第1節 各部門における省エネの取組
1.業務・家庭部門における省エネの取組
業務・家庭部門は、産業部門に比べて、支出全体に占めるエネルギーコストの割合が小さく、省エネへの取組による金銭的メリットが必ずしも多くないこと等から、需要家に省エネインセンティブが弱く省エネが進みにくい部門です。そのため、「トップランナー制度」により自動車や家電等のエネルギー消費機器や、断熱材や複層ガラス、サッシといった建材の高効率化・高性能化を製造事業者や輸入事業者に対して求めるとともに、エネルギー消費効率の表示等により、高効率製品の普及を促進し、省エネを一層進めています。
また、住宅・建築物の外皮(壁・窓等)の高性能化を進めることは、空調を始めとしたエネルギー消費機器の効率をより高めることにつながります。
さらに、住宅の高断熱化は省エネのみならず、高血圧症等からの健康の改善や、ヒートショックリスクの低減等、間接的な便益をもたらす効果も注目されています。省エネだけでなく健康に寄与する住宅・建築物の断熱化を進めるため、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第53号)(以下「建築物省エネ法」という。)に基づき、新築時の断熱化を含む省エネ基準への適合を施主に対して求めるとともに、予算や税を通じた省エネ住宅・建築物の普及拡大支援を進めています。
〈具体的な主要施策〉
(1)省エネ法に基づくベンチマーク制度による業務部門の省エネの推進【制度】
省エネ法では、工場・事業場の設置者に対し、省エネ取組を実施する際の目安となるべき判断基準(設備管理の基準やエネルギー消費効率改善の目標(中長期的にみて年度平均1%以上低減)等)を示すとともに、一定規模以上の事業者(年度で1,500kl以上のエネルギー(原油換算)を使用する事業者として経済産業大臣が指定する「特定事業者」、「特定連鎖化事業者」及び「認定管理統括事業者」。2021年9月現在で約12,000者を指定。)にはエネルギーの使用状況等の報告を求め、省エネ取組が不十分な場合には指導・助言等を行っています。
また、既に省エネ取組を進めてきた事業者の省エネの状況を踏まえ、エネルギー消費効率の中長期的にみて年平均1%以上低減することとは別に、業種・分野別に中長期的に目指すべき水準(ベンチマーク。業種ごとに上位1〜2割の事業者が達成しているエネルギー消費効率。)を設定し、その達成を促す「ベンチマーク制度」を、2009年度から導入しました。
ベンチマーク制度については、2016年度からコンビニエンスストア業、2017年度からホテル業、百貨店業、2018年度から食料品スーパー業、貸事務所業、ショッピングセンター業、更に2019年度から、大学、パチンコホール業、国家公務の計9業種が対象に加わり、産業・業務部門のエネルギー消費量7割をカバーしています。
2021年度には、ソーダ工業、国家公務のベンチマークにおいて、事業者の省エネ取組を適切に評価するため、指標・目標値の見直しを行うとともに、データセンター業、圧縮ガス・液化ガス製造業を新たにベンチマーク対象業種としました。
(2)省エネ法に基づくトップランナー制度による機器の効率改善【制度】
省エネ法に基づくトップランナー制度を通じて、製造事業者及び輸入事業者に対して機器の効率改善を促した結果、多くの機器において、基準の策定当初の見込みを上回る効率改善が達成されています。
トップランナー制度については、更なる個別機器の効率向上を図るため、基準の見直し等について検討を行っています。
具体的には、テレビジョン受信機、温水機器(ガス、石油、電気)及び磁気ディスク装置の新たな省エネ基準を策定しました。また、2022年2月に家庭用エアコンディショナーの新しい省エネ基準等をワーキンググループにおいて、取りまとめられました。また、窓(サッシ及びガラス)については、2030年以降新築される住宅・建築物に求められる省エネ性能を踏まえ、2030年度に窓に求められる熱損失防止性能として新たな目標基準値を検討し、2022年3月に取りまとめられました。なお、トップランナー制度の対象機器等は、2022年3月時点で、32品目(うち3品目は建材)となっています。
(3)省エネ機器に関する情報提供
家電製品やガス石油機器等について、省エネ機器のさらなる普及を促進すべく、小売事業者表示制度(省エネルギーラベル1及び統一省エネルギーラベル2)を活用し、消費者に対して省エネ情報の提供を行いました。制度をより効果的に実施するため、家電製品や機器のデータの整理を行うとともに、小売事業者等が容易に各機器のラベルを表示・印刷できるようウェブサイト(省エネ型製品情報サイト)を運営しています。また、2021年8月には、小売事業者表示制度を改正(統一省エネラベル等を改正)し、温水機器(ガス、石油、電気)については、エネルギー種別を問わず、横断的に省エネ性能の比較ができるようになりました。
(4)業務・家庭部門における省エネを促進するための情報提供事業
省エネへの理解や関心度を高めることによって省エネ行動を促し、業務・家庭部門における省エネを促進することを目的として、一般消費者及び事業者等に向けて省エネに関する客観的な情報や省エネ対策の先進事例等に関する情報提供を行いました。
具体的には、夏季・冬季における省エネの呼びかけ、省エネ関連のイベント・メディア等を活用した省エネ施策の紹介や省エネ機器・省エネ支援サービスの周知、住宅の省エネに関する認知度・理解度向上等、省エネに関する情報提供を行いました。
(5)ZEB・ZEHの実現・普及に向けた支援【2021年度当初:83.9億円の内数(経済産業省)、140.0億円の内数(国土交通省)、60.0億円の内数(ZEB、環境省)、110.0億円の内数(ZEH、環境省)】
ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)とは、大幅な省エネを実現した上で、太陽光発電等の再生可能エネルギーにより年間で消費する一次エネルギー量を正味でゼロとすることを目指した建築物及び住宅です。省エネと快適性を両立させるとともに、業務・家庭部門におけるエネルギー消費の抜本的改善に資するものと期待されています。
建築物については、2030年度以降新築される建築物について、ZEB基準の水準の省エネ性能の確保を目指すとする政府目標の達成に向けて、ZEBを推進する設計事務所や建築業者、オーナーの発掘・育成及び更なるZEBの普及促進等を図っています。経済産業省では、エネルギー消費量が大きい大規模な建築物を対象として、省エネ効果が期待されているものの、現行のエネルギー消費性能の計算プログラムでは評価できない先進的な技術の導入によるZEB化の実証を行いました。環境省では、民間建築物や地方公共団体が所有する建築物におけるZEBの更なる普及拡大を支援しました。引き続き、両省で連携しながら、ZEBの市場拡大及び自立的普及に向けた取組を進めていきます。
