第2節 環境制約と成長の両立を実現するエネルギー政策~エネルギー革新戦略~

1.徹底した省エネルギーの推進

2014年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画を受け、長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)を2015年7月に策定しました。エネルギーミックスのエネルギー需要の推計においては、技術的に実現可能で、かつ現実的な省エネルギー(以下「省エネ」という。)対策として考えられ得る限りの省エネ量を各部門において積み上げました。この結果、経済成長1.7%を前提として、最終エネルギー消費ベースで5,030万kl程度の省エネを実施し、2030年度までにエネルギー効率を35%程度改善することを見込んでいます。これは石油危機後の20年間と同程度のエネルギー効率の改善を見込んだ、相当野心的な水準です。このようなエネルギーミックスにおける省エネの実現を図ることで、省エネ投資を拡大するとともに、エネルギー効率の改善を通じて生産性を向上させ、強い経済とCO2排出削減を両立していきます。本項では、エネルギーミックスを実現する上で必要となる省エネ施策について紹介します。

(1)産業・業務部門の省エネについて

エネルギーミックスにおいて、産業部門は1,042万kl、業務部門は1,226万klの省エネ量を見込んでいます。産業部門のエネルギー消費原単位(製造業の鉱工業指数(付加価値ウェイト)あたりの最終エネルギー消費量)は、1970年代の石油危機以降、省エネ設備の積極的導入等によって、4割以上改善した一方、業務部門のエネルギー消費原単位(床面積あたりの最終エネルギー消費量)は、2000年代後半は改善傾向にあったものの、産業部門のように抜本的なエネルギー消費原単位の改善が進んでおらず、業務部門の省エネ対策を徹底することが必要です。

また、前述のとおり産業部門は既に大幅なエネルギー消費原単位の改善を実現しましたが、エネルギーミックスの実現に向けては、産業部門においても今後更なる省エネ対策を徹底していく必要があります。

こうした産業・業務部門の徹底した省エネを促進するため、エネルギーの使用の合理化等に関する法律(以下「省エネ法」という。)において3つの制度の新設や見直しを実施することとしています。

【第132-1-1】産業部門のエネルギー消費原単位の推移

産業部門のエネルギー消費原単位の推移

(※)
原単位は、製造業IIP(鉱工業指数、付加価値ウェイト)あたりの最終エネルギー消費量。
(※)
縦軸は1973年度を100とした場合の指数。

【第132-1-2】業務部門のエネルギー消費原単位の推移

業務部門のエネルギー消費原単位の推移

(※)
原単位は、業務部門の延床面積あたりの最終エネルギー消費量。
(※)
縦軸は1973年度を100とした場合の指数。
出典:
エネルギー・経済統計要覧2015を基に資源エネルギー庁作成

①流通・サービス業へのベンチマーク制度の拡大
(産業トップランナー制度の拡大)

2015年度に実施した「未来投資に向けた官民対話(第3回)」において、エネルギー関連の投資と課題が議論され、安倍総理から、これまで製造業を対象に設定されてきた省エネ法におけるベンチマーク制度について、流通・サービス業(業務部門)へ拡大し、3年以内に全産業のエネルギー消費の7割をカバーするよう拡大する旨の指示が出されました。

省エネ法におけるベンチマーク制度とは、事業者の省エネ状況を業種ごとに、計算項目が統一された絶対値のエネルギー消費原単位を、「ベンチマーク指標」として定めることで、事業者の省エネ取組をより公平に評価する制度です。

通常、省エネ法における事業者の評価は、事業者によって異なる計算項目(分母)をもとに算出されたエネルギー消費原単位について、その改善率を評価軸にしていますが、同業他社との比較ができず、事業者の省エネ取組がどの程度進んでいるのか分かりにくいという側面があります。ベンチマーク制度はこうしたデメリットを解消できるという利点があります。

ベンチマーク指標の目標は、各業界の上位1 ~ 2割の事業者が満たす「目指すべき水準」が設定されます。これを満たす事業者は、省エネ優良事業者として、定期報告上でプラスの評価を行うこととしています。

ベンチマーク制度を既に導入している鉄鋼業や化学業、窯業土石等のエネルギー多消費型の製造業では、前述のとおり既に世界トップレベルのエネルギー効率を実現しています。その上で、ベンチマーク制度では更に高い省エネ水準を目標としており、世界的に見ても野心的な目標水準と言えます。エネルギーミックスにおいても、これらの業種ごとの省エネ対策とその省エネ量を見込んでおり、ベンチマーク指標の達成を促すことにより、エネルギーミックスの実現を促進すると考えられます。

