第4節 その他制度・予算・税制面等における取組
〈具体的な施策〉
1.制度
農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律
「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(平成25年法律第81号)」を積極的に活用し、農林地等の利用調整を適切に行いつつ、市町村や発電事業者、農林漁業者等の地域の関係者の密接な連携の下、再生可能エネルギーの導入と併せて地域の農林漁業の健全な発展に資する取組を促進しました。
2.予算事業
(1)太陽光発電
①太陽光発電の導入可能量拡大等に向けた技術開発事業【2021年度当初:33.0億円】
太陽光発電システムの設置に適した未開発の適地が減少する中、従来の技術では設置できなかった場所への太陽光発電システムの導入を可能とするため、軽量化等の立地制約を克服するための革新的な技術等の要素技術の開発を実施するとともに、太陽光発電の長期安定電源化に資するため、発電設備の信頼性・安全性の確保、資源の再利用化を可能とするリサイクル技術の開発、系統影響を緩和する技術の開発等を実施しました。
②需要家主導による太陽光発電導入促進補助金事業【2021年度補正:135.0億円】
FIT制度等を利用せず、特定の需要家の長期的な需要に応じて新たに太陽光発電設備を設置する者に対して、一定の条件を満たす場合の太陽光発電設備の導入に関する支援を開始しました。
③営農型太陽光発電システムフル活用事業【2021年度当初:0.1億円】
脱炭素化の進展により、営農上の電力消費が増えると考えられる中、営農型太陽光発電で発電した電気を、ドローン運用等による自らの農業経営の改善に利活用することで電力料金を節減する等、営農型太陽光発電のメリットを営農面で十分に活かすための具体的なモデルの構築を支援しました。
(2)風力発電・海洋エネルギー
①再エネの最大限の導入の計画づくり及び地域人材の育成を通じた持続可能でレジリエントな地域社会実現支援事業【2021年度当初:12億円】
地域における再エネの最大限の導入を促進するため、地方公共団体による脱炭素社会を見据えた計画の策定等に加え、環境保全と両立した形で風力発電事業の導入促進を図るため、個別事業に係る環境影響評価に先立つものとして、関係者間で協議しながら、環境保全、事業性、社会的調整に係る情報の重ね合わせを行い、円滑な再生可能エネルギー導入のための促進エリア設定等に向けたゾーニング等を支援する事業を実施しました。
②海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用調整に必要な経費について【2020年度補正:5.8億円】
再エネ海域利用法における促進区域の指定に向け、2021年9月に新たに有望な区域として4区域、一定の準備段階に進んでいる区域として6区域を整理しました。有望な区域において、促進区域の指定基準への適合性を確認するための海域の状況調査の実施及び促進区域の指定等に関し必要な協議を行うための協議会を開催しました。促進区域に指定した5ヵ所(6区域)において、「長崎県五島市沖」「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖(北側・南側)」「千葉県銚子市沖」の4ヵ所(5区域)では事業者より提出された公募占用計画を審査・評価することにより事業者を選定しました。
③洋上風力発電等の導入拡大に向けた研究開発事業【2021年度当初:82.8億円】
浮体式洋上風力発電の低コスト化を目的とした実証事業では、北九州市沖において3MW風車を搭載したバージ型浮体(実証機)の実証運転を過年度から継続して実施し、各種メンテナンスや観測データによる設計検証等技術開発等を行いました。また、浮体式の更なるコスト低減を実現するため、ガイワイヤ支持やタレットを用いた一点係留による先進的な要素技術を用いた浮体式洋上風力発電システムの実証研究に向けて詳細設計を実施しました。着床式洋上風力発電においては、資本支出に占める割合が高い基礎・施工費の低コスト化に資する機器の設計、製作等を実施するとともに、実海域における実証試験等を行いました。風車の運用・維持管理における研究開発については、過年度に構築したAIを活用したメンテナンス技術や、それによる効果の検証等に加え、ダウンタイムの低減等を通じたコスト低減に資する技術開発を実施しました。
④福島沖での浮体式洋上風力発電システムの実証研究事業【2021年度当初:48.0億円】