住宅については、2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指すとする政府目標に向けて、経済産業省において再生可能エネルギー等の更なる自家消費拡大を目指した次世代ZEH+(ゼッチ・プラス)や、21層以上の集合住宅におけるZEH-M(ゼッチ・エム)の実証を支援しました。国土交通省では中小工務店等が連携して建築するZEHへの支援を、環境省ではZEH、ZEH+及び20層以下の集合住宅におけるZEH-Mの更なる普及を支援しました。引き続き三省で連携しながら、ZEHの市場拡大及び自立的普及に向けた取組を進めていきます。
(6)高性能建材等の実証・普及に向けた支援【2021年度当初:83.9億円の内数(経済産業省)、110.0億円の内数(環境省)】
既存住宅の断熱・省エネ性能の向上を図るため、経済産業省において工期短縮可能な高性能断熱建材や蓄熱、調湿等の付加価値を有する省エネ建材の導入の実証を支援しました。また、環境省において高性能建材による戸建住宅及び集合住宅の断熱リフォーム支援事業を実施し、断熱改修の一層の普及を支援しました。
(7)住宅・建築物の省エネ基準への適合の確保
住宅以外の一定規模以上の建築物のエネルギー消費性能基準への適合義務の創設、エネルギー消費性能向上計画の認定制度の創設等の措置を講ずる建築物省エネ法が、2015年7月に公布され、2017年4月に全面施行されました。また、住宅・建築物の省エネ性能の一層の向上を図るため、建築物の規模・用途ごとの特性に応じた実効性の高い対策として、省エネ基準への適合義務の対象となる建築物の範囲を中規模建築物に拡大することや住宅トップランナー制度の対象に注文戸建住宅及び賃貸アパートを追加すること等を内容とする「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第4号)」が、2019年5月に公布され、2021年4月に全面施行されました。改正した建築物省エネ法の円滑な施行に向け、住宅・建築物の関連事業者等に対して、全国各地域で改正内容等についての講習会を実施しました。
(8)環境・ストック活用推進事業【2021年度当初:74.9億円】
住宅・建築物の省エネ対策を促進するため、先導的な省CO2技術を導入する住宅・建築物リーディングプロジェクト、建築物の省エネ改修及び住宅・建築物の省エネ性能に係る診断・表示、複数の住宅・建築物の連携により高い省エネ性能を実現するプロジェクト等に対して支援を行いました。
(9)住宅に係る省エネルギー改修税制【税制】
既存住宅において一定の省エネ改修(高断熱窓への取替等)を行った場合で、当該改修に要した費用が一定額以上のものについて、所得税の税額控除及び固定資産税の特例措置が講じられています。これらの特例措置について、「令和4年度税制改正大綱」及び税制改正大綱を踏まえた「改正租税特別措置法」及び「改正地方税法」に基づき、適用期限を2年間延長しました。
(10)優良住宅整備促進事業【2021年度当初:257.62億円の内数】
住宅金融支援機構が行う証券化支援事業の枠組みを活用し、省エネ性能に優れた住宅を取得する際の金利の引下げを行う「フラット35S」を実施しました。
(11)住宅性能表示制度等の効果的運用【制度】
住宅の性能について消費者等の選択を支援するため、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)」に基づき、省エネ性能を含む住宅の性能を分かりやすく表示する「住宅性能表示制度」の普及に加え、建築物を室内等の環境品質・性能の向上と省エネ等の環境負荷の低減という両面から総合的に評価し、分かりやすく表示するシステムである建築環境総合性能評価システム(CASBEE)の開発及びその普及を推進しました。
住宅性能表示制度の省エネ性能に係る等級について、ZEH水準に相当する断熱等性能等級5及び一次エネルギー消費量等級6、並びに戸建て住宅におけるZEH水準を上回る断熱等性能等級6、7を新設し、それぞれ2021年12月、2022年3月に公布しました。
また、建築物省エネ法における誘導措置(2016年4月施行)として、省エネ性能の優れた建築物の認定制度及び省エネ基準適合認定マーク、省エネ性能表示のガイドラインに従った「建築物省エネルギー性能表示制度(BELS:Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)」の普及促進を図っています。
(12)低炭素住宅・建築物の認定【制度】
「都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)」に基づき、省エネ基準より高い省エネ性能を有し、低炭素化に資する措置等が一定以上講じられている認定低炭素建築物の普及促進を図りました。
(13)家庭における脱炭素ライフスタイル構築促進事業【2021年度当初:7億円の内数】
各家庭で省エネ・省CO2化を促進するためには、ライフスタイルに応じた具体的なアドバイスが効果的です。
引き続き、さらなる脱炭素ライフスタイルへの転換を促進し、家庭部門からの削減を実現することを目的に、「家庭エコ診断制度」を実施し、民間企業や地方公共団体等のネットワークを活用して、家庭における着実な省エネを推進しました。
また、個人でも診断実施が可能な「うちエコ診断WEBサービス」を提供することで、診断件数の増加を図りました。
(14)エネルギー小売事業者の省エネガイドラインの検討
一般消費者が家庭において適切に省エネを進めることができるよう、省エネ法ではエネルギー供給事業者に対して、一般消費者へ省エネに資する情報を提供するよう努力義務を求めています。2016年4月から電力、2017年4月からはガスの小売全面自由化が始まり、エネルギー供給事業者がより多様なサービスを提供するようになっており、家庭でのエネルギーの使用方法も大きく変化してきています。現在はエネルギー小売事業者に対して、省エネ情報の提供に関する指針や、ガイドラインを提示しているところです。2020年度には、一般消費者へのアンケート調査等も実施し、省エネ行動をより一層促すための情報提供の在り方について議論を行いました。
また、2021年度には、エネルギー小売事業者に求めている一般消費者への省エネ情報の提供に関する指針・ガイドラインを改正するとともに、情報提供の取組状況をランキングして公表する「省エネコミュニケーション・ランキング制度」を試行的に措置しました。
(15)低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)等による家庭等の自発的対策推進事業【2021年度当初:27億円】
