第1節 エネルギー国際協力体制の拡大・深化

世界のエネルギー情勢が大きく変化する中、各国のエネルギー需給構造をより安定化・効率化するためには、一国での取組だけでなく、多国間及び二国間のエネルギー協力を戦略的に組み合わせつつ、国際的な協力を拡大することが重要となってきています。

そのため、2020年度においては、多国間の国際エネルギー枠組みを活用し、エネルギーの安定供給確保に向けた取組を進めるとともに、二国間の協力を通じて、アジア各国、先進諸国との協力やエネルギー供給国との関係強化を行いました。

<具体的な主要施策>

1.多国間枠組みを通じた協力

(1)主要消費国における多国間協力

①国際エネルギー機関(IEA)における協力

IEAは、1974年11月、第一次石油ショックを契機として、米国の提唱により石油消費国間の協力組織として設立されました。当初は、国際エネルギー計画(IEP)に関する協定に基づく石油の90日備蓄義務及び緊急時対応を始めとするエネルギー問題解決のための国際協力が主な活動内容でしたが、現在では、①低炭素技術の開発促進・省エネ、低炭素技術の開発・普及のための政策提言、低炭素技術R&Dのための技術協力、②国際石油市場、世界エネルギー需給、エネルギー技術等の見通しの策定・公表、③中国やインドを含む新興国、産油国等との協力関係の構築、④国別エネルギー政策の審査、勧告の実施など幅広い活動を展開しています。現在のメンバー国は、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルグ、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国の計30か国及びEUです。概ね隔年で閣僚理事会を開催しており、次回は2022年を予定しています。

IEA設立時は、世界の石油需要の約7割は西側先進国が占めていたため、メンバー国は西側先進国が中心でしたが、近年、非参加の新興国が経済成長を遂げており、IEAはグローバルなエネルギー課題に取り組むためには、エネルギー需要が増加している中国等の新興国をIEAの体制に取り込んでいくことが重要と考え、2015年の閣僚理事会以降、メンバー国とは別に「IEAアソシエーション国」という制度的枠組を設けました。現在、ブラジル、中国、インド、インドネシア、モロッコ、シンガポール、南アフリカ、タイの8か国がアソシエーション国となっています。さらに、2021年1月、アソシエーション国であるインドとIEAの間で、協力強化のための新たな地位である「戦略的パートナーシップ」構築に向けた枠組み文書に署名しました。

2020年7月には、加盟国及びアソシエーション国に加え、その他の国家や民間企業も交えて、クリーンエネルギー転換サミットが初めて開催され、我が国から梶山経済産業大臣が出席しました。同会合では、COVID-19の世界的感染拡大からの持続可能な経済回復に向けて、クリーンエネルギー転換の重要性について、参加した各国閣僚等との協力を確認し、議長声明が発表されました。同11月に鷲尾外務副大臣は、アフリカ連合委員会及びIEAが共催する閣僚フォーラムに出席し、アフリカにおけるエネルギー・アクセスの改善及びアフリカへの投資の継続の重要性を強調するとともに、同地域におけるエネルギーへのユニバーサル・アクセス実現に向けた我が国の取組につき紹介しました。2021年3月には、IEAと英国の共催にて、IEA-COP26 ネットゼロサミットが開催され、我が国から梶山経済産業大臣が出席しました。同会合では、各国が掲げるカーボンニュートラル目標の達成に向けて、クリーンエネルギーへの移行に関する具体策について、参加した各国閣僚等と議論を行い、成果文書として、「IEA/COP26 ネットゼロ達成に向けた7原則」が発表されました。

また、IEAは、メンバー国のエネルギー政策及び緊急時対応政策を審査するため、IEAメンバー国等によるレビューチームによるピアレビュー(IDR:国別詳細審査、ERR:緊急時対応審査)を約5年に一度実施しています。我が国に対する詳細国別審査が2020年2月に実施され、その報告書が2021年3月に公表されました。報告書では、東日本大震災以降の日本のエネルギー政策の進捗や、日本の2050年カーボンニュートラル宣言を評価するとともに、その実現に向けた幅広い低炭素技術を活用したエネルギー・シナリオの検討、再生可能エネルギー導入拡大とエネルギー安全保障確保に向けた電力系統への投資促進、電力及びガス市場改革の推進などが提言されました。

(ア) 国際エネルギー機関分担金【2020年度当初:3.6億円】

同機関の活動・運営費用を、各国分担率に基づき拠出しました。

(イ) 国際エネルギー機関拠出金

【2020年度当初:5.1億円】

「世界エネルギー展望(WEO)」を始めとするエネルギー市場の分析、エネルギー技術ロードマップの策定等を支援すると同時に、我が国が議長国を務めた2019年6月のG20軽井沢会合での合意内容を踏まえ、水素、イノベーション、低炭素電源投資等にかかる各種調査・分析の実施を依頼すべく、IEAメンバー国として拠出を行いました。

【2020年度補正:7.9億円】

アジアを始めとする新興国の事情に即した現実的で持続可能な脱炭素化・エネルギー転換の実現方法の分析・モデリング・提言策定に関する依頼、新型コロナで財政的困難に直面しているエネルギー生産国等支援等を目的として、IEAメンバー国として拠出しました。

②G7における協力

G7エネルギー大臣会合は先進主要7か国(日本、米国、カナダ、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア。2013年まではロシアを含めてG8)のエネルギー担当大臣による閣僚会合として、1998年から不定期にサミット議長国が開催しています。2020年は、G7エネルギー大臣会合は開催されませんでした。

③G20における協力

2020年9月27日、28日に、サウジアラビアが主催するG20エネルギー大臣会合がテレビ会議形式で開催され、梶山経済産業大臣及び長坂経済産業副大臣、並びに鷲尾外務副大臣が出席しました。同会合では、①循環炭素経済(CCE)の推進、②エネルギー・アクセス、③エネルギー安全保障・市場安定化の3点を中心に議論が行われ、閣僚声明及び付属文書が採択されました。