流通・サービス業では、既にコンビニエンスストアにおいて、2015年度にベンチマーク制度を導入しました。総理指示を踏まえ、今後もベンチマーク制度をホテル等の他の流通・サービス業へ拡大していくことで、製造業のみが対象でエネルギー消費の5割であった同制度のカバー率を、2018年度までに全産業のエネルギー消費の7割へ拡大することを目指していきます。

【第132-1-3】ベンチマーク制度の対象範囲の拡大(業種別のエネルギー消費量に占める割合)

ベンチマーク制度の対象範囲の拡大(業種別のエネルギー消費量に占める割合)

出典:
(一財)日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧2015」

②事業者クラス分け評価制度の創設

2015年8月に策定された、総合資源エネルギー調査会省エネルギー小委員会取りまとめにおいて、産業・業務部門の更なる省エネの促進のために、「事業者に自らの省エネ取組状況の客観的な認識を促すことが重要であり、省エネ取組状況に応じて事業者を4段階にクラス分けする評価フローを実施すべきである。国はこの評価フローにおいて、省エネ優良事業者を公表することで、同事業者を優れた事業者として評価する一方、省エネ停滞事業者については重点的に注意喚起と調査を行うといったメリハリのある対応を行うべきである。」という方針が示されました。

これを受け、省エネ法の定期報告を提出する全ての事業者(約12,000者程度)をS・A・B・Cの4段階でクラス分けし、クラスに応じたメリハリのある対応を実施する「事業者クラス分け評価制度」を2016年度より実施します。具体的には、省エネの取組が優良な事業者を業種別に公表して称揚する一方、1,000 ~ 2,000者程度の省エネが停滞している事業者に対しては、事業者の代表者へ注意文書を送付し、エネルギー消費原単位の増加が事業者の責によるものなのか、現地調査や省エネ法に基づく報告徴収により重点的に調査を行っていくこととしています。

本制度の創設により、事業者が同業他社の省エネ目標の達成状況を把握することで、自らの立ち位置を確認して更なる省エネを促すことが可能となります。

【第132-1-4】事業者クラス分け評価制度について

事業者クラス分け評価制度について

(※1)
2014年度定期報告(2013年度実績) 総事業者数12,338社より算出。
(※2)
努力目標:5年間平均原単位を年1%以上低減すること。
(※3)
ベンチマーク目標:ベンチマーク制度の対象業種・分野において、事業者が中長期的に目指すべき水準。

【第132-1-5】エネルギー消費原単位算出時の未利用熱購入の扱い

エネルギー消費原単位算出時の未利用熱購入の扱い

③未利用熱活用制度の創設

工場等で使用されたエネルギーのうち、その一部は排熱として工場内外に排出されています。この排熱の一部は、工場内や他の工場の熱需要に活用されているものの、多くは用途のない未利用熱として廃棄されていると考えられます。

従来の省エネ法においては、自社で熱を使用する際、燃料使用による熱利用の場合も、他社の未利用熱を活用した場合も、エネルギーの使用という点で同等と評価し、エネルギー消費原単位の改善を評価するにあたって差別化してきませんでした。しかし、未利用熱の融通を行った2つの事業者全体では、同等の生産等を行う上で投入される一次エネルギー量が減少するものの、この考え方では未利用熱活用による省エネ量を考慮できていないこととなります。

加えて、他社との間で未利用熱の融通を行う事業者は、一般的に配管等の専用の設備や管理標準を導入する取組を行っていることから、この取組を考慮せずに評価することは、省エネ取組の評価として公平性に欠くと考えられます。

このため、外部で発生した未利用熱を購入して自ら消費する行為(未利用熱購入)を、省エネ取組の一環として評価するため、熱提供側(販売側)が未利用熱であると区分した分のエネルギーについては、熱需要側(購入側)のエネルギー消費原単位の算出にあたって、エネルギー使用量から差し引くことができる制度(未利用熱活用制度)を創設し、未利用熱の購入を促進します。

(2)家庭部門の省エネについて

エネルギーミックスにおいて、家庭部門では1,160万klの省エネ量を見込んでいます。エネルギーミックスを実現するには、業務部門と同様に家庭部門においても抜本的な省エネを進めることが重要です。

家庭部門の省エネを進める上で特に重要なのが、住宅の外皮(壁・窓等)の断熱性能の向上です。我が国の既存住宅のうち、4割に相当する約2,000万戸が無断熱だと考えられています。住宅の断熱性能が低い場合、住宅内を冷暖房で冷やしたり暖めたりしても、容易に内外の熱が出入りし、その効果を減少させてしまいます。住宅のエネルギー消費量のうち、約3割が冷暖房用に使用されている中で、外皮の高断熱化により冷暖房用のエネルギーを効率的に使用することが重要です。さらに、住宅の高断熱化は省エネのみならず、高血圧症等の健康改善や、ヒートショックリスク低減といった効果も期待されており、こうした間接的便益(NEB:Non-EnergyBenefit)の視点も重要となっています。