「福島イノベーション・コースト構想」の実現のため、福島沖において、複数の浮体式洋上風車と浮体式洋上変電所による本格的な実証研究を進め、安全性・信頼性・経済性の検証等を行うとともに、浮体式洋上風車の低コストかつ安全性が考慮された撤去実証を行いました。
⑤浮体式洋上風力発電による地域の脱炭素化ビジネス促進事業【2021年度当初:4億円】
深い海域の多い日本における浮体式洋上風力発電の導入を加速し、脱炭素ビジネスが促進されるよう、浮体式洋上風力発電の早期普及に貢献するための情報の整理や、地域が浮体式洋上風力発電によるエネルギーの地産地消を目指すに当たって必要な各種調査、当該地域における事業性・二酸化炭素削減効果の見通し等の検討を行いました。
(3)バイオマス発電
①地域で自立したバイオマスエネルギーの活用モデルを確立するための実証事業【2020年度当初:11.3億円】 ※一部繰り越し、2021年度実施
バーク(樹皮)等の木質系バイオマス、排菌床の熱利用や、牛ふん等の湿潤系バイオマス利用システム等地域特性を活かしたモデル実証を実施しました。そしてこれまで実施したフィージビリティスタディ及び実証事業の成果も含め、地域におけるバイオマスエネルギー利用の拡大に資する技術指針及び導入要件を改定しました。また、これらの広報普及のためのワークショップを開催しました。
②木質バイオマス燃料等の安定的・効率的な供給・利用システム構築支援事業【2021年度当初:12.5億円】
新たな燃料ポテンシャルの開拓に資する”エネルギーの森(燃料材生産を目的とした森林)“づくりを実現するため、早生樹(コウヨウザン、ユーカリ等)の活用方法に関する実証事業、そして木質バイオマス燃料の製造・輸送システムを効率化するため、広葉樹林の燃料利用に関する実証事業について、設備の準備等を実施しました。また、燃料品質の安定化および品質に基づく商慣行定着のため、木質バイオマス燃料の品質規格を策定する委託事業について、国内調査等を実施しました。
(4)水力発電
水力発電の導入加速化補助金【2021年度当初:20.0億円】
水力発電の事業初期段階における事業者による調査、設計や地域における共生促進に対して支援を行うことで、水力発電の新規地点の開発を促進したほか、既存設備の発電出力及び電力量の増加のための余力調査、工事等の事業の一部を支援しました。
(5)地熱発電・熱利用
①地熱発電の資源量調査・理解促進事業費補助金【2021年度当初:110.0億円】
地熱発電は、ベースロード電源であり、日本は世界第3位の地熱資源量を有しています。一方で、資源探査段階の高いリスクやコスト、温泉事業者を始めとする地域理解といった課題があります。そこで、リスク・コスト低減のための新規地点を開拓するポテンシャル調査や事業者が実施する初期調査、地域理解促進のための勉強会等の取組に対して支援を行いました。
②地熱資源探査出資等事業
地熱資源の蒸気噴出量を把握するための探査に対する出資や発電に必要な井戸の掘削、発電設備の設置等に対する債務保証を行うことで、地熱資源開発を支援しました。
③地熱・地中熱等導入拡大技術開発事業【2021年度当初:29.7億円】
地熱発電は、資源探査段階の高いリスクとコスト、発電段階における出力の安定化といった課題があり、これらの課題を解決するための技術開発を行いました。また、地熱発電の抜本的な拡大に向け、次世代の地熱発電(超臨界地熱発電)に関する詳細事前検討を行いました。
地中熱や太陽熱等の再エネ熱について、日本の最終エネルギー消費の約半分は熱需要であることから、再エネ熱の効果的な利用により電力や燃料の消費量を抑制していくことが重要です。本事業では再エネ熱利用システムの導入拡大に向け、再エネ熱の設計から施工までに関わる事業者の体制を構築し、コスト低減に資する技術開発に取り組みました。
(6)系統制約克服及び調整力確保への対応
①再生可能エネルギーの大量導入に向けた次世代型の電力制御技術開発事業【2021年度当初:41.9億円】
再エネのさらなる導入拡大を図り、主力電源化を進めるため、ノンファーム型接続、疑似慣性力を持つPCS、配電系統における潮流の最適制御、電圧フリッカを最小限に抑えるためのPCS、直流送電システムの基盤技術について研究開発を支援しました。
②風力発電のための送電網整備実証事業費補助金【2021年度当初:89.0億円】
風力発電の適地において、送電網の整備及び技術的課題の解決を目的とした実証事業を行いました。
③福島県における再生可能エネルギーの導入促進のための支援事業費補助金【2021年度当初:52.3億円】