閣僚声明においては、COVID-19からの回復におけるエネルギー部門の役割、多様なエネルギー源や技術の活用、3E+Sを実現するためのエネルギー転換の重要性等を再確認するとともに、各国の事情を反映しつつ排出をコントロールする包括的・実用的なアプローチである循環炭素経済(CCE)の推進、エネルギー・アクセス向上に向けた取組、COVID-19の影響も踏まえたエネルギー市場安定化やエネルギー安全保障強化に向けた投資の重要性を共有しました。

2020年11月21日、22日には、テレビ会議にてG20サミットが開催され、菅総理が出席しました。成果文書として首脳宣言が採択され、G20エネルギー大臣会合の成果に留意するとともに、循環炭素経済(CCE)やエネルギー安全保障、エネルギー・アクセスの重要性について盛り込まれました。

(2)アジア地域における多国間協力

①ASEAN+3・東アジア地域における協力

アジア地域におけるエネルギー需要の急増を踏まえ、アジア規模でのエネルギーの安全保障と持続可能性を確保するため、2004年から、ASEAN+3エネルギー大臣会合が(ASEANと日中韓の13か国の代表が出席)、2007年からは、東アジアサミット(EAS)エネルギー大臣会合(ASEAN、日中韓、オーストラリア、インド、ニュージーランド、米国、ロシアの18か国の代表が出席)が開催されています。

2020年11月、第17回ASEAN+3エネルギー大臣会合及び第14回EASエネルギー大臣会合がオンライン形式で開催され、我が国からは梶山経済産業大臣、江島経済産業副大臣が出席しました。

今回の会合では、COVID-19からの経済回復と温室効果ガス排出削減の取組を両立させるためには、全てのエネルギー源、全ての技術を活用し、現実的かつ実効的なエネルギー政策をとることが重要との認識で一致し、また日本からは、2050年カーボンニュートラルへの挑戦に触れるとともに、経済と環境の好循環を達成するグリーン成長に向けた取組を強化するため、化石燃料のクリーン利用も含めたトランジションの重要性を強調しました。そして、各種取組を通じて得られた知見を広くASEAN各国と共有し、地域全体の脱炭素化に向けて、協力しながら共に推進していく意欲を示しました。また、地域全域でのCCUS活用に向けた環境整備や知見を共有するプラットフォームとして「アジアCCUSネットワーク」の構築を提案し、参加国から歓迎されました。その他、分散型電源イニシアティブを通じた調査事業や、水素及び運輸部門の脱炭素化の実現に向けた取組、石油備蓄や原子力安全を含むエネルギー安全保障強化事業、LNGバリューチェーンに関する人材育成、低炭素社会にむけたクリーンコール技術の普及啓発活動、再生可能・省エネルギー分野の実証事業等の日本の支援策について報告しました。

(ア) 東アジア経済統合研究協力拠出金

【2020年度当初:6.3億円】

EAS中期エネルギー政策調査研究ロードマップに基づき、電気自動車の導入や新たなエネルギー源として期待される水素のポテンシャルなどの最新の動向調査をはじめ、安価な燃料調達を安定的に確保できる国際環境の整備、また、我が国の「LNG市場戦略」の取組を東アジアに展開し、アジアと世界をつなぐLNG市場づくりを進めるための調査研究等を実施するために、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)に拠出を行いました。

【2020年度補正:0.4億円】

LNGは石炭と比べ燃焼時に排出するCO2が半分程度とクリーンな化石燃料であり、また今後拡大が見込まれる再生可能エネルギーの調整電源の燃料としても期待されています。こうした状況を踏まえ、インド太平洋地域における石炭からLNGへの移行を念頭に、ERIA等の国際機関を通じて、アジアを始めとする新興国の事情に即した現実的で持続可能な脱炭素化・エネルギー移行の実現方法に関する分析・モデリング・提言策定や、国際会議の開催、関連調査等を実施するため拠出を行いました。

②アジア太平洋経済協力(APEC)における協力

1989年11月にオーストラリア(キャンベラ)で開催された第1回APEC閣僚会議において、エネルギー問題に対する域内協力の重要性と、これを専門に議論する場を設定することで一致しました。これを受けて、1990年にエネルギー作業部会(EWG)が設立され、さらに1996年には、よりハイレベルなエネルギー政策対話を行うため、シドニーにおいて第1回APECエネルギー大臣会合が開催され、2015年までに計12回開催されています。

これまでのAPECエネルギー大臣会合において我が国が提案し、合意された事項に基づき、①APECメンバーのエネルギー効率向上に向けた取組状況をレビューする「エネルギー効率ピアレビュー」、②急速な都市化に直面するAPEC地域において、都市レベルで低炭素技術を統合的に導入することを目指す「APEC低炭素モデルタウンプロジェクト」、③石油及びガスの供給途絶時における対応能力の強化を図るための「APEC 石油・ガス・セキュリティエクササイズ」の実施に向けた調整をコロナ禍の中でも進めるとともに、エネルギーシステムの強靱化に資する取組を自主的に促すための原則である「APECエネルギーレジリエンスプリンシプル」を日本が主導して2020年8月に策定しました。さらに、2020年12月には、10年ぶりの日本主催により、エネルギー作業部会をテレビ会議形式で開催し、APEC地域のエネルギー政策について議論を交わしました。

また、2020年11月には、APEC閣僚会議がテレビ会議形式で開催され、我が国からは、茂木外務大臣、梶山経済産業大臣、鷲尾外務副大臣、江島経済産業副大臣が出席しました。「2020年APEC閣僚共同声明」においては、よりクリーンなエネルギーへの移行を推し進め、持続可能な経済成長を支え、力強く包摂的な経済回復を達成する、エネルギー安全保障、エネルギー強靱性及び多様な燃料と技術を使用した低廉で信頼できるエネルギーへのアクセスの必要不可欠な役割が認識されました。さらに、同月APEC首脳会議がテレビ会議形式で開催され、我が国からは菅総理が出席しました。APEC首脳宣言においては、低廉なエネルギーへのアクセスを促進し、持続可能な経済成長を支えるために多様な燃料と技術を利用してエネルギー強靱性及びエネルギー安全保障を向上させ、力強く包摂的な経済回復の一環としてよりクリーンなエネルギーへの移行を促進するために協働することが明記されました。