【第132-1-6】住宅の断熱基準適合の割合

住宅の断熱基準適合の割合

出典:
統計データ、事業者アンケート等により国土交通省推計(2012年)

①建築物省エネ法に基づく省エネ基準の適合義務化

エネルギー基本計画において、「こうした環境整備を進めつつ、規制の必要性や程度、バランス等を十分に勘案しながら、2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準の適合を義務化する」という政策目標を示しています。

2015年7月に建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(以下「建築物省エネ法」という。)が国会において可決成立し、公布されました。この建築物省エネ法で、省エネ基準適合義務化となるのは、延床面積が2,000㎡以上の新築非住宅建築物です。2,000㎡以上の新築非住宅建築物は、2014年時点で96%が省エネ基準に適合していると考えられ、これを100%にすることが可能となります。他方、新築住宅については、省エネ基準の適合率が5割以下となっており、今後規制の必要性や程度、バランス等を十分に勘案しながら、2020年までに新築住宅について段階的に省エネ基準の適合を義務化し、外皮の断熱性能を向上させていくことが必要です。

【第132-1-7】新築建築物、住宅における省エネ基準適合率の推移

新築建築物、住宅における省エネ基準適合率の推移

出典:
国土交通省作成

②住宅のネット・ゼロ・エネルギー化

エネルギー基本計画において、「住宅については、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」と示されています(ZEHは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスを指す)。徹底した省エネを進めていくには、室内外の環境品質を低下させることなく、高い断熱性能と高効率設備による可能な限りの省エネルギー化と再生可能エネルギーの導入により、年間での一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロまたは概ねゼロとなるZEHの導入を促進し、省エネ性能に優れた住宅を普及させることも重要です。

具体的には、2015年12月に策定したZEH普及に向けたロードマップにおいて、2020年までにハウスメーカー、工務店等が施工する新築住宅の過半数がZEHとなることを目標として定め、エネルギー基本計画の目標を具体化しました。今後、官民で連携し、ZEHに対する目標設定とその進捗管理、ZEHのブランド化等により、自立的普及を促していきます。

【第132-1-8】ZEHの普及に向けたロードマップ

ZEHの普及に向けたロードマップ

2.コスト効率的な再エネ投資

(1)我が国の再生可能エネルギーの現状

再生可能エネルギーはエネルギー安全保障の強化や低炭素社会の創出等の観点から重要なエネルギーです。他方、他の電源と比較して発電コストが高い等の課題があることから、我が国においては、これまで設備に対する補助制度、RPS制度(2003年~)、太陽光の余剰電力買取制度(2009年~ 2012年)等を通じて再生可能エネルギーの普及拡大を図ってきました。2012年7月には「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(以下「FIT法」)」に基づいて「固定価格買取制度」が創設されました。

固定価格買取制度は、①再生可能エネルギーの発電事業者に対して固定価格での長期買取を保証することによって事業収益の予見可能性を高め、参入リスクを低減させることで新たな再生可能エネルギー市場を創出し、さらに、②市場拡大に伴うコスト低減(スケールメリット、習熟効果)を図り、再生可能エネルギーの中期的な自立を促すことを目的とした制度です。我が国においても、固定価格買取制度の開始を受け、制度開始以来3年間で、再生可能エネルギーの電源構成割合は、制度開始前の10.4%(2011)から12.2%(2014)に増加、そのうち水力を除くと、1.4%(2011)から3.2%(2014)と、制度開始前から導入量が約2倍増加するといった成果を挙げてきています。

【第132-2-1】再生可能エネルギー等による発電量の推移

再生可能エネルギー等による発電量の推移

(※)
自家発電等、電力系統に流れない電力分は除く。
(※)
混焼バイオマスは、設備毎に混焼比率が最も高い燃料による発電分として計算している。
出典:
電源開発の概要

【第132-2-2】発電電力量の構成(2011年度)

発電電力量の構成(2011年度)

出典:
電気事業連合会「電源別発電電力量構成比」

【第132-2-3】発電電力量の構成(2014年度

発電電力量の構成(2014年度)

出典:
電気事業連合会「電源別発電電力量構成比」

他方、先進主要国と比較すると、依然として再生可能エネルギーの導入割合は低い水準にあります。

【第132-2-4】発電電力量に占める再生可能エネルギー

発電電力量に占める再生可能エネルギー

出典:
【日本】「電源開発の概要」より作成(2014年度実績値)
 
【日本以外】2014年推計値データ、IEA Energy Balance of OECD Countries (2015 edition)

