日時:令和8年1月28日(水)
会場:東京ビッグサイト会議棟
一般財団法人新エネルギー財団が主催する令和7年度「新エネ大賞」受賞者の表彰式が行われました。
「新エネ大賞」は、新エネルギー等に係る機器の開発、設備等の導入、普及啓発、分散型エネルギーの活用及び地域に根ざした導入の取り組みを広く公募し、厳正な審査の上、表彰をすることを通じて、新エネルギー等の導入の促進を図ることを目的としているものです。
平成8年度に第一回が開催され、これまでに334件の優れた案件が表彰され、先導的な事例として新エネルギー等の普及促進に大きな役割を果たしてきました。
募集対象分野は、以下の3部門。
1 製品、周辺機器、関連サービス商品を対象とした「商品・サービス部門」
2 新エネルギー等の導入活動、普及啓発活動を対象としている「導入活動部門」
3 新エネルギーの地域に根ざした取り組みを対象とした「地域共生部門」
令和7年度「新エネ大賞」には48件の応募があり、厳正な審査の結果、経済産業大臣賞1件、資源エネルギー長官賞2件、新エネルギー財団会長賞9件、審査委員長賞2件が受賞されました。また、今回ベンチャー企業特別賞が新設され、1件の受賞者が表彰されました。
全ての受賞事例はこちら[外部サイト]で見ることができます。




今年度の応募件数は「商品・サービス部門」が17件、「導入活動部門」21件、「地域共生部門」10件、合わせて48件の応募をいただきました。今年度は対象応募部門を4部門から3部門に見直したことで応募総数への影響を気にしていましたが、皆さまからの積極的な応募の結果、大きな影響もなく多くのご応募をいただきました。
それぞれに先進性、実績、将来性及び地域との共生などについて評価し、ヒヤリングや現地調査の結果を踏まえて最終審査を行いました。経済産業大臣賞1件、資源エネルギー長官賞2件、新エネルギー財団会長賞9件、審査委員長賞2件、今回新設されたベンチャー企業特別賞1件の、合計15件が選出されました。
今年度の傾向としましては、新エネルギー分野別では太陽光分野が最も多く28件、全体の半分以上を占めています。続いて風力分野5件、バイオマス分野5件、水力分野3件となっております。例年、太陽光発電、風力、バイオマスが多く、3分野で全体の70%を超える比率になっています。この傾向はここ数年変わっておりませんが、今年度は水力分野で例年を超える応募をいただきました。今後も幅広い分野での応募を期待しております。
部門別で整理いたしますと、例年「商品・サービス部門」への応募が最も多い傾向が続いておりましたが、今年度は「導入活動部門」に最も多くの応募申請をいただきました。これは「分散型新エネルギー先進モデル部門」の廃止により、この分野に応募されていた多くの案件がこの「導入活動分野」に流れたものと推測します。
近年減少傾向にありました「地域共生部門」は、わずかではありますが回復してまいりました。
次年度以降にも皆さまからの応募を期待しております。

