第1節 資源供給国との関係強化と上流進出の促進
1.石油・天然ガスの安定的かつ低廉な確保に向けた取組
石油・天然ガスのほぼ全量を海外からの輸入に頼る日本にとって、石油・天然ガスの安定的かつ低廉な確保は重要な課題です。さらに、東日本大震災以降、天然ガスを始め、火力発電のエネルギー源としての化石燃料需要は高い水準で推移しており、その確保の重要性は高まっています。また、昨今、中東情勢が緊迫化している中で、日本は原油の約9割、天然ガスの約2割を中東地域から輸入していることを踏まえれば、チョークポイントであるホルムズ海峡を通らない輸入先の確保等、供給源の多角化を進めることや中東産油国を始めとする資源供給国との良好な関係を深化させることが重要です。
(1)エネルギー安定供給とカーボンニュートラル時代を見据えた包括的資源外交の推進
LNG資源外交は、これまで主に石油・天然ガスと金属鉱物資源の安定供給確保を目的として展開してきました。カーボンニュートラルに向け、世界の資源・エネルギー情勢はより複雑化・不透明化しており、化石資源に乏しい日本は、石油・天然ガスと金属鉱物資源の安定供給確保のため、引き続き資源外交に最大限取り組む必要があります。また、水素・アンモニア、CCS等の脱炭素燃料・技術の将来的な導入・拡大に向けては、今から積極的に取組を開始していくことが必要です。こうした点を踏まえ、石油・天然ガスと金属鉱物資源の安定供給確保、さらには脱炭素燃料・技術の将来的な確保を一体的に推進すべく、「包括的資源外交」を展開します。
その具体的な取組の一つとして、2021年1月には、梶山経済産業大臣とジャーベル産業・先端技術大臣兼アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEO立ち会いの下、経済産業省とADNOC間での燃料アンモニア及びカーボンリサイクルに関する協力覚書を締結しました。日本にとって最大のLNG供給国であるカタールについては、2020年10月に開催されたLNG産消会議2020の機会を捉え、梶山経済産業大臣とアル・カアビーエネルギー担当国務大臣との間でTV会談を実施し、健全なLNG市場形成に向けた協力や日本へのLNG安定供給をはじめとする二国間関係強化に向けた意見交換を行いました。
また、脱炭素化に向けた東南アジア各国の事情を踏まえ、幅広い技術・エネルギーを活用した現実的かつ多様なトランジションを進めるため、2021年11月にはベトナム、2022年1月にはインドネシア、タイ、シンガポールとエネルギー・トランジションの実現に関する閣僚級の協力覚書を締結し、アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブに基づいて、東南アジア各国のカーボンニュートラル目標の達成に向けたロードマップ作成支援等を進めていきます。
また、今後も重要なエネルギー源であるLNGの供給源多角化に向けて、日本への新たなLNG供給源として期待されるモザンビークについては、2019年6月に、日本企業も参画するLNGプロジェクトの最終投資決定が行われました。また、2019年9月のLNG産消会議において、ザカリアス国家石油院総裁と牧原経済産業副大臣との会談の冒頭、JOGMEC、国家石油院、同国国営石油会社の3社による、同国における石油・天然ガス分野の人材育成に関する署名交換式を行いました。日本にとって最大のLNG供給国である豪州も重要な存在です。国際石油開発帝石株式会社(INPEX)がオペレータとして主導・操業する初の大型プロジェクトであるイクシスLNGプロジェクトには、JOGMECを始め国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)による金融支援を行っており、2018年10月に日本に向けたLNGの出荷が開始されました。このプロジェクトにより、日本の天然ガス需要の約7%に相当する年間約570万トンのLNGが日本向けに輸出される予定であり、日本のエネルギーの安定的な供給に大きく貢献するプロジェクトとして期待されています。
(2)中東諸国との資源外交の強化に向けた取組
