより、世界の石油市場の安定を支えることの重要性や、世界市場におけるあらゆるエネルギー源の安定供給を確保する必要性を強調するとともに、サウジアラビアが引き続き日本にとって最大の原油の安定供給国であり、信頼と信用のおけるパートナーであることに言及しました。さらに、クリーンなエネルギーシステムへの移行、特に再エネや水素・アンモニア等の新しい低炭素燃料、カーボンリサイクルやCCUS等の炭素低減を可能にする技術の研究・開発・普及への継続的な投資と協力の重要性を強調しました。さらに、同年12月には西村経済産業大臣がサウジアラビアを訪問し、アブドルアジーズ・エネルギー大臣との日サウジ・エネルギー協議を行いました。同協議において両大臣は、日本にとってサウジアラビアが引き続き最大の原油供給源であり、信頼できるパートナーであることを踏まえ、産油国と消費国の対話と連携を促進することにより、世界の原油市場の安定を支えることの重要性と、世界市場における全てのエネルギーの安定供給を確保する必要性を強調しました。

また、日本にとって第2位の原油供給国であるアラブ首長国連邦(以下「UAE」という。)には、日本企業が保有する石油権益が最も集中しています。こうした権益を引き続き確保していくため、UAE政府及びアブダビ首長国に対するハイレベルでの継続的な働きかけを行うとともに、石油・天然ガス等のエネルギー分野を中心に、同国側の関心の高い教育・先端技術等を含む広範な分野での協力・交流等を行いました。こうした働きかけや取組の結果、2018年2月には、世界有数の埋蔵量を誇る下部ザクム油田権益(10%)等のアブダビ海上油田権益をINPEXが再獲得し、2019年3月には、同社がアビダビの新規鉱区探鉱権益を獲得しました。さらに2021年2月には、コスモエネルギー開発がアブダビの新規海上探鉱鉱区権益を獲得しました。日本企業によるこれら権益の獲得は、日本のエネルギーの安定供給に大きく貢献するものであり、資源外交の大きな成果といえます。日UAEエネルギー関係のさらなる強化・拡大を目指し、2022年度は、新型コロナ禍による往来制限の緩和を受け、ハイレベルな往来を一部再開し、連携強化を図りました。首脳級では、2022年8月に岸田総理とムハンマド・ビン・ザイード大統領との間でオンライン会議を行い、同年が日・UAE外交関係樹立50周年であることを踏まえ、引き続き様々な分野で両国間の戦略的パートナーシップを強化していくことで一致しました。同年9月には、故安倍晋三国葬儀に参列するために訪日したハーリド執行評議会委員兼執行事務局長と岸田総理の表敬会談を行い、「包括的・戦略的パートナーシップ・イニシアティブ(CSPI)の実施に関する共同宣言」を近日中に署名できる運びとなったことを歓迎するとともに、本年の日・UAE外交関係樹立50周年の機会を踏まえ、次の50年に向けて、クリーンエネルギー・先端技術から人材育成に至るまで、幅広い分野でさらなる関係強化に取り組むことで一致しました。

また閣僚級では、2022年6月に、訪日中のジャーベル産業・先端技術大臣兼アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEOと萩生田経済産業大臣の間で会談を実施し、増産を含め十分な原油供給と生産余力への投資を通じた、国際原油市場の安定化に向けた協力を働きかけました。また、エネルギーセキュリティを十分に確保しながら、気候変動にも対応するバランスの取れたエネルギー・トランジションを進めていくことの必要性を確認した上で、石油・天然ガス分野に加えて、クリーンエネルギー、先端技術分野等の新たな分野でも二国間協力を深化させていくことで一致しました。さらに同会談後には、萩生田経済産業大臣の立ち会いの下、三井物産、ENEOS及びADNOC間のクリーン水素製造事業に関する共同事業化検討契約(JSA)の署名式を行いました。同月には、萩生田経済産業大臣とマズルーイ・エネルギー・インフラ大臣との間でオンライン会談も実施し、国際原油市場の安定化に向けた協力を働きかけるとともに、2021年4月に政府間で締結した水素協力に関する覚書の下で、水素分野でのプロジェクトが進展していることを歓迎した上で、クリーンエネルギー分野における両国の関係強化について議論しました。また、西村経済産業大臣が2023年1月に、中谷経済産業副大臣が2022年10月にUAEを訪問し、ジャーベル産業・先端技術大臣兼アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEOや、マズルーイ・エネルギー・インフラ大臣、ハルドゥーン・アブダビ執行関係庁長官等との会談を行い、両国のエネルギー分野での協力を既存の石油・天然ガス分野に加え、水素やアンモニア等のクリーンエネルギー分野でも強化することの重要性を確認しました。なお、2023年1月の西村経済産業大臣のUAE訪問時には、ジャーベル産業・先端技術大臣兼アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEOとの間で、「日UAE先端技術調整スキーム(JU-CAT)」への署名も行われ、同スキームが設立されました。このスキームは、日本の先端技術スタートアップとUAE投資家の協業を促し、UAEの脱炭素化・産業発展・人材育成に貢献するものであり、両大臣は、JU-CATの下での最初の案件となる、つばめBHB社とADNOC社の間で行う共同調査契約(JSA)の締結にも立ち会いました。さらに、JERAとマスダール社の間で行う再エネ及びグリーン水素製造に係る協力覚書の締結にも立ち会いました。

