第1節 エネルギー国際協力体制の拡大・深化
世界のエネルギー情勢が大きく変化する中、各国のエネルギー需給構造をより安定化・効率化するためには一国での取組だけでなく、多国間及び二国間のエネルギー協力を戦略的に組み合わせつつ、国際的な協力を拡大することが重要となってきています。
そのため、2018年度においては、多国間の国際エネルギー枠組みを活用し、エネルギーの安定供給確保に向けた取組を進めるとともに、二国間の協力を通じて、アジア各国等との協力やエネルギー供給国との関係強化を行いました。
<具体的な主要施策>
1.多国間枠組みを通じた協力
(1)主要消費国における多国間協力
①国際エネルギー機関(IEA)における協力
IEAは、1974年11月、第一次石油ショックを契機として、米国の提唱により石油消費国間の協力組織として設立されました。当初は、国際エネルギー計画(IEP)に関する協定に基づく石油の90日備蓄義務及び緊急時対応を始めとするエネルギー問題解決のための国際協力が主な活動内容でしたが、現在では、①低炭素技術の開発促進・省エネ、低炭素技術の開発・普及のための政策提言、低炭素技術R&Dのための技術協力、②国際石油市場、世界エネルギー需給、エネルギー技術等の見通しの策定、公表、③中国やインドを含む新興国、産油国等との協力関係の構築、④国別エネルギー政策の審査、勧告の実施など幅広い活動を展開しています。現在のメンバー国は、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルグ、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国の計30か国です。
IEA設立時は、世界の石油需要の約7割は西側先進国が占めていたため、メンバー国は西側先進国が中心でしたが、近年、非加盟の新興国が経済成長を遂げており、IEAはグローバルなエネルギー課題に取り組むためには、エネルギー需要が増加している中国等の新興国をIEAの体制に取り込んでいくことが重要と考え、2015年の閣僚理事会以降、メンバー国とは別に「IEAアソシエーション国」という制度的枠組を設けました。現在、ブラジル、中国、インド、インドネシア、モロッコ、シンガポール、南アフリカ、タイの8か国がアソシエーション国となっています。
隔年で閣僚理事会を開催しており、2017年11月のIEA閣僚理事会には、我が国から武藤経済産業副大臣(当時)及び中根外務副大臣(当時)が出席しました。同会合では、「持続可能な世界の成長のためのエネルギー安全保障の強化」をテーマに、世界のエネルギー安全保障や、クリーンエネルギーへの移行、エネルギー投資の促進、エネルギーのデジタル化への対応、さらに新興国との関係強化や石油以外のエネルギーに関する活動拡大を含めたIEAの現代化について議論しました。
また、IEAは、メンバー国の緊急時対応政策を審査するため、IEAメンバー国等によるレビューチームによるピアレビュー(ERR:緊急時対応審査)を5年に一度実施しており、我が国は2018年1月に審査を受けました。今回から、審査対象に電力関連政策が加わり、エネルギー政策全般、石油関連政策、ガス関連政策及び電力関連政策について審査が行われました。
(ア)国際エネルギー機関分担金【2018年度当初:3.8億円】
同機関の活動・運営費用を、各国分担率に基づき拠出しました。
(イ)国際エネルギー機関拠出金【2018年度当初:4.1億円】
「世界エネルギー展望(WEO)」を始めとするエネルギー市場の分析、エネルギー技術ロードマップの策定等を支援すると同時に、IEAが知見を有するエネルギー安全保障にかかる緊急時対応審査(ERR)の実施や、これに関連するワークショップの開催等を支援するために、IEAメンバー国として拠出を行いました。
②G7における協力課
G7エネルギー大臣会合は先進主要7か国(日・米・加・独・仏・英・伊。2013年まではロシアを含めてG8)のエネルギー担当大臣による閣僚会合として、1998年から不定期にサミット議長国が開催しています。2018年9月にはカナダ(ハリファックス)において、G7エネルギー大臣会合が開催され、我が国からは平木経済産業大臣政務官(当時)及び岡本外務大臣政務官(当時)が出席しました。同会合では、「明日に向けたエネルギーシステムの構築」をテーマに、エネルギー安全保障の強化、エネルギーシステムによる持続可能な経済成長の確保、及び低炭素エネルギーの将来像の具体化について議論を行いました。
③G20における協力
2018年6月に、アルゼンチン(バリローチェ)において、G20エネルギー大臣会合が開催され、武藤経済産業副大臣(当時)及び岡本外務大臣政務官(当時)が出席しました。G20エネルギー大臣会合では、「よりクリーンでかつ強靭性のあるエネルギーシステムへの転換」について議論がなされ、同会合の成果文書として共同声明が発出されました。共同声明では、①エネルギー転換の実現には、各国の事情に応じた複数の道があり得ること、②エネルギー転換は温室効果ガス削減に重要な役割を果たすこと、③イノベーションはエネルギー転換の重要な推進力であり、G20の協力を強化すること、等について記載されました。
2018年11月30日から12月1日にアルゼンチン(ブエノスアイレス)において、G20サミットが開催され、安倍総理が出席しました。2019年は我が国が議長国を務め、エネルギー・環境分野の閣僚会合として「持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」を6月15日から16日に長野県軽井沢町で、また、同月28日、29日にG20サミットを大阪府大阪市で開催する予定です。
(2)アジア地域における多国間協力
①ASEAN+3・東アジア地域における協力
アジア地域におけるエネルギー需要の急増を踏まえ、アジア規模でのエネルギーの安全保障と持続可能性を確保するため、2004年より、ASEAN+3エネルギー大臣会合(ASEANと日中韓の13か国の代表が出席)、2007年から、東アジアサミット(EAS)エネルギー大臣会合(ASEAN、日中韓、オーストラリア、インド、ニュージーランド、米国、ロシアの18か国の代表が出席)が開催されています。
