第3節 分散型エネルギーシステムにおける再生可能エネルギーの利用促進

住宅や公共施設の屋根に容易に設置できる太陽光や、地域の多様な主体が中心となって設置する風力発電、小河川や農業用水などを活用した小規模水力、温泉資源を活用した小規模地熱発電、地域に賦存する木質を始めとしたバイオマス、太陽熱・地中熱等の再生可能エネルギー熱等は、コスト低減に資する取組を進めることで、コスト面でもバランスのとれた分散型エネルギーとして重要な役割を果たす可能性があります。また、地域に密着したエネルギー源であることから、自治体を始め、地域が主体となって導入促進を図ることが重要であり、国民各層がエネルギー問題を自らのこととして捉える機会を創出するものです。例えば、一般廃棄物、食品残渣、紙くず、下水汚泥等を活用してバイオガスを発生させ、廃棄物量の削減と同時に、地域のバイオマス資源を有効活用する取組などがあげられます。

加えて、再エネを用いた分散型エネルギーシステムの構築は、地域に新しい産業を起こし、地域活性化につながるものであるとともに、緊急時に大規模電源などからの供給に困難が生じた場合でも、地域において一定のエネルギー供給を確保することに貢献するものです。

このため、小規模な再生可能エネルギー源を組み合わせた分散型エネルギーシステムの構築を加速していくよう、個人や小規模事業者も参加しやすくするための支援を行いました。また、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)等の積極的な活用を図り、地域の活性化に資する再エネの導入を推進しています。

<具体的な主要施策>

Ⅰ研究開発・実証

(1)下水道革新的技術実証事業【2016年度当初:53.7億円の内数】

下水道事業における再エネ創出技術等の導入を促進するため、中小規模処理場を対象とした下水汚泥の有効利用プロセスの実証や、ダウンサイジング可能な水処理技術の実証等を実施しました。

(2) 戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業【2016年度当初:4.0億円】

2030年頃の実用化を見据え、微細藻類由来のバイオ燃料製造技術、バイオマスのガス化・液化によりバイオ燃料を製造するBTL(Biomass-To-Liquid)等の次世代技術開発を実施するとともに、2020年頃の実用化を目指し、バイオガスを既存の都市ガスインフラ等で利用するためのガス精製技術等の実用化技術開発を実施しました。

(3)バイオ燃料製造の有用要素技術開発事業【2016年度当初:10.5億円】

バイオ燃料製造の生産性を向上させるため、バイオ燃料用植物の改良生産技術、糖化・発酵プロセスを開発しました。

(4) セルロース系エタノール生産システム総合開発実証事業【2016年度当初:4.0億円】

食糧と競合しないセルロース系バイオマス原料によるエタノールの大規模生産システムの確立を目指し、一貫生産プロセスでの事業化に向けたプラントレベルでの実証を行うため、要素技術の最適な組合せを検証しました。

(5) バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業【2016年度当初:10.5億円】

地域におけるバイオマスエネルギー利用の拡大に資する技術指針及び導入要件を策定するとともに、当該指針等に基づき地域特性を活かしたモデル実証を行うため、間伐材や竹等の木質系バイオマスや、都市ゴミ系等の湿潤系バイオマスの事業性評価(FS)事業を実施しました。

(6)小水力等再生可能エネルギー導入推進事業【2016年度当初:4.8億円】

農業水利施設を活用した小水力等発電の整備を推進するため、調査設計等の取組を支援しました。

(7)水力発電新技術活用促進事業費補助金【2016年度当初:22.5億円の内数】

既存設備の有効利用を図り、水力発電の最大限の導入を促進するため、既存設備の増出力又は増電力量の可能性を調査する事業を支援するとともに、増出力又は増電力量を図る設備更新又は改造を行う事業に対しても支援を行いました。また、水力発電の高効率化等のための実証モデル事業を支援しました。

(8)水力発電事業化促進事業費補助金【2016年度当初:10.5億円】

水力発電の事業化に必要な流量調査、測量、地質調査、設計等の実施を支援するとともに、人材育成、未開発地点の賦存量調査及び技術情報収集事業を支援しました。また、地域住民等の水力発電への理解を促進する事業を支援しました。