阿武隈山地や福島県沿岸部における再エネ導入拡大のための共用送電線の整備及び風力等の発電設備やそれに付帯する送電線等の導入を支援するとともに、福島再生可能エネルギー研究所(FREA)の再生可能エネルギーに係る拠点としての機能強化等を実施しました。
(7)その他
①地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する避難施設等への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業【2021年度当初:50.0億円】
地域防災計画等に位置づけられた避難施設等に、平時の温室効果ガス排出抑制に加え、災害時にもエネルギー供給等の機能発揮が可能となり、災害時の事業継続性の向上に寄与する再エネ設備等の導入支援等を行いました。
②地域資源活用展開支援事業【2021年度当初:0.2億円】
地域資源を活用した再生可能エネルギーの導入を推進するため、相談対応や出前指導、関連事業者とのマッチング等の取組、先進事例やノウハウをシェアリングする取組を支援しました。
③戦略的創造研究推進事業先端的低炭素化技術開発【2021年度当初:25.4億円】
2030年の社会実装を目指し、低炭素社会の実現に貢献する革新的な技術シーズ及び実用化技術や、リチウムイオン蓄電池に代わる革新的な次世代蓄電池等の世界に先駆けた革新的低炭素化技術の研究開発を推進しました。
④未来社会創造事業(「地球規模課題である低炭素社会の実現」領域)【2021年度当初:9.6億円】
2050年の社会実装を目指し、2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略等を踏まえ、カーボンニュートラル社会の実現に資する、従来技術の延長線上にない革新的エネルギー科学技術の研究開発を推進しました。
⑤新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術開発事業【2021年度当初:20.8億円】
太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス、太陽熱・雪氷熱・未利用熱、燃料電池・蓄電池、エネルギーマネジメントシステム等における中小・ベンチャー企業が有する潜在的技術シーズを発掘し、その開発及び実用化を支援しました。
⑥下水道革新的技術実証事業【2021年度当初:437億円の内数】
下水道事業における省エネで安定的な水処理技術等の導入を促進するため、ICT・AI制御による高度処理技術の実証を実施しました。
⑦CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業【2021年度当初:66.0億円の内数】
再エネを活用した自立分散型エネルギーシステムの普及のため、一次供給エネルギーとして排出される熱の回収を安全安価なシステムで実用化するための技術開発や、居住地近傍でも使用できる社会受容性の高い小形風力発電機の開発を実施しました。また、グリーン水素のサプライチェーンの早期実現のため、高付加価値の副産物を併産する水電解システムの開発や、ハイブリッド電気自動車や電気自動車に搭載されたリチウムイオンバッテリーを低コストでリユースし、データセンタや他の電力運用システムに適用するために必要な技術開発・実証を実施しました。
⑧PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業【2021年度当初:50.0億円の内数、2020年度第3次補正予算:80.0億円の内数】
屋根や駐車場を活用した自家消費型の太陽光発電・蓄電池の導入等による再エネ供給側の取組及び変動性再エネを効率的に活用するための調整力の向上等による需要側での取組に対し、支援を行いました。
⑨ブロックチェーン技術を活用した再エネCO2削減価値創出モデル事業【2021年度当初:27.0億円の内数】
これまで十分に評価又は活用されていなかった自家消費される再エネのCO2削減価値について、低コストかつ自由に取引できるシステムを、ブロックチェーン技術を用いて構築し、環境価値が適切に評価される社会へのパラダイムシフトを起こすことで再エネの更なる普及を目指しています。2021年度は過年度事業で構築した取引システムを活用して環境価値の属性や価格に関するオークション実験を実施し、環境価値の購入意思や支払意思額を高めるナッジ手法を実証しました。
