はじめに
再生可能エネルギー(以下「再エネ」という。)を取り巻く状況は、大きく変貌してきています。世界的には、再エネの導入拡大に伴い発電コストが急速に低減し、他の電源と比べてもコスト競争力のある電源となってきており、それがさらなる導入につながる好循環が生じています。さらに、エネルギー、経済成長と雇用、気候変動等に関する持続可能な開発目標(SDGs)を掲げる「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の国連での採択や、世界全体で今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との均衡の達成を目指すとする「パリ協定」の発効により、世界的に脱炭素化へのモメンタムが高まっており、再エネを積極的に調達しようとするといった需要家ニーズの多様化とも相まって、再エネへの投資が強力にけん引されています。
我が国においても、2012年7月に固定価格買取制度(以下「FIT制度」という)が導入されてから約6年が経過し、再エネの導入量は制度開始前と比べて約3.2倍になるなど、導入が急速に拡大してきました(2018年9月末時点で、FIT制度開始後に新たに運転を開始した設備は約4,429万kW、FIT制度の認定を受けた設備は約8,937万kW)。2018年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」においては、再エネを初めて「主力電源化」していくものと位置づけました。その一方で、再エネの発電コストは国際水準と比較して依然高い状況にあり、国民負担の増大をもたらしています。2015年7月に策定された長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)においては、2030年度の再生可エネ導入水準(22~24%)を達成する場合のFIT制度における買取費用総額を3.7~4.0兆円程度と見込んでいますが、2018年度の買取費用総額は既に3.1兆円程度に達すると想定されており、再エネの大量導入に向けて国民負担の抑制が待ったなしの課題となっています。
また、再エネの導入拡大が進むにつれ、従来の系統運用の下での系統制約が顕在化してきており、再エネの出力変動を調整するための調整力の確保も含め、再エネを電力系統へ受け入れるコストも増加傾向にあります。さらに、小規模電源を中心に既に導入されている電源について将来的な再投資が滞るのではないかといった長期安定的な発電に対する懸念に加え、地域との共生や発電事業終了後の設備廃棄に対する地元の懸念も明らかになってきています。また、2018年7月の西日本豪雨や2018年9月の北海道胆振東部地震による大規模停電など一連の自然災害から、電力システムのレジリエンス強化に向けた論点も投げかけられ、2018年10月には、九州エリアにおいて本土初となる再生可能エネルギーの出力制御も行われました。
こうした状況の中で、エネルギーミックスを着実に達成し、かつその後も再エネが持続的に普及拡大し主力電源として大量に導入されていくためには、再エネを「自立した電源」とすることが必要です。そのための取組について、これまで総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会において、①コストダウンの加速化とFITからの自立化、②長期安定的な事業運営の確保、③系統制約の克服/適切な調整力の確保に係るアクションプランの着実な実行、といった論点を軸に議論を進めてきました。
エネルギー政策は、安全性を前提とし、安定供給、経済効率性、環境への適合を達成する、いわゆる「3E+S」の原則の下で進めていくべきであり、再エネが直面するこうした変化の中で、2030年度に向けて、更にはその先も見据えた政策のかじ取りが求められています。再エネを日本のエネルギー供給の一翼を担う長期安定的な主力電源にしていくため、上記の視点を軸に政策検討を更に深掘りし、再エネ導入拡大に向けた取組を加速化させていくことが重要です。