(ア) アジア太平洋経済協力拠出金【2020年度当初:1.0億円】

アジア太平洋地域における低炭素技術の普及に向けたプロジェクト(APEC低炭素モデルタウンプロジェクト)や、APEC域内のエネルギー強靱性の向上、エネルギー効率の向上やエネルギー源の多様化に資するプロジェクト等を支援するために、APEC事務局に拠出を行いました。

(イ) アジア太平洋エネルギー研究センター【2020年度当初:6.7億円】

省エネ政策ワークショップの開催、「APECエネルギー需給見通し」の作成、アジア太平洋地域のエネルギー統計整備のための研修生受入・専門家派遣、「LNG産消会議」の開催、石油・石炭・ガスレポートの作成等のために、アジア太平洋エネルギー研究センターに拠出を行いました。

(3)その他の多国間協力(生産国と消費国の対話等)

①国際エネルギーフォーラム(IEF)における対話

IEFは、世界70か国の石油・ガス等の産出国と消費国のエネルギー担当大臣及びIEA、OPECを始めとする国際機関の代表が一堂に会する重要な「産消対話」の場です。産消対話を行うことにより、産消国双方が相互に理解を深め、健全な世界経済の発展や供給と需要の安定確保のために安定的かつ透明性のあるエネルギー市場を促進することを目的として、1991年に第1回会合をパリで開催し、以降1 ~2年ごとに開催されています。2020年9月に、サウジアラビアにて予定されていた第17回閣僚会合は、COVID-19の影響を受けて延期となり、2021年の開催を予定しています。

また、IEFではエネルギー関連の7つの国際機関(APEC、EU、IEA/OECD、IEF、OLADE(中南米エネルギー機関)、OPEC、国連)で協力し、石油と天然ガスの統計を整備する国際機関共同データイニシアチブ(JODI)を進めており、2005年にJODI-Oil(石油の統計データベース)、2014年にJODI-Gas(天然ガスの統計データベース)が開始されています。国際機関が協力して情報共有を進め、エネルギー需給の動向についての正確かつタイムリーな情報が市場に提供されることで、市場の透明性が増し、過度の価格乱高下を抑制できると考えられており、現在、JODIは、世界の石油・ガス需給の9割以上を網羅しています。我が国は、資金・人材の両面でJODIの発展に寄与しています。

(ア) 国際エネルギーフォーラム(IEF)分担金【2019年度当初:0.1億円】

同機関の活動・運営費用を、各国分担率に基づき拠出しました。

(イ) 国際エネルギーフォーラム(IEF)拠出金【2019年度当初:0.1億円】

IEF閣僚会合の開催支援を行うとともに、国際機関共同データイニシアチブ(JODI)事業への貢献のために、IEF事務局に拠出を行いました。

②国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における協力

IRENAは、再生可能エネルギーの普及・持続可能な利用促進を目的として設立された国際機関であり、我が国は、2010年7月から正式に加盟しました。事務局はUAEのアブダビに設置されています。IRENAの主な活動は、①メンバー国の政策、制度、技術、成功事例の分析・体系化、②他の政府・非政府機関等との協力、③政策助言、④技術移転、⑤人材育成、⑥資金に関する助言、⑦研究ネットワークの展開、⑧国際的技術基準の作成等です。

2019年6月、日本にて、「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」が開催され、IRENAから変動再生可能エネルギーの系統統合に係る調査レポートが発表されました。また、本会合に出席したラ・カメラ事務局長と世耕経済産業大臣が会談し、世界の再生可能エネルギーの導入を拡大していくこと、また、水素分野の協力についても議論を行いました。

2020年9月、環境省は、気候変動枠組条約(UNFCCC)と共催で、新型コロナウイルスからの復興と気候変動・環境対策に関する「オンライン・プラットフォーム」閣僚会合を開催、会合で立ち上げた情報プラットフォーム「Platform for Redesign2020」にラ・カメラ事務局長もビデオメッセージで参加し、再エネへの転換の重要性について発信しました。

2020年10月、水素閣僚会議2020が開催され、ラ・カメラ事務局長もビデオメッセージで参加し、脱炭素化に向けた再エネ由来水素の重要性、日本の水素輸送を含む各国の取組、IRENAから発刊予定のレポートや、加盟国間の情報交換・協力促進のための新たなプラットフォームについて発信しました。

2021年1月、第11回IRENA総会がオンラインで開催され、日本から鷲尾外務副大臣、江島経済産業副大臣及び笹川環境副大臣がビデオメッセージを通じて出席しました。江島副大臣からは、2050年カーボンニュートラル及びグリーン成長戦略、洋上風力、水素分野などの日本の取組を発信しました。

(ア) 国際再生可能エネルギー機関分担金【2020年度当初:2.6億円(4省合計)】

IRENAを通じ、我が国単独では十分な成果が見込めない大規模な調査や普及活動を実施することにより、再生可能エネルギーを国際的に普及させるため、同機関の活動・運営費用を、各国分担率に基づき、外務省、農林水産省、経済産業省、環境省の4省共同で分担しました。

(イ) 国際再生可能エネルギー機関拠出金【2020年度当初:0.6億円】

経済産業省からは、①再生可能エネルギーと水素利活用に関する調査、②世界の地熱利用促進に向けた活動への協力、③東南アジアにおける再生可能エネルギー導入推進事業等の実施のため、分担金に加え同機関の活動費用の拠出を行いました。

③ 国際的な省エネルギーの新たな枠組み(省エネハブ)における協力

省エネハブは、国際省エネルギー協力パートナーシップ(IPEEC)の後継機関として、主要な省エネトピックについて、加盟国間や国際社会での情報交換や連携を奨励・促進するため、2019年に設立されました。アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、デンマーク、EU、フランス、ドイツ、日本、韓国、ルクセンブルク、ロシア、サウジアラビア、英国、米国の16か国が設立時メンバーとして参加し、事務局は国際エネルギー機関(IEA)に置かれています。日本を含む加盟国間で、今後の活動方針や具体的な活動プログラムについての議論が行われています。