中東地域からのエネルギー供給を確保するため、サウジアラビアやUAEに加えて、その他の中東資源国との関係を幅広く強化・拡大することも重要です。とりわけウクライナ情勢を受け、LNGを巡る世界的な争奪戦にある中で、日本としてもエネルギー安定供給の確保のために、安定的にLNGを調達していくことが不可欠です。中東地域の中でもホルムズ海峡の外に位置するという観点で、地政学的リスクが相対的に低いオマーンについては、2022年9月、訪日中のウーフィー・エネルギー鉱物資源大臣と西村経済産業大臣との間で会談を実施し、LNGの安定供給に係る働きかけを行うとともに、クリーンエネルギー分野での協力を確認しました。同年12月には、両大臣立ち会いの下、日本企業複数社とオマーンLNG社との間でLNGの長期引取契約に関する基本合意書への調印が行われました。加えて両大臣の間で、水素・アンモニア及びメタネーションを含むカーボンリサイクルに関する協力覚書への署名も行われました。

世界最大のLNG輸出国であるカタールは、日本のLNGの安定供給の確保にとって重要なパートナーです。2022年9月には、世界最大規模のLNG消費国である日本と、世界最大のLNG輸出国であるカタールが共同議長を務めるLNG産消会議がオンラインで開催され、エネルギー安定供給並びに責任ある現実的なエネルギー転換のためのLNGの重要性が確認されました。

以上のように、引き続き、中東各国に対し、国際原油市場の安定化への協力及びLNGの安定供給に係る働きかけや、水素・アンモニア等の脱炭素分野での協力推進を含む包括的な資源外交を展開し、日本のエネルギー安定供給の確保を目指していきます。

2.石炭の安定供給確保に向けた取組

石炭は、現時点の技術・制度を前提とすれば、化石燃料の中で最もCO2排出量が大きいものの、調達に係る地政学リスクが最も低く、熱量当たりの単価も低廉であることに加え、保管が容易であることから、現状において安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源です。近年は、中国やインド、東南アジア諸国を中心とした新興国における輸入量増加により、世界の石炭海上貿易における日本の割合は低下しています。こうしたアジア新興国での石炭需要は今後も伸びていくことが見込まれる一方で、最近は脱炭素化に伴う石炭開発投資の減少の影響もあり、石炭調達を巡る国際競争はより一層激しくなっていくことが予想されます。日本が必要とする石炭を中長期にわたり、安定的かつ安価に調達するためには、供給源の多角化を進めることや産炭国との良好な関係を深化させることが重要です。

日本は、石炭資源の殆どを海外からの輸入に頼っており、その中でも豪州とインドネシアからの輸入は全体の約8割となっています。特に豪州は、日本で主に使われる高品位炭の埋蔵量のほか、輸送距離やインフラ整備の状況、政策の動向等、いずれの要素を見ても引き続き日本にとって最も安定した供給国です。一方で、2017年には豪州に上陸したサイクロンにより、炭鉱と石炭輸出港をつなぐ鉄道に大きな被害が発生し需給がひっ迫する等、過度な依存状態はリスクになる可能性もあります。また、産炭国での資源ナショナリズムの高まりから、近年ベトナムやインドネシアでは石炭輸出を制限する動きがあり、さらに2020年秋以降は、石炭の国際市場価格が上昇基調となり、2022年には、ロシアによるウクライナ侵略が影響を及ぼしました。