「国内発の革新的技術で、水力発電システムの低コスト化を実現する新型水車」
ランナ(羽根車)を回転させた水の旋回を残したまま、半径方向に誘導するという世界で類を見ない新技術により、従来型では発電を停止していた定格水量の30%以下の領域でも安定的な発電継続を可能にしました。
早稲田大学の宮川和芳氏にお話をうかがいました。
Q.従来の水車は150年も前からからずっと変わらず使われてきたとうかがいました。新型水車の開発に繋がった着想とは?
「再生可能エネルギーのエネルギー需給バランスをとるためには、水車の運転範囲を拡大しないとなりません。そのためのボトルネックになっていたのは、水量が少ない時に発生するランナ下流の台風みたいな渦なんです。それが解決できないために、ある程度の出力以下のところをカットしています。それは大型の水車でも同じことです。それを無くして小さい流量でも使えるようにすると運転範囲の拡大が可能となります。小さな水量でも、安定して使える水車が今後いるんじゃないかなと。そういう運転幅の広いものはみんなが切望していたんです。」
Q.その切望に応えることができた理由は?
「これまでの水車の設計に関して、ランナの下流側で旋回流れを残してはいけない、真っ直ぐ水を放出するべきとほぼ全ての教科書に書いてあります。でも、この新型水車の羽根の形だとエネルギーを捨てないでも旋回を残せるんです。それはこれまでみなさん誰もやってなかったんですね。私たちは流体機械の多くの開発からその理論の適用が可能となりました。」
Q.その理論を得られたのは、まさに産官学の強みですね。
「そうですね。この水車にはいいこともいっぱいあって、羽根の幅を広くできるんですよ。中小水力は木片や葉っぱなど異物がすごく詰まるんですが、羽根の幅が広いと詰まりにくいんです。新型の水車は従来のものと羽根の形が全然違います。その羽根形状は学生たちが1年くらいかけて苦心して開発しました。計算して最適化して、シミュレーションして、この形を見出したんです。」
Q.今後の展開への期待は?
「いろんな水車の用途がありますよね、例えば上下水道にとか、田畑で農業用水にも使えます、もちろん電力も。いろんな用途で使っていただきいと思います。会社、秋田県のほか、商用機を使っていただいている長野県も一緒に使っていただき、いいねと言っていただいているので、さらにPRしていけたらと思います。」

「大規模洋上風力とデータセンターを組み合わせた再エネ地産地消のモデルケース」
大型蓄電池を併設した洋上風力発電所と、近隣に建設したデータセンターの連携により、日本初の常時再エネ100%を実現。地域版GX・DXを実現する先進的な取り組みです。
合同会社グリーンパワーリテイリング(GPI)、京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)にお話をうかがいました。
Q.洋上風力がデータセンターとの連携のモデルケースですね。
「そうですね。石狩市が推進する「エネルギーの地産地活」を具現化するもので、純国産のグリーンエネルギーの導入拡大と域内での利活用促進という意味では、地域版GX・地域版DX のモデルケースとなると思います。AI のような新しい技術の普及に欠かせないデータセンターは、大量の電力を必要とします。電力供給、脱炭素を実現する風力をはじめとする再エネは、立地条件含めてデータセンターとの相性がよく、今後このようなコラボレーションが増えてくるのではないかと期待しています。」(GPI)
Q.コラボ実現のために一番ご苦労されたところは?
「本取り組みは建設当初から計画をしておりました。洋上風力の建設が遅れてしまうと、KCCS様との事業にも支障が出てしまうわけで、予定通りに建設を終了し、試運転を経て電気を提供するまでは緊張感がありました。今回のコラボレーションの成功は、地域の理解にあると思います。石狩市による「RE ゾーン」構想があり、石狩湾新港エリアに再生可能エネルギー発電設備を集積しつつ、生み出した再エネ電気を同エリアの企業が利用する、この意義を関係者が理解していることが大きいと思います。新しい取り組みをスタートするとき、事業者側は地域の皆様にご理解いただくことに時間をかけることが多いのですが、本件においては皆様に応援いただいたように思います。」(GPI)
Q.さらにはAIの力量が大きいですね。
「そうですね。電力制御に役立つ一方で、AI自体が膨大な電力を消費するという側面もあります。そこで重要になるのが「その電力をどこで使うべきか」という視点です。例えば、AIの学習プロセスを北海道のような再エネが豊富な地域で行うと、物理的な距離による通信遅延がネックになります。しかし、NTTの「IOWN」を活用すれば遅延を極限まで抑えられ、北海道と都内を繋いでも、すぐ近くのデータセンターを利用しているような感覚で運用が可能になります。拠点がどこにあっても一つのデータセンターとして機能するような技術が、今後広がっていくと考えています。」(KCCS)
Q.今後の展開で期待することは?
「今回の成功事例を磨いていって、いろんな地域で京セラコミュニケーションシステムさんと同じような事例を作れたらというのもあります。このケースを他の事業者さんにもお伝えして、私たちも学ばせていただきながら全国でこういった動きが盛り上がっていくことは、国の政策の方向性とも違わないと思っています。」(GPI)
「日本全国には、供給過多などの理由で活用されずに「活用されていない再エネ」がまだ多くあります。これをどうやって活用するのか。再エネに携わるすべての関係者が手を取り合い、知恵を絞って動いていく。そんな未来を実現したいですね。」(KCCS)

