第2節 分散型エネルギーシステムにおける再生可能エネルギーの利用促進
住宅や公共施設の屋根に容易に設置できる太陽光や、地域の多様な主体が中心となって設置する風力発電、小河川や農業用水などを活用した小規模水力、温泉資源を活用した小規模地熱発電、地域に賦存する木質を始めとしたバイオマス、太陽熱・地中熱等の再生可能エネルギー熱等は、コスト低減に資する取組を進めることで、コスト面でもバランスのとれた分散型エネルギーとして重要な役割を果たす可能性があります。また、地域に密着したエネルギー源であることから、自治体を始め、地域が主体となって導入促進を図ることが重要であり、国民各層がエネルギー問題を自らのこととして捉える機会を創出するものです。
加えて、再生可能エネルギーを用いた分散型エネルギーシステムの構築は、地域に新しい産業を起こし、地域活性化につながるものであるとともに、緊急時に大規模電源などからの供給に困難が生じた場合でも、地域において一定のエネルギー供給を確保することに貢献するものです。
このため、小規模な再生可能エネルギー源を組み合わせた分散型エネルギーシステムの構築を加速していくよう、個人や小規模事業者も参加しやすくするための支援を行いました。また、2013年臨時国会において成立した農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)等の積極的な活用を図り、地域の活性化に資する再生可能エネルギーの導入を推進しています。
<具体的な主要施策>
1. 農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能
エネルギー電気の発電の促進に関する法律【制度】農山漁村における再生可能エネルギー発電について、農林地等の利用調整を適切に行いつつ、市町村や発電事業者、農林漁業者等の地域の関係者の密接な連携の下、再生可能エネルギーの導入と併せて地域の農林漁業の健全な発展に資する取組を促進していくため、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(平成25年法律第81号)が2014年5月に施行されました。
2. 独立型再生可能エネルギー発電システム等対策事業【2014年度当初:25.0億円、2014年度補正:35.0億円】
固定価格買取制度の適用対象とならない、自家消費向けの再生可能エネルギー発電システム等の導入促進を図ることを目的に、当該発電システム等の導入事業を行う事業者に対し、事業費の3分の1以内の補助を行いました。また、地方公共団体等に対しては、事業費の2分の1以内の補助を行いました。
3. 再生可能エネルギー発電設備等導入促進支援復興対策事業【2013年度3次補正:326.0億円の内数】
東日本大震災後の電力供給不足への懸念に対応し、かつ、被災地の再生可能エネルギーを中核とした雇用創出と関連活性化を図ることを目的に、被災地において再生可能エネルギー発電設備等の導入を行う事業者に対し、事業費の10分の1以内の補助を行いました。
4. 再生可能エネルギー等導入推進基金事業(グリーンニューディール基金)【2014年度当初:220.0億円】
地域主導での再生可能エネルギー等を活用した自立・分散型エネルギーの導入による災害に強く環境負荷の小さい地域づくりを推進するため、地方公共団体が行う防災拠点等への再生可能エネルギーの導入等への支援を行いました。
5. 先導的「低炭素・循環・自然共生」地域創出事業(グリーンプラン・パートナーシップ事業)【2014年度当初:53.0億円】
地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく地方公共団体実行計画の推進の核となる再エネ事業等につき、設備導入等への支援を行いました。
6. 環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進【2014年度当初:1,270.8億円の内数、2014年度補正:408億円の内数】
地球環境問題が喫緊の課題となっている中、学校施設についても、環境を考慮する必要性から、文部科学省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省が協力して、環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備を推進しており、学校施設へ再生可能エネルギー設備を導入する場合には、費用の一部を補助しました。