日本で消費される原油の大半を中東地域の諸国から輸入している現状を踏まえれば、安定供給の確保に向け、中東産油国との友好関係を深化させていくことは重要です。また世界的な脱炭素化の流れを受け、資源国においても、化石燃料資産の座礁化を防ぐ等の理由で、脱炭素分野への関心が高まりつつあり、従来の石油・天然ガス分野にとどまらず、水素・アンモニア、CCSを始めとする脱炭素分野での協力も関係の深化に不可欠です。
世界最大の原油輸出国であり、日本にとっても最大の原油供給国であるサウジアラビアとの間では、2017年3月に安倍総理とサルマン・サウジアラビア国王との首脳会談において合意した「日・サウジ・ビジョン2030」を新たな戦略的パートナーシップの羅針盤として幅広い分野での協力を進めており、2020年12月に第5回日・サウジ・ビジョン2030閣僚会合を開催しました。そのほかにも、2021年11月には、萩生田経済産業大臣が、アブドルアジーズ・エネルギー大臣との間でオンライン会議を行い、二国間関係の強化について議論しました。また、2022年2月及び3月には、岸田総理大臣が、ムハンマド皇太子との間で電話会議を行い、原油の安定供給及び二国間の更なる関係強化についてのコミットメントが示されました。2022年3月には、萩生田経済産業大臣が、アブドルアジーズ・エネルギー大臣との間でオンライン会議を行い、二国間関係の強化について議論しました。
また、日本にとって第2位の原油供給国であるアラブ首長国連邦(UAE)には、日本企業が保有する石油権益が最も集中しています。こうした権益を引き続き確保していくため、UAE政府及びアブダビ首長国に対するハイレベルでの継続的な働きかけや、石油・天然ガス等のエネルギー分野を中心に、同国側の関心の高い教育・医療・農業等を含む広範な分野での協力・交流等を行いました。こうした働きかけや取組の結果、2018年2月、世界有数の埋蔵量を誇る下部ザクム油田権益(10%)等のアブダビ海上油田権益をINPEXが再獲得し、2019年3月には、同社がアビダビの新規鉱区探鉱権益を獲得しました。さらに、2021年2月には、コスモエネルギー開発株式会社がアブダビの新規海上探鉱鉱区権益を獲得しました。日本企業によるこれら権益の獲得は、日本のエネルギーの安定供給に大きく貢献するものであり、資源外交の大きな成果といえます。
日UAEエネルギー関係のさらなる強化・拡大を目指し、2021年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、首脳級、閣僚級等のハイレベルな往来が引き続き制限される中、オンライン会議等を活用した連携強化を図りました。首脳級では、2020年12月に菅総理大臣とムハンマド・アブダビ皇太子との間でオンライン会議を行い、「包括的・戦略的パートナーシップ・イニシアティブ(CSPI)」の下、エネルギー分野のみならず、様々な分野で二国間の協力を深めることで一致しました。UAEとの間では、石油・ガス分野に加え、水素やアンモニアを始めとする脱炭素分野での協力も進んでいます。閣僚級では、梶山経済産業大臣とジャーベル・アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEO兼産業・先端技術大臣との間で、2021年7月にオンライン会議を実施し、水素・アンモニア分野における二国間の協力及びアジアの多様かつ現実的なエネルギートランジションに向けた協力について議論しました。また、2021年1月に経済産業省とADNOCとの間で締結された燃料アンモニア及びカーボンリサイクルに関する協力覚書を皮切りに、2021年7月に日本企業及び政府機関(INPEX、JERA、JOGMEC)とADNOC間の燃料アンモニアに関する共同調査契約の締結等、様々な協力が具体化しました。2022年2月には、萩生田経済産業大臣とジャーベル・アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEO兼産業・先端技術大臣との間でオンライン会議を実施し、国際原油市場の安定化に向けた協力を働きかけるとともに、両国間のエネルギー協力やカーボンニュートラルの実現に向けた連携について議論しました。さらに、エネルギー分野にとどまらず、先端技術やイノベーションの促進等の新たな分野においても二国間協力を深化させることの重要性を確認しました。