④クリーンエネルギー大臣会合(CEM)

クリーンエネルギー大臣会合は、世界の主要26か国及び地域から構成されるクリーンエネルギーの普及促進を目的とした国際会合です。2020年9月に、Web会議形式にて第11回CEMが開催されました。本会合では、COVID-19からの復興はクリーンエネルギー導入拡大の機会であることを確認するとともに、エネルギー移行に向けた水素利用、クリーンなエネルギーシステム実現のための原子力、低炭素化にむけた分野統合といったテーマ設定の中で、クリーンエネルギーの推進に向け各国が抱える課題と取組について、活発な議論が行われました。日本からは、COVID-19を契機としたよりクリーンなエネルギーシステムへの転換及び各国の事情を踏まえた段階的なエネルギー移行の重要性、再エネ主力電源化に向けた日本の取組や「革新的環境イノベーション戦略」に基づき、2050年までの革新的技術の確立を目指すことを述べるとともに、今後もCEMの活動を含めた世界のクリーンエネルギー推進に貢献していくことを表明しました。

⑤エネルギー憲章条約

エネルギー憲章条約(ECT:Energy Charter Treaty)は、エネルギー貿易の自由化を促進し、投資保護の枠組みを有する条約であり、世界で50か国及び2国際機関が条約を締結しています。2015年5月には、新興国の台頭及びそれに伴う世界のエネルギー需給構造の変化、気候変動問題への危機感の高まり等を踏まえ、条約の基礎となった1991年の政治宣言「欧州エネルギー憲章」を近代化した「国際エネルギー憲章(International Energy Charter)」が採択されました。その署名には、既存の条約締約国のみならず、中国、韓国、カンボジア、チリ、コロンビア、タンザニア、ニジェール等、ECT未批准国が20か国以上も参加し、これまでの旧ソ連及び東欧諸国、EU諸国中心のものから、地理的な広がりを持ちつつあります。

2020年12月には、エネルギー憲章会議第31回会合がオンライン形式で開催され、「万人のためのエネルギー効率:イノベーションと投資」というテーマの下、ECTの加盟国、オブザーバー、及び招待された国際機関の閣僚級の出席を得て議論が行われました。我が国からは、鷲尾外務副大臣がビデオメッセージにより出席し、安心、信頼できる投資環境を提供するための法的基盤を提供するECTは益々その重要性を高めており、我が国は2020年に加盟国間で開始されたECTの近代化交渉に積極的に貢献していく旨発言しました。

○エネルギー憲章条約分担金【2020年度当初:1.0億円】

エネルギー分野における投資促進、エネルギー貿易及び通過の自由化に関する各種活動(報告書作成、ワークショップの開催等)、締約国会議であるエネルギー憲章会議の開催のため、エネルギー憲章条約事務局に拠出を行いました。

⑥多国間枠組を通じた人材育成等

日本は、2014年以降毎年、再生可能エネルギーを普及させるための人材育成の観点から、IRENAと共催し、アフリカやアジア・太平洋島嶼国等を対象とした再生可能エネルギーに関する研修プログラム/ファイナンスワークショップを開催しており、2019年度は11月に東京及び宮古島で開催しました。

⑦証券監督者国際機構(IOSCO)との連携

経済産業省は、商品取引所及び取引所外取引における相場操縦行為等の不公正取引の監視強化や透明性向上のために、証券監督者国際機構(IOSCO)の活動に積極的に参画しています。商品先物取引に関連する成果の一例として、IOSCOは、規制された取引所でのエネルギー商品を含む現物受渡デリバティブ商品の価格形成プロセスについて調査を実施し、「商品デリバティブ市場価格への倉庫及び受渡施設の影響に関する報告書」として2016年5月に公表しました。この報告結果に則り、2019年2月に適正な行為規範を示した「『商品倉庫および受渡施設の健全な慣行』報告書」を公表しました。

⑧商品先物市場監督当局間の協力

例年、証券監督者国際機構(IOSCO)の活動の一環として、各国の先物監督当局間で行われる対面形式での会合が定期的に開催されており、経済産業省も参加するなどして、積極的に情報交換、協力を行っています。2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、オンライン形式での会合の開催となりましたが、今後の各国の商品先物市場当局の協力等について意見交換が行われました。また、IOSCOの包括的な協議・協力及び情報交換に関する多国間覚書の枠組みに参加し、これに基づいて、市場監視のために各国の当局との情報交換を実施する体制を整えています。

2.二国間協力の推進

(1)先進諸国との協力

①日米協力

米国は、2019年9月に原油貿易における輸出が輸入を上回り、70年ぶりに純輸出国となりました。また、天然ガス分野では、2017年に初めてシェールガス由来のLNGが日本に輸入され、その後も米国産LNGの輸入が拡大しています。日米間においては、LNG分野での協力をはじめ様々な分野でのエネルギー協力が進展している他、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた第三国での協力も進められています。

2020年4月、日本政府及び政府関係機関(経済産業省、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、国際協力機構(JICA))ならびに、米国政府及び政府関係機関(国務省、商務省、国際開発金融公社、米国輸出入銀行、財務省、貿易開発庁)は、両国の産業界に対して政策支援に関する説明会をオンライン形式で行い、インド太平洋地域における日米共通の商業的・戦略的利益及び日米戦略エネルギーパートナーシップ(JUSEP)の枠組みを通じた協力機会について強調するとともに、現在進行中の日米協力の具体例について紹介を行いました。同説明会には、産業界を代表する両国のエネルギーインフラ関連企業から合計約300名が参加し、日米協力の推進に向けた活発な質疑が行われました。

2020年6月、経済産業省と米国商務省は、日米エネルギー協力ワーキンググループをオンライン形式で開催し、エネルギー分野における二国間協力の進展や貿易投資の促進について議論しました。本ワーキンググループでは、政府間セッションに加えて官民セッションも開催され、日米のエネルギー政策を関係者間で広く共有しました。