2018年10月、シンガポールにおいて、第15回ASEAN+3エネルギー大臣会合及び第12回EASエネルギー大臣会合が開催され、我が国からは石川経済産業大臣政務官が出席しました。今回の会合では、天然ガスが地域のエネルギーセキュリティ確保及び低炭素への転換のために重要な役割を果たすとの認識とLNGの利用促進と市場拡大に向けたインフラ開発に対する強いコミットメントが支持されました。また、我が国のLNGバリューチェーンに関する人材育成協力や投資促進に向けた支援が各大臣より歓迎されました。
また、我が国より提案した、水素社会と運輸部門における脱炭素化実現に向けた調査、開発や展開に関する協力の取組みが各大臣より歓迎されました。
我が国から、それぞれの国の実情を踏まえたニーズに応じ、低炭素化・脱炭素化に資するあらゆる選択肢を提案すること、それを踏まえた各国の選択に応じた支援を行うことで、世界のエネルギー転換をリードしていくことを表明いたしました。
さらに、我が国が実施している、省エネルギー、再生可能エネルギー、石炭火力、石油備蓄、原子力安全の分野での人材育成などの協力事業が紹介され、参加国から感謝の意が表されました。
東アジア経済統合研究協力拠出金【2018年度当初:6.1億円】
EAS中期エネルギー政策調査研究ロードマップに基づき、エネルギー見通しと省エネルギーポテンシャル分析、ミャンマーやフィリピンでのLNG供給調査やアジアにおける水素利活用のポテンシャルに関する調査研究等を実施するために東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)に拠出を行いました。
②アジア太平洋経済協力(APEC)における協力
1989年11月にオーストラリア(キャンベラ)で開催された第1回APEC閣僚会議において、エネルギー問題に対する域内協力の重要性と、これを専門に議論する場を設定することで一致しました。これを受けて、1990年にエネルギー作業部会(EWG)が設立され、さらに1996年には、よりハイレベルなエネルギー政策対話を行うため、シドニーにおいて第1回APECエネルギー大臣会合が開催され、2015年までに計12回開催されています。
これまでのAPECエネルギー大臣会合において我が国が提案し、合意された事項に基づき、①APECメンバーのエネルギー効率向上に向けた取組状況をレビューする「エネルギー効率ピアレビュー」、②急速な都市化に直面するAPEC地域において、都市レベルで低炭素技術を統合的に導入することを目指す「APEC低炭素モデルタウンプロジェクト」、③石油及びガスの供給途絶時における対応能力の強化を図るための「APEC石油・ガス・セキュリティエクササイズ」を着実に実施しました。
また、2018年11月15日、パプアニューギニアにおいてAPEC閣僚会議が開催され、我が国からは世耕経済産業大臣及び河野外務大臣が出席しました。11月23日に公表された閣僚会議・議長声明では、エネルギー効率の向上、強靱性のあるエネルギーの開発及びクリーンエネルギーの普及に対するメンバーの努力が歓迎され、イノベーションの促進等を通じたメンバー間の協力の強化が奨励されました。
更に、同月、APEC首脳会議が開催され、我が国からは安倍総理が出席しました。首脳会議・議長声明においても、APEC地域における持続可能な経済成長を支える上で、エネルギー安全保障が極めて重要であることが認識され、エネルギー関連の貿易と投資の促進、手頃で信頼性の高いクリーンエネルギーへのアクセスの強化、エネルギー効率及び強靱性の向上等の重要性が述べられました。
(ア)アジア太平洋経済協力拠出金【2018年度当初:1.1億円】
アジア太平洋地域におけるエネルギー効率の向上やエネルギー源の多様化、低炭素技術の普及に向け低炭素化促進プロジェクト(低炭素モデルタウンプロジェクト等)を支援するために、APEC事務局に拠出を行いました。
(イ)アジア太平洋エネルギー研究センター【2018年度当初:6.7億円】(APERC)拠出金
APECに参加する国・地域の省エネルギー・低炭素化政策の相互審査(ピアレビュー)の実施、「APECエネルギー需給見通し」の作成、アジア太平洋地域のエネルギー統計整備のための研修生受入・専門家派遣、「LNG産消会議」の開催、石油及びガスの供給途絶時におけるAPEC各エコノミーの対応能力強化に向けたエクササイズ開催のために、アジア太平洋エネルギー研究センターに拠出を行いました。
(3)その他の多国間協力(生産国と消費国の対話等)
①国際エネルギーフォーラム(IEF)における対話
IEFは、世界72か国の石油・ガス等の産出国と消費国のエネルギー担当大臣及びIEA、OPECを始めとする国際機関の代表が一堂に会する重要な「産消対話」の場です。産消対話を行うことにより、産消国双方が相互に理解を深め、健全な世界経済の発展や供給と需要の安定確保のために安定的かつ透明性のあるエネルギー市場を促進することを目的として、1991年に第1回会合をパリで開催し、以降1~2年ごとに開催されています。
2018年4月に、インドにて、第16回国際エネルギーフォーラム(IEF)閣僚会合が開催され、我が国から西銘経済産業副大臣(当時)と中根外務副大臣(当時)が出席しました。本年の閣僚会合では、「グローバルエネルギー安全保障の将来:エネルギー転換、技術、貿易と投資」をテーマに、各国政府、エネルギー関連国際機関、企業等が一堂に会し、エネルギー市場の現状と見通し並びにその課題等を議論しました。西銘経済産業副大臣(当時)からは、毎年経済産業省が日本で主催している「LNG産消会議」におけるLNG生産国と消費国との対話の重要性等を訴えるとともに、2017年12月に策定した「水素基本戦略」に触れ、世界に先駆けて水素社会の実現を目指す日本の政策を発信しました。
また、IEFではエネルギー関連の7つの国際機関(APEC、EU、IEA/OECD、IEF、OLADE(中南米エネルギー機関)、OPEC、国連)で協力をし、石油と天然ガスの統計を整備する国際機関共同データイニシアチブ(JODI)を進めており、2005年にJODIOil(石油の統計データベース)、2014年にJODIGas(天然ガスの統計データベース)が開始されています。国際機関が協力して情報共有を進め、エネルギー需給の動向についての正確かつタイムリーな情報が市場に提供されることで、市場の透明性が増し、過度の価格乱高下を抑制できると考えられており、現在、JODIは、世界の石油・ガス需給の9割以上を網羅しています。我が国は、資金・人材の両面でJODIの発展に寄与しています。
(ア)国際エネルギーフォーラム(IEF)分担金【2018年度当初:0.1億円】
