第4節 その他制度・予算・税制面等における取組

<具体的な施策>

1.制度

農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律

「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(平成25年法律第81号)」を積極的に活用し、農林地等の利用調整を適切に行いつつ、市町村や発電事業者、農林漁業者等の地域の関係者の密接な連携の下、再生可能エネルギーの導入と併せて地域の農林漁業の健全な発展に資する取組を促進しました。

2.予算事業

(1)太陽光発電

①太陽光発電の導入可能量拡大等に向けた技術開発事業【2020年度当初:30.0億円】

太陽光発電システムの設置に適した未開発の適地が減少する中、従来の技術では設置できなかった場所への太陽光発電システムの導入を可能とするため、軽量化、曲面追従化等の立地制約を克服するための革新的な技術等の要素技術の開発を実施するとともに、太陽光発電の長期安定電源化に資するため、発電設備の信頼性・安全性の確保、資源の再利用化を可能とするリサイクル技術の開発、系統影響を緩和する技術の開発等を実施しました。

②営農型太陽光発電システムフル活用事業【2020年度当初:0.1億円】

営農型太陽光発電で発電した電気を自らの農業経営の高度化に利活用し、営農型太陽光発電のメリットを営農面でフルに活用するためのモデル構築を支援しました。

(2)風力発電・海洋エネルギー

①風力発電等に係るゾーニング導入可能性検討モデル事業【2020年度当初:3.3億円】

環境保全と両立した形で風力発電事業の導入促進を図るため、個別事業に係る環境影響評価に先立つものとして、関係者間で協議しながら、環境保全、事業性、社会的調整に係る情報の重ね合わせを行い、総合的に評価した上で環境保全を優先することが考えられるエリア、風力発電の導入を促進しうるエリア等の設定し活用する取組として風力発電に係るゾーニング実証事業を6の地域で実施し、2020年3月に公表した「風力発電に係る地方公共団体によるゾーニングマニュアル(第2版)」を参考にした取組の実証を図りました。

②海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用調整に必要な経費について【2020年度当初:3.3億円】

再エネ海域利用法における促進区域3の指定に向けて、既に一定の準備段階に進んでいる区域10区域を整理し、このうち4区域を有望な区域として、促進区域の指定基準への適合性を確認するための海域の状況調査の実施及び促進区域の指定等に関し必要な協議を行うための協議会を開催しました。また、既に促進区域に指定している5区域について、公募を開始し、うち1区域については審査を開始した。

③洋上風力発電等の導入拡大に向けた研究開発事業【2020年度当初:76.5億円】

浮体式洋上風力発電の低コスト化を目的とした実証事業では、北九州市沖において3MW風車を搭載したバージ型浮体(実証機)の実証運転を前年度から継続して実施し、各種メンテナンスや観測データによる設計検証等技術開発等を行いました。また、浮体式のさらなるコスト低減を実現するため、ガイワイヤ支持やタレットを用いた一点係留による先進的な要素技術を用いた浮体式洋上風力発電システムの実証研究に向けて実施設計を開始しました。着床式洋上風力発電においては、資本支出に占める割合が高い基礎・施工費に関する実証に先立ち、これらの技術の適用が想定される海域の特性などを踏まえた、低コスト化に資する機器の設計、製作等を実施しました。風車の運用・維持管理における研究開発については、前年度に構築したAIを活用したメンテナンス技術や、それによる効果の検証等に加え、ダウンタイムの低減等を通じたコスト低減に資する技術開発を実施しました。

④浮体式洋上風力発電の低コスト化・普及促進事業【2018年度当初:30.0億円】※一部繰り越し、2019年度、2020年度実施。

2013年10月から、国内初の商用スケール(2MW)の実証機の運転を開始し、環境影響、気象・海象への対応、安全性等に関する情報収集等を行いました。この実証試験を通じて、2015年には、高い安全性や信頼性を有する効率的な発電システムの確立に成功し、当該実証の成果として、2016年から国内初の洋上風力発電の商用運転が開始されており、風車周辺に新たな漁場が形成されるなど、副次効果も生じています。