このような状況も踏まえ、昨年7月に策定された「長期エネルギー需給見通し」(「エネルギーミックス」)では、2030年度において再生可能エネルギーが電源構成の22-24%を占めるとの見通しを示しており、この達成に向け、固定価格買取制度等により、更なる導入拡大を図っていくことが重要です。

制度創設以来、再生可能エネルギーの普及は進んでいるものの、事業用太陽光を中心に導入量が急拡大している一方で、地熱や風力など、リードタイムの長い電源の導入が十分に進んでいないことから、電源間でのバランスの取れた導入が求められます。

【第132-2-5】各電源の運転開始済の設備容量と2030年の導入見込量

各電源の運転開始済の設備容量と2030年の導入見込量

(※)
エネルギーミックスにおいては、中小水力発電の既導入設備容量を示してはいないが、ここでは出力別包蔵水力調査データにエネルギーミックスで示された追加導入見込量(+150 ~ 201万kW)を合算して算出した。
(※)
太陽光発電と風力発電については、出力制御の状況等によって導入量は変わりうる
出典:
資源エネルギー庁作成

【第132-2-6】固定価格買取制度導入後の賦課金等の推移

固定価格買取制度導入後の賦課金等の推移

また、固定価格買取制度による再生可能エネルギーの導入拡大とあわせ、買取費用総額が2016年度に年間約2.3兆円(賦課金総額は約1.8兆円)に達するなど国民負担の増大への懸念が高まっています。エネルギーミックスでは、22-24%を達成する前提として、買取費用を3.7兆円~ 4兆円を想定しており、再生可能エネルギーの最大限導入と国民負担の抑制を両立していく必要があります

【第132-2-7】主要国の太陽光発電の設備利用率・発電コストの比較

主要国の太陽光発電の設備利用率・発電コストの比較

【第132-2-8】主要国の風力発電の設備利用率・発電コストの比較

主要国の風力発電の設備利用率・発電コストの比較

出典:
Bloomberg New Energy Finance資料より資源エネルギー庁作成

その両立のためには、コスト効率的な再生可能エネルギーの導入が重要ですが、太陽光・風力発電の発電コストについて、海外主要国と比較すると、我が国は約2倍の水準にあります。日照や風況など地理的要因に左右される設備利用率を勘案しても、我が国の発電コストは海外主要国と比較して突出して高い水準にあり、その低減を図っていく必要があります。

現行のFIT制度の買取価格は、法律上、①毎年度(必要に応じ半年ごと)、②再生可能エネルギー源の種別、設置形態、規模に応じて、効率的に事業が実施される場合に通常要すると認められる費用を基礎に、適正な利潤等を勘案して定めることとされています。実績値に基づくコスト積み上げを行う現行の運用の下においては、「事業者のコスト低減努力に繋がらない」、「むしろ太陽光パネル輸入価格の下げ止まり要因」などの批判があります。再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制の両立を図るためには、コスト効率的な導入拡大が必要であり、事業者のコスト低減を促すような制度の見直しや、更なる発電の高効率化・低コスト化、制御技術の高度化等に向けた技術開発と必要な制度整備を併せて推進することが必要です。

(2)固定価格買取制度の見直し

このため、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制の両立を図るための制度見直しを行う必要があり、導入が急速に進んだ太陽光発電については、早期の自立化に軸足を置きつつ、コスト効率的な形での導入拡大を進める仕組みをつくる一方で、リードタイムが長く導入の進んでいない電源については、予見可能性を与えながら、導入拡大を更に強力に推進するための仕組みが必要です。また、自然変動電源が急増する中で電力系統面での制約も顕在化しており、電力システム改革の成果も活かしつつ、再生可能エネルギーの導入拡大に向けた新たなルールの整備を進めていきます。

①長期的な買取価格目標の設定

将来の買取価格についての予見可能性を向上させるとともに、その目標に向けた事業者の努力やイノベーションによるコスト低減を促す観点から、電源ごとに中長期的な買取価格の目標を示すことが必要です。

②コスト低減や事業者の競争を促す買取価格決定方式

現状の太陽光発電や風力発電の買取価格は、欧州の約2倍という高い水準にとどまっている状況です。コスト効率的な導入を促す買取価格決定方式として、特に効率的に発電できる事業者のコストを基準として毎年決定する方式(いわゆる「トップランナー方式」)、買取価格の低減スケジュールを複数年にわたり予め決定する方式、買取価格を入札により決定する方式など、諸外国で採用された多様な方式から、導入実態を踏まえて最適な方式を選択して運用できる柔軟な仕組みを検討しています。

  • (ⅰ) 事業用太陽光発電については、FIT制度施行により急激な導入拡大が進んでおり、コスト効率的な事業者の導入を促すため、トップランナー方式を採用しつつ、事業者間の競争を通じた更なる価格低減を実現するため入札制度の活用を検討します。