同機関の活動・運営費用を、各国分担率に基づき拠出しました。
(イ)国際エネルギーフォーラム(IEF)拠出金【2018年度当初:0.1億円】
IEF閣僚会合の開催支援を行うとともに、国際機関共同データイニシアチブ(JODI)事業への貢献のために、IEF事務局に拠出を行いました。
②国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における協力
我が国はIRENA設立以来4期連続で理事国を務め,また第二位の分担金拠出国でもあり,様々な側面でIRENAを支援しています。
IRENAは、再生可能エネルギーの普及・利用促進を目的として設立された国際機関であり、我が国は、2010年7月から正式に加盟しました。事務局はUAEのアブダビに設置されています。IRENAの主な活動は、①メンバー国の政策、制度、技術、成功事例の分析・体系化、②他の政府・非政府機関等との協力、③政策助言、④技術移転、⑤人材育成、⑥資金に関する助言、⑦研究ネットワークの展開、⑧国際的技術基準の作成等です。
2018年4月に,アミン事務局長が外務省の閣僚級招へいにより訪日し,河野外務大臣への表敬を行いました。また、福島県を訪問し,再生可能エネルギー関連施設を視察した他、国際セミナー「再生可能エネルギー外交の時代と日本の進路」や「エネルギーと女性」を語る意見交換会に参加しました。
2018年8月,日本はグローバル地熱アライアンス(GGA)へ正式加盟しました。GGAは,世界的な地熱開発促進に向けた政府,開発金融機関,開発援助機関,民間企業等の幅広い関係者による国際組織であり,IRENAが事務局を務めています。主な活動としては,①地熱関連機関による対話やワークショップ等の開催,②地熱開発に係る技術支援及び政策アドバイス,③地表調査・試掘を対象としたファイナンススキームの調査分析,④人材育成,⑤普及啓発等を実施しています。
日本はIRENA/アブダビ開発基金プロジェクト注 の諮問委員として,IRENAが公募した開発途上国における再生可能エネルギーのプロジェクトの審査に参画し,国際的な再生可能エネルギーの開発・普及促進に貢献しています(任期:2018年1月から1年間。)。
また、日本は、2014年以降毎年,再生可能エネルギーを普及させるための人材育成の観点から,IRENAと共催し,アフリカやアジア・太平洋島嶼国等を対象とした再生可能エネルギーに関する研修プログラム/ファイナンスワークショップを開催しています。
2019年1月の第9回IRENA総会には原田環境大臣、辻外務大臣政務官が出席し,我が国における再生可能エネルギーの主力電源化の方針やIRENAを通じた途上国への再生可能エネルギー導入支援等について演説を行いました。更に,アミンIRENA事務局長との会談において,再生可能エネルギーの普及拡大に向けた日・IRENA関係の更なる強化を確認しました。
(ア)国際再生可能エネルギー機関分担金【2018年度当初:2.5億円】
IRENAを通じ、我が国単独では十分な成果が見込めない大規模な調査や普及活動を実施することにより、再生可能エネルギーを国際的に普及させるため、同機関の活動・運営費用を、各国分担率に基づき、外務省、農林水産省、経済産業省、環境省の4省共同で分担しました。
(イ)国際再生可能エネルギー機関拠出金【2018年度当初:0.5億円】
経済産業省からは、我が国に強みのある再生可能エネルギー関連技術や水素に関する調査の実施のため、分担金に加え同機関の活動費用の拠出を行いました。
③国際省エネルギー協力パートナーシップ(IPEEC)における協力
IPEECは、我が国のイニシアチブにより2009年に設立された、参加各国の省エネルギー対策の自主的な取組を支援するための国際協力枠組みです。現在のメンバー国は、日本、米国、カナダ、ドイツ、フランス、英国、イタリア、ロシア、中国、韓国、ブラジル、メキシコ、インド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン、EUであり、IEAに加盟していない中国やインドといった新興国も加盟していることが特徴です。我が国は、省エネルギー制度や先進的なエネルギー管理事例の情報提供を通じて各国との協力関係を築くとともに、特に、産業分野のエネルギー管理を推進するタスクグループである「エネルギー管理行動ネットワーク(EMAK)」や、従来型発電のエネルギー効率の改善支援を行い、低炭素化に貢献する「高効率低排出タスクグループ(HELE)」の取組を積極的に行っています。
④クリーンエネルギー大臣会合
クリーンエネルギー大臣会合(CEM)は、世界の主要25か国及び地域から構成される、クリーンエネルギーの普及促進を目的とした国際会合です。
2018年5月に、デンマーク(コペンハーゲン)において第9回CEMが開催され、我が国からは大串経済産業大臣政務官(当時)が出席しました。本会合では、EVや変動再エネ対策に関する新規キャンペーンの立ち上げが宣言されました。日本としてもそれらに賛同し、積極的に貢献していくことを表明しました。
⑤エネルギー憲章条約
エネルギー憲章条約(ECT:Energy Charter Treaty)は、エネルギー貿易の自由化を促進し、投資保護の枠組みを有する条約であり、2018年12月現在、世界で49か国及び1国際機関が条約を締結しています。2015年5月には、新興国の台頭及びそれに伴う世界のエネルギー需給構造の変化、気候変動問題への危機感の高まり等を踏まえ、条約の基礎となった1991年の政治宣言「欧州エネルギー憲章」を近代化した「国際エネルギー憲章(International Energy Charter)」が採択されました。その署名には、既存の条約締約国のみならず、中国、韓国、カンボジア、チリ、コロンビア、タンザニア、ニジェール等、まだ条約を批准していない新しい国が20か国以上も参加し、これまでの旧ソ連及び東欧諸国、EU諸国中心のものから、地理的な広がりを持ちつつあります。
2018年11月には、ルーマニア(ブカレスト)において、エネルギー憲章会議第29回会合が開催され、我が国からは兒玉在EU日本政府代表部大使が出席しました。会合においては、「エネルギー安全保障、持続可能性及び繁栄の確保のためのイノベーションの促進」というテーマの下、エネルギー転換やイノベーションの重要性などについて議論が行われました。また、同会合の成果文書として、「ブカレスト・エネルギー憲章宣言」が発出され、ECTの近代化や投資リスク低減などについて確認されました。