このため、資源エネルギー庁では、JOGMECを通じて、カナダ、コロンビア等での地質構造の調査やベトナム、インドネシア等での石炭産業人材の育成等を行いました。また、石炭採掘・保安技術指導を行い、産炭国との関係強化も図りました。

3.レアメタル等の鉱物資源の確保に向けた取組

鉱物資源は、あらゆる工業製品の原材料として必要不可欠の資源であり、特にカーボンニュートラル実現に向けて普及拡大が見込まれる電動車等に使用されるリチウムイオン電池や電動モーター用ネオジム磁石の製造には、銅、リチウム、コバルト、ニッケル、レアアース等が必要であり、これらの重要性が高まっています。これらの資源は、今後、世界的な脱炭素化の流れの中でますます需要が増加すると予想されています。

こうした鉱物資源の安定供給を確保することは、日本の製造産業にとって非常に重要な課題です。このため、日本企業による海外資源開発投資促進等を通じて、鉱物資源の調達先の多角化や安定供給の確保につなげていく必要があります。さらに、政治的安定性の高い資源国や、資源ポテンシャルは大きいもののインフラ整備や鉱業政策面等の投資環境に課題を有する国との継続的な関係構築に取り組むことが重要です。

こうした観点から、2022年12月には、重要鉱物「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和4年法律第43号)」に基づく特定重要物資に指定され、2023年1月には、「重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針」を公表し、民間企業が取り組む重要鉱物のサプライチェーンの多様化や強靱化、安定供給確保のための支援を開始しました。

また、2022年6月に、日本、米国、カナダ、豪州、欧州委員会等の12の有志国・地域によって、鉱物安全保障パートナーシップ(以下「MSP」(Minerals Security Partnership)という。)が立ち上げられました。MSPの目的は、特定国に依存しない多角的な鉱物資源サプライチェーンの構築であり、日本もMSPメンバーと連携して、新たなプロジェクトの形成、共同投資の可能性を検討しています。その他のマルチの取組として、2022年11月に有志国間のクリティカルマテリアル・ミネラル会合を開催しました。本会合では、日本、米国、欧州、豪州、カナダの政府関係者や技術専門家が鉱物資源に関する政策、研究開発等の取組や今後の課題等について情報交換を行い、安定供給確保等に向けて連携した取組を推進することを確認しました。

また二国間の取組として、2022年10月22日に岸田総理の豪州訪問にあわせて、経済産業省は豪州産業科学資源省及び外務貿易省と、重要鉱物に関するパートナーシップを締結しました。日豪間の重要鉱物サプライチェーンの構築、相互利益となる投資を促進する枠組みを確立し、豪州内の重要鉱物産業の発展と日本国内で必要となる鉱物資源の確保に向けて、日豪間で協力を進めていきます。さらに、同年12月9日に西村経済産業大臣は、コンゴ民主共和国のンサンバ鉱業大臣と会談し、両国間の鉱業分野での持続的・互恵的な関係構築を目指して、鉱業分野の協力に関する共同声明に署名しました。ンサンバ大臣は、鉱業に関わる日本企業が参加するラウンドテーブルに参加し、コンゴ民主共和国の投資環境等を紹介し、意見交換を行いました。

以上のように、鉱物資源供給国と日本との継続的な関係を構築することで、中長期的な鉱物資源の安定供給につながる機会の拡大を目指していきます。

4.資源権益獲得に向けたリスクマネー供給

日本は、「第6次エネルギー基本計画」で、石油・天然ガスの自主開発比率を2030年に50%以上、2040年には60%以上に引き上げる目標を新たに定めました。また、石炭の自主開発比率については2030年に60%を維持し、金属鉱物では銅等のベースメタルの自給率を2030年に80%以上へと引き上げるとともに、2050年までにリサイクルによる資源循環も促進することで、国内需要相当量の確保を目指すとの目標を掲げ、取組を進めています。2021年度の石油・天然ガスの自主開発比率は40.1%、石炭の自主開発比率は46.2%となりました。また、2018年度のベースメタルの自給率は50.2%です。

資源権益の獲得のための投資には、探鉱リスクやカントリーリスク等、様々な事業リスクがあるとともに、巨額の資金を要しますが、日本企業は資源メジャーと呼ばれる海外企業等と比べると大幅に資金力が弱い状況にあります。石油・天然ガスについては、中東地域における緊張の高まりや世界のエネルギー供給構造の変化等、国際市場が大きく変化する中、さらなる供給源の多角化等が必要となっており、そうした中で日本企業による資源権益の獲得を推進するべく、資源外交の推進による相手国との関係強化とともに、資金面での支援がより一層必要となります。2022年度は前年度に引き続き、日本企業が参画する各種プロジェクトへのリスクマネー供給を行いました。加えて、水素・アンモニアの原料としての利用も視野に、2023年度から2027年度の間に民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指すという目標の中で、可能な限り早期に成果が得られるよう技術開発等を推進します。