中東地域からのエネルギー供給を確保するため、サウジアラビアやUAEに加えて、その他の中東資源国との関係を幅広く強化・拡大することが重要です。例えば、カタールは、日本にとって第4位の原油供給国であるとともに、世界最大のLNG輸出国であり、日本にとっても第3位のLNG供給国でもあるため、LNGの安定供給の観点からも重要なパートナーです。2021年10月にオンラインで開催されたLNG産消会議においては、エネルギートランジションの鍵となる資源としてのLNGの位置付けの明確化を目指し、世界最大規模のLNG消費国である日本と世界最大のLNG輸出国であるカタールが、主に①“トランジション・エナジー”として重要性を増すLNGの役割、②LNGをよりクリーンに利用するために、といった2つのテーマで、産消国双方の更なる連携の必要性を確認するための議論をリードしました。このほか、日本にとって第3位の原油供給国であるクウェートとの間では、2021年9月、江島経済産業副大臣とアル・ファーリス石油大臣兼高等教育大臣との間でオンライン会議を行い、石油分野での協力の進展を歓迎するとともに、アジアのエネルギートランジションをはじめ、カーボンニュートラルの実現に向けても二国間で連携することを確認しました。さらに、2022年3月には、萩生田経済産業大臣が、ファーリス副首相兼石油大臣兼内閣担当国務大臣とオンライン会談を行い、国際原油市場の安定化に向けた協力を働きかけるとともに、クリーンエネルギー分野での協力強化を確認しました。また、会談後、両大臣立会いの下、日本貿易保険(NEXI)とクウェート石油公社(KPC)間のエネルギー協力拡大や脱炭素化の促進等を目的とした協力覚書(MOC)の署名式が行われました。
以上のように引き続き、中東各国との資源外交を多角的に展開するとともに、水素・アンモニア等の脱炭素分野を含む包括的な資源外交を展開していきます。また昨今の原油価格高騰を踏まえ、産油国に国際原油市場の安定化にかかる協力の働きかけを行うことで、エネルギー安定供給の確保を目指します。
2.石炭の安定供給確保に向けた取組
石炭は、現時点の技術・制度を前提とすれば、化石燃料の中で最もCO2排出量が大きいものの、調達に係る地政学リスクが最も低く、熱量当たりの単価も低廉であることに加え、保管が容易であることから、現状において安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源です。近年、中国やインド、東南アジア諸国を中心とした新興国における輸入量増加により、世界の石炭海上貿易による日本の割合は低下しています。こうしたアジア新興国での石炭需要は、今後も伸びていくことが見込まれる一方で、最近は脱炭素化に伴う石炭開発停滞への影響から、石炭調達を巡る国際競争はより一層激しくなっていくことが予想されます。日本が必要とする石炭を中長期にわたり、安定的かつ安価に調達するためには、供給源の多角化を進めることや産炭国との良好な関係を深化させることが重要です。
日本は、石炭資源のほとんどを海外からの輸入に頼っており、その中でも豪州とインドネシアからの輸入は全体の7割を超えます。特に豪州は、日本で主に使われる高品位炭の埋蔵量のほか、輸送距離、インフラ整備の状況や政策の動向等、いずれの要素を見ても引き続き日本にとって最も安定した供給国です。一方で、2017年には豪州に上陸したサイクロンにより、炭鉱と石炭輸出港をつなぐ鉄道に大きな被害が発生し需給がひっ迫する等、過度な依存状態はリスクになる可能性があります。また、産炭国での資源ナショナリズムの高まりから、近年ベトナムやインドネシアでは石炭輸出を制限する動きがあり、さらに2020年秋以降には原油・天然ガス等の価格が上昇したことも影響し、石炭の国際市場価格が高騰する事態となりました。
このため、資源エネルギー庁では、JOGMECを通じて、カナダ、コロンビア等で地質構造の調査やベトナム、インドネシア等で石炭産業人材の育成等を行いました。また、リモート環境を用いた石炭採掘・保安技術指導を行い、産炭国との関係強化を図りました。
3.レアメタル等の鉱物資源の確保に向けた取組