  • (ⅱ) 住宅用太陽光発電(10kW未満の太陽光発電)については、自家消費を除いた余剰電力を売電する住宅への導入を行う制度であり、競争入札に馴染まないことから、予め価格低減スケジュールを設定する方式の採用を検討しています。また、FIT制度とは別に、住宅用太陽光発電の導入拡大に向けて、今後は「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」(ZEH)やエネルギーマネジメントシステムの導入促進など、省エネ施策と一体となった形での支援策の充実を検討していきます。

  • (ⅲ) 風力発電については、海外との自然環境の差等にも留意しつつ、建設コストを引き下げる事業者の努力を促すような買取価格の仕組みとして、中長期的な買取価格の引き下げスケジュールを決定する買取価格決定方式を採用を検討しています。

(3) 再生可能エネルギー最大限導入のための事業環境整備

①研究開発

コスト効率的の再生可能エネルギーの導入には、固定価格買取制度のみならず、研究開発・規制改革等を含めて総合的に施策を実施していくことが重要です。特に、太陽光発電や風力発電の自立・安定化のためには、基盤となる発電システムの低コスト化とともに、自然変動する出力の予測・制御技術や系統運用技術の高度化が必要です。

現在、太陽光発電の低コスト化には、設備利用率、変換効率、システム単価、運転年数等の改善が重要であり、太陽光パネルの変換効率向上・製造コスト低減を徹底的に進めるとともに、発電システム全体での低コスト化に向けた周辺機器の高機能化・長寿命化のための技術開発を実施しています。

また、風力発電の低コスト化には、大型化や設備利用率の向上が重要であり、大型風車に適した低コストで高い信頼性を有するブレードの開発や、稼働停止時間の短縮のためのメンテナンス技術のスマート化を推進しています。陸上風車の適地が限定的な我が国において中長期的に導入拡大が期待される洋上風力については、建設やメンテナンスでは陸上よりも多くの費用を要することから、コスト面の競争力強化を図るため、低コスト化に向けた着床式及び浮体式の洋上風力の実証を実施しています。

加えて、自然変動電源である太陽光発電や風力発電の導入拡大に向けては、出力制御量を低減することが重要である。そのため、電力各社の需給運用の実態を踏まえながら、予測技術と制御技術を組み合わせた技術開発を推進していきます。

他にも、一時的に電気を貯めておく蓄電池は、余剰電力対策として、今後有効な手段の一つですが、コストが依然として高く、低コストでの導入につなげるための技術開発や、基幹系統に大型蓄電池を設置し、再エネを最大限受け入れるための実証を実施しています。

②規制改革

再生可能エネルギーによる発電事業は比較的新しい発電形態であり、既存の規制体系に適合しないために過剰規制や過小規制が生じる恐れがあり、再エネの健全な導入拡大を進めていく観点から、実態を踏まえつつ、不断の規制改革を行うことが重要です。特に、再生可能エネルギー等関係閣僚会議において、関係府省庁の連携の下で推進することとされた風力・地熱の環境アセスメントの迅速化、導入促進に向けたエリアの設定等の支援や、長期安定的な太陽光発電を確保するための規制・制度の見直し等について、実現に向けて着実に取り組むことが必要です。

環境アセスメントについては、通常3 ~ 4年要するとされている期間の半減を目指し、①国や地方自治体による審査期間の短縮化や、②経済産業省と環境省で連携して取り組んでいる環境影響調査の前倒し実証事業を通じた前倒し手法の確立等、迅速化のための取組を進めています。加えて、関係省等が連携し、風力関係団体からの風力発電の環境アセスメントの「規模要件の見直し」や「参考項目の絞り込み」といった要望の論点を踏まえた必要な対策について、上記の実証事業等を通じた環境影響の実態把握なども踏まえながら環境や地元に配慮しつつ風力発電の立地が円滑に進められるよう検討していくとともに、導入促進に向けたエリアの設定等の支援についても早急に検討を進め取り組んでいきます。また、国立・国定公園内における地熱発電に関しては、2015年10月に発出された環境省自然環境局長通知により、自然公園法において、第1種特別地域への同区域外からの傾斜掘削規制や、第2種特別地域・第3種特別地域における建築物の高さ規制について、条件付で認めるという規制緩和がなされました。

今後も、関係省庁が密接に連携しつつ、必要に応じた関連規制の合理化等に取り組んでいきます。

【第132-2-9】環境アセスメントの迅速化に向けた取組イメージ

環境アセスメントの迅速化に向けた取組イメージ

①国や自治体による審査の迅速化

自治体による環境影響評価審査と並行して国の審査を実施することなどにより、150日程度確保されていた国の審査期間(方法書:実質30日程度、準備書:実質90日程度、評価書30日)を45日程度(方法書:2週間程度、準備書:3週間程度、評価書10日程度)に短縮することとしている。