エネルギー憲章条約分担金【2018年度当初:1.1億円】
エネルギー分野における投資促進、エネルギー貿易及び通過の自由化に関する各種活動(報告書作成、ワークショップの開催等)、締約国会議であるエネルギー憲章会議の開催のため、エネルギー憲章条約の補助機関である事務局に拠出を行いました。
⑥多国間枠組を通じた人材育成等
2016年10月に中東欧地域環境センター(REC)との共催で、ハンガリーにおいて「低炭素技術セミナー」を開催し、中東欧地域における低炭素技術普及に関する見通しや課題を共有すると共に、我が国からは低炭素技術普及に向けた国際協力、都市間連携による取組、民間企業の技術、等を紹介しました。
⑦証券監督者国際機構(IOSCO)との連携
経済産業省は、商品取引所及び取引所外取引における相場操縦行為等の不公正取引の監視強化や透明性向上のために、証券監督者国際機構(IOSCO)の活動に積極的に参画しています。一例として、IOSCOは、規制された取引所でのエネルギー商品を含む現物受渡デリバティブ商品の価格形成プロセスについて調査を実施し、「商品デリバティブ市場価格への倉庫及び受渡施設の影響に関する報告書」として2016年5月に公表しましたこの報告結果に則り、2018年6月に適正な行為規範を示した「『商品倉庫および受渡施設の健全な慣行』協議用報告書」を公表しました。
⑧商品先物市場監督当局間の協力
経済産業省は、各国の先物監督当局間で行われる会合に定期的に参加するなどして、積極的に情報交換、協力を行っています。また、IOSCOの包括的な協議・協力及び情報交換に関する多国間覚書の枠組みに参加し、これに基づいて、市場監視のために各国の当局との情報交換を実施する体制を整えています。
2.二国間協力の推進
(1)先進諸国との協力
①日米協力
2018年4月、安倍総理は米国を訪れ、トランプ米国大統領と会談を行い、両首脳は、自由で開かれたインド太平洋地域の実現に向け,日米の協議が進展していることを確認しました。また、安倍総理から日本企業による米国産エネルギー購入額の増大等を説明し、トランプ大統領はこれを歓迎しました。
2018年6月にも安倍総理は米国でトランプ米国大統領と会談を行い、安倍総理が米国産エネルギーの購入額の増大等を説明したのに対し,トランプ大統領から一定の評価が示されました。
更に、2018年9月に米国で行われた安倍総理とトランプ米国大統領との会談では、両首脳は,自由で開かれたインド太平洋の維持・促進に向けた共通のビジョンを推進するために,第三国で実施している具体的な協力を賞賛し,インド太平洋地域における様々な分野での協力を一層強化するとの強い決意を再確認しました。
2018年10月に行われたLNG産消会議において、世耕経済産業大臣はブルイエット米国エネルギー副長官と会談し、2017年11月に首脳間で合意した日米戦略エネルギーパートナーシップ(JUSEP)を踏まえて、二国間のエネルギー分野での協力の進展について意見交換を行いました。
2018年11月には、ペンス米国副大統領が訪日し、安倍総理への表敬及び、麻生副総理と会談を行いました。ペンス副大統領の訪日の機会を捉え,日米両政府で、「エネルギー・インフラ・デジタル連結性協力を通じた自由で開かれたインド太平洋の促進に関する日米共同声明」を発出しました。
石油分野については、米国におけるシェールオイルの生産が拡大する中で、2015年には約40年ぶりに米国からの原油輸出が解禁され、それ以降、日本への原油輸出量は拡大しています。また、天然ガス分野については、2014年に我が国企業が関与するすべてのLNGプロジェクトについて米国政府から輸出承認を獲得し、2017年1月には短期契約に基づくシェールガス由来のLNGが初めて日本に輸入され、また、2018年5月には、日本として初めての長期契約に基づく米国シェールガス由来のLNG輸入が開始されました。今後米国からの石油・天然ガスの輸入が拡大することは、供給源の多角化によるエネルギーの安定供給に資するだけでなく、仕向地が自由な米国産LNGにより、柔軟かつ透明性の高い国際LNG市場の構築にも寄与することが期待されます。また、2014年11月JOGMECと米国国立エネルギー技術研究所(NETL)との間で署名されたメタンハイドレートの日米共同研究に関する覚書に基づき、日米両国ではアラスカ州でのメタンハイドレートの生産試験の実施に向け、試掘の検討等の技術協力が着実に進んでいます。
②日加協力
2018年5月、大串経済産業大臣政務官(当時)はクリーンエネルギー大臣会合に出席するためデンマークを訪問し、その機会を捉えて、ラッド天然資源政務官と会談を行いました。会談では、クリーンエネルギー大臣会合をはじめとしてマルチの場を通じた協力などについて意見交換が行われました。
2018年6月、武藤経済産業副大臣(当時)はG20エネルギー大臣会合に出席するため、アルゼンチンを訪問しました。この機会で、カー天然資源大臣(当時)と会談を行い、来年の我が国によるG20主催も見据えた、様々な多国間枠組みでの協力やLNG分野をはじめとした二国間のエネルギー協力に関する意見交換を行いました。
2018年9月、平木経済産業大臣政務官(当時)はカナダで行われたG7エネルギー大臣会合に出席し、同会合の議長を務めたソヒ天然資源大臣と会談を実施しました。会談では、今年のG7議長国であるカナダと来年のG20議長国である我が国との連携を確認するとともに、LNG安定供給に向けた取組など、石油・天然ガス分野での協力を中心に意見交換を行いました。
③日仏協力
日仏両国は、石油・天然ガスの多くを輸入に依存する点、今後のエネルギー源の多様化を追求する点等、エネルギー需給構造、エネルギー政策に多くの共通点が存在します。
原子力分野においては、2011年10月の東京での日仏首脳会談における両国首脳の主導により設置された原子力エネルギーに関する日仏委員会の第8回会合を2018年11月にパリにて開催し、両国の原子力エネルギー政策、原子力安全協力、使用済燃料の管理を含めた核燃料サイクル、放射性廃棄物の管理、高速炉を含めた研究開発、廃炉及び環境回復並びに産業協力等について、意見交換を行いました。
④日英協力
英国は、安定的でクリーン、かつ適正な価格のエネルギー供給の確保等の観点から、1990年代に電力市場の自由化を先行して実施し、世界最大規模の発電容量を誇る洋上風力を含む再エネや、省エネ、原子力発電を推進しています。