鉱物資源は、あらゆる工業製品の原材料として必要不可欠の資源であり、特に、カーボンニュートラル実現に向けて普及拡大が見込まれる電動車等に使用されるリチウムイオン電池や電動モーター用ネオジム磁石の製造には、銅、リチウム、コバルト、ニッケル、レアアース等の資源の重要性が高まっています。これらの資源は、今後、世界的な脱炭素化の流れの中でますます需要が増加すると予想されています。
こうした鉱物資源の安定供給を確保することは日本の製造産業にとって非常に重要な課題です。このため、日本企業による海外資源開発投資促進等を通じて、鉱物資源の調達先の多角化や安定供給の確保につなげていく必要があります。さらに、政治的安定性の高い資源国や資源ポテンシャルは大きいもののインフラ整備や鉱業政策面等投資環境に課題を有する国との継続的な関係構築に取り組むことが重要です。
こうした観点から、2021年10月に閣議決定された「第六次エネルギー基本計画」では、JOGMECを通じた海外権益の確保へのリスクマネー支援や資源探査の推進、国内製錬所におけるリサイクル資源の最大限の活用、レアメタル備蓄制度の整備等の政策の方向性が示されました。
また、2021年6月、12月には、日本が議長国となって有志国とのクリティカルマテリアル・ミネラル会合を開催しました。本会合では、日本、米国、欧州、豪州、カナダの政府関係者及び技術専門家が鉱物資源に関する政策、研究開発等の取組及び今後の課題等について情報交換を行い、安定供給確保等に向けて連携した取組を推進することを確認しました。
さらに、2021年11月には、JOGMECボツワナ・地質リモートセンシングセンターを通じて、南部アフリカ開発共同体(SADC)諸国の技術者、政府関係者等を対象に、リモートセンシング技術普及を目的とした講演会を実施しました。こうした事業を通して、新型コロナウイルス感染症流行下においても資源国との関係強化を図りました。
以上のように、鉱物資源供給国と日本との継続的な関係を構築することで、中長期的な鉱物資源の安定供給につながる機会の拡大を目指していきます。
4.資源権益獲得に向けたリスクマネー供給
日本は、第六次「エネルギー基本計画」で、原油・天然ガスの自主開発比率を2030年に50%以上、2040年には60%以上に引き上げる目標を新たに定めました。また、石炭の自主開発比率については、それぞれ2030年に40%以上、60%以上、また、金属鉱物では銅等ベースメタルの自給率を2030年に80%以上に引き上げるとともに、2050年までにリサイクルによる資源循環も促進することで国内需要相当量の確保を目指すとの目標を掲げ、取組を進めています。
2020年度の石油・天然ガス自主開発比率は約40.6%、石炭自主開発比率は56.4%となりました。また、2018年度の金属鉱物の自給率は50.2%です。
資源権益の獲得のための投資には、探鉱リスクやカントリーリスク等、様々な事業リスクがあり、また、巨額の資金を要しますが、日本企業は、資源メジャーと呼ばれる海外企業等と比べると大幅に資金力が弱い状況にあります。石油・天然ガスについては、中東地域における緊張の高まりや世界のエネルギー供給構造の変化等、国際市場が大きく変革する中、さらなる供給源の多角化等が必要となっており、日本企業による資源権益の獲得を推進するべく、資源外交の推進による相手国との関係強化とともに、資金面での支援がより一層必要となります。2021年度は、2020年度に引き続き、日本企業が参画する各種プロジェクトへのリスクマネー供給を行いました。更に、国内油ガス田としては約20年ぶり、国内海洋油ガス田としては約30年ぶりの新規開発となるプロジェクトとして、島根・山口県沖合における探鉱事業に対する支援を行いました。また、エネルギー安全保障の観点から国内資源の開発も重要となっており、日本企業による国内資源の開発を促進するため、株式会社INPEXの子会社である株式会社INPEX山陰沖開発が島根・山口県沖合においてオペレーターとして実施する探鉱事業について、JOGMECの出資対象として採択しました。2022年4月以降、探鉱を開始する予定です。加えて、水素・アンモニアの原料としての利用も視野に、2023年度から2027年度の間に民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指すという目標の中で、可能な限り早期に成果が得られるよう技術開発等を推進します。