2020年7月、日本の三井物産とフランスのトタルが参画するモザンビークのArea1 LNGプロジェクトにおいて大型の融資契約が調印されました。このプロジェクトには、JOGMECが出資をするとともに、米国輸出入銀行、NEXI、JBICの日米公的金融機関による協調支援が実現しました。

2020年9月、経済産業省と米国国務省は、JUSEP会合をオンライン形式で開催し、インド太平洋地域における開かれた競争的なエネルギー市場の維持及びエネルギー安全保障の強化の重要性を改めて確認しました。また、COVID-19の世界的な影響下においても、日米共同プロジェクトが着実に進展していることを強調し、産業界との継続的な協力の重要性について議論しました。さらに、今後の協力範囲をより幅広いエネルギー技術を含む形で発展させていくことについて議論を行いました。

2020年12月、経済産業省、米国国務省およびベトナム商工省は、日米越LNGフォーラムをオンライン形式で開催し、江島経済産業副大臣がビデオメッセージにて参加しました。本フォーラムでは、ベトナムがエネルギー転換を実現していく中で、LNGの果たす役割の重要性を確認するとともに、ベトナムにおけるLNG関連ビジネスへの投資機会の拡大について認識を共有しました。加えて、ベトナムにおいて日米協力を進める上での課題や必要となる支援策についても議論を行いました。また、本フォーラムにおいて、日米越政府はLNG分野での今後の協力に向けた共同声明を発出しました。

2021年3月、梶山経済産業大臣はグランホルム・エネルギー長官とテレビ会談を行いました。会談では、梶山経済産業大臣より、我が国の2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取組、特にグリーン成長戦略について説明するとともに、次世代技術、水素、CCUS/カーボンリサイクル、原子力等のイノベーションや、エネルギー分野でのアジア太平洋地域での第三国協力等、今後の日米エネルギー分野での協力について意見交換を行いました。

②日加協力

カナダは世界有数のエネルギー資源国であり、石油、天然ガス、石炭、ウランに加えて豊富な水力資源を有しています。日加間においては、LNGカナダプロジェクトなど、LNG分野での協力を中心として様々な分野でのエネルギー協力が進展しています。

2020年6月、経済産業省とカナダ天然資源省は、2019年に締結したエネルギー分野における協力覚書に基づき、日加エネルギー政策対話を開催しました。政策対話では、各種エネルギー分野における日カナダ協力の進展を確認するとともに、今後の協力に向けたアクションプランの策定について議論しました。

また、2020年12月には、第30回日本・カナダ次官級経済協議(JEC)がオンライン形式で開催され、両国政府長は、最近の国際経済情勢や「自由で開かれたインド太平洋」の実現を含む日加協力に関する意見交換に加え、エネルギーを含む5つの優先協力分野等につき議論しました。

③日仏協力

日仏両国は、石油・天然ガスの多くを輸入に依存する点、今後のエネルギー源の多様化を追求する点等、エネルギー需給構造、エネルギー政策に多くの共通点が存在します。

日仏間のエネルギー協力の枠組みである日仏エネルギー政策対話は、今年度はCOVID-19の影響を受け延期となりました。原子力分野においては、2011年10月の東京での日仏首脳会談における両国首脳の主導により設置された原子力エネルギーに関する日仏委員会の第10回会合を2021年1月にオンライン形式で開催し、両国の原子力エネルギー政策、原子力安全協力、原子力事故の緊急事態対応、核燃料サイクル、放射性廃棄物の管理、原子力研究・開発、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉、オフサイトの環境回復等について、意見交換を行いました。

④日英協力

英国は、安定的でクリーン、かつ適正な価格のエネルギー供給の確保等の観点から、1990年代に電力市場の自由化を先行して実施し、世界最大規模の発電容量を誇る洋上風力を含む再エネや、省エネ、原子力発電を推進しています。

2020年11月25日、経済産業省と英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省は、日英間のエネルギー協力の深化・発展を目的とした「日英エネルギー政策対話」を開催し、両国のエネルギー政策やカーボンニュートラルに向けた取組等について意見交換を行いました。また、2021年1月14日に、梶山経済産業大臣とシャーマCOP26議長が会談を行い、2021年に英国が議長国となるG7やCOP26に向けて、両国間で気候変動等に関する協力を一層進めていくことを確認しました。また、梶山経済産業大臣より、我が国の2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取組、特に、「経済と環境の好循環」を生み出す革新的なイノベーションを推進するために、昨年末に取りまとめた「グリーン成長戦略」の方向性について説明しました。

原子力分野については、2012年4月に発出された日英両国首相による共同声明に基づき2020年12月に開催した第9回日英原子力年次対話においては、原子力政策、廃炉及び環境回復、原子力研究・開発、パブリック・コミュニケーション、原子力安全及び規制に関する両国の考え方や取組について意見交換しました。

⑤日独協力

ドイツ政府は、長期的に大部分のエネルギー供給源を再生可能エネルギーとし、建物・機器を中心に省エネルギーを強化する方針の下、導入コストに配慮した再生可能エネルギー増大とそれに対応した送電網の整備など、大幅にエネルギー政策を転換しています。また、電力小売市場全面自由化から20年以上経ており、電力システム改革について知見・経験を有しています。

2019年6月に締結された「日本国経済産業省とドイツ連邦共和国経済エネルギー省とのエネルギー転換における協力宣言」及び同宣言に基づいて2020年2月に署名されたエネルギー協力の具体化に向けたロードマップに基づき、日独両国は、水素とエネルギー転換に関するワーキンググループを設置し、より具体的な協力内容にかかる実務的な議論を進めています。特に水素については、2020年7月の安倍総理とメルケル首相との会談においても、両国の協力について言及されました。

2021年2月には、田中経済産業審議官とヌスバウム事務次官との間で、第19回「日独次官級定期協議」を開催し、これまでの両国のエネルギー協力の進展を確認し、今後の日独連携について意見を交わしました。