2018年11月、石川経済産業政務官が英国に出張し、国際エネルギー機関(IEA)CCUSサミットに出席しました。その際、ペリー英国エネルギー気候変動担当大臣と会談を行い、CCUSや水素など、今後の日英間のエネルギー協力について意見交換を行いました。
原子力分野については、2012年4月に発出された日英両国首相による共同声明に基づき、日英原子力年次対話を設置しています。2018年10月に東京で開催した第7回日英原子力年次対話では、原子力研究開発、廃炉・除染、原子力安全・規制等、原子力政策全般に関する意見交換を行いました。
2019年1月、安倍総理は英国を訪問し、メイ英国首相主催昼食会に出席するとともに、日英首脳会談を行いました。その際、同年日本がG20議長国を務める機会等を活用し、水素技術やCCUSを含むエネルギーイノベーションの加速のための機会を共同で探求することに合意しました。
⑤日独協力
ドイツ政府は長期的に大部分のエネルギー供給源を再生可能エネルギーとし、建物・機器を中心に省エネルギーを強化する方針の下、導入コストに配慮した再生可能エネルギー増大とそれに対応した送電網の整備など、大幅にエネルギー政策を転換しています。また、電力小売市場全面自由化から20年以上経ており、電力システム改革について知見・経験を有しています。
2018年10月、アルトマイヤー・ドイツ経済エネルギー大臣が訪日し、世耕経済産業大臣と会談しました。同会談において、「経済政策及び経済協力に関する日独共同声明」に署名し、エネルギー分野を含む今後の日独間の包括的な協力強化を確認しました。エネルギー分野では、再生可能エネルギーの普及・システムへの統合、水素などの脱炭素エネルギーシステムや省エネの促進に関する協力が盛り込まれました。
⑥日西協力
スペイン政府は、エネルギー供給源の多角化や化石燃料の輸入依存度の引き下げを目指すととともに、風力発電を中心に再生可能エネルギーの導入拡大を推進しています。
2018年9月、世耕経済産業大臣はスペインに出張し、ドミンゲス・エネルギー長官と会談を行いました。その際、再生可能エネルギー導入に伴う電力需給の調整力確保や系統制約の克服、コスト低減といった両国の共通課題について意見交換を行いました。
⑦欧州委員会との協力
我が国と欧州はあわせて世界のLNG輸入量の半分近くを輸入しています。欧州委員会はエネルギー安全保障確保および競争力確保の観点から、2016年に「LNGとガス貯蔵戦略」を発表し、また、経済産業省も流動性の高いLNG市場の構築により安定且つ低廉なエネルギー供給を確保することを目的として、「LNG市場戦略」を2016年に発表しました。我が国と欧州委員会が協力を強化することで、柔軟で流動性の高いグローバルLNG市場の構築が促進されることを期待し、2017年7月、世耕経済産業大臣は欧州委員会のカニェテ欧州委員と、「流動的で柔軟且つ透明性の高いグローバル市場の促進・確立に関する協力覚書」に署名しました。この覚書に基づき、2017年11月から2018年10月にかけて、計4回のワークショップを開催し、LNGバリューチェーン全体に関わる幅広いステークホルダーを集め、グローバルLNG市場の機能改善および緊急時の能力向上に向けた知見の共有や、ベストプラクティスの周知が図られました。2018年10月、我が国と欧州委員会はこれら4回のワークショップの成果を最終報告書として取りまとめました。
2018年10月、日EUハイレベル産業・貿易・経済対話が開催されました。この対話においては、日本側から世耕経済産業大臣、河野外務大臣、EU側からカタイネン欧州委員会副委員長(雇用・成長・投資・競争力担当)が共同議長を務め、国際貿易・デジタル経済、投資、エネルギー・環境・気候変動等の分野について意見交換を行いました。エネルギー分野では、エネルギー安全保障、経済効率性及びエネルギー転換・脱炭素化について、日EU間で引き続き連携して対応していくことの重要性を確認しました。
⑧日豪協力
日豪両国は、石炭、LNG、水素等の資源・エネルギーの分野において重要なパートナーであり、1985年以来、国際エネルギー情勢や両国のエネルギー政策等を議論する二国間対話の場として、日豪エネルギー高級事務レベル協議(HLG)を開催しています。2018年12月には、第37回HLGを実施し、LNG、石炭、鉱物資源、水素、再生可能エネルギー、エネルギー市場等の課題、更に今後の二国間協力の強化に関して議論を行いました。
2018年4月には平木経済産業大臣政務官(当時)が豪州を訪問し、国際水素サプライチェーン実証プロジェクトの記念式典に参加しまた。同プロジェクトでは、ビクトリア州の低品位石炭(褐炭)からの水素を製造し、液化水素にした上で日本へ輸送する国際水素サプライチェーンの実証が我が国及び豪州の官民連携により進んでいます。
2018年11月には安倍総理及び世耕経済産業大臣が豪州を訪問し、イクシスLNGプロジェクトの操業開始記念式典に出席しました。同プロジェクトは日本企業が主導する初の大型LNGプロジェクトであり、INPEXがオペレータを務め、JOGMECをはじめJBICやNEXIが金融支援を行っています。このプロジェクトにより、我が国の天然ガス需要の約7%に相当する年間約570万トンのLNGが日本向けに輸出される予定であり、日豪両国のエネルギー協力及び日本のエネルギー安定供給にとって重要なプロジェクトです。
さらに、安倍総理は当該豪州訪問において、モリソン豪首相と会談しました。同会談において、両首脳は資源エネルギーに関する継続的で、持続可能な協力を期待するとともに、開かれ、競争的なエネルギー市場と入手可能で信頼できるエネルギーへの普遍的なアクセスを達成するため、インド太平洋地域の第三国に協力を拡大することについて期待を表明しました。
(2)アジアとの協力
①日インド協力
エネルギー需要が増加するインドのエネルギー資源安定供給確保とエネルギー効率向上は、日本のエネルギー安全保障上重要であり、両国の経済発展にも直結する重要な政策課題になっています。
こうした背景を踏まえ、エネルギー分野における両国の協力拡大を図る観点から、2007年の首脳合意を受けて、閣僚級の枠組みである「日印エネルギー対話」を立ち上げました。両国閣僚の相互訪問により、2007年以降、計9回の対話を実施しています。