①ナッジ等を活用した家庭等の自発的対策推進事業
行動科学の理論に基づくアプローチ(ナッジ(nudge:そっと後押しする)やブースト(boost:ぐっと後押しする)等)により、国民一人ひとりの行動変容を情報発信等を通じて直接促進し、ライフスタイルの自発的な変革・イノベーションを創出する、費用対効果が高く、対象者にとって自由度のある新たな政策手法を検証しています。
具体的には、家庭、運輸部門等を対象に、エネルギー消費やCO2排出実態に係るデータを収集、解析し、ナッジやブースト等の行動インサイトとAI/IoT等の先端技術を組み合わせたBI-Techにより、一人ひとりにパーソナライズされたメッセージをフィードバックすることで、脱炭素型の行動変容を促しています。
例えば、省エネに関するレポートを2年間継続して送付した省エネナッジにより、平均2%の省エネ・省CO2効果が持続することが確認されました。その結果、事業を実施した2017年度から2020年度までの4年間での累積のCO2削減量は4万7千トンに及びます。この省エネナッジの特筆すべき点としては、実証期間中に家庭でのCO2排出量を実際に大幅に削減したことに加え、一般にナッジの効果は持続しないとも言われる中で、世帯毎に最適化された働きかけにより、ナッジを実施している間はもとより、終了した後も少なくとも1年間にわたり効果が持続することを明らかにしたことが挙げられます。
②日本版ナッジ・ユニット
ナッジを含む行動科学の知見に基づく取組が早期に社会実装され、自立的に普及することを目標に、2017年4月より環境省のイニシアチブの下、産学政官民連携による日本版ナッジ・ユニット「BEST」を発足しています。2017年度から計27回の連絡会議を開催し、行動科学に関する環境省及び地方公共団体の取組やエビデンス(科学的根拠)に基づく政策立案(Evidence-based policymaking, EBPM)、様々な分野の社会課題の解決に行動科学の知見を用いた取組等について議論しています。
2.運輸部門における多様な省エネ対策の推進
運輸部門は第六次「エネルギー基本計画」において最も大きい省エネ量を見込んでいる部門です。エネルギーミックスの省エネ見通しを確実なものとするためには、乗用車やトラック等輸送機器単体のエネルギー消費効率を進めるとともに、貨物輸送事業者や荷主等がAI/IoT等の技術の活用により連携する面的な省エネ努力の両輪で取組を進める必要があります。
〈具体的な主要施策〉
(1)自動車の燃費基準【規制】
乗用車・トラック等の燃費改善については、省エネ法に基づくトップランナー制度(自動車メーカー等に対し、目標年度までに販売車両の平均燃費値を基準値以上にすること等を求める制度)による規制とエコカー減税等の支援策により、トップランナー制度の基準策定当初の見込みを上回り、特に乗用車の燃費は大幅に改善してきました。例えばガソリン乗用車の平均燃費は1996年度12.1km/Lだった燃費は、2021年度には24.1km/Lとなっています。
(2)自動車重量税の軽減措置【税制】
2021年度税制改正において、自動車重量税のエコカー減税については、燃費性能がより優れた自動車の普及を促進する観点から、目標年度が到来した2020年度燃費基準を達成していることを条件に、2030年度燃費基準の達成度に応じて減免する仕組みに切り替えた上で、適用期限を2年間延長することとなりました(2021年5月から2023年4月末まで)。その際、2回目車検時の免税対象について電気自動車等やこれらと同等の燃費性能を有するハイブリッド車等に重点化が図られます。また、クリーンディーゼル車の取扱いについても見直しを行いました。
(3)自動車税・軽自動車税の減免措置【税制】
自動車税及び軽自動車税の環境性能割については、燃費性能に応じた税率区分を設定し、その区分を2年ごとに見直すことにより燃費性能がより優れた自動車の普及を促進するものであり、2020年度末が見直しの時期に当たることから、目標年度が到来した2020年度燃費基準の達成状況も考慮しながら、2030年度燃費基準の下で税率区分が見直されました。
また、自動車税・軽自動車税の軽減措置(グリーン化特例(軽課))については、クリーンディーゼル車を対象から除くとともに、適用対象を電気自動車等に限定する等した上で2年間延長することとなりました。
(4)クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金【2020年第3次補正予算:117.0億円(経済産業省37.0億円、環境省80.0億円)、2021年度当初:155.0億円】
電気自動車や燃料電池自動車等のクリーンエネルギー自動車の普及を促進し、運輸部門における二酸化炭素の排出抑制や石油依存度の低減を図るとともに、災害時に電気自動車や燃料電池自動車等の外部給電機能の活用を促進することによりレジリエンスの向上を図りました。また、2020年度第3次補正予算においては、グリーン社会の実現を進めるため、電気自動車・燃料電池自動車等の導入拡大と同時に、日常・非常時ともに活用できる充放電設備/外部給電器の普及や、再エネ電力と電気自動車・燃料電池自動車等をセットにしたゼロカーボン・ドライブの普及促進を図り、移動の脱炭素化に取り組みました。
(5)バッテリー交換式EVとバッテリーステーション活用による地域貢献型脱炭素物流等構築事業【2021年度当初予算:12.0億円】
配送等にかかる車両を電動化するとともにバッテリー交換式とし、配送拠点等を災害時にも稼働しうるエネルギーステーション化することで、脱炭素物流モデルと配送拠点等の防災拠点化を同時実現する地域貢献型の新たな脱炭素物流モデルを構築する事業に対する補助を行いました。
(6)脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業【2021年度当初予算:80.0億円、2020年度第3次補正予算:40.0億円】
新たなライフスタイルにあわせた電動モビリティのシェアリングサービスを活用した脱炭素型地域交通モデル構築に対する補助や、地域再エネや蓄電池等を活用して、再エネ自給率最大化と防災向上の同時実現を図る自立・分散型エネルギーシステム構築に対する補助を行いました。
(7)交通需要マネジメントの推進
道路交通渋滞を緩和し、道路交通の円滑化を図るため、バイパス・環状道路の整備や交差点の改良等の交通容量の拡大策等に加えて、既存ネットワークの輸送効率を向上させるために、情報提供の充実等の交通量の時間的・空間的平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)を推進しました。
(8)自動走行の実現に向けた取組の推進