⑥欧州委員会との協力

2020年5月、安倍内閣総理大臣とミシェル欧州理事会議長及びフォン・デア・ライエン欧州委員長は、日EU首脳テレビ会議を実施しました。両国は、アジェンダ2030、持続可能な開発目標(SDGs)及びパリ協定に沿って、堅実な経済復興とより持続可能で、包括的で強靱な経済の構築を確実とするための決意を強調し、また、「持続可能な連結性及び質の高いインフラに関する日EUパートナーシップ」へのコミットメントを再確認しました。

⑦日豪協力

日豪両国は、石炭、LNG、水素等の資源・エネルギーの分野において重要なパートナーであり、1985年以来、国際エネルギー情勢や両国のエネルギー政策等を議論する二国間対話の場として、日豪エネルギー資源対話(JAERD)を開催しています。

2020年4月には、梶山経済産業大臣が、ピット・資源・水・北部豪州担当大臣と電話会談を行い、新型コロナウイルス禍においても引き続きエネルギーの安定供給が重要であることを改めて確認したほか、水素、カーボンリサイクル、重要鉱物等の分野での協力について議論を行いました。

2020年10月に開催されたLNG産消会議、水素閣僚会議及びカーボンリサイクル産学官国際会議には、ピット資源・水・北部豪州担当大臣及びテイラー・エネルギー排出削減大臣がビデオメッセージにて参加しました。

2020年7月及び9月に実施された日豪首脳電話会談において、重要鉱物や水素分野での協力につき議論し、資源・エネルギー協力の重要性について確認しました。また、11月にはモリソン首相が訪日し、日豪首脳会談において、エネルギー・環境、水素協力等の分野での協力の重要性につき確認しました。

水素については、2021年、日豪褐炭水素サプライチェーンプロジェクトにおいて、世界初となる液化水素運搬船による豪州産水素の海上輸送実証が行われる予定です。

(2)アジアとの協力

①日インド協力

インドは、米国、中国に次ぐ世界第3位のエネルギー消費国で、経済発展や電化の進展により、今後ますますエネルギー需要が増加することが予想されています。そのようなインドのエネルギー資源安定供給確保とエネルギー効率向上は、日本のエネルギー安全保障にとっても重要であり、両国の経済発展にも直結する重要な政策課題になっています。

こうした背景を踏まえ、エネルギー分野における両国の協力拡大を図る観点から、2006年の首脳合意を受けて、閣僚級の枠組みである「日印エネルギー対話」を立ち上げました。両国閣僚の相互訪問により、2007年以降、計10回の対話を実施しています。次回第11回会合は新型コロナウイルスの感染状況も見極めながら、時宜を捉えて開催すべく調整を行っています。

省エネについては、2018年に日本の支援で成立したインド版省エネガイドラインの普及や工場の省エネマニュアル作成の支援に向け、専門家派遣等の協力を継続しています。石炭火力発電については、技術交流会等を通じて、環境設備対応やバイオマス混焼などの環境協力を実施しています。

水素分野における協力については、2019年2月にデリーで第1回となる水素及び燃料電池に関するワークショップを開催し、両国の水素政策や技術動向などの情報交換を始めました。2020年3月、デリーで第2回ワークショップを開催し、日印協力の具体化について議論しました。2021年3月には、第3回ワークショップを初めてオンラインにて開催し、日印双方から多数の政府関係者、民間企業等の参加を得て、水素利活用の重要性及び日印間の共同研究、民間連携の可能性について議論しました。

また、2021年1月に、インドは国際エネルギー機関(IEA)との間で戦略的パートナーシップ構築に向けた枠組み文書に署名しました。インドとIEAの協力関係がより一層強固になることは、世界のエネルギー安全保障及びクリーンエネルギー転換の強化に当たって重要であり、日本としてもこの署名を歓迎しました。

②日インドネシア協力

インドネシアは、日本にとって有数の石油・天然ガス及び石炭など天然資源の輸入相手国であり、複数の日本企業が多くのLNGプロジェクトや再生可能エネルギー関連プロジェクトに参画しています。また、日尼両国は、石炭、LNG等の資源・エネルギーの分野において重要なパートナーであり、2012年度より、両国のエネルギー政策等に関する議論や、個別プロジェクトの推進を目的とした二国間対話の場として、日尼エネルギーフォーラムを開催しています。今後、第7回日インドネシアエネルギーフォーラムを日本で開催し、電力、石油、天然ガス、石炭、新・再生可能エネルギー、省エネルギーなどの分野における政策、今後の計画や協力事業等について議論するとともに、両国関係者間で個別セッションを実施し、新たなプロジェクト形成に向けた議論や、プロジェクト加速化のための懸案事項解消に向けた集中的な議論を行う予定です。

2020年10月に開催されたLNG産消会議にはインドネシアも参加し、アリフィンエネルギー・鉱物資源大臣がビデオメッセージを寄せました。

③日ベトナム協力

ベトナムは、石炭、石油・天然ガス、鉱物資源を豊富に保有する資源国であり、日本にとって重要な良質な無煙炭の供給国です。また、経済産業大臣とベトナム商工大臣を共同議長とする「日越産業・貿易・エネルギー協力委員会」、及び局長級の「日越エネルギーワーキンググループ」という重層的な政府間対話の枠組みを通じて協力を推進している国のひとつです。

2020年8月には、第4回日越産業・貿易・エネルギー協力委員会及び第3回日越エネルギーワーキンググループをそれぞれオンライン形式で開催しました。今回は、エネルギー政策全般をはじめ、石油・天然ガス、石炭、再生可能エネルギー、スマートグリッド、省エネルギーなどの協力について協議しました。これにより、エネルギー需要が急増しているベトナムにおいて、我が国とのエネルギー分野での協力がさらに強化されることが期待されます。

また、JOGMEC等の政府関係機関を通じ、LNGバリューチェーン構築に関する人材育成を実施する等幅広い協力を行いました。2020年12月には、日本政府、米国政府及びベトナム政府が共同で「日米越LNGフォーラム」をオンライン形式で開催し、ベトナムがエネルギー転換を実現していく中で、LNGの果たす役割の重要性等を確認しました。

④日タイ協力

タイとは、エネルギー政策対話等を通じてエネルギー分野の協力について協議しており、エネルギー需要が急増しているタイにおいて、我が国との協力関係がさらに強化されることが期待されます。