⑩国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費【2021年度当初:3.8億円】
J-クレジット制度の運営に取り組み同制度を利用した省エネ・再エネ設備の導入、森林整備等を促進するため、2030年度以降の制度の永続性確保や排出削減算定方法やそのモニタリング方法を規定した方法論の改定、森林小委員会の設置を行いました。また、地球温暖化対策計画では、J-クレジットの認証量の目標設定を行っており、2020年度の認証量が目標を上回ったため、2030年度の目標を1,300万t-CO2から1,500万t-CO2へと目標の引上げを実施しました。
更には、同制度でクレジットを創出・活用する企業・自治体等に対して制度利用支援等を実施しました。あわせて、同制度におけるクレジット需要を開拓するため、各種制度との連携を図りつつ、クレジット制度利用の推進事業を行いました。
⑪環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進【2021年度当初:688.4億円の内数】【2021年度補正:1,312億円の内数】
地球環境問題が喫緊の課題となっている中、公立学校施設に対して、文部科学省、農林水産省、国土交通省及び環境省が協力して、環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備を推進しており、再エネ設備を導入する場合には、費用の一部を補助しました。
⑫ESGリース促進事業【2021年度当初:14.0億円の内数】
中小企業等が、再エネ設備等の脱炭素機器をリースにより導入する際に、総リース料の一部を助成しました。
⑬新エネルギー等の導入促進のための広報等事業【2021年度当初:7.4億円】
再エネの普及の意義やFIT制度の内容について、展示会への出展、パンフレットの作成、Webサイト等の活用等を通じて発電事業者を始めとする幅広い層に対する周知徹底を図るとともに、地域密着型の再エネ発電事業の事業化に向け、各種支援施策の紹介や許認可手続の案内等の支援を実施しました。また、FIT制度の抜本見直しに係る周知や需給一体型の分散型エネルギーシステムの普及促進等について情報提供等を行いました。
⑭脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業【2021年度当初:80.0億円の内数、2020年度第3次補正予算:40.0億円】
地域の再エネ、蓄電池及び各地域に敷設した自営線により地産エネルギーを直接供給すること等により、地域の再エネ自給率を最大化させるとともに、防災性も兼ね備えた地域づくりを行う事業に対して支援をしました。
⑮分散型エネルギーインフラプロジェクト【2020年度当初:7.0億円の内数】
地方公共団体を核として、需要家、地域エネルギー会社及び金融機関等、地域の総力を挙げて、バイオマス、廃棄物等の地域資源を活用した地域エネルギー事業を立ち上げる地方公共団体のマスタープラン策定を支援するとともに、関係省庁と連携して総務省に事業化ワンストップ窓口を設置しマスタープランの円滑な事業化を支援しました。
⑯再エネ調達市場価格変動保険加入支援事業費補助金【2021年度補正:4.0億円】
地域における再生可能エネルギーの導入を促進するため、地域新電力等の小売電気事業者がFIT制度の支援を受けた再生可能エネルギー電気を調達する際の市場価格変動リスクに対応する民間保険に加入した場合の保険料の一部を支援しました。
3.税制
(1)再生可能エネルギー発電設備に係る固定資産税の特例措置【税制】
FIT制度の認定を受けた再エネ発電設備(太陽光発電設備については、自家消費型補助金[1]の交付を受け取得したもの)を取得した場合、固定資産税を3年間にわたって軽減する措置を講じました。2022年度税制改正において、本措置の適用期限を2024年3月31日まで、2年間延長しています。
(2)バイオ燃料製造設備に係る固定資産税の軽減措置【税制】
農林漁業由来のバイオマスを活用した国産バイオ燃料の生産拡大を図るため、「農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律(平成20年法律第45号)」に基づく生産製造連携事業計画に従って新設されたバイオ燃料製造設備(エタノール、脂肪酸メチルエステル(ディーゼル燃料)、ガス、木質固形燃料の各製造設備)に係る固定資産税の課税標準額を3年間にわたり、ガス製造設備に係る課税標準を価格の2分の1、それ以外の製造設備を3分の2に軽減する措置を講じました(2024年3月31日までの間)。