車両の効率的な走行を可能とする自動走行技術の社会実装を実現し世界に先駆けて省エネを推進するため、安全性評価手法の研究開発を進めるとともに、自動運転レベル4等の先進モビリティサービスの普及に向けて、研究開発から実証実験、社会実装まで一貫した取組を行うプロジェクトを2021年度より開始しました。
(9)道路交通情報提供事業の推進
交通管制システム等で収集した道路交通情報を積極的に提供するほか、民間事業者が行う道路交通情報提供サービスの多様化・高度化を支援することにより、渋滞緩和及び環境負荷低減を図りました。
(10)違法駐車対策の推進【規制】【制度】
都市における円滑な交通流を阻害している違法駐車を防止し排除するため、駐車規制の見直し、地域の実態に応じた取締り活動ガイドラインに基づく取締り等による駐車対策を推進しました。
(11)交通安全施設等の整備【予算】【2021年度当初183.4億円】
交通管制システムの高度化及び信号機の改良等を推進し、交差点における発進・停止回数を減少させること等により道路交通の円滑化等を図るとともに、消費電力が電球式の約6分の1以下であるLED式信号機の整備を推進しました。
(12)道路施設の省エネ化
道路照明灯の新設及び既設の高圧ナトリウム灯等の更新に当たり、省エネ対策や環境負荷の低減に資するLED道路照明灯の整備を実施しました。
(13)モーダルシフト、物流の効率化等
鉄道・内航海運等のエネルギー消費効率が優れた輸送機関の活用を進めるため、「モーダルシフト等推進事業」において、荷主企業と物流事業者が協力して行う事業への支援を実施するとともに、「グリーン物流パートナーシップ会議」において、荷主企業、物流事業者等の関係者の連携による、物流分野における環境負荷の低減、物流の生産性向上等持続可能な物流体系の構築に資する優れた取組を行った事業者に対して表彰を行いました。あわせて、貨物輸送における環境にやさしい鉄道・海運の利用促進を図ることを目的とした「エコレールマーク」・「エコシップマーク」の普及等によりモーダルシフトを推進しました。
また、物流の効率化に資するよう、トラックの大型化・トレーラー化によるトラック輸送の効率化、国際物流に対応した道路ネットワークの整備、国際コンテナ戦略港湾政策の推進、国際バルク戦略港湾における大型船が入港できる港湾施設の整備や企業間連携による共同輸送の促進、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成17年法律第85号)」による支援等を通じて、効率的な物流体系の構築を推進しました。
さらに、船舶分野の更なる低炭素化に向けて、LNG燃料船の自立的普及を目指し、導入を支援しました。
(14)カーボンニュートラルポートの形成
港湾において、水素・燃料アンモニア等の大量かつ安定・安価な輸入・貯蔵等を可能とする受入環境の整備や、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化、集積する臨海部産業との連携等を通じて「カーボンニュートラルポート(CNP)」を形成し、日本全体の脱炭素社会の実現への貢献を図ることとしています。このため、2021年6月から、CNPの形成に向けた取組の加速化を図る各種方策について整理等を行う「カーボンニュートラルポート(CNP)の形成に向けた検討会」を開催し、同年12月、検討結果を踏まえ、各港湾管理者が国の方針に基づきCNP形成計画を策定するためのマニュアルを公表しました。また、LNGバンカリング拠点の整備、停泊中船舶に陸上電力を供給する設備の整備、水素燃料化した荷役機械等導入の検討、洋上風力発電の導入促進、ブルーカーボン生態系の活用等を実施しました。
(15)鉄道分野のさらなる環境性能向上に資する取組
鉄道分野におけるさらなる省エネ化・低炭素化の取組を推進するため、鉄道事業等のネットワーク型低炭素化促進事業により、エネルギー効率の良い車両の導入等、環境負荷軽減に計画的に取り組む鉄道事業者等を支援しました。また、エネルギー効率の良い新造車両等の導入については固定資産税の特例措置も講じられています。(2023年3月末まで)。
(16)公共交通機関の利用促進
鉄道・バス等公共交通機関については、混雑緩和、輸送力増強、速達性の向上等を図ることが重要です。鉄道については、三大都市圏において混雑緩和や速達性向上のための都市鉄道新線等の整備を推進しました。また、駅施設の改良やバリアフリー化を支援することによる利用者利便の向上施策を講じました。
一方、バスについては、公共車両優先システム(PTPS)の整備、バス専用・優先レーンの設定等により、定時運行の確保を図るとともに、バスロケーションシステムの整備等に対する支援措置による利用者利便の向上施策を講じました。また、事業所単位でのエコ通勤の取組支援として、エコ通勤優良事業所認証制度により767事業所を認証・登録(2022年3月末現在登録数)し、マイカーから公共交通等への利用転換の促進を図りました。
加えて、多様な交通モードが選択可能で利用しやすい環境を創出し、人とモノの流れや地域活性化の更なる促進のため、バスを中心とした交通モード間の接続(モーダルコネクト)の強化を推進しています。
2016年4月に開業したバスタ新宿では、トイレ及びベンチの増設等の待合環境の改善や国道20号の線形改良及び左折レーン延伸等の渋滞対策に取り組んできました。今後は、バスタ新宿や品川駅及び神戸三宮駅等を始めとして、官民連携を強化しながら、道路事業による戦略的な集約型公共交通ターミナル「バスタプロジェクト」の整備を全国で展開していきます。
(17)エコドライブの普及・推進
警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省で構成する「エコドライブ普及連絡会」において、行楽シーズンであり自動車に乗る機会が多くなる11月を「エコドライブ推進月間」とし、シンポジウムの開催や全国各地でのイベント等を連携して推進し、積極的な広報を行いました。あわせて、当該連絡会が策定した「エコドライブ10のすすめ」の普及・推進に努めました。
(18)AI・IoT等を活用した更なる輸送効率化推進事業費補助金【2021年度当初:62.0億円】
発荷主・輸送事業者・着荷主等が連携計画を策定し、物流システムを標準化・共通化した上で、AIやIoT等の新技術の導入によりサプライチェーン全体の効率化を図る取組や、トラック事業者と荷主等が車両動態管理システム等を導入し、連携して輸送効率化を図る取組に対して、実証に必要な経費を支援しました。また、自動車の点検整備に係るビッグデータを分析すること等により、予防整備等が適切に行われる環境を整備し、使用過程車の実燃費の改善を図るため、整備事業者に対して、不具合情報の外部出力が可能なスキャンツールの導入に必要な経費を支援しました。さらに、内航海運事業者等が、革新的省エネ技術のハード対策と運航計画や配船計画の最適化等のソフト対策を組み合わせた省エネ船舶を導入して輸送効率化を図る取組の実証を支援しました。
