第1節 各部門における省エネの取組
1. 業務・家庭部門における省エネの取組
業務・家庭部門は、産業部門に比べて、支出全体に占めるエネルギーコストの割合が少なく、省エネへの取組による金銭的メリットが必ずしも多くないこと等から、需要家に省エネインセンティブが弱く省エネが進みにくい部門です。そのため、「トップランナー制度」により自動車や家電等のエネルギー消費機器や、断熱材や複層ガラス、サッシといった建材の高効率化・高性能化を製造事業者や輸入事業者に対して求めるとともに、エネルギー消費効率の表示などにより、高効率製品の普及を促進し、省エネを一層進めています。
また、住宅・建築物の外皮(壁・窓等)の高性能化を進めることは、空調をはじめとしたエネルギー消費機器の効率をより高めることにつながります。
さらに、住宅の高断熱化は省エネのみならず、高血圧症等からの健康の改善や、ヒートショックリスクの低減等、間接的な便益をもたらす効果も注目されています。省エネだけでなく健康に寄与する住宅・建築物の断熱化を進めるため、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第53号)(以下「建築物省エネ法」という。)に基づき、新築時の断熱化を含む省エネ基準への適合を施主に対して求めるとともに、予算や税を通じた省エネ住宅・建築物の普及拡大支援を進めています。
<具体的な主要施策>
(1) 省エネ法に基づくベンチマーク制度による業務部門の省エネの推進【制度】
省エネ法では、工場・事業場の設置者に対し、省エネ取組を実施する際の目安となるべき判断基準(設備管理の基準やエネルギー消費効率改善の目標(中長期的にみて年度平均1%以上低減)等)を示すとともに、一定規模以上の事業者(年度で1,500kl以上のエネルギー(原油換算)を使用する事業者として経済産業大臣が指定する「特定事業者」、「特定連鎖化事業者」及び「認定管理統括事業者」。2020年9月現在で約12,000者を指定。)にはエネルギーの使用状況等の報告を求め、省エネ取組が不十分な場合には指導・助言等を行っています。
また、既に省エネ取組を進めてきた事業者の省エネの状況を踏まえ、エネルギー消費効率の中長期的にみて年平均1%以上低減することとは別に、業種・分野別に中長期的に目指すべき水準(ベンチマーク。業種ごとに上位1 ~ 2割の事業者が達成しているエネルギー消費効率。)を設定し、その達成を促す「ベンチマーク制度」を、2009年度から導入しました。
ベンチマーク制度については、2016年度からコンビニエンスストア業、2017年度からホテル業、百貨店業、2018年度から食料品スーパー業、貸事務所業、ショッピングセンター業、そして2019年度から、大学、パチンコホール業、国家公務の計9業種が対象となり、産業・業務部門のエネルギー消費量7割をカバーしています。
2020年度には、電炉普通鋼、電炉特殊鋼、洋紙製造業、板紙製造業、コンビニエンスストア業及び貸事務所業のベンチマークにおいて、事業者の省エネ取組を適切に評価するため、指標・目標値の見直しを行いました。
(2) 省エネ法に基づくトップランナー制度による機器の効率改善【制度】
省エネ法に基づくトップランナー制度を通じて、製造事業者及び輸入事業者に対して機器の効率改善を促した結果、多くの機器において、基準の策定当初の見込みを上回る効率改善が達成されています。
トップランナー制度については、さらなる個別機器の効率向上を図るため、基準の見直し等について検討を行っています。
具体的には、ガス温水機器、石油温水機器及び磁気ディスク装置の新たな省エネ基準を策定すべくワーキンググループの開催や関係法令の改正に向けた取組を行いました。また、2021年2月にテレビの新しい省エネ基準を、2021年3月に電気温水機器の新しい省エネ基準をそれぞれのワーキンググループにおいて、取りまとめを行いました。その他、エアコンディショナーの基準についてもワーキンググループにおいて審議を行っています。なお、トップランナー制度の対象機器等は、2021年3月時点で、32品目(うち3品目は建材)となっています。