②環境アセスメント調査早期実施実証事業

通常24 ヶ月~ 30 ヶ月程度かかる環境影響調査の一部を、配慮書手続、方法書手続と同時並行(前倒し)で進めることで、手続期間の短縮を図る実証事業。前倒環境調査を実施する上での課題等を特定・解決し、前倒環境調査の方法論(調査項目の選定、地域との調査委、調査手法の高度化等)を確立することを目指す。支援措置:事業費の1/2負担(NEDO)2016年度予算額:9億円(2016年度予算額20億円)

自由化の下での新たなエネルギーシステムの構築

東日本大震災後、再生可能エネルギー等の分散型電源の導入が急速に拡大し、従来の大規模集中型のエネルギーシステムのあり方を見直す機運が高まっています。また、電力全面自由化をはじめとする一連のエネルギーシステム改革が進捗する一方、IoT等の技術がエネルギーの分野においても大きな変革をもたらそうとしています。日本のエネルギー供給の安定性や効率性をより一層向上させていくためには、こうした変化を好機とし、電気や熱をこれまで以上に有効活用する新たなエネルギーシステムの構築に取り組んでいくことが必要です。

こうした電気や熱に関するエネルギーシステムの革新に留まらず、2030年以降のエネルギーシステムのあり方を見据え、将来の二次エネルギーとして期待される水素エネルギーついて、“水素社会”の実現に向けた取組を戦略的に進める必要があります。

(1) IoT時代における新たなエネルギーシステム・ビジネスの創出

①電気の効率的利用

電気の効率的な利用に当たっては、供給サイドの対応とともに、需要サイドの取組が重要です。エネルギー市場の自由化が進む欧米諸国では、エネルギーの供給状況に応じてスマートに消費パターンを変化させることで需給バランスを一致させる「ディマンドリスポンス1」(DR)の取組が積極的に進められています。

【第132-3-1】ディマンドリスポンスに関する国際比較

ディマンドリスポンスに関する国際比較

出典:
FERC, “2013 Assessment of Demand Response and Advanced Metering.Staff Report”, 2013/10、およびPJM、National Grid、RTE資料等より作成
(※1)
ペンシルベニア・ニュージャージー・メリーランドの3州を中心とした電力市場
(※2)
フランスのDR容量は、EJP/ Tempo( EDFが提供する特定日の料金が高い代わりに、平時の料金が割引される契約)を含まない

日本においても、2011年の東日本大震災以降、電力需給がひっ迫する中、電気の供給量に合わせて需要を柔軟に調整するディマンドリスポンスに注目が集まりました。このため、経済産業省では、2011年度から国内4地域(横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市)で、幅広い事業者や住民等の参画を得て大規模なスマートコミュニティ2 やディマンドリスポンスの実証を行ってきました。例えば、北九州市で実施したディマンドリスポンスの実証事業 (180世帯、50事業所が対象)においては、一般家庭において通常料金(23円/kWh)を15円/kWh、夜間料金を6円/kWhにする代わりに、夏のピーク時間帯に、翌日の需要予測に応じて、電気料金を最大150円/kWhまで変動させる料金体系(CPP: CriticalPeak Pricing)で実際に電力供給した結果、実証結果として、2割ものピークカットが継続的に実現可能であることを確認しました。これまでの実証実験を通じて、消費者のピーク需要を無理なく、技術やシステムでコントロールすることが可能であり、かつ、消費者にメリットがあることを示しました。

現在(2016年5月)は、震災直後のような需給がひっ迫する状況にはありません。しかし、ディマンドリスポンスの活用により、年間の中で電気需要の高い時間(ピーク時間帯)でのみ稼働するコストの高い電源の稼働を抑制することは、一次エネルギーの削減や、柔軟な電力システムの構築につながるため、引き続き取組を進めることが重要です。さらに、小売全面自由化をはじめとする電力システム改革により、新規事業者の参画とエネルギーサービスの多様化が期待されている中、小売事業者や送配電事業者がディマンドリスポンスを活用する機会の増加が期待されます。

【第132-3-2】電力システム改革の進展とネガワット取引の普及の関係性

電力システム改革の進展とネガワット取引の普及の関係性

出典:
資源エネルギー庁作成

このため、電気料金型のディマンドリスポンスにおける次の段階として、電力会社との間であらかじめピーク時などに節電する契約を結んだ上で、電力会社からの依頼に応じて節電した場合に対価を得る「ネガワット取引」が検討されています。経済産業省では、ネガワット取引の実現に向けて、2015年3月には、ネガワット取引における需要削減量の測定方法に関する標準的な手法の確立に向けてネガワット取引に関するガイドラインを策定しました。