4.財政投融資
環境・エネルギー対策資金(非化石エネルギー関連設備)【財政投融資】
再エネ発電設備・熱利用設備を導入する際に必要となる資金を日本政策金融公庫から中小企業や個人事業主向けに低利で貸し付けることができる措置を講じました。5.その他の取組
(1)再生可能エネルギー推進に向けた規制・制度見直し
2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けて、再生可能エネルギーに係る規制・制度の見直しも本格的に検討が開始されました。2020年11月から、内閣府特命担当大臣(規制改革)の下で、関連府省庁にまたがる再生可能エネルギー等に関する規制等を総点検し、必要な規制見直しや見直しの迅速化を促すことを目的として、「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」が開催され、令和3年度は、12回にわたって、必要な規制見直しが検討されてきました。
同タスクフォースにおける規制・制度見直しの進捗として、例えば、農地の活用に関しては、タスクフォースからの指摘に対応していくつかの見直しが既に実施されています。営農型太陽光発電について、荒廃農地を再生利用する場合は、おおむね8割以上の単収を確保する要件は課さず、農地が適正かつ効率的に利用されているか否かによって判断することに制度変更がなされました。また、再生困難な荒廃農地について、非農地判断の迅速化や農用地区域からの除外の円滑化について助言するとともに、農用地区域からの除外手続、転用許可手続が円滑に行われるよう、同時並行処理等の周知徹底等も実施されました。
また、タスクフォースにおいては、再生可能エネルギーの促進を阻む系統制約や市場制約についても取り上げられました。中でも、再生可能エネルギーの主力電源化及び最大限の導入に向けては、透明性が確保され、かつ電源間の公正な競争環境が担保された電力システム・電力市場の実現が重要であり、その実現に向けて鍵を握る構造的問題(例:市場への義務的な玉だし、内外無差別、発販分離等)に徹底的に取り組む必要性が指摘されました。なお、構造的問題に関する検討については、2021年4月の第60回制度設計専門会合(経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会)において、スポット価格高騰問題に関する議論を踏まえ、支配的事業者の発電・小売事業の在り方についての検討、具体的には、旧一般電気事業者の内外無差別的な卸売の実効性を高め、社内・グループ内取引の透明性を確保するためのあらゆる課題(売入札の体制、会計分離、発販分離等)を総合的に検討していくことが表明されました。
なお、その他の分野においても、順次規制・制度の見直しの検討が進められています。
(2)再生可能エネルギーに係る環境影響評価に関する総合的な取組
再生可能エネルギーの地域における受容性を高め、最大限の導入を円滑に進めるためには、環境への適正な配慮と地域との対話プロセスが不可欠であり、環境影響評価制度の重要性は高まっています。
環境省及び経済産業省が開催した「再生可能エネルギーの適正な導入に向けた環境影響評価のあり方に関する検討会」において、環境影響評価法に基づく風力発電事業の規模要件について、最新の知見に基づき他の法対象事業との公平性の観点を踏まえ検討した結果、適正な規模要件は第一種事業について5万kW以上、第二種事業について3.75万kW以上5万kW未満という結論を得ました。これを踏まえ、環境影響評価法施行令を改正し、環境影響評価法及び電気事業法に基づく環境影響評価の対象となる第一種事業の規模を「1万kW以上」から「5万kW以上」に、第二種事業の規模を「0.75万kW以上1万kW未満」から「3.75万kW以上5万kW未満」に引き上げる措置を講じました(2021年10月4日公布、10月31日施行)。
また、本改正により法の対象とならなくなる規模の事業についても、地域の環境保全上の支障のおそれを防ぐため、法と条例が一体となって日本の環境影響評価制度が形成・運用されてきたことに鑑み、当面、都道府県・環境影響評価法政令市の条例により適切に手当されることが必要であることから、地域の状況に応じて条例等の検討・整備の期間を確保するための経過措置を設けています。