(9) 中小水力・地熱発電開発費等補助金(中小水力発電開発事業)【2016年度当初:9.4億円の内数】

旧一般電気事業者及び旧卸電気事業者等の行う中小水力開発に対し、建設費の一部を補助することにより、水力の初期発電原価を引き下げ、開発を促進しました。

(10) CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業【2016年度当初:65.0億円の内数】

CO2排出量の多い廃棄物処理施設の低炭素化に資するため、籾殻・稲わら・廃菌床及び剪定枝等の安価な未利用バイオマスから多原料バイオコークスを製造し、石炭コークスの代替エネルギー源として活用する事でCO2排出量25%の削減につなげる技術の開発・実証を実施しました。

(11) CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業【2016年度当初:65.0億円の内数】

小水力発電の導入ポテンシャルを大きく拡大させるため、上水道施設の水管の水流を活用した10kW以下の小型・低コスト管水路用マイクロ水力発電システムの技術開発・実証を実施しました。

(12) 高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発【2016年度当初:46.5億円】

製造コストの低減や高効率化が期待される先端複合技術型シリコン太陽電池の実用化、CIS系太陽電池における構造最適化のための技術開発を行いました。また、従来技術の延長線上にない、世界最高水準の超高効率な新構造太陽電池等を実用化するための技術開発にも取り組みました。

(13) 太陽光発電システム維持管理及びリサイクル技術開発【2016年度当初:10.0億円】

太陽光発電システム全体の効率向上を図るため、周辺機器の高機能化や維持管理技術の開発を行いました。また、耐用年数経過後の廃棄物発生に備えた対策として、使用済太陽光パネルの処理に係る低コストリサイクル技術の開発を行いました。さらに、強風などによる太陽光発電システムの損壊を防止しコスト低減と安全確保を両立するための実証を行いました。

(14) 再生可能エネルギー熱利用技術開発事業【 2016年度当初:12.0億円】

再生可能エネルギー熱利用の普及拡大を図るため、地中熱に係る掘削、熱交換器、ヒートポンプ等の要素技術開発や、構成要素を統合したシステム全体の最適設計による低コスト化、高効率化技術開発、雪氷熱等の導入コストを低減する技術開発を行いました。

(15)微細藻類燃料生産実証事業費補助金【 2016年度当初:2.5億円】

国産バイオ燃料の生産手段の一つとして期待される福島県の土着藻類を用いたバイオ燃料生産を実用化するため、火力発電所等由来のCO2や下水を用いることで、経済性やエネルギー収支を向上させる実証事業を行いました。

Ⅱ導入支援

(1) 農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律【制度】

「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)」を積極的に活用し、農林地等の利用調整を適切に行いつつ、市町村や発電事業者、農林漁業者等の地域の関係者の密接な連携の下、再エネの導入と併せて地域の農林漁業の健全な発展に資する取組を促進しました。

(2)再生可能エネルギー事業者支援事業費補助金【2016年度:48.5億円】

地域における再エネ利用の拡大を加速することを目的に、木質バイオマスや地中熱等を利用下熱利用設備や、自家消費向けの木質バイオマス発電・太陽光発電等の発電システムを導入する民間事業者に対し、事業費の3分の1以内等の補助を行いました。

(3) 先導的「低炭素・循環・自然共生」地域創出事業(グリーンプラン・パートナーシップ事業)【2016年度当初:24.5億円】

地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく地方公共団体実行計画の推進の核となる再エネ事業等につき、設備導入等への支援を行いました。

(4)再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業【2016年度当初:60.0億円】

低炭素社会の実現に資することを目的に、地域における再エネ普及・拡大の妨げとなっている課題への対応の仕組みを備えた取組等について、地方公共団体等に対し、再エネ設備の導入支援等を行いました。

(5)環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進【2016年度当初:708.9億円の内数、2016年度補正:1,407.2億円の内数】

地球環境問題が喫緊の課題となっている中、学校施設についても、環境を考慮する必要性から、文部科学省、農林水産省、国土交通省及び環境省が協力して、環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備を推進しており、学校施設へ再エネ設備を導入する場合には、費用の一部を補助しました。

(6)防災減災・低炭素化自立分散型エネルギー設備等導入推進事業【2016年度補正:19.9億円】

地域防災計画等に位置付けられた防災拠点、避難施設及び災害時に機能を保持すべき公共施設等に対して、防災・減災に資する再エネ設備等を導入する事業に対し、支援を行いました。