また、2015年度は、2014年度に引き続き、技術面に関し実証事業を行いました。2015年度の事業では、3社の電力会社(東京電力・関西電力・中部電力)と約20組のアグリゲーター参加のもと、多様な属性(業種、保有設備等)の需要家においてネガワット取引の実証を行いました。節電要請に対応できたかの成功率3に関し、海外での実績のあるアグリゲーターAは85%以上であるという結果が得られるとともに、他のアグリゲーターについても、成功率を向上させるための課題を洗い出すことができました。

【第132-3-3】ネガワット取引に関する技術実証(2015年度)の成果

ネガワット取引に関する技術実証(2015年度)の成果

出典:
資源エネルギー庁作成

今後は、これまでの成果も活用しながら、エネルギーの有効活用を一層進めるべく、2017年中のネガワット取引市場の創設や、太陽光発電・蓄電池等のエネルギー設備やディマンドリスポンスなどの需要抑制の取組を統合的に制御し、あたかも一つの発電所のように機能させる実証などに取り組みます。

【第132-3-4】ネガワット取引市場の創出

ネガワット取引市場の創出

③熱の効率的利用

地域のエネルギーを地域で有効活用する地産地消型エネルギーシステムは、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの普及拡大、エネルギーシステムの強靱化に貢献する取組として重要であり、まちづくりと一体的にその導入が進められることで、地域の活性化にも貢献します。

地産地消型エネルギーシステムの中核は、地域における“熱”の有効活用にあります。熱エネルギーは遠隔地への供給が困難であるため、地消することが必要です。そのためには、熱を最大限利用できる一定範囲の地域に存在する需要家群をつなぐ、いわゆるエネルギーの面的利用を推進することが鍵となります。具体的なエネルギーシステムの形態として、再生可能熱や未利用熱、未利用材や食品残渣等、地域資源を有効活用するケースや、一定の安定的なエネルギー需要が見込まれる公共施設や、熱需要が比較的大きい複数の需要家群に着目し、コージェネレーションの特性を活かすケースなどが考えられます。例えば、島原市では、宝酒造株式会社島原工場からの廃熱を活用し、市が管理する温泉給湯所において温泉給湯の再加温を効率的に行っています。こうした未利用エネルギーの活用を通じて、従来の給湯システムと比較して原油換算値で約45%の一次エネルギーの削減を目指しています。

エネルギーシステム改革とIoT技術の進歩は、こうした分散型エネルギーシステムの普及を一層加速させる契機になり得ます。このため、前述のスマートコミュニティに関する施策の一つとして、地産地消型エネルギーシステムの構築に取り組むこととしています。

【第132-3-5】エネルギーの地産地消の事例(島原市

エネルギーの地産地消の事例(島原市)

出典:
島原市作成

(2)ポスト2030年に向けた水素社会戦略の構築

将来の二次エネルギーでは、電気、熱に加え、水素が中心的役割を担うことが期待されています。水素は、利便性やエネルギー効率が高く、また、利用段階で温室効果ガスの排出が無く、非常時対応にも効果を発揮することが期待されるなど、多くの優れた特徴を有しています。また、将来的に国内外の再生可能エネルギー/未利用エネルギーから安価に水素を供給することが出来れば、自国資源に乏しく、エネルギー源のほとんどを海外に依存する我が国のエネルギー安全保障の確保に貢献できます。

【第132-3-6】水素の製造方法

水素の製造方法

出典:
資源エネルギー庁作成

我が国においては、1981年のムーンライト計画から現在に至るまで、燃料電池の開発・実証を継続的に行った結果、2009年に家庭用燃料電池が、2014年には燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle: FCV)が市場投入され、さらに2016年には燃料電池バス(FCバス)や燃料電池フォークリフト(FCフォークリフト)が市場投入される予定であるなど、30年以上の官民の努力が、世界に先駆けてようやく実りつつあります。また、我が国の燃料電池分野の特許出願件数は世界一位であり、二位以下の欧米をはじめとする各国と比べて5倍以上と、諸外国を大きく引き離しているなど、水素エネルギー利活用分野における我が国の競争力は高いと言えます。