また、2016年度からは、民間による浮体式洋上風力発電事業を促進するため、海域動物や海底地質等を正確かつ効率的に調査・把握する手法及び浮体式洋上風力発電の海域設置等の施工に伴い発生するコストやCO2排出量を低減する手法の開発・実証を進めており、2019年度は、前年度に引き続き、浮体式洋上風力発電の本格的な普及拡大に向け、施工を低炭素化・高効率化するため、洋上施工コストを低減させる浜出船の活用など、施工手法等の確立を目指す取組を行いました。

⑤福島沖での浮体式洋上風力発電システムの実証研究事業【2020年度当初:25.0億円】

「福島イノベーション・コースト構想」の実現のため、福島沖において、複数の浮体式洋上風車と浮体式洋上変電所による本格的な実証研究を進め、安全性・信頼性・経済性の検証等を行うとともに、浮体式洋上風車の低コストかつ安全性が考慮された撤去実証を行いました。

⑥浮体式洋上風力発電による地域の脱炭素化ビジネス促進事業【 2020年度当初:5億円】

深い海域の多い我が国における浮体式洋上風力発電の導入を加速するため、浮体式洋上風力発電の早期普及に貢献するための情報や、地域が浮体式洋上風力発電によるエネルギーの地産地消を目指すに当たって必要な各種調査や当該地域における事業性・二酸化炭素削減効果の見通しなどを検討し、脱炭素化ビジネスが促進されるよう取組を行いました。

(3)バイオマス発電

地域で自立したバイオマスエネルギーの活用モデルを確立するための実証事業【2020年度当初:11.3億円】

地域におけるバイオマスエネルギー利用の拡大に資する技術指針及び導入要件を策定するとともに、当該指針等に基づき地域特性を活かしたモデル実証を行うため、間伐材や家畜排せつ物等のバイオマス利用システムのフィージビリティスタディ事業に加え、間伐材や竹等の木質系バイオマスや、都市ゴミや牛ふん等の湿潤系バイオマス利用システムの実証事業、そして要素技術開発事業(小規模低コスト家畜排せつ物メタン発酵の技術開発事業)を実施しました。また、モデル事業の横展開を図るべく、ワークショップを開催しました。

(4)水力発電

水力発電の導入促進のための事業費補助金【2020年度当初:20.0億円】

水力発電の事業性評価や地域住民等の理解促進、既存発電所の増出力又は増電力量を図る更新工事、高効率化やコスト低減に資する発電設備の製作、実証を支援することによって、ベースロード電源である水力発電の事業化、既存発電所出力の増加を推進しました。  

(5)地熱発電・熱利用

①地熱発電の資源量調査・理解促進事業費補助金【2020年度当初:104.5億円】

地熱発電は、天候等の自然条件に左右されず安定的な発電が可能なベースロード電源であり、我が国は世界第3位の地熱資源量(2,347万kW)を有しています。一方で、資源探査に係るリスクやコストが高い、温泉資源との調和を図り地域の理解を得ることが必要といった課題があることから、探査リスクを低減するため、新規の有望地点を開拓するためのポテンシャル調査や事業者が実施する地表調査や掘削調査などの初期調査に対して支援を行うとともに、地域の理解を促進するため、地熱発電に対する正しい知識の共有等を行うための勉強会などの取組に対して支援を行いました。

②地熱資源探査出資等事業

地熱資源の蒸気噴出量を把握するための探査に対する出資や発電に必要な井戸の掘削、発電設備の設置等に対する債務保証を行うことで、地熱資源開発を支援しました。

③地熱発電や地中熱等の導入拡大に向けた技術開発事業【2020年度当初:30.0億円】

地熱発電は、資源探査の段階ではリスクやコストが高く、発電段階では、運転の効率化や出力の安定化といった課題があり、これら課題を解決するため、探査精度と掘削速度を向上する技術開発や、開発・運転を効率化、出力を安定化する技術開発を行いました。また、発電能力が高く開発が期待されている次世代の地熱発電(超臨界地熱発電)に関する詳細事前検討を行いました。

また、地中熱、太陽熱、雪氷熱などの再エネ熱については、我が国の最終エネルギー消費の約半分は熱需要であることから、再エネ熱の効果的な利用により空調や給湯に使われる電力や燃料の消費量を抑制していくことは、エネルギー需給を効率化する上で効果的な取組となります。他方、再エネ熱の利用拡大に当たっては、高コスト、担い手となる事業者の不足などの課題があります。このため、本事業では、再エネ熱利用システムの導入拡大に向け、再エネ熱の設計から施工までに関わる事業者の体制を構築し、業界横断的に一貫してコスト低減に資する技術開発に取り組みました。

