新潟県長岡市 片貝ガス田見学&ワークショップ

国内天然ガスを生産する片貝ガス田を視察

2023年2月28日に実施された「NEW ENERGY Field〜生活を支え、未来を生み出す現場体験〜」。『石油資源開発株式会社(JAPEX)』の片貝(かたかい)ガス田を訪れました。首都圏を中心に遠くは青森県や広島県から集まった大学生・大学院生ら15人が参加し、『JAPEX』の社員の方々から説明を受けながら普段見ることができない石油・天然ガスの生産現場を見学しました。

片貝(かたかい)ガス田の外観の写真 大学生・大学院生ら参加者の写真

新潟県は国産天然ガスの約8割を生産する天然ガスの一大拠点

視察に訪れた『石油資源開発株式会社』(以下、JAPEX)は、1955年に特殊会社(日本において特別法により名称、目的、営業活動の範囲が定められて設立される会社)として創立(1970年に民間会社として再出発)されました。法人名に“石油”を冠していますが事業の対象は石油に限らず、主に3つの事業、①石油・天然ガスの探鉱・開発・生産、②天然ガス・LNGの供給、③発電事業・カーボンニュートラル事業を手がけています。

JAPEX写真による説明会の写真 JAPEX写真による説明会の写真

JAPEX写真による説明会の写真 JAPEX写真による説明会の写真

実は新潟県は、国産天然ガスの生産量が全国第一位で、約8割を生産している“天然ガス王国”。令和2年の新潟県のデータによると、県内13か所のガス田から約17億㎥ が生産され、その量はおよそ東京ドーム1700個 分に相当します。

その一大拠点の中に今回訪れた国内最大級を誇るガス田・片貝鉱場はあり、新潟県長岡市の南西14km、小千谷市の北西4kmの丘陵地に位置しています。1960年に浅層(1000m層)を、1978年に深層(4200〜4500m層)を、その後に中間層(2700m層、3200m層)を発見しました。

鉱場の中央基地は、2010年に北プラントと南プラントに分かれ、南プラントではガスのみ処理し、原油や坑水は北プラント側で処理しています。片貝鉱場は『JAPEX』で最も主力であり、平均日産量は原油85kl、天然ガス88万㎥(2021年度)。見学に訪れた2月28日時点では、約110万㎥の天然ガスを生産しており、新潟県内の一般世帯数は約91万世帯、1世帯あたり1日約1㎥のガスを使用すると仮定した場合、片貝ガス田は新潟県全域に行きわたる量のガスを生産していることになります。

現在は、4200mよりも深い深層を中心に生産しています。各坑井(2023年2月末の時点で生産可能井16本)から原油、水、天然ガスが混ざった状態で採取され、パイプライン(自噴線)を通じて中央基地に集められた後、セパレーターと呼ばれる装置で原油と天然ガス及び坑水を分離します。深層から生産される天然ガスはCO2が約7%含まれているため、炭酸ガス除去装置を使ってCO2を1%以下に除去し、水分除去、水銀除去を行ってからパイプラインを使って新潟方面へ天然ガスを送ります。また、原油については各セパレ-タ-にて段階的に圧力を下げ、ガス分、水銀を除去した後、タンクローリーを使って出荷します。

地下5000mもの深層を掘削する技術

見学している学生の写真

19世紀までは綱で叩いて壊すという掘削方法が一般的でしたが、20世紀初頭あたりから「ロータリー掘削」という方法が一般的になりました。これにより、井戸をより早く、深く、安全に、効率的に掘ることができるようになりました。

ロータリー掘削とは、掘削に必要な機械や装置が取り付けられたリグ(掘削装置)を建てて地中に1本9mのパイプを継ぎ足していき、そのパイプの回転により先端に取り付けられたビットと呼ばれる特殊なドリルが地層を掘削する方法です。

このビットには回転部の有無や刃先の形状、材質の違いなどがあり、掘削する地層のタイプに合わせてどの種類を選ぶかが重要です。定期的に磨耗による交換が必要となり、それに伴って約5000mのパイプを半日から1日ほどかけて引き上げる作業が発生するため、ビットの選択は進捗状況に大きな影響を与えます。よって、早く掘れて長持ちするビットを選択することが重要になってきます。