金属鉱物については、2020年度に引き続き、日本企業が参画する探鉱プロジェクトへのリスクマネー供給を行いました。また、JOGMECが実施した初期探査の結果、有望性が見込まれるレアアース・コバルトを随伴する銅探鉱プロジェクトを日本企業に引き継ぎ、日本企業の資源開発上流権益獲得につながる実績を上げました。このようなJOGMECのリスクマネー供給強化を通じて、日本企業の権益獲得支援を推進していきます。
〈具体的な主要施策〉
(1)石油天然ガス田の探鉱・資産買収等事業に対する出資金【2021年度当初:513.0億円、2021年度産投:242.0億円】
JOGMECは、日本資源開発会社等による石油・天然ガスの探鉱・開発や油ガス田の買収等を資金面で支援するため出資及び債務保証を行っています。2021年度は、2020年度に引き続き、北カスピ海石油プロジェクトやアバディLNGプロジェクト、モザンビークLNGプロジェクトに対して出資等を行いました。
(2)金属鉱物に係る開発出資・債務保証等【2021年度産投:100億円】
JOGMECは、日本法人の海外における鉱物資源の開発プロジェクト等を資金面で支援するため出資及び債務保証等を行っています。2021年度は日本企業が参画する米国における亜鉛プロジェクト等に対し探鉱融資を行いました。
(3)政府系金融機関による資源金融(国際協力銀行(JBIC))【金融】
日本企業が、長期引取契約に基づく資源輸入や、自ら権利を取得して資源開発を行う場合、さらには資源開発に携わる日本企業の競争力が強化される場合又は資源確保と不可分一体となったインフラ整備等、日本にとって重要な資源の海外における開発及び取得を促進する場合に、国際協力銀行は輸入金融や投資金融による支援を行いました。
2021年度は、日本企業によるアラブ首長国連邦アブダビ首長国からの長期原油輸入向けの融資等の実施を通じ、日本にとって重要な資源である天然ガスや原油の長期・安定供給確保を金融面から支援しました。
(4)貿易保険によるリスクテイク(日本貿易保険(NEXI))【金融】
海外における重要な鉱物資源またはエネルギー資源の安定供給に資する案件に関し、日本貿易保険(NEXI)は通常よりも低い保険料率で幅広いリスクをカバーする資源エネルギー総合保険等を通じて、日本の事業者が行う権益取得・引取等のための投融資に対し支援を行っています。
資源エネルギー総合保険の適用対象を2018年10月に、日本事業者による本邦向けに限定した長期引取契約がないプロジェクトにも拡大したところ、2020年に第一号案件としてモザンビークにおけるLNGプロジェクトについて保険の引受けを実施しました。なお、本プロジェクトは2019年LNG産消会議にて発表された、5年間で日本から100億ドルのファイナンス供与を行うというコミットメントにも該当する案件です。
さらに、膨大なインフラ投資需要に対応するため、機関投資家を含めた新たな資金提供者を呼び込むことを目的にインフラファンドやプロジェクトボンドへの貿易保険による支援を開始しており、リスクマネー供給に取り組んでいます。
また、NEXIでは2020年に新たにLEADイニシアティブを創設し、カーボンニュートラル・デジタル分野等の産業競争力の向上、外国政府等との国際連携推進や社会課題解決に寄与する案件については、積極的に融資保険の適用を行うこととしました。2020年12月にNEXIはサウジアラビア王国財務省と協力覚書を締結しましたが、これは、LEADイニシアティブのもとで、日本にとって最大の原油輸入先国であり、エネルギー安全保障上重要な同国との関係強化を図るもので、同国における本邦企業のビジネス機会の拡大に繋がることも期待されます。
(5)海外投資等損失準備金制度【税制】
本制度は、海外における資源探鉱・開発に当たり、資源開発事業法人等の株式等の価格の低落による損失に備えるため準備金を積み立てた場合に、その積立額の損金算入ができる制度であり、2022年度税制改正において、適用期限が2024年3月31日まで延長されました。2021年度はインドネシアやチリで本制度を活用したプロジェクトが進められました。
(6)探鉱準備金・海外探鉱準備金制度及び新鉱床探鉱費・海外新鉱床探鉱費の特別控除制度(減耗控除制度、海外減耗控除)【税制】
