第1節 原子力をめぐる環境と政策対応

2018年7月に閣議決定された「エネルギー基本計画」に基づき、引き続き、原子力については、安全最優先で地元の理解を得ながら再稼働を進め、可能な限り依存度を低減するとの方針の下、2030年度のエネルギーミックスにおける電源構成比率の実現を目指し、安全最優先の再稼働などの必要な対応を着実に進めることとしており、直近では2020年11月に、女川原子力発電所2号機について、2021年4月に、高浜原子力発電所1・2号機、及び美浜原子力発電所3号機について、それぞれ地元から再稼働への理解表明がなされています。さらに、2050年に向けては、あらゆる選択肢を追求する「エネルギー転換・脱炭素化を目指した全方位で野心的な複線シナリオ」を採用する方針の下、様々なニーズに応える原子力分野のイノベーションなどを通じた人材・技術・産業基盤の強化やバックエンド問題の解決に向けた技術開発を進めることとしています。

こうした中で、2020年10月には、我が国は2050年カーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言し、同年12月には「カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が取りまとめられました。その中で、原子力については、「可能な限り依存度を低減しつつも、安全性向上を図り、引き続き最大限活用していく。安全最優先での再稼働を進めるとともに、安全性に優れた次世代炉の開発を行っていくことが必要である。」とされています。

一方で、今後も原子力発電を安定的に利用するためには、国内に約1.9万トン存在する使用済燃料への対処が重要です。我が国は高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度低減、資源の有効利用の観点から、核燃料サイクルの推進を基本的方針としています。日本原燃の六ヶ所再処理工場は、2020年7月に事業変更許可を取得し、安全確保を最優先に2022年度上期の竣工を目指しています。これを受け、2020年10月に、政府と青森県との意見交換の場である核燃料サイクル協議会を約10年ぶりに開催し、政府一丸となって原子力・核燃料サイクル政策を推進する方針などを改めて示しました。その後、同社のMOX燃料工場も2020年12月に事業変更許可を取得し、2024年度上期の竣工に向け取組を進めています。

また、六ヶ所再処理工場の竣工に当たっては、プルトニウムの適切な管理と利用への取組が不可欠です。電気事業連合会は、2020年12月に新たな「プルサーマル計画」を、2021年2月に新たな「プルトニウム利用計画」を公表しました。さらに、日本原燃からも2020年12月に六ヶ所再処理工場などの操業計画が示されました。これらを踏まえ、再処理事業の実施主体である使用済燃料再処理機構が中期計画を策定、2021年3月に経済産業省が原子力委員会の意見も聴取した上で認可し、プルトニウムバランスの確保に向けた具体的な取組方針が示されました。

さらに、核燃料サイクルを進める上では、使用済燃料の貯蔵能力の拡大も重要です。2015年11月に策定された「使用済燃料対策推進計画」の達成に向けて、電気事業連合会が約6千トン分の貯蔵能力の拡大に取り組んでいます。具体的には、2020年9月に四国電力伊方発電所の乾式貯蔵施設が設置変更許可を取得し、さらに2020年11月にリサイクル燃料貯蔵のむつ中間貯蔵施設が事業変更許可を取得するなど、計画達成に向けた取組が進展しています。

核燃料サイクルの中で発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分については、2019年に取りまとめた取組方針に沿って、対話活動を進めて行く中で、地層処分事業をより深く知りたいと考える関心のあるグループが全国的に増えてきており、2020年11月には北海道寿都町、神恵内村で文献調査が開始されました。

2020年度に行った施策は、以下の各節に記述しているとおりです。