(19)省エネ法に基づく運輸分野の省エネルギー措置【規制】
省エネ法では、輸送事業者及び貨物を貨物輸送事業者に輸送させる企業等(荷主)を規制対象とし、輸送事業者及び荷主に対して省エネ取組を実施する際の目安となる判断基準(省エネに資する輸送用機械器具の使用、省エネに資する輸送方法の選択、エネルギー消費効率の改善目標(中長期的にみて年平均1%以上低減)等)を示すとともに、一定水準以上の輸送能力を有する輸送事業者及び一定量以上の輸送を行わせる荷主にはエネルギーの使用状況等を毎年度報告させ、省エネ取組が不十分な場合には指導・助言等を行うこととしています。
荷主による多様な省エネ取組を評価するには、エネルギー使用量の適切な算定が重要となることから、総合資源エネルギー調査会省エネルギー小委員会荷主判断基準ワーキンググループにおいて、荷主のエネルギー使用量の算定方法の見直しについて議論し、2022年1月に取りまとめました。今後、貨物自動車等の燃費向上の効果や、積載率の実態がより適切に反映されるよう、算定方法の見直しを行います。
(20)輸送機器の抜本的な軽量化に資する新構造材料等の技術開発事業【2021年度当初:29.9億円】
軽量化による輸送機器の省エネ化を目指し、部素材・製品メーカー、大学等が連携して強度、加工性等の複数の機能を向上した革新的な鋼材、アルミニウム材、マグネシウム材、チタン材、炭素繊維及び炭素繊維強化樹脂等の高性能軽量材料開発や、高効率モーターのための従来以上に強力な磁石材料の開発等を行うとともに、マルチマテリアル化実現のための異種材料の接着を含めた接合技術の開発、本事業成果を一体的に集約した研究開発拠点の整備等を行いました。
(21)電気自動車用革新型蓄電池技術開発【2021年度当初:23.8億円】
次世代自動車の普及に向けては、ガソリン車並みの航続距離と車としての価値(低重量や高積載容量、短時間充電等)の両立を実現するために、高いエネルギー密度や耐久性・安全性を持つ革新型蓄電池の技術開発が必要です。また、資源制約も大きな課題であり、こうした観点を踏まえ、安価で供給リスクの少ない材料を使用し、高エネルギー密度化や安全性等が両立可能なハロゲン化物電池及び亜鉛負極電池を実用化するため、電池の材料・電極開発やセル化技術等の技術開発を行った。
(22)省エネ型電子デバイス材料の評価技術の開発事業【2021年度当初:26.3億円】
電池・素材メーカー間のすりあわせを高度化し、電池の新材料が全回体電池材料として有用かを評価するため、標準電池の開発を行うとともに、標準電池の一部分を新材料に入れ替えて性能評価する共通基盤の構築に取り組みました。
(23)炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発【2021年度当初:6.3億円】
木質バイオマスを原料とするセルロースナノファイバーについて、社会実装・市場拡大の早期実現に向け、製造プロセスにおけるコスト低減、製造方法の最適化、量産効果が期待できる用途に応じた複合化技術・加工技術等の開発を促進し、同時に安全性評価に必要な基盤情報の整備を行いました。
3.産業部門等における省エネの加速
産業部門においては、省エネ法に基づく規制や省エネ設備導入支援予算等の支援措置等を通じ、個々の事業者単位で省エネ取組が進んできましたが、エネルギー消費効率の改善は足踏み状況であり、省エネ法の特定事業者の約5割が対前年度比で悪化している状況です。経済成長と両立する徹底した省エネを進めるためには、更なる省エネ設備投資の促進や、複数事業者の連携による省エネ等、省エネ手段の多様化により、事業者のエネルギー消費効率改善を促すことが必要です。
〈具体的な主要施策〉
(1)省エネ法に基づくエネルギー管理の徹底【制度】
省エネ法では、工場・事業場の設置者に対し、省エネの取組を実施する際の目安となるべき判断基準(設備管理の基準やエネルギー消費効率改善の目標(中長期的にみて年度平均1%以上低減)等)を示すとともに、一定規模以上の事業者(年度で1,500kl以上のエネルギー(原油換算)を使用する事業者として経済産業大臣が指定する「特定事業者」、「特定連鎖化事業者」及び「認定管理統括事業者」。2021年9月現在で約12,000者を指定。)にはエネルギーの使用状況等の報告を求め、省エネ取組が不十分な場合には指導・助言等を行っています。
また、事業者が自らの省エネの取組の立ち位置を把握するとともに、省エネ進捗度合いに応じたメリハリのある省エネ取組を促進するため、「事業者クラス分け評価制度(SABC評価制度)」に基づき、全ての特定事業者等を、当該報告の結果を踏まえてS・A・B・Cの4段階にクラス分けしています。Sクラス事業者については、経済産業省ホームページに事業者名等を公表するとともに、Bクラス事業者については、注意喚起文書を送付しています。また、Bクラス事業者のうち、立入検査・現地調査等を経て省エネ取組が不十分と認められた事業者は、Cクラス事業者に分類の上、省エネ法に基づく指導・助言等を行っています。2019年度には、SABC評価制度の見直しを実施し、ベンチマーク達成状況によるS評価付与が適切になされるように運用を見直しました。また、事業者のベンチマーク目標達成に向けての省エネの取組を評価するため、省エネ取組をまとめている中長期計画書の記載内容の実施状況を定期報告書にて報告する仕組みを導入することとしました。
さらに、2017年8月に取りまとめられた総合資源エネルギー調査会省エネルギー小委員会の意見において、「定期報告や中長期計画を多角的に整理・加工し、各事業者の省エネ取組を客観的に評価できるデータベースとして整備・提供すべき」と示されたことを受け、定期報告書等に係るデータを、より特定事業者等のニーズに沿った形でフィードバックするための検討を行い、事業者が同一業種内における自らの省エネ取組を確認できるツールや業種別の省エネ取組ファクトシートを公開しました。
(2)複数企業の連携によるさらなる省エネルギーの促進【制度】
エネルギーミックスの実現に向け、事業者単位の取組に加えて複数の企業が連携する省エネ取組を促進するため、省エネ法の改正法案を第196回国会に提出し、2018年6月に成立、12月1日に施行されました。この改正により、複数企業が連携する省エネ取組を「連携省エネルギー計画」として認定し、省エネ量を企業間で分配して報告することを認めるとともに、一定の資本関係のある複数の事業者が一体的に省エネの取組を推進する場合、その管理を統括する事業者を「認定管理統括事業者」として認定し、当該事業者が定期報告等を一体的に行うことを可能としました。
