第2節 地球温暖化の本質的解決に向けた我が国のエネルギー関連先端技術導入支援を中心とした国際貢献

世界のエネルギー需要の重心がアジアにシフトしていることや、エネルギー源の多様化、地球環境問題への対応など、世界のエネルギーを巡る課題が拡大、深化し、一層複雑化してきています。

こうした状況の中、我が国が厳しいエネルギー制約の中で蓄積してきた技術やノウハウを世界に普及していくため、こうした技術やノウハウを統合化して、再生可能エネルギー・省エネルギー技術、スマートコミュニティ等のインフラという形で国際展開を推進していくことが重要です。

2014年においては、案件形成や実証事業を進めることで、こうしたエネルギー・環境分野での国際展開の取組を進めました。

また、途上国への温室効果ガス削減技術・製品・インフラ等の普及を通じ、実現した温室効果ガス排出削減・吸収への日本の貢献を定量的に評価し、日本の削減目標の達成に活用するため、JCMの構築に取り組みました。

さらに、エネルギー・環境分野のイノベーションにより気候変動問題の解決を図るため、世界の産官学の議論と協力を促進する国際的プラットフォームとして、ICEF(Innovation for Cool Earth Forum)を創設し、第1回年次会合を2014年10月に開催しました。

<具体的な主要施策>

1.案件形成・実証等の支援

(1)案件形成、事業実施可能性調査

○エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業【2015年度当初:10.5億円】

電力分野やスマートコミュニティ分野等の省エネ・再エネインフラ設備の新興国等への導入を促進するための事業実施可能性調査を実施しました。

(2)人材育成等

○国際エネルギー使用合理化等対策事業委託費【2015年度当初:12.6億円】

省エネルギー・再生可能エネルギー・スマートコミュニティに係る我が国の技術・システムの普及に向けた環境を整備するため、新興国等を中心に、人材育成を通じた省エネルギー対策や再生可能エネルギー導入に関する制度構築支援や、各国動向調査、政策共同研究等を実施しました。

(3)我が国技術・システムの実証

○国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業【2015年度当初:134.6億円】

省エネルギー・再生可能エネルギー・スマートコミュニティの国際的な普及の観点から、我が国の技術・システムについて、海外における共同実証を実施しました。さらに、実証成果を商業ベースでの普及拡大につなげるため、相手国政府による普及努力義務等の合意形成を行う等の各種普及支援についても実施しました。

(4)官民連携を核とした推進体制の強化

①スマートコミュニティ・アライアンス

「スマートコミュニティ」の取組が国際的に拡大する中で、我が国の優れたスマートグリッド関連技術を中核としたスマートコミュニティ等の国際展開を促進することは、我が国としての新たな成長産業の育成にもつながります。このような背景から、海外展開や国際標準を業種横断的に官民が連携して推進していくため、2010年に民間協議会団体の「スマートコミュニティ・アライアンス」(事務局:NEDO)が設立されました。スマートコミュニティ・アライアンスでは、官民ミッションの派遣等を通じてスマートコミュニティのシステム導入側の相手国政府等と直接対話を行い、ニーズに即した課題解決型の提案と交渉を積み重ねることにより、より上流の設計段階からの関与を行うことを目指して取組を進めました。

具体的取組としては、国際戦略や国際標準の観点からワーキンググループを設置し、国別や技術分野ごとのアプローチによる国内外の普及・啓発や、スマートコミュニティ関連イベントでの出展・講演、GSGF(Global Smart Grid Federation)などの国際機関との連携を強化しています。

②世界省エネルギー等ビジネス推進協議会

「世界省エネルギー等ビジネス推進協議会」は、2008年、省エネルギー、再生可能エネルギー分野での優れた技術を有する我が国の企業・団体により発足しました。本協議会は、61企業・20団体(2016年1月時点)で構成されており、設立以来、政府と経済界が一体となって、関連製品・技術を基にしたビジネスの国際展開を推進しています。

具体的な活動内容としては、地域別・テーマ別にワーキンググループ等を組織し、①関連製品・技術を取りまとめた「国際展開技術集」の作成及び周知、②市場分析やプロジェクト発掘に向けた調査、③官民ミッション派遣等によるビジネス機会の獲得、④海外及び国内での展示会出展等を行っています。