迅速化については、再生可能エネルギーの導入促進に向けて、環境影響評価の迅速化のための施策、取組を推進してきました。環境影響評価法の対象となった地熱発電所(6事業)のうち、環境アセスメントの迅速化の施策、取組以降に手続きを実施した地熱発電所(4事業)については、環境アセスメント期間が大幅に短縮することができ、地方自治体の審査期間の短縮等の取組について引き続き協力を要請しました。
地熱発電事業におけるボーリング調査や調査井掘削等、環境影響評価手続を進める上で必要な事業計画の検討のために行われる事前調査の実施に関して、対象事業の実施制限に関する考え方について整理し、地方自治体等に通知を発出しました。
また、太陽電池発電所について事業特性や地域特性に応じた合理的な環境影響評価を一層推進するため、造成地やゴルフ場跡地等の開発済みの土地における事業に関して環境影響評価を行う項目の合理的な選定の考え方を示したガイドラインを2021年6月に公表しました。
質の高い環境影響評価を効率的に進めるために、環境省では、環境影響評価に活用できる地域の環境基礎情報を収録した「環境アセスメントデータベース”EADAS(イーダス)”」において、情報の拡充や更新を行い公開しました。
(3)バイオマス活用推進基本計画について
バイオマス活用推進基本計画(2016年9月策定)の改定に向けた取組を進めています。なお、バイオマス活用推進基本計画の目標達成に向け2012年9月に関係7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)が共同で取りまとめたバイオマス事業化戦略において、地域のバイオマスを活用したグリーン産業の創出と地域循環型エネルギーシステムの構築に向けたバイオマス産業都市の構築を推進することとされ、2021年度までに97市町村をバイオマス産業都市として選定しました。
(4)バイオマス産業都市の構築
2012年9月に関係7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)が共同で取りまとめたバイオマス事業化戦略において、地域のバイオマスを活用したグリーン産業の創出と地域循環型エネルギーシステムの構築に向けたバイオマス産業都市の構築を推進することとされ、2021年度までに97市町村をバイオマス産業都市として選定しました。
(5)FIT制度におけるバイオマス燃料の持続可能性
輸入の農産物の収穫に伴って生じるバイオマス液体燃料(パーム油)については、FIT制度創設時には第三者認証を求めていませんでしたが、認定量の急増を受けて、2018年度より、RSPO3認証等の第三者認証によって持続可能性の確認を行うことになりました。また、PKS等の農産物の収穫に伴って生じるバイオマス個体燃料についても持続可能性の確認を行うこととなかったため、2019年度より、総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会バイオマス持続可能性ワーキンググループにおいて検討を行い、持続可能性の確認項目の整理の他、RSPO認証に加えて、RSB認証を採用することになりました。こうした中、2020年2月の調達価格等算定員会「令和2年度の調達価格等に関する意見」を受けて、2020年度からは、食料競合における判断基準、ライフサイクルを通じた温室効果ガス(以下「ライフサイクルGHG」という。)排出量について検討を行うこととなり、2020年12月の調達価格等算定委員会に食料競合の判断基準の検討状況を報告しました。2021年度は、ライフサイクルGHGの算定式や排出削減基準について検討を行い、2022年1月の調達価格等算定委員会に検討状況を報告しました。ライフサイクルGHGに係る確認方法等、残された論点については、2022年度も引き続き検討を行う予定です。
(6)みどりの食料システム戦略の策定
食料、農林水産業を持続可能なものとしていくため、農林水産省において、2021年5月に新たな政策方針である「みどりの食料システム戦略」を策定しました。本戦略では、農山漁村に適した地産地消型エネルギーシステムの構築や、その一環として、バイオマス等の国内の地域資源や未利用資源の活用を促進していくこととしています。また、本戦略の実現に向けた「環境と調和のとれた食料システム確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案」が2022年2月に閣議決定され、第208回国会に提出されました。
- 3
- 持続可能なパーム油のための円卓会議(Roundtable on Sustainable Palm Oil)を指します。