第1節 風力・地熱の導入加速に向けた取組の強化
開発規模によって経済性を確保できる可能性のある風力・地熱については、地元との調整や、環境アセスメントのほか、立地のための各種規制・制約への対応等の課題が多く、それらを解決する取組を進めました。
<具体的な主要施策>
1. 風力・地熱発電に係る環境影響評価の国による審査期間の短縮目標の設定
風力・地熱発電建設時の環境影響評価の国の審査期間については、2012年11月の「発電所設置の際の環境アセスメントの迅速化等に関する連絡会議 中間報告」(環境省・経済産業省)において、火力発電所リプレースに係る国の審査期間の短縮に向けた取組を、風力・地熱発電の環境影響評価の審査についても適用することとされています。
この結果、2014年度においては、方法書(実績2件)については15日程度、準備書(実績16件)については22日、評価書(実績8件)については8日の審査期間の短縮を実現しました。
2. 風力発電設備の工事計画審査の一本化
従来、風力発電設備の工事前の安全確認については、建築基準法及び電気事業法の二法で審査することとしていましたが、「エネルギー分野における規制・制度改革に係る規制方針」(2012年4月閣議決定)において、電気事業法上の審査に一本化することを検討することとされたことを踏まえ、経済産業省では、産業構造審議会保安分科会電力安全小委員会における検討等を経て、2014年4月から、審査の電気事業法への一本化を開始することとしました。
3. 風力発電設備の安全の取組の強化
相次ぐ風車の落下や落雷によるブレード(翼)の破損等の重大事故を踏まえ、経済産業省では、産業構造審議会保安分科会電力安全小委員会において対策を検討し、風力発電設備の設計の際に想定すべき風の乱れや雷の強さを明確化するなどの安全への取組を強化しました。また、風力発電設備への定期的な検査の導入を盛り込んだ電気事業法等の一部を改正する等の法律案を2014年3月に閣議決定しました。
4. 環境アセスメント調査早期実施実証事業【2014年度当初:20.0億円】
風力・地熱発電の環境アセスメントの手続期間を短縮するため、前倒環境調査の実証事業を行いました。
5. 風力発電のための送電網整備実証事業費補助金【2014年度当初:150.5億円】
北海道の風力発電の適地において、送電網の整備及び技術的課題の解決を目的とした実証事業を行いました。
6. 洋上風力発電等技術研究開発【2014年度当初:49.0億円】
次世代浮体式洋上風力発電技術の開発に向けた検討を行うとともに、着床式洋上ウィンドファームの開発支援を行いました。また、2012年10月に銚子沖、2013年3月に北九州市沖に設置した着床式洋上風力発電設備について、運転データや洋上風速データなどを取得しました。
7. 風力発電高度実用化研究開発事業【2014年度当初:17.0億円】
風力発電の発電コストを低減させるため、軽量のブレード(翼部分)など風力発電機に用いる新たな部材・部品の開発を行うとともに、スマートメンテナンス技術の確立に向けた検討を行いました。また、小形風車部品の標準化に向けた検討を行いました。
8. 風力発電施設における希少猛禽類に対する効果的なバードストライク防止策の検討【2014年度当初:0.4億円】
希少な海ワシ類が風車のブレードに衝突し死亡する事故(バードストライク)の防止対策の策定に向けて、これまでの事業で効果が示唆された防止対策案について、技術開発、検証を行いました。
9. 洋上風力発電実証事業【2014年度当初:13.7億円】
浮体式洋上風力発電早期実用化に向け、2012年度に設置したパイロットスケール(100kW)の小規模試験機の運転を行い、台風への耐性や効率的な発電などの成果を得ました。また、2013年度より国内初の商用スケール(2MW)の実証機の運転を開始し、環境影響、気象・海象への対応、安全性等に関する情報収集等を行いました。
10. 浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業【2013年度当初:95.0億円、2013年度補正:280.0億円】
福島県を「再生可能エネルギー先駆けの地」とするためのシンボルとして、世界をリードする浮体式洋上風力発電技術の実用化を目指すため、2013年度より浮体式洋上風力発電施設(2MW)及び浮体式洋上変電施設の実証機を設置し、運転を開始しました。また、大型風力発電施設(7MW等2基)の設置に向け、設計、製作等を行いました。
11. 地熱開発理解促進関連事業支援補助金【2014年度当初:28.0億円】
地熱の有効利用等を通じて、地域住民への開発に対する理解を促進することを目的として行う事業(例えば、熱水を利用したハウス栽培事業の実施やセミナーの開催等)に対し補助を行うことで、地熱資源開発を促進しました。
12. 地熱資源開発調査事業【2014年度当初:65.0億円】
地熱発電は、安定的に発電が可能なベースロード電源の一つであり、我が国は世界第3位の資源量(2,347万kW)を有する一方で、地質情報が限られており事業リスクが高いことから、資源量のポテンシャル調査や掘削調査等の初期調査に対する支援を行いました。
13. 中小水力・地熱発電開発費等補助金(地熱発電開発費補助金)【2014年度当初:13.9億円の内数】
地熱開発は、運転開始後も追加井の掘削が必要となるなど、メンテナンスコストが大きいこと等の課題を抱えているため、追加井の掘削等に対して補助を行いました。
14. 地熱発電技術研究開発事業【2014年度当初:29.0億円】
地熱発電における高い開発コストやリスク等の課題を解決するため、地下の地熱資源のより正確な把握、安定的な電力供給に資するための地熱資源の管理・評価技術等や、環境配慮型高機能発電システムや小型バイナリー発電に関する技術開発を行いました。