また、パイプ内からビットを通り、パイプの外を回って循環する泥水(掘削流体)の役割も重要です。地下の掘り屑(砕かれた地層)を地表まで運ぶほか、地層が崩れるのを防ぐ、ビットで発生する摩擦熱を冷却する、地層からの流体の侵入を防ぐ(原油と天然ガスを地層の中に抑え込む)などの役割を果たしています。人間の機能に例えると泥水は血液のような存在で、泥水の状態を確認することで、井戸にトラブルが起きていないか確認することにもつながります。

井戸の掘削手法と大規模なプロジェクトを遂行する人々

井戸を掘るとなると、リグ(掘削装置)からまっすぐ下に掘削する「垂直掘り」のイメージが強くありますが、実際には傾斜掘りと水平掘りが一般的です。傾斜掘りはまず井戸を垂直に掘削した後に少しずつ傾斜して掘り進める方法、水平掘りはこの傾斜を真横の状態にして掘り進める方法です。既存の生産基地を利用しながらこの基地の真下にないターゲットを狙う際、斜めに掘ることが必要になってきます。また、2つのターゲットを同時に掘りたい場合に途中から井戸を枝分かれさせて傾斜掘りを行い、ターゲットの地層の厚みが薄く、なるべく長く掘りたい場合に水平掘りを行います。

傾斜掘りには、曲がりがついた特殊なツールを使用します。掘り進める際、地上でこの特殊なツールの傾斜角度と方位を測定しながら、この曲がりの向きをうまくコントロールすることによって、非常に滑らかな坑跡を描くことができます。

現在掘削中の片貝31号井は、250日で掘り進める計画の下に進めています。途中で二股に分かれており、1本目のメイン坑は既に掘り終わりました。計画の掘削深度は5500m、最大傾斜は88度、ほぼ水平の坑井です。現在掘削中の2本目は、4600m付近で二股に分かれ、計画の掘削深度は5280m、最大傾斜は71度で非常に高傾斜の坑井です。

このような井戸を掘削するにあたり、『JAPEX』社員3〜5人、子会社に所属する掘削コントラクター30人、重要な役割を果たす「泥水エンジニア」、井戸を曲げて掘削する技術を有する「傾斜掘りエンジニア」など、それぞれの特別な技術を持った会社もそれぞれの作業に加わり、総勢40人ほどの人員を『JAPEX』社員3〜5人がコントロールしながら24時間作業で掘削が行われています。

”インフラのインフラ”といわれるE&P業界。JAPEX社員にインタビュー

杉山氏、権藤氏、大橋氏の写真

視察後、『JAPEX』社員3人に入社の動機や仕事のやりがいなどについて、インタビューを行いました。インタビューには、杉山氏、権藤氏、大橋氏の3人が参加しました。

インタビューを受ける杉山岳さんの写真

杉山岳(すぎやま・がく)さん 営業本部 営業一部 原油グループ
入社年:2020年

「ビジネスとしてロマンがある。」杉山氏は、石油業界の仕事を熱く語ります。

「E&P(Exploration & Production、石油・天然ガスの探鉱・開発・生産)業界は、“インフラのインフラ”といわれる社会の重要な役割を担っており、社会の役に立ちたいという思いから業界を希望した。インターンで出会ったJAPEXの先輩方が、誇りと熱意を持って仕事に取り組む姿に感銘を受け、入社を決めた。」

「国産原油の輸送においては、小さいタンカーを使うため、回転数を上げる必要があり、スケジュールに追われることが多々あります。天然ガスは溜めることが基本的にできないため、日本海の悪天候の影響を受けながらも天然ガスの井戸を閉めることなく原油の産出を続け、輸送し続けることは非常に困難です。しかし、現場の人々と協力し、トラブルを乗り越えて目標を達成したときには、大きな達成感と喜びを感じます。」と、杉山氏は仕事の醍醐味を学生に伝えました。

インタビューを受ける権藤貴大さんの写真

権藤貴大(ごんどう・たかひろ)さん 長岡事業所 技術部 坑井管理グループ
入社年:2020年

権藤さんは、学生時代に石油生産工学を専攻。地下に井戸を掘って地下から原油を汲み上げる際、地下の岩盤がどのように変形するかをシミュレーションして再現するというJAPEXの事業内容に近い研究を行っていました。

「井戸の坑井が具体的にどう行われているかを知らずに地下について想像を働かせていたため、実際の掘削・生産の様子を知りたくなりました。また、壮大である井戸の坑井にプロジェクトの一員として関わりたくなりました。」