鉱業を営んでいる者が、一定の鉱物に係る新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費の支出に備えるため準備金を積み立てた場合にその積立額の損金算入ができる制度、及びその準備金を取り崩して新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費を支出した場合等には一定額の損金算入ができる制度です。2022年度税制改正において、対象鉱物から国外にある石炭、亜炭及びアスファルトを除外した上で、適用期限が2025年3月31日まで延長されました。
(7)石油天然ガスの権益確保に向けた海外の地質構造調査や情報収集等事業【2021年度当初:32.0億円】
事業リスクが高く、日本企業が探鉱に踏み切れていない海外のフロンティア地域等において、JOGMECが地質構造調査を行い、優先交渉権の獲得等を目指しています。また、産油・産ガス国における資源開発に係る諸情勢を始め、専門性の高い情報の調査・分析を行い、日本企業へ情報提供することによって、日本企業による有望な石油・天然ガス権益の獲得等を支援しています。2021年度は、引き続きアゼルバイジャン、ベトナム等における地質構造調査を実施しました。
(8)石油天然ガス権益・安定供給の確保に向けた資源国との関係強化支援事業費【2021年度当初:41.0億円】
資源国のニーズに対応して、資源分野のみならず、教育や医療等、幅広い分野での協力事業を実施するとともに、資源国に対する日本からの投資促進・事業展開等について支援を行い、資源国との戦略的かつ重層的な関係を構築し、石油・天然ガス権益の確保や安定供給の確保を実現しています。2021年度は、引き続き、サウジアラビア、UAE等との間で、産学の連携強化を行うとともに、教育・農業、医療等の広範な分野での協力事業を実施し、二国間関係の更なる強化を図りました。加えて、豪州、オマーン等における新規協力事業を実施し、供給源の多角化に向けた取組を行っています。
(9)海外炭の開発支援事業【2021年度当初:7.5億円】
日本企業の権益獲得を支援し、自主開発比率60%維持を目指すため、海外の産炭国において、日本企業が行う探鉱活動等への支援や炭鉱開発に不可欠なインフラ調査等を実施しました。
(10)産炭国に対する石炭採掘・保安等に関する技術移転等事業【2021年度当初:13.5億円】
日本の優れた炭鉱技術を、採掘条件の悪化が予想される海外産炭国へ移転するため、リモート環境を用いた海外研修生の研修事業、日本の炭鉱技術者による海外炭鉱研修事業等を実施しました。
(11)鉱物資源開発の推進のための探査等事業【2021年度当初:18.7億円】
省エネ・再エネ機器等の製造に必要不可欠な銅、コバルト、レアアース等の鉱物資源の安定供給を確保するため、初期段階からの資源探査等を実施しました。
(12)希少金属資源開発推進基盤整備事業【2021年度当初:2.5億円】
IT製品等の製造に必須の希少金属資源の安定供給を確保するため、初期段階からの資源探査等を実施しました。
(13)大型船の受入れ機能の確保・強化
国土交通省では、国際バルク戦略港湾政策として、大型船が入港できる港湾を拠点的に整備し、企業間連携による大型船を活用した共同輸送を促進する等、資源・エネルギー等の安定的かつ効率的な海上輸送網の形成に向けた取組を推進しました。
(14)JICAの機能強化【制度】
2015年5月に「質の高いインフラパートナーシップ」、同年11月に「質の高いインフラパートナーシップのフォローアップ」、2016年5月に「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」を発表し、円借款や海外投融資の制度改善を行ってきました。具体的には、円借款の迅速化とともに、ドル建て借款やハイスペック借款の創設、円借款の本邦技術活用条件(STEP)に係る制度改善及びO&Mに係る新しい支援パッケージの構築を行いました。また、海外投融資については、融資対象拡大、出資比率規制及び現地通貨建ての柔軟な運用・見直しを行うとともに、事業者にとっての利便性向上のため、案件採択・審査プロセスの迅速性・予見可能性・透明性の強化を図りました。