(7)エコリース促進事業【2016年度当初:18.0億円の内数】

中小企業等が、再エネ設備等の低炭素機器をリースにより導入する際に、リース料の一部を助成しました。

(8)自立・分散型低炭素エネルギー社会構築推進事業【2016年度当初:13.0億円】

再エネ等を活用し、災害時等に電力系統からの電力供給が停止した場合においても、自立的に電力を供給・消費できる低炭素のエネルギーシステム及びその制御技術等の実証について補助を行いました。

(9)農山漁村活性化再生可能エネルギー総合推進事業【2016年度当初:1.0億円】

農山漁村の資源を活用した再エネ発電事業の取組について、事業構想から運転開始に至るまでに必要となる様々な手続や取組を総合的に支援しました。

(10) 農山漁村再生可能エネルギー地産地消型構想支援事業【2016年度当初:0.6億円】

農林漁業者を中心とした地域内のエネルギー需給バランス調整システムの導入可能性調査、再エネ設備の導入の検討、地域主体の小売電気事業者の設立の検討等を支援しました。

(11)バイオ由来燃料税制の整備及び施行【税制】

バイオ燃料の導入を加速化するため、バイオエタノール等を混和して製造した一定の揮発油については、ガソリン税(揮発油税及び地方揮発油税)の課税標準(混和後の揮発油の数量)から混和されたエタノールの数量を控除する措置を講じました。(2018年3月31日までの間)。なお、平成25年度税制改正において本措置の適用期限を5年間延長しています。当該措置により、バイオエタノールの混合分の税額(ガソリン1リットルにつき最大約1.6円)が軽減されました。

また、バイオエタノールをガソリンに混合するために用いられるETBEのうち、バイオマスから製造したエタノールを原料として製造したものに係る関税率(3.1%)、を2015年度に引き続き暫定的に1年間無税とする措置を講じました。さらに、海外からバイオエタノールを輸入し、国内の設備でエタノールからETBEを合成して利用する場合もあることから、バイオマスから製造したエタノールに係る関税率(10%)についても、暫定的に1年間無税とする措置を講じました。

(12) バイオ燃料製造設備に係る固定資産税の軽減措置【税制】

農林漁業由来のバイオマスを活用した国産バイオ燃料の生産拡大を図るため、「農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律(農林漁業バイオ燃料法)」に基づく生産製造連携事業計画に従って新設されたバイオ燃料製造設備(エタノール、脂肪酸メチルエステル(ディーゼル燃料)、ガス、木質固形燃料の各製造設備)に係る固定資産税の課税標準額を3年間2分の1に軽減する措置を講じました(同法施行日(2008年10月1日)より2016年3月31日までの間)。また、平成28年度税制改正において本措置の適用期限を2年間延長しました。

(13)バイオマス産業都市の構築

2012年9月に関係7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)が共同で取りまとめたバイオマス事業化戦略において、地域のバイオマスを活用したグリーン産業の創出と地域循環型エネルギーシステムの構築に向けたバイオマス産業都市の構築を推進することとされ、2016年度までに68市町村をバイオマス産業都市として選定しました。

(14) 省CO2型社会の構築に向けた社会ストック対策支援事業のうち低炭素型融雪設備導入事業【 2016年度当初:40.5億円の内数】

積雪寒冷地における除雪・融雪にかかる省エネ・省CO2化を図るため、主として地方公共団体や中小企業を対象に、地中熱や下水廃熱等の再生可能エネルギーを利用した低炭素型の融雪設備の導入支援を行いました。

(15) 海洋エネルギーの活用促進のための安全・環境対策【2016年度当初:0.2億円】

日本周辺の海洋エネルギー(海洋温度差、潮流等)の豊富なポテンシャルを踏まえ、海洋エネルギーの活用促進を図るため、浮体式発電施設の技術的課題について検討を行いました。

(16) 地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金【2016年度当初:45.0億円】

地域内での再エネ等の最大活用やエネルギー需要の最適化を図り、エネルギーコストを最小化するため、再エネ等の分散型エネルギーを面的に利用する先導的な地産地消型システムを構築する取組を支援するとともに、そのノウハウの蓄積、他地域への普及を行いました。

(17)中小水力発電事業利子補給金助成事業費補助金【 2016年度当初:0.8億円】

地方自治体(公営電気事業者)が水力発電所の建設に際して要した資金の返済利息に関して、利子補給を行いました。