(6)系統制約克服及び調整力確保への対応

①再生可能エネルギーの大量導入に向けた次世代型の電力制御技術開発事業【2019年度当初:31.9億円】

再エネのさらなる導入拡大を図り、主力電源化を進めるため、ノンファーム型接続、配電系統における潮流の最適制御、直流送電システムの基盤技術について研究開発を支援しました。

②風力発電のための送電網整備実証事業費補助金【2020年度当初:91.5億円】

力発電の適地において、送電網の整備及び技術的課題の解決を目的とした実証事業を行いました。

③福島県における再生可能エネルギーの導入促進のための支援事業費補助金【 2020年度当初:40.0億円】

阿武隈山地や福島県沿岸部における再エネ導入拡大のための共用送電線の整備及び、当該地域における風力、太陽光等の発電設備やそれに付帯する送電線等の導入を支援するとともに、福島県内の再エネ関連技術について、実用化・事業化のための実証研究を支援しました。

(7)その他 

①再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業【2020年度当初:50.0億円】

低炭素社会の実現に資することを目的に、地域における再エネ普及・拡大の妨げとなっている課題への対応の仕組みを備えた取組等について、地方公共団体等に対し、再エネ設備の導入支援等を行いました。

②地域の防災・減災と低炭素化を同時実現する自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業【2020年度当初:116.0億円】

地域防災計画等に位置づけられた避難施設等に、平時の温室効果ガス排出抑制に加え、災害時にもエネルギー供給等の機能発揮が可能となり、災害時の事業継続性の向上に寄与する再エネ設備等の導入支援等を行いました。

③地域資源活用展開支援事業【2020年度当初:0.3億円】

地方公共団体や農林漁業者の組織する団体等が農山漁村の地域循環資源を再エネ等として活用し、地域の持続可能な発展を目指す取組について、計画策定のサポートや関連事業者とのマッチング、相談対応、情報発信を支援しました。

④民間事業者による分散型エネルギーシステム構築支援事業【 2020年度当初:3.0億円】

地域のエネルギー需給の特性に応じた再エネ設備導入やエネルギー管理システム構築など、地域に存在する再エネ等の分散型エネルギーを地域内で効率的に活用する地産地消型エネルギーシステムを構築する事業に対して支援を行いました。

⑤戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発【2020年度当初:31.7億円】

2030年の社会実装を目指し、低炭素社会の実現に貢献する革新的な技術シーズ及び実用化技術や、リチウムイオン蓄電池に代わる革新的な次世代蓄電池等の世界に先駆けた革新的低炭素化技術の研究開発を推進しました。

⑥未来社会創造事業(「地球規模課題である低炭素社会の実現」領域)【 2020年度当初:8.3億円】

2050年の社会実装を目指し、エネルギー・環境イノベーション戦略等を踏まえ、低炭素社会の実現に資する、従来技術の延長線上にない革新的エネルギー科学技術の研究開発を推進しました。

⑦新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術開発事業【 2020年度当初:18.8億円】

太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス、太陽熱・雪氷熱・未利用熱、燃料電池・蓄電池、エネルギーマネジメントシステム等における中小・ベンチャー企業が有する潜在的技術シーズを発掘し、その開発及び実用化を支援しました。

⑧下水道革新的技術実証事業【2020年度当初:297億円の内数】

下水道事業における再エネ創出技術等の導入を促進するため、ICT活用スマートオペレーションによる省スペース・省エネ型高度処理技術の実証を実施しました。

⑨CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業【2020年度当初:65.0億円の内数】

再エネを活用した自立分散型エネルギーシステムの普及のため、地下鉄の湧水を介した地中熱を最大限活用したゼロエネルギー空調システムや、電気自動車を家庭等に導入した再エネの調整力として活用するいわゆるV2Hの実現を容易にする車載用蓄電池と定置型蓄電池間の双方向充電システムの技術開発を実施しました。また、離島、港湾及び沿岸域等の海洋エネルギーを活用できる次世代型高効率波力発電システムの技術開発・実証を行いました。加えて、大都市域に共通して存在する帯水層の熱利用ポテンシャルを活用した業務用ビル空調向けのオープンループ型地中熱システムの技術開発・実証を実施しました。