【第132-3-7】水素関係の取組状況の国際比較

水素関係の取組状況の国際比較

(※)
再生可能エネルギー由来の水素ステーション(比較的規模の小さいもの)を含めると78箇所
出典:
資源エネルギー庁作成

一方、水素を日常の生活や産業活動で利活用する社会、すなわち“水素社会”を実現していくためには、技術面、コスト面、制度面、インフラ面で未だ多くの課題が存在しています。例えば、家庭用燃料電池については、官民の普及の努力の結果、2009年の市場投入時点から価格は半減していますが、依然、自立的な普及が期待できる価格水準にはないため、一層の価格低減に取り組む必要があります。このような課題に対応するべく、官民のアクションプランとして、「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を2014年6月に策定しました。このロードマップでは、水素社会実現までの取組を3つのフェーズに分け、戦略的に取り組むこととしています。また、最新の状況を踏まえ、2016年3月にはロードマップの改訂4を行いました。

【第132-3-8】水素社会実現に向けた取組の方向性(水素・燃料電池戦略ロードマップ)

水素社会実現に向けた取組の方向性(水素・燃料電池戦略ロードマップ)
クリックするとPDFが開きます。(PDF形式:7,816KB)

出典:
資源エネルギー庁作成

【第132-3-9】家庭用燃料電池(エネファーム)の普及状況と価格の推移

家庭用燃料電池(エネファーム)の普及状況と価格の推移

出典:
燃料電池普及促進協会の情報を基に資源エネルギー庁作成

【第132-3-10】家庭用燃料電池(エネファーム)のコスト構造

家庭用燃料電池(エネファーム)のコスト構造

出典:
資源エネルギー庁作成

【第132-3-11】家庭用燃料電池(エネファーム)のコスト低減に向けたアクションプラン

家庭用燃料電池(エネファーム)のコスト低減に向けたアクションプラン

出典:
各社からの聞き取りに基づき資源エネルギー庁作成

エネルギーセキュリティに貢献するという水素エネルギー利活用の真の価値を発揮するためには、これまでの政策課題の中心であった、フェーズ1、すなわち水素利用の飛躍的拡大を進めるだけでなく、海外からの再生可能エネルギー/未利用エネルギーを水素として調達するサプライチェーンの構築が不可欠となります。このため、ロードマップに基づき、フェーズ2・3として掲げた水素発電の本格導入や大規模な水素供給システムの拡大、トータルでのCO2フリー水素供給システムの確立に向け、海外からの再生可能エネルギー/未利用エネルギー由来水素等の輸入を含めた水素サプライチェーンの構築や、水素発電の導入、再生可能エネルギーの導入拡大のためのPower to Gas技術5の活用について、検討を深める必要があります。

【第132-3-12】水素サプライチェーンのイメージ

水素サプライチェーンのイメージ

出典:
資源エネルギー庁作成

経済産業省では、2015年度から、オーストラリア産の褐炭から水素を製造し、日本に輸送する実証プロジェクトを開始しています。2015年末には日豪首脳会談において、本プロジェクトへの支持が表明されるなど、世界に先駆けた水素サプライチェーンの構築実証への期待は高まっています。2015年3月末には、関係事業者による技術組合が設立されるなど、取組が加速化しています。

【第132-3-13】日豪首脳による共同声明(2015年12月)

日豪首脳による共同声明(2015年12月)

出典:
外務省HP

また、2015年3月には、福島県において、安倍総理が「福島新エネ社会構想」を発表しました。この構想では、再生可能エネルギーの普及拡大や水素社会の実現などに向けた先駆的取組を福島県で実施することを目指すこととしており、2016年夏頃までに具体策をまとめるべく、関係者による「福島新エネ社会構想実現会議」が始まっています。福島県で再生可能エネルギーから水素を「作り」、「貯め・運び」、「使う」という、製造から利用に至るまでのトータルな仕組みを構築することや、福島県で作られるCO2フリー水素を、県内のみならず、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックで利用することを目指します。

1
時間帯に対応して有意な電気料金の価格差を設けることで、需要家自らが電力の消費パターンを変化させる「電気料金型」と、複数の需要家の節電容量を束ねて取引する「アグリゲーター」と言われる事業者が、需要家に対して指示を行い、特定の時間に一定量の節電を求めることで、ディマンドリスポンスを行う「ネガワット取引型」の2種類がある。欧米において主流であるのは、「ネガワット取引型」である。
2
様々な需要家が参加する一定規模のコミュニティの中で、再生可能エネルギーやコージェネレーション等の分散型エネルギーを用いつつ、ITや蓄電池等の技術を活用したエネルギーマネジメントシステムを通じて、エネルギー需給を総合的に管理し、エネルギーの利活用の最適化を図る取組。
3
成功率=達成率(※)が90%以上であった回数/DR発動回数 ※達成率=実際の需要削減量/節電要請量(DR発動ごと)
4
経済産業省のページを別ウィンドウで開くhttps://www.meti.go.jp/press/2015/03/20160322009/20160322009-c.pdf
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電気をエネルギー源とし、水電解により水素を製造する技術