第3節 エネルギーコスト低減のための資源調達条件の改善等
東日本大震災後、原子力発電所の停止により、火力発電(特にLNG火力発電)の稼働率が大幅に上昇したことなどから、我が国の燃料調達費は大幅に増加しています。こうした中、燃料調達費の削減が重要な課題となっています。
燃料調達費の削減に向けて、米国からのシェールガス・LNG輸入の実現や日本企業の上流権益の確保などを通じた供給源の多角化を進め、消費国間の連携強化などを通じた買主側の交渉力の強化が重要です。足下ではLNG価格は低下傾向ですが、こうした買手優位の状況を十分に活用すべきとも言えます。
消費国間の連携強化の取組について、具体的には、2014年11月に、「LNG産消会議2014」を東京で開催し、カタール、オーストラリア、カナダなど主要国の閣僚級を含め、世界約50カ国・地域から1,000人を超える関係者が参加しました。会議冒頭の開会挨拶において宮沢経済産業大臣から、安定的、競争的かつ柔軟なLNG市場の発展の重要性を世界に発信いたしました。その後、①LNG需給の見通し、②生産者と消費者の行動の変化、③市場の変化、④新しいLNG技術の動向について活発な議論が行われました。会議の結果、生産者・消費者間で、米国からアジアへのLNGの輸出を含め、今後、LNG供給プロジェクトが続々と立ち上がるという見通しを共有しました。また、多くの登壇者より、仕向地条項の緩和など、LNG市場が次第に柔軟化している点が指摘されました。
LNG産消会議2014(2014年11月)
LNG市場の透明性向上において重要な仕向地条項の緩和については、主要な国際会議の共同声明に明記されました。2014年5月には、ローマで開催されたG7エネルギー大臣会合において、ガス市場については、売り手の同意なしに第三者や他地域への転売を禁止する当事者間の契約条項である仕向地条項の緩和や、生産者と消費者の対話等を通じた天然ガス市場の柔軟化を促していくことの重要性が共同声明で確認されました。2014年6月にブリュッセルで開催されたG7首脳会合においては、より統合されたLNG市場と、仕向地条項の緩和や産消対話を含めた柔軟なガス市場をさらに促進することが共同声明で確認されました。2014年9月に北京で開催されたAPECエネルギー大臣会合、また11月に北京で開催されたAPEC首脳会議、閣僚会議においては、仕向地条項の緩和等を通じたLNG貿易の円滑化が成果文書に盛り込まれ、ASEAN+3エネルギー大臣会合では、競争的な価格や仕向地条項の緩和を含む柔軟な天然ガス市場の重要性が宣言文に盛り込まれました。
また、消費国間連携強化の取組として、2014年10月には、ソウルにて第4回日韓ガス対話を開催しました。資源エネルギー庁、韓国の産業通商資源部、韓国ガス公社(KOGAS)が参加し、両国のLNG、LPG政策、消費国間の連携強化によるLNG調達コストの低減、LNG売買契約における仕向地条項の緩和に向けた取組等について議論を交わしました。
<具体的な主要施策>
LNG先物市場、電力先物市場の創設に向けた取組
現行のLNG取引の大半は、原油価格に連動する価格式による長期・相対契約です。このため、世界的にはシェールガス革命等により天然ガス自体の価格は相対的に安定して推移している一方で、2000年代半ばから原油価格は、金融危機や中東の地政学的リスク等により不安定に推移してきたため、我が国が輸入するLNG価格は大きく変動してきています。そして、その価格変動リスクをヘッジする手段が不十分であることが指摘されてきました。これを受け、リスクヘッジの場としてのLNG先物市場の創設を提言したLNG先物市場協議会報告書が2013年3月に取りまとめられました。LNGのスポット取引の価格等を集計・公表すべきとの当該報告書の提言を受けて、経済産業省は2014年4月から、スポットLNG価格調査を実施しています。これに加えて、LNG先物市場の創設に向けた取組の一環として、経済産業省は第1種特定商品市場類似施設においてLNGを取引対象商品に追加する許可を2014年9月に行い、LNGの店頭取引が開始されました。また、電力先物取引を可能にするため、先物取引の対象に「電力」を追加することを内容とした法律が、2014年6月18日に公布され、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日に施行が予定されています。