第2節 地球温暖化の本質的解決に向けた我が国のエネルギー関連先端技術導入支援を中心とした国際貢献
世界のエネルギー需要の重心がアジアにシフトしていることや、エネルギー源の多様化、地球環境問題への対応など、世界のエネルギーを巡る課題が拡大、深化し、一層複雑化してきています。
こうした状況の中、我が国が厳しいエネルギー制約の中で蓄積してきた技術やノウハウを世界に普及していくため、こうした技術やノウハウを統合化して、再エネ及び省エネ技術、スマートコミュニティ等のインフラという形で国際展開を推進していくことが重要です。
2018年においては、案件形成や実証事業を進めることで、こうしたエネルギー・環境分野での国際展開の取組を進めました。
また、途上国への温室効果ガス削減技術、製品、システム、サービス、インフラ等の普及や対策実施を通じ、実現した温室効果ガス排出削減・吸収への日本の貢献を定量的に評価するとともに、日本の削減目標の達成に活用するため、二国間オフセット・クレジット制度(JCM)の構築・実施に取り組みました。
さらに、エネルギー・環境分野のイノベーションにより気候変動問題の解決を図るため、世界の学界・産業界・政府関係者間の議論と協力を促進するための国際的プラットフォームとなることを目的とする「Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)」の第5回年次会合を2018年10月に開催しました。
<具体的な主要施策>
1.案件形成・実証等の支援
(1)案件形成、事業実施可能性調査
質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業委託費【2018年度当初:14.4億円】
省エネ・再エネ等に関する我が国の質の高いエネルギーインフラ技術の導入を通じて、世界のエネルギー起源二酸化炭素の排出量を削減するために、同インフラの導入に係る事業実施可能性調査を実施しました。
(2)人材育成等
新興国等における省エネルギー対策・再生可能エネルギー導入促進等に資する事業委託費【2018年度当初:9.5億円】
省エネ・再エネに係る我が国の技術・システムの普及支援のため、、新興国を中心に、人材育成を通じた省エネ対策や再エネ導入に関する制度構築支援や、各国動向調査、政策共同研究等を実施しました。
(3)我が国の技術・システムの実証
エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業【2018年度当初:132.0億円】
省エネ・再エネの国際的な普及の観点から、我が国の技術・システムについて、相手国政府・企業との共同実証を実施しました。さらに、実証成果を商業ベースでの普及拡大につなげるため、相手国政府による我が国の技術・システムの採用・活用を促す等の各種普及支援についても実施しました。
(4)官民連携を核とした推進体制の強化
①スマートコミュニティ・アライアンス
「スマートコミュニティ」の取組が国際的に拡大する中で、我が国の優れたスマートグリッド関連技術を中核としたスマートコミュニティ等の国際展開を促進することは、我が国としての新たな成長産業の育成にもつながります。このような背景から、海外展開や国際標準を業種横断的に官民が連携して推進していくため、2010年に民間協議会団体の「スマートコミュニティ・アライアンス」(事務局:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))が設立されました。具体的取組としては、我が国発の技術・標準を活用したビジネスの国内外への展開を目指して、国際戦略や国際標準の観点からワーキンググループを設置し、国内の関連機関とも連携しつつ、普及促進・啓発の実施、スマートコミュニティ関連イベントでの講演、GSGF(Global Smart Grid Federation)などの国際機関との連携を強化しています。
②世界省エネルギー等ビジネス推進協議会
「世界省エネルギー等ビジネス推進協議会」は、2008年、省エネ・再エネ分野での優れた技術を有する我が国の企業・団体により発足しました。本協議会は、38企業・20団体(2018年6月時点)で構成されており、設立以来、政府と経済界が一体となって、関連製品・技術を基にしたビジネスの国際展開を推進しています。
具体的な活動内容としては、地域別・テーマ別にワーキンググループ等を組織し、(ア)官民ミッション派遣等によるビジネス機会の獲得、(イ)市場分析やプロジェクト発掘に向けた調査、(ウ)海外及び国内での展示会出展、(エ)関連製品・技術を取りまとめた「国際展開技術集」の作成及び周知等を行っています。
