第1節 原子力をめぐる環境と政策対応

2021年10月に閣議決定された第六次「エネルギー基本計画」に基づき、引き続き、原子力については、いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進めることとしています。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組むこととしています。直近では、美浜発電所3号機が2021年6月に再稼働し、島根原子力発電所2号機については、2021年9月に原子炉設置変更許可がなされています。

2030年度におけるエネルギー需給の見通しは、原子力発電については、S+3Eの原則を大前提に、徹底した省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの最大限導入に向けた最優先の原則での取組、安定供給を大前提にできる限りの化石電源比率の引下げ・火力発電の脱炭素化、原発依存度の可能な限りの低減といった方針の下、これまでのエネルギーミックスで示した20〜22%程度を見込みます。また、2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、あらゆる選択肢を追求する方針の下、原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していきます。

一方で、今後も原子力発電を安定的に利用するためには、国内に約1.9万トン存在する使用済燃料への対処が重要です。日本は高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度低減、資源の有効利用の観点から、核燃料サイクルの推進を基本的方針としています。日本原燃の六ヶ所再処理工場は、2020年7月に事業変更許可を取得し、安全確保を最優先に2022年度上期の竣工を目指しています。これを受け、2020年10月に、政府と青森県との意見交換の場である核燃料サイクル協議会を約10年ぶりに開催し、政府一丸となって原子力・核燃料サイクル政策を推進する方針等を改めて示しました。その後、同社のMOX燃料工場も2020年12月に事業変更許可を取得し、2024年度上期の竣工に向け取組を進めています。

また、六ヶ所再処理工場の竣工に当たっては、プルトニウムの適切な管理と利用への取組が不可欠です。電気事業連合会は、2020年12月に新たな「プルサーマル計画」を、2021年2月に新たな「プルトニウム利用計画」を公表しました。さらに、日本原燃からも2020年12月に六ヶ所再処理工場等の操業計画が示されました。これらを踏まえ、再処理事業の実施主体である使用済燃料再処理機構が中期計画を策定、2021年3月に経済産業省が原子力委員会の意見も聴取した上で認可し、プルトニウムの利用と回収のバランスの確保を図りました。これらの計画は2021年度、各団体により改定されています(操業計画及びプルトニウム利用計画:2022年2月、中期計画:同年3月)。

さらに、核燃料サイクルを進める上では、使用済燃料の貯蔵能力の拡大も重要です。政府は、2015年10月の最終処分関係閣僚会議において、「使用済燃料対策に関するアクションプラン」を策定しました。同プランに基づき、原子力事業者は使用済燃料対策推進計画を策定し、取組を進めてきた結果、2020年秋以降、伊方や玄海における発電所構内の乾式貯蔵施設や、むつ中間貯蔵施設が原子力規制委員会から規制基準に基づく許可を得る等、貯蔵能力の拡大に向けた具体的な取組が進展しています。

核燃料サイクルの中で発生する高レベル放射性廃棄物等の最終処分については、国が前面に立ってNUMOとともに対話活動等を進めて行く中で、地層処分事業をより深く知りたいと考える関心のあるグループが全国的に増えてきており、2020年11月には北海道寿都町、神恵内村で文献調査が開始されました。

高レベル放射性廃棄物に限らず、原子力の研究、開発及び利用によって発生する低レベルの放射性廃棄物の処理・処分についても、安全性の確保と国民の理解を旨として進める必要があります。

2021年度に行った施策は、以下の各節に記述しているとおりです。