(3)省エネ法に基づく産業部門ベンチマーク制度の見直し【制度】
2021年度には、事業者の更なる省エネ取組を促すため、産業部門のベンチマーク制度について、一部業種の指標・目標値の見直しや、対象業種の拡大を行いました。今後は、ベンチマーク制度の目標年度である2030年度に向けて、支援策も活用しながら事業者の省エネの取組を促します。
また、電力供給業におけるベンチマーク制度については、2018年7月に閣議決定された第五次「エネルギー基本計画」において、非効率な石炭火力に対して、新設を制限することを含めたフェードアウトを促す仕組み等を講じていくことが明記されたことを踏まえ、総合資源エネルギー調査会電力・ガス基本政策小委員会、省エネルギー小委員会合同の石炭火力検討ワーキンググループにおいて、石炭火力発電設備に対する規制的措置について議論し、取りまとめを行いました。
(4)先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金【2021年度当初:325.0億円】
工場・事業場におけるエネルギー消費効率の改善を促すため、省エネ性能の高い特定のユーティリティ設備や生産設備、先進的な省エネ設備等の導入等を行う事業者に対する支援を行いました。
(5)産業・業務部門における高効率ヒートポンプ導入促進事業【2020年度補正:46.5億円】
製造工場等の熱プロセスにおいて、一定水準以上の性能を有する高効率なヒートポンプを導入することにより革新的なプロセス改善を行うことで、エネルギー消費効率の大幅な向上を見込む事業に対する支援を行いました。
(6)省エネルギー投資促進支援事業費補助金【2021年度補正:100.0億円】
産業・業務部門における性能の優れた省エネ設備への更新に係る費用の一部に対する補助を行いました。
(7)低炭素社会実行計画の推進・強化【制度】
産業界は、継続して主体的な温室効果ガス削減計画に取り組んでおり、2013年度以降は、経団連加盟の個別業種や経団連に加盟していない個別業種による低炭素社会実行計画による取組を進めてきました。2021年6月には、経団連は、「経団連 低炭素社会実行計画」を「経団連カーボンニュートラル行動計画」へ改め、取組を強化していく旨を表明しています。低炭素社会実行計画については、2021年10月に改訂された「地球温暖化対策計画」においても、前計画に引き続き産業界における対策の中心的役割と位置づけ、2030年度削減目標の達成に向けて産業界による自主的かつ主体的な削減貢献の取組を進めていくこととしています。また、同計画において、産業界は新たに、中小企業も含めたカバー率の向上、政府の2030年度目標との整合性や2050年のあるべき姿を見据えた2030年度目標設定、共通指標としての2013年度比の二酸化炭素排出削減率の統一的な見せ方やサプライチェーン全体の二酸化炭素排出量の削減に貢献等について留意しながら計画の見直しを行うこととされています。現在、115業種がこの自主的取組に参画しており、2020年度以降、22業種が2030年度目標を見直しました。政府としても、透明性・信頼性・目標達成の蓋然性の向上の観点から、低炭素社会実行計画の2020年度実績について、審議会による厳格な評価・検証を実施しました。具体的には、2020年度目標の達成状況や2030年目標の進捗状況等から、各業界の取組が着実に実施されていることを確認しました。また、審議会による進捗点検等を踏まえ、PDCAサイクルの推進が図られていることを確認しました。さらに、自らの国内企業活動における削減だけでなく、低炭素製品・サービス等による他部門での削減貢献、優れた製品や技術、素材、サービスの普及等を通じた国際貢献、革新的技術の開発や普及による削減貢献といった各業種の取組についても深掘りし、可能な限り定量化することにより、貢献の可視化とベストプラクティスの横展開等を促進しました。さらに、参画業種は、国内事業活動における排出削減だけでなく、低炭素製品・サービスや優れた技術・ノウハウの普及により、地球規模での削減に貢献しています。より多くの業種の参加促進や、審議会における業種横断的な意見交換を通じたベストプラクティスの競い合いや主体間連携の促進、国内外に向けた各業種の取組内容の積極的な発信、審議会による厳格な評価・検証を通じて、引き続き産業界の削減貢献の取組を後押しします。
(8)脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム【2021年度当初:80.0億円】
省エネ技術の研究開発や普及を効果的に推進するため、開発リスクの高い革新的な省エネ技術について、シーズ発掘から事業化まで一貫して支援を行う提案公募型研究開発事業を実施しました。「省エネルギー技術戦略2016」に掲げる重要技術(2019年7月改定版)を軸に、技術開発の段階に応じてFS調査フェーズ1件、インキュベーション研究開発フェーズ5件、実用化開発フェーズ12件、実証開発フェーズ2件の計20件を新規採択しました。
(9)高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発事業【2021年度当初:99.8億円】
IoT社会の到来により増加した膨大な量の情報を効率的に活用するため、ネットワークのエッジ側で動作する超低消費電力の革新的AIチップに係るコンピューティング技術や、新原理により高速化と低消費電力化を両立する次世代コンピューティング技術(量子コンピュータ、脳型コンピュータ等)等の開発を実施しました。
(10)超低消費電力型光エレクトロニクスの実装に向けた技術開発事業【2021年度当初:15.0億円】
クラウドコンピューティングの進展等により課題となっているデータセンターの消費電力抑制に向けて、電子回路と光回路を組み合わせた光エレクトロニクス技術による光電子融合サーバボードの開発等、最終成果に向けた研究開発を実施しました。
(11)省エネエレクトロニクスの製造基盤強化に向けた技術開発事業【2021年度当初:20.5億円】
産業のIoT化や電動化が進展し、それを支える半導体関連技術の重要性が高まる中、日本が保有する高水準の要素技術等を活用し、エレクトロニクス製品のより高性能な省エネルギー化を実現するため、次世代パワー半導体や半導体製造装置の高度化に向けた研究開発に着手しました。
(12)グリーン購入及び環境配慮契約の推進【制度】