金属鉱物については、2022年度も日本企業が参画するレアアース等の探鉱プロジェクトへのリスクマネー供給を行いました。今後も、このようなJOGMECのリスクマネー供給強化を通じて、日本企業の権益獲得支援を推進していきます。

〈具体的な主要施策〉

(1)石油天然ガス田の探鉱・資産買収等事業に対する出資金【2022年度当初:388.0億円、2022年度産投:411.0億円】

JOGMECは、日本の資源開発会社等による石油・天然ガスの探鉱・開発や油ガス田の買収等を資金面で支援するため、出資及び債務保証を行っています。2022年度は引き続き、北カスピ海石油プロジェクトやアバディLNGプロジェクト、モザンビークLNGプロジェクトに対して出資等を行いました。

(2)金属鉱物に係る開発出資・債務保証等【2022年度産投:130億円、2022年度補正:1,100億円】

JOGMECは、日本法人の海外における鉱物資源の開発プロジェクト等を資金面で支援するため、出資及び債務保証等を行っています。また、補正予算において、バッテリーメタルやレアアース等のレアメタルの鉱山開発や製錬等を行う民間企業に対する出資事業のための予算を計上しました。

(3)政府系金融機関による資源金融(国際協力銀行(JBIC))【金融】

日本企業が、長期引取契約に基づく資源輸入や、自ら権利を取得して資源開発を行う場合、さらには資源開発に携わる日本企業の競争力が強化される場合又は資源確保と不可分一体となったインフラ整備等、日本にとって重要な資源の海外における開発及び取得を促進する場合に、国際協力銀行は輸入金融や投資金融による支援を行っています。2022年度は、日本企業によるLNG輸入向けの融資等の実施を通じ、日本にとって重要な資源の長期・安定供給確保を金融面から支援しました。

(4)貿易保険によるリスクテイク(日本貿易保険(NEXI))【金融】

海外における重要な鉱物資源又はエネルギー資源の安定供給に資する案件に関し、日本貿易保険(以下「NEXI」という。)は通常よりも低い保険料率で幅広いリスクをカバーする資源エネルギー総合保険等を通じて、日本の事業者が行う権益取得・引取等のための投融資に対し支援を行っています。

2018年10月に資源エネルギー総合保険の適用対象を、日本事業者による日本向けに限定した長期引取契約がないプロジェクトにも拡大したところ、2020年に第1号案件としてモザンビークにおけるLNGプロジェクトについて保険の引受けを実施しました。なお、本プロジェクトは2019年LNG産消会議にて発表された、5年間で日本から100億ドルのファイナンス供与を行うというコミットメントにも該当する案件です。

さらに、膨大なインフラ投資需要に対応するため、機関投資家を含めた新たな資金提供者を呼び込むことを目的に、インフラファンドやプロジェクトボンドへの貿易保険による支援を開始しており、リスクマネー供給に取り組んでいます。

また、NEXIでは2020年に新たにLEADイニシアティブを創設し、カーボンニュートラル・デジタル分野等の産業競争力の向上、外国政府等との国際連携推進や社会課題解決に寄与する案件については、積極的に融資保険の適用を行うこととしました。NEXIは2022年3月にサウジアラビア公共投資基金(PIF)と、2022年4月にはクウェート石油公社とそれぞれ協力覚書を締結し、クウェート石油公社向けには民間銀行により組成された総額10億米ドルの融資について保険を引き受け(2022年6月)ましたが、これは、LEADイニシアティブの下で、日本にとって主要な原油輸入先国であり、エネルギー安全保障上重要な同国との関係強化を図るもので、同国における日本企業のビジネス機会の拡大につながることも期待されます。

(5)海外投資等損失準備金制度【税制】

本制度は、海外における資源探鉱・開発に当たり、資源開発事業法人等の株式等の価格の低落による損失に備えるため準備金を積み立てた場合に、その積立額の損金算入ができる制度です。2022年度税制改正において、適用期限が2024年3月31日まで延長されました。