「現在は、井戸の坑井の現場で操業オペレーションの補助として働いていますが、とても面白くやりがいを感じています。昨年には、坑井の最終段階で原油・天然ガスを取り出す装置を付けて産出テストをする時、私はエンジニアとして業務に携わりました。期待と不安の中、初めて原油やガスが出た時にみんなで一致団結して作業を行い、ようやく成果が出て大きな達成感を得ることができた。」と、権堂氏は研究を活かした仕事の面白さとやりがいを学生に伝えました。

インタビューを受ける大橋佐鳳子さんの写真

大橋佐鳳子(おおはし・さほこ)さん 担当部署:長岡事業所 技術部 坑井管理グループ
入社年:2021年

「私は学生時代に石油やエネルギーからはかけ離れた分野の研究をしていました。その内容が基礎研究寄りだったということから今の業界に飛び込んでみたいと思うようになりました。また、就職活動をしていた時、自身が行っている研究が社会に役立っているという実感がないことにもどかしさがあり、社会に役立っていると実感できる仕事に就きたいという思いがありました。また、エネルギー業界は奥が深く、インフラのインフラと言われる事業に強くひかれてこの業界を志望しました。そして、実際に入社する際に会社の人たちと話をして、生き生きと働いている様子が伝わり、自分のカラーにも合っていると思えたので入社を決意しました。」

大橋氏は、研究で培った論理的な思考力や、ドイツ留学時の国際的なコミュニケーションの経験が今の仕事に役立っていると考えています。海外コントラクターとして参加し、英語でコミュニケーションを取る際にその経験を生かすことができたとのことです。

「私のプロジェクトの内容は、権藤さんのように井戸を掘削する方ではなくて、掘られた井戸に対して新たな作業を加えて、増油、増ガスを目指というものです。2週間から1か月ほどのプロジェクトを最後まで任され、プロジェクト中に遭遇するトラブルに対して機転を利かせた対応がうまくいった時や、いろんな人たちの協力のもとに安全作業で無事にプロジェクトを終えることができた時には、やりがいを感じます。」と、大橋氏は語りました。

2030年のエネルギーの在り方を考えるワークショップ

フィールドワークの最後にワークショップが行われ、学生は3チームに分かれて話し合いを行いました。その内容は、カーボンニュートラルとエネルギーの安定供給に向けて、①2030年の電源構成と総発電電力量、②①を達成するためのアクション、③S+3Eでの考察(Safety/安全性、Energy Security/安定供給、Economic Efficiency/経済合理性、Environment/環境適合)を最後に発表するというものでした。

Aチームは「自給率アッププラン」、Bチームは「再エネ倍増計画」、Cチームは「風力と太陽光で自給自足」というプランを発表。クリーンエネルギーと呼ばれる天然ガス(燃やしても窒素酸化物や硫黄酸化物が石油や石炭に比べて少なく、CO2の発生量も少ない)を推進するというアイディアや、安定供給の側面からより厳しい制限の下に安全性を確保した原子力特区を作るというアイディア、また、環境適合については再エネ、原発、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)を通じてCO2の削減を図るというアイディアなど、様々な視点から考えられたアイディアや意見が発表されました。

学生のワークショップの写真 学生のワークショップの写真

学生のワークショップの写真 学生のワークショップの写真

参加者の声 エネルギー業界の重要性やイメージが分かった

参加した学生からは、フィールドワークでの話や社員のインタビューから、エネルギー業界の重要性や事業のスケールを体感できたという声が多く挙げられました。

“国を支えるスケールの大きい仕事だと思うようになった。”

“改めてエネルギー業界の重要性について感じた。誇りを持って業務に携わっているということをそれぞれの社員様の口からお聞きし、インフラに携わるエネルギー業界の意義を強く感じた。”

“エネルギー業界の仕事はダイナミックなものが多いというイメージを持っていましたが、そういった面はありつつ、データ分析に基づいた緻密な仕事である面もあり、面白さを感じました。今までエネルギーという分野に漠然としたイメージを持っていたので、今回のフィールドワークを通して、具体的な仕事の内容や企業が目指す未来を学ぶことが出来ました。”

“電源構成を考える上で,考えるべき環境,経済合理性,供給安定性を常に考える必要があることを知れて良かった。”