2018年5月には第9回日印エネルギー対話を行いました。インドのエネルギー分野における主要な課題となっている、再生可能エネルギーの大量導入に伴う系統安定化に関する協力や、これまでの協力に加え、水素についての協力や電気自動車分野との連携などを新たに包括し、インドのエネルギー転換・脱炭素化を促進する「日印エネルギー転換協力プラン」に合意しました。同プランに位置付けられている、省エネルギー分野での協力に関しては、インドでの省エネをより着実なものとするため、エネルギー使用者(産業界)がエネルギー使用合理化を適切かつ有効に実施するための判断基準(省エネルギー(EC)ガイドライン)の導入に向け、知見提供等の協力や指導を行いました。
2018年9月、上記日印エネルギー対話の結果を受け、インド版ECガイドラインが成立しました。
石炭火力発電における環境協力として、2018年3月にインド電力公社(NTPC)のDadri石炭火力発電所での環境装置に関する設備診断事業、同年10月にインド電力省職員及び電力事業者を対象にした招へい研修、同年11月にインドでの石炭火力に関する環境セミナーを実施し、日本の高性能な環境装置の紹介及び将来的なインドへの導入を含めた日印の石炭火力分野における環境協力を推進しています。
また、我が国とインドのLNG輸入量は、合わせて世界の約4割を占めます。インドのガス需要は、今後10年で2倍以上になると見込まれており、世界最大のLNG輸入国たる我が国と今後の世界のLNG需要拡大を牽引すると見込まれているインドが協力を強化することで、柔軟で流動性の高いグローバルLNG市場の構築が促進されることが期待されます。こうした背景を踏まえ、2017年10月にプラダン・インド石油・天然ガス大臣が訪日した際には、世耕経済産業大臣との間で、流動性の高い柔軟なグローバルLNG市場確立に関する協力覚書に署名しました。
②日インドネシア協力
インドネシアは、日本にとって有数の石油・天然ガス及び石炭など天然資源の輸入相手国であり、複数の日本企業が多くの上流開発プロジェクトやLNGプロジェクトに参画しています。また、インドネシア政府は2015年から35GWの電源整備計画を推進しており、日本企業が多くのプロジェクトに参画しています。
2018年5月に東京で第5回日インドネシアエネルギーフォーラムを開催しました。同フォーラムでは、電力、石油、天然ガス、石炭、新・再生可能エネルギー、省エネルギーなどの分野における政策、今後の計画や協力事業等について、情報共有と意見交換を行いました。
また、日尼国交樹立60周年の記念イベントの一つとして、2018年11月にジャカルタで日尼省エネルギー・再エネルギーフォーラムを開催しました。本フォーラムでは、省エネルギー・再生可能エネルギー政策について経済産業省と尼エネルギー鉱物資源省等から紹介するとともに、日本企業からも関連技術の紹介を行うことで意見交換と情報共有を行いました。
③日ベトナム協力
ベトナムは、石炭、石油・天然ガス、鉱物資源を豊富に保有する資源国であり、日本にとって重要な良質な無煙炭の供給国です。
2018年7月にベトナム商工省との初めての日越エネルギーワーキンググループがハノイで開催されました。当ワーキンググループの開催は、2017年11月に世耕経済産業大臣とベトナムのアイン商工大臣が「エネルギー分野の協力覚書」に署名し、両大臣の間で行われている日越産業・貿易・エネルギー協力委員会の下に、エネルギーワーキンググループを設置することに合意したことをうけて実施されました。当ワーキンググループでは、エネルギー政策及び石油・天然ガス、石炭、再生可能エネルギーと送電網、省エネルギーなどを含むエネルギー分野の協力について協議しました。これにより、電力需要が急増しているベトナムにおいて、我が国とのエネルギー協力がさらに強化されることが期待されます。
2018年10月に世耕経済産業大臣及びベトナムのアイン商工大臣を共同議長として、第3回「日ベトナム産業・貿易・エネルギー協力委員会」が開催されました。委員会では、アジア太平洋地域における経済統合の推進や経済連携協定の実施等に関する貿易における協力、電力や天然ガス等の資源・エネルギー分野における協力について議論が行われ、各分野において、引き続き、日ベトナム間の緊密な協力を進めることを確認しました。また、世耕経済産業大臣とアイン商工大臣は、本委員会において確認された、産業・貿易及びエネルギー分野に関する協力事項をとりまとめた会議録に署名しました。
④日タイ協力
2018年10月、世耕経済産業大臣は、訪日したタイのシリ・エネルギー大臣と会談を行い、毎年両国がエネルギー政策対話を実施し、エネルギー分野の協力関係を構築しているが、特にLNG市場の発展について、生産側と消費側とがいかなる協力をすべきかについて、今後も議論を深めていきたい旨を述べたのに対し、先方からは、開かれたLNG市場構築のための日本のリーダーシップに感謝の意が示されるとともに、タイでは国内ガスが減退しており、LNGの輸入国になっていることから、同国でのLNG事業への日本企業からの投資を歓迎する旨の発言がありました。
⑤日ミャンマー協力
ミャンマーにおいては経済成長に伴い電力需要が増大しており、今後の安定的な経済発展のためには、エネルギーインフラの整備が喫緊の課題となっています。JICAのミャンマー国電力開発能力向上プロジェクトで、ミャンマーの電力エネルギー省職員に対し電力マスタープランの策定・運用に関する知見・情報を提供しました。また、LNGバリューチェーン構築に関する人材育成研修を実施する等幅広い協力を行いました。また、将来的な石炭火力導入を検討するミャンマー側の要請に応じて、2019年3月に石炭火力の環境対応に焦点を当てたセミナーをネピドーで開催するなどの協力を行いました。[P]
⑥日中協力
中国は世界最大のエネルギー消費国であり、中国のエネルギー効率の向上は日本のエネルギー安全保障にとって重要な課題です。また、中国においては、近年、石炭火力発電や自動車等を由来とした大気汚染が大きな問題となっており、その解決策の一つとして、省エネルギー対策や再生可能エネルギーの導入に取り組んでいるところです。
こうした状況の中、2018年10月「第1回日中第三国市場協力フォーラム」が北京で開催され、日本政府から安倍総理、世耕経済産業大臣、河野外務大臣が、中国政府から李克強総理、鐘山商務部長、何立峰国家発展改革委員会主任が出席しました。エネルギー分野においては「エネルギー・環境」分科会が開催され、両国の先進的な取組の紹介等を行い、今後の協力に有意義な情報の交換を行いました。