タイでは国内ガスの生産が減退し、近年LNGの輸入国になっていることから、JOGMEC等の政府関係機関を通じ、LNGバリューチェーン構築に関する人材育成を実施したほか、タイ側からスマートエネルギー分野への協力可能性について言及があったことを踏まえ、2019年12月にジェトロバンコク主催で第一回スマートエネルギーワークショップを行ったのに続き、2020年度には案件形成に向けたFS事業やオンラインセミナーを開催する等、幅広い協力を行いました。

⑤日中協力

中国は世界最大のエネルギー消費国であり、中国のエネルギー利用効率の向上は日本のエネルギー安全保障にとって重要な課題です。また、中国においては、大気汚染等の深刻化に対処するとともにCO2排出削減を図るため、エネルギー利用効率の向上や太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入拡大が図られているところです。

こうした状況を踏まえ、2020年12月、日中の官民による省エネルギー・環境協力を推進するためのプラットフォームとして「第14回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」を東京と北京を繋いだオンライン形式で開催しました。日本側からは梶山経済産業大臣、宗岡正二日中経済協会会長他、中国側からは何立峰国家発展改革委員会主任、李成鋼商務部部長助理を始め、両国合わせて450名を超える官民関係者が参加し、14件の協力プロジェクト文書が交換されました。全体会合では、梶山経済産業大臣から、カーボンニュートラルの実現に向けて、水素・カーボンリサイクルなどの分野で、日中両国が連携する意義について言及しました。加えて、「エネルギー効率の向上(省エネ)分科会」や「水素・クリーン電力分科会」等の4つの分科会を開催し、日中双方の実務者レベルの意見交換を行い、さらなる協力に向けて日中両国の政府・民間企業間で数多くの具体的かつ前向きな議論がなされました。また、同日には、梶山経済産業大臣が何立峰国家発展改革委員会主任と会談し、日本の2050年、中国の2060年までのカーボンニュートラル実現に向けた政策対話や両国の経済政策全般に関して、意見交換を行いました。

⑥日バングラデシュ協力

バングラデシュの経済発展は著しく、人口増と高い経済成長率を背景に、エネルギー需要も伸びています。バングラデシュは天然ガスの産出国であり天然ガスが発電量の約8割を占めていますが、2020年以降は国内ガス生産が減少すると予想されている一方、経済成長により産業用、民生用ともに需要が増えており、2018年にはカタールから液化天然ガス(LNG)の輸入を開始するなど、新たな局面を迎えています。こうした状況を踏まえ、日本とバングラデシュは、エネルギー分野での課題解決のため官民一体となって協力するため、2019年7月にダッカで開催された第4回日本・バングラデシュ官民合同経済対話で、新たにエネルギー・ワーキンググループ(WG)を設立することに合意しました。同年10月にダッカで開催された第1回WGに引き続き、2021年1月には第2回WGをオンライン形式で開催し、エネルギー協力について議論を行いました。本WGでは日バングラデシュ双方の政府関係者による政府間セッションにおいて両国のエネルギー政策の現状及び今後の協力可能性について議論を深めたほか、官民セッションを併せて開催し、バングラデシュにおいてエネルギーインフラ開発案件に携わっている日本企業が複数参加し、案件推進のために必要な課題解決や現状ステータスの確認等を実施しました。

また、2020年8月には、安倍総理がハシナ首相と電話首脳会談を行いました。ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)構想の下、高効率石炭火力発電所を含む南部チッタゴン地域開発に引き続き協力すること、及び再生可能エネルギー活用の支援により長期的な脱炭素化に資する協力も強化していくことを確認し、ハシナ首相から、こうした日本の多大な貢献に対して謝意が表明されました。

(3)エネルギー供給国等との関係強化

①日サウジアラビア協力

サウジアラビアは、世界有数の産油国であるとともに、我が国にとって第1位の原油供給国です。また、産油国の中でも特に主要な位置付けにあり、大きな余剰生産能力を持つことから、国際原油市場の安定に大きな影響力を有しています。こうしたことから、石油の大部分を輸入に頼る我が国にとって、同国との関係強化は重要な課題であり、2007年に立ち上げた日サ産業協力タスクフォースを通じ、投資促進、人材育成、中小企業支援等、エネルギー分野にとどまらない幅広い協力・関係強化を官民一体となって推進してきました。

日サウジ両国は、2017年3月の安倍総理とサルマン・サウジアラビア国王との首脳会談において、二国間協力の基本的な方向性と具体的なプロジェクトをまとめた「日・サウジ・ビジョン2030」に合意し、新たな戦略的パートナーシップの羅針盤として協力を進めています。2020年12月に、「第5回日・サウジ・ビジョン・2030閣僚会合」をオンライン形式で開催し、エネルギーを含めた幅広い分野での両国間の協力プロジェクトの進展や今後の具体的なアクションについて議論を行いました。

また、2020年8月、梶山経済産業大臣は、アブドルアジーズ・エネルギー大臣との間で電話会議を行いました。会談では、梶山経済産業大臣から、中東情勢や新型コロナウイルスの影響で困難な状況にある中での我が国への原油の安定供給に対する謝意を伝達し、今後の安定供給について確認しました。また、カーボンリサイクルを含むエネルギー分野における両国の関係強化についても議論するとともに、2019年のG20議長国として2020年の議長国であるサウジアラビアとマルチの場でも連携していくことで一致しました。

②日UAE協力

アラブ首長国連邦(UAE)は、我が国にとって第2位の原油供給国であり、日本企業も権益を保有し、50年以上にわたり油田操業に参画してきました。また、我が国の自主開発原油が最も集中しているなど、我が国にとって極めて重要な資源国です。我が国との間では、活発なハイレベル往来、エネルギー分野を中心とした幅広い分野での協力を推進してきました。