7. 家庭・事業者向けエコリース促進事業【2014年度当初:18.0億円の内数】
家庭や事業者が、再生可能エネルギー設備等の低炭素機器をリースにより導入する際に、リース料の一部を助成しました。
8. 地域の再生可能エネルギー等を活用した自立分散型地域づくりモデル事業【2014年度当初:94.0億円の内数】
再生可能エネルギーや未利用エネルギーによる自立・分散型エネルギーシステム(これらに併せての蓄電池導入を含む)の集中導入を産学官で推進する事業について、補助を行いました。
9. 自立・分散型低炭素エネルギー社会構築推進事業【2014年度当初:7.0億円】
再生可能エネルギー等を活用し、災害時等に電力系統からの電力供給が停止した場合においても、自立的に電力を供給・消費できる低炭素なエネルギーシステム及びその制御技術等の実証について補助を行いました。
10. 農山漁村活性化再生可能エネルギー総合推進事業【2014年度当初:2.0億円】
農林漁業者等が主導して行う農山漁村の資源を活用した再生可能エネルギー発電事業の取組について、事業構想(入口)から運転開始(出口)に至るまでに必要となる様々な手続や取組を総合的に支援しました。
11. 下水道革新的技術実証事業【2014年度当初:53.2億円の内数】
下水道における創エネ・省エネ対策等の導入を促進するため、下水汚泥をメタン発酵して発生するバイオガスから水素を製造する技術等の実証事業を実施しました。
12. バイオ燃料導入加速化支援対策費補助金【2014年度当初:11.8億円】
「エネルギー供給構造高度化法」に基づく判断基準において示されたバイオ燃料の導入目標(2017年度50万KL)の達成に向けて、石油精製業者に対し、バイオ燃料の導入に必要となるインフラ(貯蔵、混合、受入出荷設備等)の整備支援を行いました。
13. バイオ由来燃料税制の整備及び施行【税制】
バイオ燃料の導入を加速化するため平成20年度税制改正で創設したバイオエタノール又はETBEを混合したガソリンについて、その混合分に係るガソリン税(揮発油税及び地方揮発油税)を免税する措置について5年延長しました(2013年4月1日より2018年3月31日までの間)。当該措置により、バイオエタノールの混合分の税額(1リットルにつき最大約1.6円)が軽減されました。
また、ETBEのうちバイオマスから製造したエタノールを原料として製造したものに係る関税率3.1%を2013年度に引き続き暫定的に1年間無税とする措置を講じました。
14. バイオ燃料製造設備に係る固定資産税の軽減措置【税制】
農林漁業由来のバイオマスを活用した国産バイオ燃料の生産拡大を図るため、「農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律(農林漁業バイオ燃料法)」に基づく生産製造連携事業計画に従って新設されたバイオ燃料製造設備(エタノール、脂肪酸メチルエステル(ディーゼル燃料)、ガス、木質固形燃料の各製造設備)に係る固定資産税の課税標準額を3年間2分の1に軽減する措置を講じました(同法施行日(2008年10月1日)より2016年3月31日までの間)。
15.バイオマス産業都市の構築
2012年9月に関係7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)が共同で取りまとめたバイオマス事業化戦略において、地域のバイオマスを活用したグリーン産業の創出と地域循環型エネルギーシステムの構築に向けたバイオマス産業都市の構築を推進することとされ、2014年度までに22地域をバイオマス産業都市として選定しました。
16. バイオ燃料利用体制確立促進事業【2014年度当初:12.1億円】
バイオ燃料の製造・供給について、実証事業から民間事業への移行を図るため、沖縄においてサトウキビの副産物である廃糖蜜由来のバイオエタノールを活用しながら、石油精製会社の参加を得て、当該地域のガソリンの相当割合をE3及びE10(3%もしくは10%バイオエタノール直接混合ガソリン)化し、取扱いSS(ガソリンスタンド)数を増やして供給量を拡大しました。