⑩ 地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業【2020年度当初:40.0億円】

公共施設等に再エネや自営線等を活用した自立・分散型エネルギーシステムを導入するなどした上で、地域の再エネ比率を高めるためのエネルギー需給の最適化を行うモデル事業の構築や、変動制再エネ(太陽光や風力等)の主力電源化に向け、需要側の運転制御可能な省CO2型需要側設備等の導入等に対する補助を行いました。

⑪ブロックチェーン技術を活用した再エネCO2削減価値創出モデル事業【2020年度当初:30.0億円の内数】

これまで十分に評価又は活用されていなかった自家消費される再エネのCO2削減価値について、低コストかつ自由に取引できるシステムを、ブロックチェーン技術を用いて構築し、CO2削減価値が適切に評価される社会へのパラダイムシフトを起こすことで再エネのさらなる普及を目指しています。2020年度は環境価値の属性情報を表示・閲覧・検索可能な取引システムを構築し、環境価値の購入意思や支払意思額を高めるナッジ手法を明らかにするための行動変容実証を実施しました。

⑫国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費【 2020年度当初:3.8億円】

J-クレジット制度の運営に取り組みつつ、同制度を利用した省エネ・再エネ設備の導入を促進するため、同制度でクレジットを創出・活用する企業・自治体等に対して制度利用支援等を実施しました。あわせて、同制度におけるクレジット需要を開拓するため、各種制度との連携を図りつつ、クレジット制度利用の推進事業を行いました。

⑬環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進【2020年度当初:694.8億円の内数 ほか、臨時・特別の措置(防災・減災、国土強靱化関係)470.0億円の内数】【2020年度第1次補正:57億円の内数】【2020年度第3次補正:1,305億円の内数】

地球環境問題が喫緊の課題となっている中、公立学校施設に対して、文部科学省、農林水産省、国土交通省及び環境省が協力して、環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備を推進しており、再エネ設備を導入する場合には、費用の一部を補助しました。   

⑭エコリース促進事業【2020年度当初:15.7億円の内数】

中小企業等が、再エネ設備等の脱炭素機器をリースにより導入する際に、総リース料の一部を助成しました。

⑮新エネルギー等の導入促進のための広報等事業【2020年度当初:6.5億円】

再エネの普及の意義やFIT制度の内容について、展示会への出展、パンフレットの作成、Webサイト等の活用などを通じて発電事業者をはじめとする幅広い層に対する周知徹底を図るとともに、地域密着型の再エネ発電事業の事業化に向け、各種支援施策の紹介や許認可手続の案内などの支援を実施しました。また、住宅用太陽光発電の買取期間終了及びFIT制度の抜本見直しに係る周知や需給一体型の分散型エネルギーシステムの普及促進等について情報提供等を行いました。

⑯カーボンリサイクル技術等を活用したバイオジェット燃料生産技術開発事業【2020年度当初:45.0億円】

バイオジェット燃料の2030年頃の商用化を目指し、バイオマスのガス化・液化(木材等をH2とCOのガスに変換し、触媒によりガスから燃料を製造)や微細藻類の培養技術等優れた要素技術を含めた一貫製造プロセス構築のためのパイロット規模の検証試験等やATJ技術(触媒によりバイオエタノールから燃料を製造)に係る実証事業等を実施しました。

⑰脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業【2020年度当初:80.0億円】

再エネと動く蓄電池としての電気自動車等を組み合わせながら、各地域に敷設した自営線により地産エネルギーを直接供給すること等により、地域の再エネ自給率を最大化させるとともに、防災性も兼ね備えた地域づくりを行う事業に対して支援をしました。

⑱ 分散型エネルギーインフラプロジェクト【2020年度当初:7.0億円の内数】

地方公共団体を核として、需要家、地域エネルギー会社及び金融機関等、地域の総力を挙げて、バイオマス、廃棄物等の地域資源を活用した地域エネルギー事業を立ち上げる地方公共団体のマスタープラン策定を支援するとともに、関係省庁と連携して総務省に事業化ワンストップ窓口を設置しマスタープランの円滑な事業化を支援しました。

3.税制

(1)省エネ再エネ高度化投資促進税制<再生可能エネルギー部分>【税制】

FIT制度からの自立化や長期安定発電の促進に大きく貢献する再エネ発電設備等を取得等した場合に、その取得価額の14%を特別償却できる税制措置を講じました(2021年3月31日までの間)。