国等における環境物品等の率先的な調達や環境に配慮した契約の実施は、日本全体の省エネ等の推進に資するものであり、国等は、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号)」(以下「グリーン購入法」という。)及び「国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成10年法律第107号)」(以下「環境配慮契約法」と言う。)を踏まえ、照明や空調設備等の物品等を調達する際には、率先して省エネ機器・設備を導入するとともに、電力の供給を受ける契約や自動車を調達する契約等において環境配慮契約の推進に取り組みました。
また、2021年度は、グリーン購入法において、自動車等の特定調達品目に係る判断の基準について、乗用車は電動車等を率先調達の対象とする等の見直しを行うとともに、環境配慮契約法においても、自動車の購入等における総合評価落札方式について、車両重量に対してステップレスとなった2030年度燃費基準への対応等の見直しを行いました。
(13)国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費【2021年度当初:3.8億円】
J-クレジット制度の運営に取り組み、同制度を利用した省エネ・再エネ設備の導入、森林整備等を促進するため、2030年度以降の制度の永続性確保や排出削減算定方法やそのモニタリング方法を規定した方法論の改定、森林小委員会の設置を行いました。また、地球温暖化対策計画では、J-クレジットの認証量の目標設定を行っており、2020年度の認証量が目標を上回ったため、2030年度の目標を1,300万t-CO2から1,500万t-CO2へと目標の引上げを行いました。
さらには、同制度でクレジットを創出・活用する企業・自治体等に対して制度利用支援等を実施しました。あわせて、同制度におけるクレジット需要を開拓するため、各種制度との連携を図りつつ、クレジット制度利用の推進事業を行いました。
(14)省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金【2021年度当初:12.3億円】
新設・既設事業所における省エネ設備の新設・導入等を行う際、民間金融機関等から融資を受ける事業者に対し、融資に係る利子補給事業によって支援するとともに、更なる利用拡大のために金融機関と連携した制度利用の推進を行いました。
(15)中小企業等に対するエネルギー利用最適化推進事業補助金【2021年度当初:8.2億円】
中小企業等に対し、省エネ診断事業を実施するとともに、自治体や学校が実施する省エネ関連セミナーに講師を派遣しました。また、多くの診断事業で得られた優良事例や省エネ技術を様々な媒体を通じて情報発信しました。加えて、全国47都道府県で活動する自治体、金融機関、中小企業団体等と連携する「省エネお助け隊」(省エネルギー相談地域プラットフォーム)を構築し、きめ細かな省エネ診断や省エネ支援を通じて省エネの取組を促進しました。また、これまでの成果事例を取りまとめ、情報発信を行いました。
(16)環境調和型プロセス技術の開発事業【2021年度当初:28.0億円】
日本の鉄鋼業は、排熱回収利用等の主要な省エネ設備を既に導入しており、製鉄プロセスにおけるエネルギー効率が現在、世界最高水準であることから、既存技術の導入によるエネルギーの削減ポテンシャルは少ない状況です。他方で、高炉法による製鉄プロセスでは鉄鉱石を石炭コークスで還元するため、多量のCO2が排出されることは避けられません。このため、製鉄プロセスにおける大幅なCO2排出削減、省エネを目指し、①水素還元等プロセス技術の開発事業(COURSE50)、②フェロコークス技術の開発事業を行いました。①については、製鉄所から発生するCO2を30%以上削減することを目指して、コークス製造時の副生ガスに含まれる水素を用いて鉄鉱石を還元するための技術開発及び製鉄プロセスにおける未利用排熱を用いた二酸化炭素の分離回収のための技術開発を行いました。②については、製鉄プロセスのエネルギー消費量を約10%削減することを目指して、従来の製鉄プロセスでは活用できない低品位の原料を有効利用して製造したコークス(フェロコークス)を用いて鉄鉱石の還元反応を低温化・高効率化するための技術開発を行いました。
(17)計算科学等による先端的な機能性材料の技術開発事業【2021年度当初:24.8億円】
従来技術の延長線上に無い機能を有する超先端材料の創製を従来開発手法の1/20の期間で達成し、計算科学、プロセス技術、計測技術から成る革新的な材料開発技術基盤を整備しました。
(18)高効率・高輝度な次世代レーザー技術の開発事業【2020年度当初:20.0億円 (2021年度に0.09億円を繰越)】
本事業では、これまでにない高効率かつ高輝度なレーザー技術を開発することにより、燃料消費・温室効果ガス排出の削減を図るとともに、日本のものづくり産業の競争力強化を図ります。2021年度は、様々な加工条件に合わせて効率良く、付加価値の高い加工等を行うために、キロジュール級の高輝度・高効率レーザーシステム開発、次世代高輝度・高効率レーザー光源開発に取り組みました。また開発技術の加工への応用実証を併せて行いました。
(19)次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発【2021年度当初:16.5億円】
人工知能技術とその他関連技術による産業化に向けて、人工知能モジュールやデータ取得のためのセンサー技術、研究インフラ等を統合し、従来の人による管理では達成できない更なる省エネ効果を得るとともに、人工知能技術の社会実装を加速し、将来の新たな市場シェアのいち早い獲得を目指します。2021年度は、人工知能技術の社会実装に向けた研究開発・実証、人工知能技術の導入加速化技術、製造業の設計や製造現場に蓄積されてきた「熟練者の技・暗黙知(経験や勘)」の伝承・効率的活用を支え、生産性向上による抜本的な省エネ化を実現する人工知能技術の研究開発を行いました。
(20)省エネ型化学品製造プロセス技術の開発事業【2021年度当初:22.8億円】
日本が国際的に強みを有する触媒技術を活用することで、資源利用の高度化と製造プロセスのエネルギー消費量削減を目指し、①二酸化炭素と水を原料に太陽エネルギーでプラスチック原料等の基幹化学品を製造するプロセス技術(人工光合成)、②砂から有機ケイ素原料を直接合成し、同原料から次世代LED封止材等の高機能有機ケイ素部材を製造するプロセス技術、③機能性化学品の製造手法を従来のバッチ法からフロー法へ置き換え、廃棄物排出量を大幅削減する革新的な省エネ型の機能性化学品製造プロセス技術の開発を行いました。
(21)未来社会創造事業(大規模プロジェクト型)【予算】【2021年度当初:87.0億円の内数】
環境中の熱源(排熱や体温等)をセンサー用独立電源として活用可能にする革新的熱電変換技術の研究開発を推進しました。
