第4節 再生可能エネルギー導入拡大に向けた系統制約解消

再エネの最大限の導入と国民負担の抑制を両立させつつ、送配電等設備の効率的な設備形成や運用を図るため、送配電等設備の費用負担の在り方や系統情報公開の在り方などのルールを整備しました。また、電力広域的運営推進機関においても、送配電等設備の増強に係る費用負担軽減等を図るため、大規模な系統工事を伴う場合に複数の事業者で工事費を共同負担する仕組みの整備や、地域間連系線運用ルールの見直しによる連系線の効率的活用、さらには、将来の広域連系系統の整備及び更新に関する方向性を整理した「広域系統長期方針」の策定などの取組を進めてきました。

また、国としても再エネ導入拡大に向けて、風況は良い一方で、系統が脆弱である北海道や東北地方の一部において、送電網整備実証を実施するとともに、系統における周波数調整力を確保する等の大型蓄電池実証等も実施しています。

<具体的な主要施策>

(1)電力系統の増強に関する費用負担の在り方の整理

再エネの最大限の導入と国民負担の抑制を両立させるため、電力系統の増強に要する発電設備設置者の費用負担の在り方を示した「発電設備の設置に伴う電力系統の増強及び事業者の費用負担の在り方に関する指針」を2015年11月6日に公表しました。加えて、2016年3月及び6月には、電力広域的運営推進機関において、一般負担額のうち、「ネットワークに接続する発電設備の規模に照らして著しく多額」と判断される基準額(一般負担の上限額)を定め、発電設備設置者の費用負担の考え方を明確化しました。

(2)系統情報の公表

再エネ電源などの導入拡大などにより、送配電等設備の増強等が必要になり、これに伴う費用負担を巡って事業者間で調整を要する案件が増加しています。このような状況に鑑み、再生可能エネルギー事業者が発電設備の建設地点を検討するに当たって、どの程度の容量が接続可能かあらかじめ確認できるようにするため、「系統情報の公表の考え方」を改定し、電力広域的運営推進機関及び一般電気事業者が、特別高圧以上の送変電設備に関する空き容量の情報を公開し、更新を行っています。

(3)電源接続案件募集プロセスの整備

再エネ電源などを電力系統に接続する際に大規模な系統増強が必要となり一社では負担が大きすぎる場合があります。このため、電力広域的運営推進機関では、近隣の電源接続案件の可能性を募り、系統増強の工事費負担金を複数の事業者で共同負担するための手続き(電源接続案件募集プロセス)を2015年4月にルール化しました。電源接続案件募集プロセスは、これまでに全国28エリアで実施されています。例えば、東北電力株式会社の管内では、2016年5月に、東北北部(北部3県(青森、岩手、秋田)及び宮城北部)の系統の空き容量がゼロになり、電源接続案件募集プロセスを同年10月13日に開始しています。

(4)連系線利用ルールの見直し

2016年9月より総合資源エネルギー調査会基本政策部会電力システム改革貫徹のための政策小委員会において議論を行い、同年12月に同小委員会の中間とりまとめを整理し、既存の連系線設備をより効率的に利用できるルールに見直すことになりました。電力広域的運営推進機関において制度設計案を検討しており、適切なタイミングで国が関連する審議会等で審議することになっています。

(5)広域系統長期方針の策定

電力広域的運営推進機関は、広域運用の観点から、全国大での広域連系系統の整備及び更新に関する方向性を整理した長期方針(広域系統長期方針)を2017年3月に策定しました。本方針では、広域連系系統の将来のあるべき姿の実現に向けた流通設備投資の考え方の合理化及び解決すべき課題等の整理を行いました。今後、取りまとめた方向性に沿って、具体的な検討を進め、課題の解決に向けた取組を着実に進めていきます。

(6)大型蓄電システム緊急実証事業費補助金

(本章冒頭3. 再掲)

(7)風力発電のための送電網整備実証事業費補助金【2016年度当初:50.0億円】

北海道及び東北地方の風力発電の適地において、送電網の整備及び技術的課題の解決を目的とした実証事業を行いました。