はじめに 1-1

日本のエネルギー政策全体の大きな転換点となった東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から12年が経過しました。

2020年3月には、帰還困難区域以外の地域の避難指示が全て解除されました。また同月、双葉町、大熊町、富岡町の帰還困難区域の一部(JR常磐線の3駅周辺)でも、震災後初めて避難指示が解除されました。その後、2022年6月12日には葛尾村の特定復興再生拠点区域の避難指示が解除され、帰還困難区域において初めて住民の帰還が可能となりました。同月中には大熊町、同年8月には双葉町、2023年3月には浪江町、同年4月には富岡町、同年5月には飯舘村の特定復興再生拠点区域の避難指示もそれぞれ解除されました。中でも双葉町に関しては、それまで県内で唯一、全町避難が続いていましたが、2022年8月の特定復興再生拠点区域の避難指示解除により、震災後初めて住民の帰還・居住が可能となりました。このように、福島の復興・再生は一歩一歩着実に進展しています。

2019年12月に策定された「福島イノベーション・コースト構想を基軸とした産業発展の青写真」に基づき、復興・創生期間1後も見据えた浜通り地域等の自立的・持続的な産業発展の姿の実現に向けた具体的な取組を進めており、2020年3月に全面開所した福島ロボットテストフィールドを産業集積の核として、関連企業の立地やドローン等の実証試験が活発化する等、新たな産業の創出とともに、帰還環境整備、産業・なりわいの再生に向けた取組を着実に進めています。あわせて、地元での消費拡大や将来の移住につながる裾野拡大に向けて、交流人口拡大の取組を進めています。加えて、福島を再生可能エネルギー(以下「再エネ」という。)や未来の水素社会を切り拓く「先駆けの地」とし、新たなエネルギー社会を先取りするモデルの創出拠点とするという「福島新エネ社会構想」の一環として、2020年3月に福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)(福島県双葉郡浪江町)が開所し、世界有数となる1万kWの水電解装置を活用して、再エネから水素を製造する実証プロジェクトを実施しています。2023年4月には、福島イノベーション・コースト構想をさらに発展させるため、「創造的復興の中核拠点」となる福島国際研究教育機構(以下「F-REI」という。)を新設したところです。

政府としては、引き続き、被災地の実態を十分に踏まえ、地元との対話を重視しつつ、施策の具体化を進め、復興に向けた道筋をこれまで以上に明確にしていきます。

本章では、第1節で東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水・処理水対策に関する取組として、予防的かつ重層的な汚染水対策の取組の状況や、ALPS処理水の取扱いに関する取組、調査ロボットの投入等の徐々に進展しつつある炉内調査を始めとする廃炉に向けた取組等について記載します。次に、第2節で原子力被災者への支援について、避難指示解除の状況や、特定復興再生拠点区域の整備、除染の実施状況、福島イノベーション・コースト構想の推進に向けた施策、被災事業者の事業・なりわい再建支援の取組等についてまとめます。加えて、第3節で福島を再エネや未来の水素社会を切り拓く「先駆けの地」として、新たなエネルギー社会を先取りするモデルの創出拠点とする「福島新エネ社会構想」を紹介します。そして、第4節では、原子力損害賠償について、この12年間での実績・進展等を記載します。

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2011年7月、政府は「東日本大震災からの復興の基本方針」を策定し(2011年7月29日東日本大震災復興対策本部決定)、復興期間を2020年度までの10年間と定めました。2015年6月には「平成28年度以降の復旧・復興事業について」を策定し(2015年6月24日復興推進会議決定)、復興期間の後期5か年である2016年度から2020年度までを「復興・創生期間」と位置づけました。さらにその後2020年7月、「令和3年度以降の復興の取組について」を策定し(2020年7月17日復興推進会議決定)、2021年度から2025年度までの5年間を新たな復興期間として「第2期復興・創生期間」と位置づけました。