(22)革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業【2021年度当初:13.5億円】
パワーエレクトロニクス技術は、あらゆる機器の省エネ・高性能化につながる横断的技術であり、温暖化対策に貢献しつつ、日本の産業構造や経済社会の変革をもたらすイノベーションの鍵を握っています。カーボンニュートラルの実現に向けて、学理究明も含めた基礎基盤研究の推進により、窒化ガリウム(GaN)等の次世代パワー半導体を用いた超省エネ・高性能なパワーエレクトロニクス機器等の実用化に向けた一体的な研究開発を推進しました。
(23)次世代X-nics半導体創生拠点形成事業【2021年度補正:30.0億円】
半導体集積回路は、カーボンニュートラルやデジタル社会の実現、経済安全保障の確保に向けて重要性が増しており、この分野の国際競争は年々激しくなってきています。本事業では、2035〜2040年頃の社会で求められる省エネ・高性能な次世代の半導体集積回路の創生を目指したアカデミアの中核的な拠点を形成し、新たな切り口による研究開発と将来の半導体産業を牽引する人材の育成を推進します。
4.部門横断的な省エネの取組
各部門における徹底した省エネだけでなく、部門横断的に省エネを促していくことも重要です。そのため、事業者や消費者といった対象を特定せず、広く積極的な省エネを促す取組を行いました。
〈具体的な主要施策〉
(1)省エネルギー促進に向けた広報事業委託費【予算】【2021年度当初:2.2億円】
国民の皆さまから省エネに対する理解と協力を得るため、例えば積極的な省エネを実践していただくためのきめ細かなキャンペーンを実施する等、省エネに関する客観的な情報提供を行いました。また、産業・業務部門向けに、省エネへの理解を深めてもらうため、WEBページ等による情報提供を行いました。さらに、一般消費者に向けて、省エネ家電への買換え促進のためのナッジを活用した情報発信や、各種メディアを通じた省エネ政策の周知等を行いました。
(2)脱炭素型の地域づくりの推進
「地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)」(以下「地球温暖化対策推進法」という。)に基づき、都道府県、政令指定都市及び中核市(施行時特例市を含む)は、単独で又は共同して、区域における再生可能エネルギーの利用促進、省エネの推進等を盛り込んだ地方公共団体実行計画(区域施策編)の策定が義務付けられています。また、2021年5月に成立した地球温暖化対策推進法の一部を改正する法律(以下、「改正地球温暖化対策推進法」という。)においては、地方公共団体実行計画(区域施策編)について、再エネの利用促進等の施策の実施目標が記載事項に追加されたほか、中核市未満の市町村について同計画の策定を努力義務とする規定が盛り込まれました。さらに、同法においては、市町村が、地方公共団体実行計画において、再エネを活用した地域脱炭素化促進事業の促進区域等を設定し、同区域における認定事業に関係法令の特例措置を講じること等により、地域の円滑な合意形成を図りつつ、地域の経済・社会的課題の解決に資する事業を推進していくための新たな制度が盛り込まれました。2021年度は、同法の内容等を踏まえた、地方公共団体実行計画策定・実施マニュアルの改定を行いました。
また、地域における再エネの最大限の導入を促進するため、地方公共団体による脱炭素社会を見据えた計画の策定や合意形成に関する戦略策定等を補助する「再エネの最大限の導入の計画づくり及び地域人材の育成を通じた持続可能でレジリエントな地域社会実現支援事業」を実施しました。
さらに、人口と建築物が相当程度集中する都市部において、カーボンニュートラルなまちづくりを促進するため、市町村における「都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)」に基づく「低炭素まちづくり計画」や「都市再生特別措置法(平成14年法律第22号)」に基づく「立地適正計画」の作成、これらの計画に基づく取組みに対する各種の税制、財政措置等の活用を通じて、都市のコンパクト化とこれと連携した公共交通機関の利用等を促進します。
(3)地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例(地球温暖化対策のための税)
日本で排出される温室効果ガスの8割以上は、エネルギー利用に由来するCO2(エネルギー起源CO2)となっており、今後温室効果ガスを抜本的に削減するためには、中長期的にエネルギー起源CO2の排出抑制対策を強化していくことが不可欠です。
このため、2012年10月から施行されている地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例の税収を活用して、省エネ対策、再生可能エネルギー普及、化石燃料のクリーン化・効率化等のエネルギー起源CO2排出抑制の諸施策を着実に実施していきます。
(4)低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業
日本の経済・社会の持続的発展を伴う、科学技術を基盤とした明るく豊かな低炭素社会の実現に貢献するため、望ましい社会の姿を描き、その実現に至る道筋を示す社会シナリオ研究を推進しました。2021年度は、日本が強みを有する太陽光発電や蓄電池システム等に関するイノベーション政策立案のための提案書等を20本作成し、国の施策等に活かすための政策提言を行いました。
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- トップランナー制度の対象機器のうち、家庭で使用される機器を中心に、トップランナー制度に基づく省エネ基準の達成率等を表示し、基準を達成している機器であることを消費者に分かりやすく表示するためのJISに基づくラベルです。2022年3月現在、特定エネルギー消費機器29機器のうちテレビジョン受信機、エアコンディショナー等を始めとする22機器が対象となっています。
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- トップランナー制度の対象機器のうち、家庭で使用される機器でエネルギー消費が大きい9機器(エアコンディショナー、照明器具、テレビジョン受信機、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気便座、温水機器(ガス、石油、電気))について、省エネルギーラベルや、市場における製品の省エネ性能を1.0から5.0で表示した多段階評価点(エアコンディショナーについては、5つ星から1つ星で表示した多段階評価)、年間の目安電気料金等を表示したラベルです。