2.二国間オフセット・クレジット制度(JCM)の推進

(1)JCMの構築【制度】

2013年1月に、モンゴルとの間で初めてJCM実施に2013年1月に、モンゴルとの間で初めてJCM実施に係る二国間文書に署名したことを皮切りに、2016年3月までに16か国(モンゴル、バングラデシュ、エチオピア、ケニア、モルディブ、ベトナム、ラオス、インドネシア、コスタリカ、パラオ、カンボジア、メキシコ、サウジアラビア、チリ、ミャンマー、タイ)との間で、JCMを構築しました。これによって2013年11月からの3年間で署名国を倍増させる目標を1年前倒しで達成しました。また、2015年12月には、フィリピンとの間でJCMの構築に向けた覚書に署名しました。

2015年12月に開催されたCOP21では、16か国の代表が一堂に会したJCMパートナー国会合が開催され、JCMの進捗を歓迎するとともに更なる進展に向けて引き続き協力することを確認しました。

【第392-2-1】JCMの構築と2015(平成27)年度における主な取組一覧

JCMの構築と2015(平成27)年度における主な取組一覧

(2)JCMプロジェクトの形成の支援

①地球温暖化対策技術普及等推進事業【2015年度当初:30.0億円】

JCMの導入に関する二国間文書に署名した相手国において、優れた低炭素技術・製品等の導入による温室効果ガス排出削減プロジェクトを実施し、削減効果を測定・報告・検証することで、地球温暖化対策技術の有効性を実証するとともに、排出削減プロジェクトの発掘・組成を行い、相手国での普及につなげるための事業を行いました。

②地球温暖化対策技術普及等推進事業委託費【2015年度当初:6.0億円】

相手国の省エネ・低炭素化を図るため、相手国の実情・ニーズに合わせて、優れた低炭素技術・製品等を導入する排出削減プロジェクトの発掘・組成を行い、当該プロジェクトにおける実現可能性や排出削減量評価方法の検討、相手国政府に対する政策提言を行いました。

③二国間クレジット取得等インフラ整備調査事業【2015年度当初:4.2億円】

JCMの意思決定機関である二国間合同委員会の運営やクレジットを管理する登録簿等の制度の基盤整備・運用を行うとともに、制度の円滑な運営のため、国内外の類似制度の調査や人材育成等の事業を実施しました。

④二国間クレジット制度(JCM)基盤整備事業のうち制度構築・案件形成支援【2015年度当初:26.9億円】

JCMの本格的な運用のための制度構築、JCMに関する国際的な理解の醸成やJCMの実施対象国の拡大に向けた取組、途上国における排出削減プロジェクトの組成支援、及びアジア等の途上国における都市間連携を活用した実現可能性調査を行いました。

⑤“一足飛び”型発展の実現に向けた資金支援事業【2015年度当初:72.0億円】

JCMに署名済み、または署名が見込まれる途上国において、優れた低炭素技術等を活用したCO2排出削減設備・機器の導入プロジェクトへの資金支援(国際協力機構(JICA)等との連携事業への支援を含む)を実施しました。また、導入コスト高から採用が進んでいない優れた低炭素技術がアジア開発銀行(ADB)のプロジェクトで採用されるように、ADBの信託基金を通じて、その追加コストを軽減する支援を実施しました。

3.イノベーションによる地球温暖化解決に向けた国際協力体制の強化

○ICEF(Innovation for Cool Earth Forum)の開催

地球温暖化問題は、喫緊の課題であるとともに、経済成長と両立しながら世界が一体となって長期にわたって取り組むことが必要であり、これを実現する鍵は「イノベーション」です。こうした認識のもと、安倍総理の提唱により、温暖化問題解決のイノベーションを促進するため、世界の産官学のリーダーが議論するための知のプラットフォームとして、いわば「エネルギー・環境技術版ダボス会議」とも言えるICEF(Innovation for Cool Earth Forum)を創設し、その年次会合を2014年から毎年東京で開催していくこととしました。

2015年10月に開催した第2回年次総会には、各国政府、企業、学界、国際機関等の約70か国から、第1回を上回る1000名以上(うち外国人約400名)が参加しました。