「福島復興を後押しする地域共生事業」
大発電事業を通じて福島県の復興に貢献することを事業目的に、売電収入の一部を避難指示解除区域等の自治体へ拠出して福島の復興に寄与。また地域での雇用産業創出も行なっています。
福島復興風力合同会社平野貴之さんにお話をうかがいました。
Q.今回の実現にあたりいちばんご苦労されてたのは?
「原発事故で、住民全員が避難された地域でして、その中で、今お住まいなのは先祖代々受け継いだ土地を守りたいという思いで戻ってこられた方々です。その場所で大規模風力発電所を実施するということで、里山の風景を変えてしまうということを皆さんがどう受け止められるか、それは正直心配でした。ところが皆さん温かく受け入れてくださいました。一緒に地域を盛り上げようという思いで接してくださいました。その中で、地域のみんなで集まれる場所が少ないんだよね、というお話もあったので、皆さんに来ていただいて僕らとも交流できるし、皆さんも交流していただける場所になる管理棟を作ろうと。こんな場所を作っても来ていただけるのかなという心配もあったんですが、今では皆さん頻繁に使っていただいていて、非常にいい形になったなと感じています。皆さん自身も、戻ってきて、なんとかみんなで盛り上げようと、声を掛け合って、地域の方言を守ろうとか紙芝居をしようとか、たくさんの活動をしていただいてありがたいです。」
Q.今後はどんな展開を?
「地域の皆さまで鎮守の森や神社を守ろうという活動がありまして、そういった活動を支援しながら、地域の伝統文化の再生と継承という大切な活動をご一緒できればなと思っています。そして、人材育成。風力発電で、新たな産業を作っていく。それが福島県の考えで経産省の考えでもあるので、それを私どもが推進するエンジンになりたいなと思っています。具体的には、34名という大所帯が常駐して運転・保守に従事しておりますが、まだまだ地元人材の割合が多くない。なので、地元の人材に風力産業に従事してもらえるように、雇用と人材育成をと。簡単な仕事ではなく技術が必要なのでそのためのトレーニング期間が必要になってきます。私たちは地域の風資源を活用して20年30年操業し、設備更新してさらに50年100年と続けていきたい事業ですので、いまから将来の人材を確保して育てていきたいです。」
Q.そのために今回の受賞は糧になりそうですね
「なりますね。若年層の雇用という意味では苦戦しておりまして。ターゲットの工業高校の生徒さんは大手企業さんに行ってしまいがちですが、こういう賞をいただいたということが認知度や信頼性の向上に繋がって、風力発電に関わりたいという地元の若い人材の獲得の大きな力になりそうです!」
東京ビッグサイト内の特設展示アワードコーナーに、今回の受賞者の紹介パネルが展示されました。



新エネ対象受賞者には、要請に応じて「新エネ大賞エンブレム」の活用ができます。エンブレムによってより広く活動が認知されていくことと思います。これまでも、この受賞が事業の信頼性を高める、今後の活動の張り合いになる、と受賞者の皆さんがおっしゃっていました。
今年度も国内発の先進的な発想や技術により実現された新エネ事例を知ることができました。各受賞者はもちろんのこと、応募された皆さんにとって「新エネ大賞」がさらなる先導的な展開とチームのモチベーションを高める糸口になるのではないでしょうか。