2.二国間オフセット・クレジット制度(JCM)の推進
(1)JCMの構築・実施【制度】
2013年1月に、モンゴルとの間で初めてJCM実施に係る二国間文書に署名したことを皮切りに、2018年1月までに17か国(モンゴル、バングラデシュ、エチオピア、ケニア、モルディブ、ベトナム、ラオス、インドネシア、コスタリカ、パラオ、カンボジア、メキシコ、サウジアラビア、チリ、ミャンマー、タイ、フィリピン)との間で、JCMを構築しました。
2018年12月に開催された国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)では、パートナー国の代表者が出席したJCMパートナー国会合が開催され、JCMの進捗を歓迎し、JCMプロジェクトのさらなる形成と実施の支援を行うことを共有しました。
(2)JCMプロジェクトの形成の支援
①民間主導によるJCM等案件形成推進事業【2018年度当初:13.0億円】
JCMの導入に関する二国間文書に署名した相手国において、優れた低炭素技術・製品等の導入による温室効果ガス排出削減プロジェクトを民間主導で実施し、削減効果を測定・報告・検証することで、地球温暖化対策技術の有効性を実証するとともに、排出削減プロジェクトの発掘・組成を行い、相手国での普及につなげるための事業を行いました。
②二国間クレジット取得等のためのインフラ整備調査事業委託費【2018年度当初:4.8億円】
JCMの意思決定機関である二国間合同委員会の運営やクレジットを管理する登録簿等の制度の基盤整備・運用を行うとともに、制度の円滑な運営のため、国内外の類似制度の調査や人材育成等の事業を実施しました。
③二国間クレジット制度(JCM)基盤整備事業のうち二国間クレジット制度(JCM)基盤整備等事業【2018年度当初:15.5億円】
JCMの本格的な運用のための制度構築、JCMに関する国際的な理解の醸成、JCMの実施対象国の拡大に向けた取組、途上国における排出削減プロジェクトの組成支援及びアジア等の途上国における都市間連携を活用した脱炭素化事業の実現支援を行いました。
④二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業【2018年度当初:81.0億円】
JCMに署名済み、または署名が見込まれる途上国において、優れた脱炭素技術等を活用したCO2排出削減設備・機器の導入プロジェクトへの資金支援(国際協力銀行(JBIC)との連携事業への支援を含む)を実施しました。また、導入コスト高から採用が進んでいない優れた脱炭素技術等がアジア開発銀行(ADB)のプロジェクトで採用されるように、ADBの信託基金を通じて、その追加コストを軽減する支援を実施しました。
3.イノベーションによる気候変動問題解決に向けた国際協力体制の強化
Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)の開催
気候変動問題の解決と経済成長を両立するための鍵であるイノベーションを促進するため、安倍総理の提唱により、世界の産官学のリーダーの英知を結集させて議論を行い、国際的な協力を促進するため、「Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)」を2014年に創設し、東京で開催することとしました。
2018年10月に開催した第5回年次総会は、「グリーン・イノベーションを引き起こす推進力」をメインテーマに掲げ、3つの本会議と12の分科会を開催しました。各国政府機関、産業界、学界、国際機関等の約70か国・地域から1000名以上が参加しました。本会議では、「Cool Capitalism」、「Mobility Transition」及び「Inclusive Action towards a Net-Zero Emissions Future」について講演とパネルディスカッションを実施しました。分科会では、「水素」、「CCUS」などのCO2削減を可能とする技術の開発やその普及を促進するための議論に加えて、「脱炭素化に向けた産業界の貢献」、「再エネマイクログリッドとエネルギーアクセス」など、社会システムを変革する可能性を持つ分野についても議論しました。また、エネルギー・環境分野の優れた技術開発・政策事例を選出するトップ10イノベーションを実施し、28件の候補から参加者の投票によって10件の技術を選出しました。さらに、「二酸化炭素の直接空気回収(DAC)」のロードマップを作成し、ICEFでの議論を反映した完成版をCOP24のサイドイベントにて発表しました。