また、2018年11月、日中の官民による省エネルギー・環境協力のプラットフォームである「第12回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」が北京で開催されました。日本側からは世耕経済産業大臣、髙橋資源エネルギー庁長官、中国側からは何立峰国家発展改革委員会主任、張勇国家発展改革委員会副主任、銭克明商務部副部長を始めとして、両国合わせて800名を越える官民関係者が参加し、24件の協力プロジェクト文書が交換されました。また、会合では、世耕経済産業大臣より今後の注力分野として、地球規模の課題に対応していくため水素エネルギーの活用について基調講演を行いました。さらに、「省エネ技術イノベーション分科会」や「クリーンコールテクノロジーと石炭火力発電分科会」等の5つの分科会を開催し、日中双方の実務者レベルの意見交換を行い、更なる協力に向け、日中両国の政府・民間企業間で数多くの具体的かつ前向きな議論がなされました。
(3)エネルギー供給国等との関係強化
①日サウジアラビア協力
サウジアラビアは、世界有数の産油国であるとともに、我が国にとって第1位の原油輸入相手国です。また、産油国の中でも特に主要な位置付けにあり、大きな余剰生産能力を持つことから、国際原油市場の安定に大きな影響力を有しています。こうしたことから、石油の大部分を輸入に頼る我が国にとって、同国との関係強化は重要な課題であり、2007年に立ち上げた日サ産業協力タスクフォースを通じ、投資促進、人材育成、中小企業支援等、エネルギー分野にとどまらない幅広い協力・関係強化を官民一体となって推進してきました。
日サウジ両国は、2017年3月の安倍総理とサルマン・サウジアラビア国王との首脳会談において、二国間協力の基本的な方向性と具体的なプロジェクトをまとめた「日・サウジ・ビジョン2030」に合意し、新たな戦略的パートナーシップの羅針盤として協力を進めています。
2019年1月に、世耕経済産業大臣は、アラブ首長国連邦において、アル=ファーレフサウジアラビア王国エネルギー・産業・鉱物資源大臣及びトワイジリ経済企画大臣と会談を行いました。世耕経済産業大臣から、原油の安定供給に対する謝意を伝え、省エネ、再生可能エネルギーや水素の利活用を進めていくこと、日サウジ・ビジョン2030を通じて包括的な協力を官民が一体となって進めることで一致しました。
②日UAE協力
アラブ首長国連邦(UAE)は、我が国にとって第2位の原油供給国であり、日本企業も権益を保有し、50年近くにわたり油田操業に参画しており、また、我が国の自主開発原油が最も集中しているなど、我が国にとって極めて重要な資源国です。我が国との間では、活発なハイレベル往来、エネルギー分野を中心とした幅広い分野での協力を推進してきました。
こうした働きかけや取組の結果、2018年2月、INPEXが、世界有数の埋蔵量を誇る下部ザクム油田権益(10%)等のアブダビ海上権益を再獲得し、引き続き油田の開発・操業等に参画することが、アブダビ政府及びADNOCとの間で合意に至りました。特に、下部ザクム油田の権益を再獲得できたことは、エネルギーの安定供給を確保する上で極めて重要です。今回の権益獲得は、日本企業の実績や信用とともに、日UAE間の様々なレベルでの緊密な関係や協力等が高く評価されたものであり、資源外交の大きな成果といえます。
2018年4月、安倍総理は、UAEを訪問し、ムハンマド・アブダビ皇太子との会談を行いました。安倍総理からは、先般のアブダビ海上権益の再獲得に対して深い感謝の意を表明し、双方は、エネルギー・経済に加え、政治・防衛・教育・農業・最先端技術等の広範な分野で、両国の戦略的パートナーシップをさらに強固にしていくことで一致しました。また双方は、両国が共有する未来に向けて、「戦略的パートナーシップの深化及び強化に関する共同声明-繁栄と安定に向けた協力の新たな章の幕開け-」を発出しました。
2018年11月にUAEを訪問した関経済産業副大臣は、アブダビ国際石油展示会議(ADIPEC)及び日本アブダビ経済協議会(ADJEC)に出席するとともに、マズルーイ・エネルギー産業大臣やジャーベル国務大臣兼ADNOC・CEO、マイサ・国務大臣といった政府要人との会談を行いました。会談では、エネルギー分野における協力を一層推進するとともに、同年4月の安倍総理のUAE訪問時に合意した日UAE「包括的戦略的パートナーシップ・イニシアティブ」に基づき、双方に付加価値をもたらす幅広い分野で協力を強化していくことで一致しました。
2019年1月、世耕経済産業大臣はUAEを訪問し、ワールド・フューチャー・エナジー・サミットに出席するとともに、ムハンマド皇太子への表敬、ジャーベル国務大臣や各国関係閣僚との会談を行いました。ムハンマド皇太子との間では、日本への原油の安定供給に対する謝意を伝えるとともにエネルギー分野を含む幅広い分野での協力を推進していくことが重要との認識を共有し、またジャーベル国務大臣との間では、石油・天然ガス分野について、上流開発分野のみならず、中下流も含む幅広い分野で具体的な協力を進めていくことで一致しました。
③日カタール協力
カタールは、世界第3位の天然ガス埋蔵量を有する資源国であるとともに、日本にとって原油、天然ガスともに第3位の供給国です。カタールとは、2006年11月に第1回日・カタール合同経済委員会を開催し、その後おおむね毎年、二国間経済関係をさらに幅広く包括的なものにしていくために協議を重ねてきました。
2018年10月には、経済産業省主催の第7回目となるLNG産消会議2018出席のため、アル・サダ・エネルギー工業大臣が来日し、LNG市場の発展に向けた議論が行われました。また、第12回日・カタール合同経済委員会が併せて開催され、日本側は、安定的なLNG供給に感謝の意を示しつつ、我が国の国際LNG市場拡大に向けた取組を紹介するとともに、仕向地制限緩和や、契約期間の柔軟化といったLNG市場拡大に向けたLNG供給国側の協力について働きかけを行いました。また、カタール側のLNG増産計画(2024年までに7,700万トンから1億1,000万トンに拡大予定)に関連し、上流開発などエネルギー分野での両国間の協力について働きかけを行いました。カタール側からは、日本はカタールにとって最大の貿易相手国であり、さらに二国間協力を強固にしていきたいこと、これまでのLNG供給実績を踏襲し、信頼できる供給国として安定供給を継続していきたいこと、カタールにおけるLNG増産の計画、開発に今後も日本企業が活躍することを期待することへの言及がありました。