(2)再生可能エネルギー発電設備に係る固定資産税の特例措置【税制】

FIT制度の認定を受けた再エネ発電設備(太陽光発電設備については、FIT制度の認定を受けていないもの)を取得した場合、固定資産税を3年間にわたって軽減する措置を講じました。2020年度税制改正において、本措置の適用期限を2022年3月31日まで、2年間延長しています。

(3)バイオ燃料製造設備に係る固定資産税の軽減措置【税制】

農林漁業由来のバイオマスを活用した国産バイオ燃料の生産拡大を図るため、「農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律(平成20年法律第45号)」に基づく生産製造連携事業計画に従って新設されたバイオ燃料製造設備(エタノール、脂肪酸メチルエステル(ディーゼル燃料)、ガス、木質固形燃料の各製造設備)に係る固定資産税の課税標準額を3年間にわたり、ガス製造設備に係る課税標準を価格の2分の1、それ以外の製造設備を3分の2に軽減する措置を講じました(2022年3月31日までの間)。

(4)バイオ由来燃料税制の整備及び施行【税制】

バイオ燃料の導入を加速化するため、バイオエタノール等を混和して製造した揮発油については、これまでガソリン税(揮発油税及び地方揮発油税)の課税標準(混和後の揮発油の数量)から混和されたエタノールの数量を控除する措置を講じてきており、2018年度税制改正において本措置の適用期限を5年間延長しています(2023年3月31日までの間)。また、2020年度税制改正において課税標準の特例措置の対象となるバイオエタノール等の範囲に、カーボンリサイクル技術を用いて製造されるエタノール等を加える措置を講じました(2020年4月1日から2023年3月31日までの間)。

当該措置により、バイオエタノールの混合分の税額(ガソリン1リットルについて平均約0.91円(2019年度実績))が軽減されました。また、バイオエタノールをガソリンに混合するために用いられるETBEのうち、バイオマスから製造したエタノールを原料として製造したものにかかる関税率(3.1%)及びバイオマスから製造したエタノールをそのまま輸入する場合にかかる関税率(10%)について、2021年度税制改正において引き続き暫定的に1年間無税とする措置を講じました。当該措置により、ETBEを国内製造するための輸入バイオエタノールの関税額分(ガソリン1リットルについて平均約0.002円(2019年度実績))及び輸入ETBEの関税額分(ガソリン1リットルについて平均約0.083円(2019年度実績))が軽減されました。

4.財政投融資

環境・エネルギー対策資金(非化石エネルギー関連設備)【財政投融資】

再エネ発電設備・熱利用設備を導入する際に必要となる資金を日本政策金融公庫から中小企業や個人事業主向けに低利で貸し付けることができる措置を講じました。

5.その他の取組

(1)再生可能エネルギー推進に向けた規制・制度見直し

2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けて、再生可能エネルギーに係る規制・制度の見直しも本格的に検討が開始されました。2020年11月に、内閣府特命担当大臣(規制改革)の下で、関連府省庁にまたがる再生可能エネルギー等に関する規制等を総点検し、必要な規制見直しや見直しの迅速化を促すことを目的として、「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」が設置され、これまで8回にわたって以下の議題について、必要な規制見直しが検討されてきました。

334-4-1

同タスクフォースにおける規制・制度見直しの進捗として、例えば、農地の活用に関しては、タスクフォースからの指摘に対応していくつかの見直しが既に実施されています。営農型太陽光発電について、荒廃農地を再生利用する場合は、おおむね8割以上の単収を確保する要件は課さず、農地が適正かつ効率的に利用されているか否かによって判断することに制度変更がなされました。また、再生困難な荒廃農地について、非農地判断の迅速化や農用地区域からの除外の円滑化について助言するとともに、農用地区域からの除外手続、転用許可手続が円滑に行われるよう、同時並行処理等の周知徹底なども実施されました。