2020年8月、梶山経済産業大臣は、ジャーベル・産業・先端技術大臣兼アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEOとの間でTV会談を行いました。会談では、梶山経済産業大臣から、日本への原油の安定供給に対する謝意を伝達し、アブダビの上流資源開発分野における日本企業の参画について働きかけを行いました。また、来年のUAE建国50周年、再来年の日UAE外交関係樹立50周年等の機会を活用し、エネルギー分野に加え、先端技術、医療等の分野での協力も通じ、引き続き両国間で緊密に連携していくことで一致しました。

2020年11月、梶山経済産業大臣は、アブダビ国際石油展示会・会議(ADIPEC)において基調講演を行いました。梶山経済産業大臣からは、菅総理が所信表明演説で宣言した2050年カーボンニュートラルの実現という我が国の方針を紹介し、今後アジアを中心にエネルギー需要が拡大していく中で、我が国は途上国における化石燃料のクリーンな利用を支援していくこと、また、気候変動、エネルギーの安定供給確保及び持続的な経済成長を実現する「責任あるエネルギー政策」を我が国のみならず、途上国にも展開していくことを表明しました。

2021年1月、梶山経済産業大臣は、ジャーベル・産業・先端技術大臣兼ADNOC CEOとの間でTV会談を行いました。会談では、梶山経済産業大臣から、アブダビのエネルギーインフラ等における日本企業の参画について働きかけを行ったほか、水素・アンモニア、カーボンリサイクルなどの脱炭素に向けた取組における両国の更なる協力について議論しました。また、UAEとの更なる関係強化に向け、我が国は脱炭素も視野に入れた、水素・アンモニアなどを含めた包括的な資源外交を展開していくことを表明し、引き続き両国間で緊密に連携していくことで一致しました。

会談後、梶山経済産業大臣はジャーベル大臣兼CEOとともに、経済産業省とADNOC間の燃料アンモニア及びカーボンリサイクルに関する協力覚書(MOC)の署名式に立ち会いました。本覚書では、ADNOCは我が国との協力に際し、UAE産業・先端技術省とも緊密に連携することになっており、こうした関係機関の連携も通じ、両分野における二国間協力が加速化することが期待されます。

こうした閣僚級で緊密に働きかけを行った成果もあり、2021年2月10日に、コスモエネルギー開発株式会社は、アブダビの新規陸上探鉱鉱区をADNOCから獲得しました。引き続き、足下のエネルギー安定供給確保に向けて緊密に連携するとともに、脱炭素も視野に入れた、水素・アンモニアなどを含めた包括的な資源外交を展開していきます。

③日カタール協力

カタールは、世界第3位の天然ガス埋蔵量を有する資源国であるとともに、日本にとって原油、天然ガスともに第3位の供給国で、エネルギー安全保障の観点で、重要なパートナーです。

2020年10月、梶山経済産業大臣は、アル・カアビー・カタール国エネルギー担当国務大臣との間でTV会談を行い、健全なLNG市場形成に向けて協力していくことで一致しました。また、LNGをはじめエネルギー分野全般における二国間関係強化について議論を行い、2021年の日カタール外交関係樹立50周年等の機会も活用し、引き続き両国間で緊密に連携していくことで一致しました。

④日露協力

ロシアは世界有数の産油・産ガス国であり、日露間では、2016年5月の日露首脳会談にて安倍総理からプーチン大統領に提案した8項目の「協力プラン」の下、エネルギーを含む8分野について幅広い協力を行っています。2016年11月には、世耕経済産業大臣とノヴァク・エネルギー大臣が議長となる「日露エネルギー・イニシアティブ協議会」を設立し、炭化水素、原子力、省エネ・再エネの各分野において日露協力プロジェクトを推進しています。

2020年5月、安倍総理はプーチン・ロシア大統領と電話会談を行い、8項目の「協力プラン」(エネルギー分野を含む)の下で具体的な協力が進んでいることを歓迎するとともに、引き続き緊密に連携・協力していくことで一致しました。

2020年8月、安倍総理はプーチン・ロシア大統領と電話会談を行い、8項目の「協力プラン」(エネルギー分野を含む)も含め、幅広い分野で日露関係が発展してきており、今後とも二国間関係を強化していくことの重要性を確認しました。

2020年9月、梶山経済産業大臣兼ロシア経済分野協力担当大臣はノヴァク・エネルギー大臣とTV会談を行いました。会談では、8項目の「協力プラン」の下で行われている日露間の各種エネルギープロジェクトの進展状況を確認するとともに、エネルギー分野における協力関係を一層強化するため、引き続き両国間で緊密に連携していくことで一致しました。

同9月、菅総理はプーチン・ロシア大統領と電話会談を行い、政治、経済(エネルギー分野を含む)、文化等幅広い分野で日露関係全体を発展させていくことで一致しました。

2020年10月、梶山経済産業大臣兼ロシア経済分野協力担当大臣は、レシェトニコフ経済発展大臣兼対日貿易経済協力担当大統領特別代表と電話会談を行いました。会談では、8項目の「協力プラン」の下での各分野における民間プロジェクトの進捗について議論を行い、引き続き両大臣間の緊密な連携の下、経済分野の協力を進めていくことで一致しました。

⑤日ポーランド協力

ポーランドは、豊富な石炭資源を融資、石炭が同国電源構成の約7割を占めていますが、2020年9月に、再エネ比率の向上や国内初の原子力発電の設置などを含む長期エネルギー戦略を発表し、エネルギー転換を図っています。日本とポーランドは電源構成が近しいこともあり、これまで、首脳会談や2015年に署名された「2017年から2020年までの日本国政府とポーランド共和国政府との間の戦略的パートナーシップの実施のための行動計画」等に基づき、エネルギー分野において官民で協力をしてきています。

2020年12月には江島経済産業副大臣とクルティカ気候・環境大臣との間で会談が行われ、我が国の2050年のカーボンニュートラル実現に向けての今後の政策の方向性について説明し、原子力、水素、アンモニア、E-mobilityといったエネルギー・環境分野で両国間の協力を一層進めていくことを確認しました。特に、原子力分野については、高級実務者レベルの原子力政策対話を創設し、原子力の政策・国際情勢に関する意見交換や、高温ガス炉の研究開発及び人材育成等の二国間協力を推進することになりました。