(6)探鉱準備金・海外探鉱準備金制度及び新鉱床探鉱費・海外新鉱床探鉱費の特別控除制度(減耗控除制度、海外減耗控除制度)【税制】

本制度は、鉱業を営んでいる者が、一定の鉱物に係る新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費の支出に備えるため準備金を積み立てた場合にその積立額の損金算入ができる制度、及び、その準備金を取り崩して新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費を支出した場合等には一定額の損金算入ができる制度です。2022年度税制改正において、対象となる鉱物から国外にある石炭、亜炭及びアスファルトを除外した上で、適用期限が2025年3月31日まで延長されました。

(7)石油天然ガスの権益確保に向けた海外の地質構造調査や情報収集等事業【2022年度当初:35.0億円】

事業リスクが高く、日本企業が探鉱に踏み切れていない海外のフロンティア地域等においてJOGMECが地質構造調査を行い、優先交渉権の獲得等を目指しています。また、産油・産ガス国における資源開発に係る諸情勢を始め、専門性の高い情報の調査・分析を行い、日本企業へ情報提供することによって、日本企業による有望な石油・天然ガス権益の獲得等を支援しています。2022年度は引き続き、アゼルバイジャン、ベトナム等における地質構造調査を実施しました。

(8)石油天然ガス権益・安定供給の確保に向けた資源国との関係強化支援事業費【2022年度当初:41.0億円】

資源国のニーズに対応して、資源分野のみならず、教育や医療等、幅広い分野での協力事業を実施するとともに、資源国に対する日本からの投資促進・事業展開等について支援を行い、資源国との戦略的かつ重層的な関係を構築し、石油・天然ガス権益の確保や安定供給の確保を実現しています。2022年度は引き続き、サウジアラビア、UAE等との間で、産学の連携強化を行うとともに、教育・先端技術等の広範な分野での協力事業を実施し、二国間関係のさらなる強化を図りました。加えて、オマーン、マレーシア等における新規協力事業を実施し、供給源の多角化に向けた取組を行いました。

(9)高効率発電向け燃料等調達のための資源開発支援事業【2022年度当初:6.7億円】

日本企業の権益獲得を支援し、自主開発比率60%維持を目指すため、海外の産炭国において、日本企業が行う探鉱活動等への支援や炭鉱開発に不可欠なインフラ調査等を実施しました。

(10)産炭国に対する石炭採掘・保安に関する技術移転等事業【2022年度当初:13.5億円】

日本の優れた炭鉱技術を、採掘条件の悪化が予想される海外産炭国へ移転するため、海外研修生の受入研修事業、日本の炭鉱技術者による海外炭鉱研修事業等を実施しました。

(11)鉱物資源開発の推進のための探査等事業【2022年度当初:18.6億円】

省エネ・再エネ機器等の製造に必要不可欠な銅、コバルト、レアアース等の鉱物資源の安定供給を確保するため、初期段階からの資源探査等を実施しました。

(12)希少金属資源開発推進基盤整備事業【2022年度当初:3.6億円】

IT製品等の製造に必須の希少金属資源の安定供給を確保するため、初期段階からの資源探査等を実施しました。

(13)経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靱化支援事業(重要鉱物)【2022年度補正:1,058億円】

重要鉱物サプライチェーンの多様化・強靱化を実現するため、探鉱・FS、鉱山開発、分離・製錬及び技術開発に係る民間企業の取組に対する支援事業を開始しました。

(14)大型船の受入機能の確保・強化

国土交通省では、国際バルク戦略港湾政策として、大型船が入港できる港湾を拠点的に整備し、企業間連携による大型船を活用した共同輸送を促進する等、資源・エネルギー等の安定的かつ効率的な海上輸送網の形成に向けた取組を推進しました。

(15)JICAの機能強化【制度】

2015年5月に「質の高いインフラパートナーシップ」、同年11月に「質の高いインフラパートナーシップのフォローアップ」、2016年5月に「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」を発表し、円借款や海外投融資の制度改善を行ってきました。具体的には、円借款の迅速化とともに、ドル建て借款やハイスペック借款の創設、円借款の本邦技術活用条件(STEP)に係る制度改善及びO&Mに係る新しい支援パッケージの構築を行いました。また、海外投融資については、融資対象拡大、出資比率規制及び現地通貨建ての柔軟な運用・見直しを行うとともに、事業者にとっての利便性向上のため、案件採択・審査プロセスの迅速性・予見可能性・透明性の強化を図りました。