また、タスクフォースにおいては、再生エネルギーの促進を阻む系統制約や市場制約についても取り上げられました。中でも、再生可能エネルギーの主力電源化及び最大限の導入に向けては、透明性が確保され、かつ電源間の公正な競争環境が担保された電力システム・電力市場の実現が重要であり、その実現に向けて鍵を握る構造的問題(例:市場への義務的な玉だし、内外無差別、発販分離等)に徹底的に取り組む必要性が指摘されました。なお、構造的問題に関する検討については、2020年4月の第60回制度設計専門会合(経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会)において、今冬のスポット価格高騰問題に関する議論を踏まえ、支配的事業者の発電・小売事業の在り方についての検討、具体的には、旧一般電気事業者の内外無差別的な卸売の実効性を高め、社内・グループ内取引の透明性を確保するためのあらゆる課題(売入札の体制、会計分離、発販分離等)を総合的に検討していくことが表明されました。

なお、その他の分野においても、順次規制・制度の見直しの検討が進められています。

(2) 風力・地熱発電に係る環境影響評価の国による審査期間の短縮化及び環境影響評価対象事業の追加

風力・地熱発電建設時の環境影響評価の国の審査期間については、2012年11月の「発電所設置の際の環境アセスメントの迅速化等に関する連絡会議、中間報告」(環境省・経済産業省)において、火力発電所リプレースに係る国の審査期間の短縮に向けた取組を、風力・地熱発電の環境影響評価の審査についても適用することとされています。

この結果、2018年度においては、地方公共団体の協力を得て審査期間の短縮を図るとともに、環境調査を前倒しして他の手続と同時並行で進める手法の実証事業を行い、これをもとに事業者が参照できるガイドを取りまとめ、概ね目標のとおり実施期間の短縮を実現しました。また、実証事業の成果を一般化するため、2019年3月「発電所に係る環境影響評価の手引」に前倒し手法を反映しました。さらに、風力発電所の環境影響評価について、環境影響評価に関する研究成果や調査結果等を踏まえ、評価項目の簡素化について検討した結果、工事中の大気環境の参考項目のうち、一般的な事業の内容において影響のおそれが小さい項目については削除することとして、2020年8月に「発電所の設置又は変更の工事の事業に係る計画段階配慮事項の選定並びに当該計画段階配慮事項に係る調査、予測及び評価の手法に関する指針、環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針並びに環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令(平成10年通商産業省令第54号)」について所要の改正を行い、施行されました。

質の高い環境影響評価を効率的に進めるために、環境省では、環境影響評価に活用できる地域の環境基礎情報を収録した「環境アセスメントデータベース”EADAS(イーダス)”」において、情報の拡充や更新を行い公開しました。

また、環境の保全への適正な配慮がなされることを確保するため、2020年4月から大規模な太陽電池発電所を「環境影響評価法(平成9年法律第81号)」の対象事業に追加する「環境影響評価法施行令の一部を改正する政令(令和元年政令第53号)」が施行されました。

(3)バイオマス産業都市の構築

2012年9月に関係7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)が共同で取りまとめたバイオマス事業化戦略において、地域のバイオマスを活用したグリーン産業の創出と地域循環型エネルギーシステムの構築に向けたバイオマス産業都市の構築を推進することとされ、2020年度までに94市町村をバイオマス産業都市として選定しました。

(4)FIT制度におけるバイオマス燃料の持続可能性

輸入の農産物の収穫に伴って生じるバイオマス液体燃料(パーム油)については、FIT制度創設時には第三者認証を求めていませんでしたが、認定量の急増を受けて、持続可能性の確認をより厳格に確認する必要が生じたことから、2018年4月の新規認定より、RSPO認証4などの第三者認証によって持続可能性の確認を行うこととし、より実効的な確認を行うため、認証燃料が非認証燃料と完全に分離されたかたちで輸送等されたことを証明するサプライチェーン認証(アイデンティティ・プリザーブド(IP)及びセグリゲーション(SG))を求めてきました。

こうした中、2020年2月に取りまとめられた調達価格等算定委員会「令和2年度の調達価格等に関する意見」を受け、2019年に引き続き、総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会バイオマス持続可能性ワーキンググループを開催し、食料競合における判断基準、ライフサイクルを通じた温室効果ガス(以下、「ライフサイクルGHG」という。)排出量における論点について専門的・技術的な検討を行い、2020年度12月の調達価格等算定委員会に検討状況を報告しました。ライフサイクルGHGに係る排出削減基準等残された論点については、2021年も引き続き検討を行う予定です。

3
海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域。
4
持続可能なパーム油のための円卓会議(Roundtable on Sustainable Palm Oil)を指します。