④日露協力
ロシアは世界第3位の産油国であるとともに、世界第2位の産ガス国でもあります。
日露間では、安倍総理とプーチン大統領のイニシアチブの下、エネルギーを含む8分野について、2016年5月の日露首脳会談で安倍総理からプーチン大統領に提案した8項目の「協力プラン」の下、幅広い分野の経済協力を進めています。
エネルギー協力を進めるため、2016年11月に世耕経済産業大臣とノヴァク・エネルギー大臣が議長となる「日露エネルギー・イニシアティブ協議会」を設立し、炭化水素・原子力・省エネ再エネの各分野における協力プロジェクトを推進しています。
2018年4月、世耕経済産業大臣はロシア連邦(モスクワ、ヤマル)を訪問し、シュヴァロフ第一副首相及びオレシュキン経済発展大臣と会談し、5月のあり得べき首脳会談においてエネルギーを含む8項目の「協力プラン」に関して多くの具体的な成果を報告できるよう、今後特に注力していく案件などこれからの進め方について詰めの協議を行いました。また、ノヴァク・エネルギー大臣と第6回エネルギー・イニシアティブ協議会を開催し、炭化水素、原子力、省エネ・再エネの各分野における協力の進展を確認するとともに、各案件を後押ししていくことで一致しました。更には、日本企業が建設に携わったヤマルLNGプラントを視察するとともに、日露官民で意見交換を行いました。
2018年5月、安倍総理と世耕経済産業大臣はロシア連邦(サンクトペテルブルグ、モスクワ)を訪問し、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムに出席しました。両首脳は、8項目の「協力プラン」が着実に具体化していることを歓迎しました。更に、安倍総理と世耕経済産業大臣は日露ビジネス対話に出席した他、世耕経済産業大臣はオレシュキン経済発展大臣と会談しました。この会談では、翌日の首脳会談を控え、提案から2年を迎えた8項目の「協力プラン」の進展を確認するとともに、個別の案件について踏み込んだ議論を行いました。
2018年6月、世耕経済産業大臣はロシア連邦(ヤクーツク)を訪問し、ニコラエフ・サハ共和国首長代行と会談を行い、8項目の「協力プラン」の下で行われているサハ共和国で進行中のプロジェクトを支援するとともに、東方経済フォーラムに向けて協力案件を充実させていくことで一致しました。
2018年9月、安倍総理はロシア連邦(モスクワ)を訪問し、東方経済フォーラムに出席し、通算22回目となる日露首脳会談を行いました。両首脳は、北極LNG2及びカムチャツカLNG積替え基地等を含め、8項目の「協力プラン」の下で協力が進展していることを歓迎するとともに、8項目の「協力プラン」の具体化を更に進め互恵的な日露経済関係を発展させていくことで一致しました。
2018年10月、世耕経済産業大臣は、訪日中のオレシュキン経済発展大臣と会談を行い、8項目の「協力プラン」の下で、数多くのプロジェクトが創出されるとともに、その協力の拡大に伴い、日露の経済関係がますます進展していることを確認しました。両大臣は、今後の更なる発展に向けて、日露で取り組む8項目の「協力プラン」さらに深化し、拡大するため、引き続き協議を加速することで一致しました。
同月、世耕経済産業大臣は、訪日中のトルトネフ副首相と会談を行いました。会談では、極東地域で実施されるプロジェクトを中心に、日露の経済関係が発展していることを確認するとともに、極東地域における日露間の経済協力の深化に向けて、引き続き連携していくことで一致しました。
2018年11月、安倍総理と世耕経済産業大臣ASEAN関連会議出席のため、シンガポールを訪問し、同地で安倍総理はプーチン大統領と通算23回目となる日露首脳会談を実施しました。世耕経済産業大臣は日露首脳会談等へ同席した他、オレシュキン経済発展大臣とも会談を行い、両国の経済関係の深化に向け議論を行いました。
2018年12月、アルゼンチンのG20首脳会合の機会を捉え、安倍総理は通算24回目となる日露首脳会談を行いました。世耕経済産業大臣は日露首脳会談等へ同席した他、オレシュキン経済発展大臣とは、首脳会談に先立ち、8項目の「協力プラン」等につき協議を行いました。
同月、滝波経済産業大臣政務官は、ロシア連邦サベッタで行われたヤマルLNGプラント完工式典に出席しました。ヤマルLNGプラントは、複数の日本企業が設計・調達・建設に関与しており、同月より全三系列の稼働を開始しました。滝波経済産業大臣政務官は、これを記念して行われた式典に出席し、メドベージェフ首相やノヴァク・エネルギー大臣といったロシア連邦政府関係者との短時間の挨拶・意見交換を行いました。
さらに、同月、世耕経済産業大臣は、訪日中のオレシュキン経済発展大臣と会談を行い、エネルギーを含む8項目の「協力プラン」の進展を確認するとともに、更なる日露の経済関係の強化や貿易投資の拡大に向け、引き続き協議を加速することで一致しました。
2019年1月、安倍総理と世耕経済産業大臣はロシア連邦(モスクワ)を訪問し、安倍総理は通算25回目となる日露首脳会談を実施しました。世耕経済産業大臣は、日露首脳会談等へ同席した他、それに先立ちオレシュキン経済発展大臣とも会談を行い、エネルギーを含む8項目の「協力プラン」等につき協議を行いました。
⑤日モザンビーク協力
モザンビークは、良質な原料炭、天然ガス、レアメタル等の天然資源が豊富に埋蔵されており、日本への新たな供給源として期待され、我が国企業もモザンビークにおけるLNGプロジェクトに参画しています。
2018年10月、世耕経済産業大臣は、訪日したモザンビークのトネラ・鉱物資源エネルギー大臣と会談を行い、モザンビークは、アジアにも欧州にもLNGを供給できる、地政学的に重要な場所に位置しており、LNGの市場拡大やセキュリティ強化に向け連携していきたい旨を述べたのに対し、先方からは、エネルギー分野では、日本政府や政府系機関からの様々な支援、日本企業から炭鉱やガス田などの多大な投資を受けている、日本政府のサポートは日本側の買い手の後押しにもなり、事業者の投資決定に向けても重要であり、日本との関係強化はモザンビークにとって極めて重要である旨の発言がありました。
- 注
- IRENA/アブダビ開発基金プロジェクト:アラブ首長国連邦が2009年に同国の政府系金融機関であるアブダビ開発基金を通じ,7年間で計3億5千万ドルをコミットし,諮問委員会及び専門家パネルの審査を経て推薦されたプロジェクトに対して低利で融資を行うもの。