17. 地球温暖化対策技術開発等事業【2014年度当初:21億円の内数】
接触分解技術・水素化処理を組み合わせて第二世代ディーゼル燃料(炭化水素)を生産するシステムに関する技術実証研究等を実施しました。
18. 技術でつなぐバリューチェーン構築のための研究開発【2014年度当初:29.9億円の内数】
バイオ燃料製造に適した資源作物や微細藻類の育種・栽培技術等の開発、林地残材から石油代替燃料や高付加価値な化学製品を製造する技術等の開発を推進しました。
19. 戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業【2014年度当初:12.2億円】
2030年頃の実用化を見据え、微細藻類由来のバイオ燃料製造技術、バイオマスのガス化・液化によりバイオ燃料を製造するBTL(Biomass-To-Liquid)等の次世代技術開発を実施するとともに、2020年頃の実用化を目指し、バイオガスを既存の都市ガスインフラ等で利用するためのガス精製技術等の実用化技術開発を実施しました。
20. バイオ燃料製造の有用要素技術開発事業【2014年度当初:16.3億円】
バイオ燃料製造の生産性を向上させるため、バイオ燃料用植物の改良生産技術、糖化・発酵プロセスにおいて特に有望な技術に重点特化した実用化技術を開発しました。
21. セルロース系エタノール生産システム総合開発実証事業【2014年度当初:8.0億円】
食糧と競合しないセルロース系バイオマス原料によるエタノールの大規模生産システムの確立を目指し、一貫生産プロセスでの事業化に向けたプラントレベルでの実証を行うため、要素技術の最適な組合せを検証しました。
22. バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業【2014年度当初:2.5億円】
地域におけるバイオマスエネルギー利用の拡大に資する技術指針及び導入要件を策定するとともに、当該指針等に基づき地域特性を活かしたモデル実証を行うため、事業性評価(FS)事業を実施しました。
23. 地域バイオディーゼル流通システム技術実証
事業費補助金【2014年度当初:7.0億円】バイオディーゼルを有効活用するための地域における流通システムづくりの実証を行いました。
24. CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業【2014年度当初:48.0億円の内数】
CO2排出量の多い石炭火力発電所の低炭素化に資するため、石炭火力へのバイオマス燃料を50%以上混焼する技術の開発・実証を実施しました。
25. 小水力等再生可能エネルギー導入推進事業【2014年度当初:9.3億円、2014年度補正:1.0億円】
農業水利施設を活用した小水力等発電の整備を推進するため、調査設計等の取組を支援しました。
26. 小水力発電導入促進モデル事業費補助金【2014年度当初:9.0億円】
小水力発電設備メーカーや発電事業者等が試験設備を用いた実用化に向けた実証事業を行い、発電設備の低コスト化を実現する開発を促進しました。
27. 中小水力・地熱発電開発費等補助金(中小水力発電開発事業)【2014年度当初:13.9億円の内数】
一般電気事業者及び卸電気事業者等の行う中小水力開発に対し、建設費の一部を補助することにより、水力の初期発電原価を引き下げ、開発を促進しました。
28. 中小水力開発促進指導事業基礎調査【2014年度当初:1.1億円】
中小水力開発促進の基礎資料とするための調査を行うとともに、国際エネルギー機関(IEA)の「水力技術と計画に係る実施協定」に参加し、得られた技術情報を国内外に発信しました。
29. 新エネルギー等導入促進基礎調査(水力開発導入基盤整備調査)【2014年度当初:4.2億円の内数】
開発可能性の有望な地点を選定し概略設計等を行うことにより、未開発となっている地点の調査を行いました。
30. 中小水力発電事業利子補給金助成事業費補助金【2014年度当初:1.0億円】
地方自治体(公営電気事業者)が水力発電所の建設に際して要した資金の返済利息に関して、利子補給を行いました。
31. CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業【2014年度当初:48.0億円の内数】
小水力発電の導入ポテンシャルを大きく拡大させるため、上水道施設の水管の水流を活用した管水路用マイクロ水力発電システムの技術開発・実証を実施しました。
32. 住宅用太陽光発電導入支援復興対策基金造成事業費補助金【2011年度3次補正:869.9億円】、住宅用太陽光発電高度普及促進復興対策基金造成事業費補助金【2011年度3次補正:323.9億円】
住宅用太陽光発電の導入を加速させるため、住宅用太陽光発電システムを設置する者に対して1kW当たり2.0万円又は、1.5万円の補助を実施しました。
33. 革新型太陽電池研究開発事業【2014年度当初:14.0億円】
2030年以降を見据えた高性能・低価格な革新的太陽電池の実現を目指し、多接合型太陽電池や、量子ナノ構造太陽電池等の研究開発を実施しました。
34. 太陽光発電システム次世代高性能技術の開発【2014年度当初:58.0億円】
高効率化及びコスト低減を追求する観点から、各種の実用太陽電池の高性能化のための次世代技術の確立、横断的な材料開発及び周辺技術の開発を行いました。また、有機系太陽電池の変換効率向上や長寿命化等に関する技術開発を行うとともに、実用化に向けた実証研究による課題の抽出を行いました。
35. 太陽光発電多用途化実証事業【2014年度当初:8.0億円】
太陽光発電の需要の裾野を拡大し、持続的な市場拡大によるコスト低減を図るため、農地やビル壁面、傾斜地など、現在利用の進んでいない分野の設置ポテンシャルを積極的に活用することを目指し、実際にパネルを設置する実証により課題の抽出・分析を行いました。また、使い易さや高機能化を盛り込んだ太陽光発電システムの高付加価値化を行いました。
36. 太陽光発電システム維持管理及びリサイクル技術開発【2014年度当初:9.0億円】
太陽光発電システム全体の効率向上を図るため、周辺機器の高機能化や維持管理技術の開発を行いました。また、耐用年数経過後の廃棄物発生に備えた対策として、使用済み太陽光パネルの処理に係る低コストリサイクル技術の開発を行いました。
37. 再生可能エネルギー熱利用加速化支援対策事業【2014年度当初:40.0億円、2014年度補正:60.0億円】
再生可能エネルギー熱利用設備の加速度的な導入促進を図ることを目的に、再生可能エネルギー熱利用設備を率先して導入する地方公共団体等に対し、事業費の2分の1以内の補助を、当該設備の導入事業を行う事業者に対し、事業費の3分の1以内の補助を行いました。
38. 再生可能エネルギー熱利用高度化複合システム実証事業費補助金【2014年度当初:16.0億円】
複数の再生可能エネルギー熱源、蓄熱槽、下水・河川等の公共施設等を有機的・一体的に利用する複合システムの事業化可能性調査を行うとともに、システム導入に当たっての制度的・技術的課題を解決するための実証事業を行いました。
39. 地熱・地中熱等の利用による低炭素社会推進事業【2014年度当初:16.0億円】
地域の特性を活かした地熱・地中熱利用の推進を目指し、初期コスト低減による自立的普及を図るため、地方公共団体又は民間事業者等に対して補助を行いました。
40. 低炭素型融雪設備導入事業【2014年度当初:1.0億円】
積雪寒冷地における除雪・融雪にかかる省エネ・省CO2化を図るため、主に中小企業や地方公共団体を対象に、地中熱や下水廃熱等の再生可能エネルギーを利用した低炭素型の融雪設備の導入支援を行いました。
41. 海洋エネルギー活用促進のための安全・環境対策【2014年度当初:0.5億円】
日本周辺の海洋エネルギー(波力、海流等)の豊富なポテンシャルを踏まえ、海洋エネルギーの活用促進を図るため、浮体式等発電施設の技術的課題について検討を行いました。
42. 地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金【2014年度補正:78.0億円】
地域内での再生可能エネルギー等の最大活用やエネルギー需要の最適化を図り、エネルギーコストを最小化するため、再生可能エネルギー等の分散型エネルギーを面的に利用する先導的な地産地消型システムを構築する取組を支援するとともに、そのノウハウの蓄積、他地域への普及を図りました。