(3) 省エネ機器に関する情報提供
家電製品やガス石油機器等について、省エネ機器のさらなる普及を促進すべく、小売事業者表示制度(省エネルギーラベル1及び統一省エネルギーラベル2)を活用し、消費者に対して省エネ情報の提供を行いました。制度をより効果的に実施するため、家電製品や機器のデータの整理を行うとともに、小売事業者等が容易に各機器のラベルを表示・印刷できるようウェブサイト(省エネ型製品情報サイト)を運営しています。また、2020年11月には、小売事業者表示制度を改正(統一省エネラベル等を改正)するとともに、2021年3月には、温水機器(ガス温水機器、石油温水機器、電気温水機器)の横断的な省エネ性能の表示の見直し等をワーキンググループにおいて、取りまとめを行いました。
(4) 業務・家庭部門における省エネを促進するための情報提供事業
省エネへの理解や関心度を高めることによって省エネ行動を促し、業務・家庭部門における省エネを促進することを目的として、一般消費者及び事業者等に向けて省エネに関する客観的な情報や省エネ対策の先進事例等に関する情報提供を行いました。
具体的には、夏季・冬季における省エネの呼びかけ、省エネ関連のイベント・メディア等を活用した省エネ施策の紹介や省エネ機器・省エネ支援サービスの周知、住宅の省エネに関する認知度・理解度向上等、省エネに関する情報提供を行いました。
(5) ZEB・ZEHの実現・普及に向けた支援【2020年度当初:459.5億円の内数(経済産業省)、130億円の内数(国土交通省)、98.5億円の内数(ZEB、環境省)、162.0億円の内数(ZEH、環境省)】
ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)とは、大幅な省エネを実現した上で、太陽光発電等の再生可能エネルギーにより年間で消費する一次エネルギー量を正味でゼロとすることを目指した建築物及び住宅です。省エネと快適性を両立させるとともに、業務・家庭部門におけるエネルギー消費の抜本的改善に資するものと期待されています。
建築物については、2030年までに新築建築物の平均でZEBとする政府目標に向けた工程を定めたZEBロードマップを基に、ZEBを推進する設計事務所や建築業者、オーナーの発掘・育成、及びさらなるZEBの普及促進等を目的に、経済産業省では、エネルギー消費量が大きい大規模な建築物を対象として、省エネ効果が期待されているものの、現行のエネルギー消費性能の計算プログラムにおいて評価できない先進的な技術の導入によるZEB化の実証を行いました。環境省では、民間建築物や地方公共団体が所有する建築物におけるZEBのさらなる普及拡大を支援しました。引き続き、両省で連携しながら、ZEBの市場拡大及び自立的普及に向けた取組を進めていきます。
住宅については、2030年までに新築住宅の平均でZEHとする政府目標に向けた工程を定めたZEHロードマップのフォローアップ結果を踏まえ、経済産業省において再生可能エネルギーの自家消費拡大を目指したZEH+(ゼッチ・プラス)や、21層以上の集合住宅におけるZEH-M(ゼッチ・エム)の実証を支援しました。国土交通省では中小工務店等が連携して建築するZEHへの支援を、環境省ではZEH及び20層以下の集合住宅におけるZEH-Mのさらなる普及を支援しました。引き続き三省で連携しながら、ZEHの市場拡大及び自立的普及に向けた取組を進めていきます。
(6) 高性能建材等の実証・普及に向けた支援【2020年度当初:459.5億円の内数(経済産業省)、98.5億円の内数(環境省)】
既存住宅の断熱・省エネ性能の向上を図るため、経済産業省において工期短縮可能な高性能断熱建材や蓄熱、調湿等の付加価値を有する省エネ建材の導入の実証を支援しました。また、環境省において高性能建材による戸建住宅及び集合住宅の断熱リフォーム支援事業を実施し、断熱改修の一層の普及を支援しました。
(7)住宅・建築物の省エネ基準への適合の確保
住宅以外の一定規模以上の建築物のエネルギー消費性能基準への適合義務の創設、エネルギー消費性能向上計画の認定制度の創設等の措置を講ずる建築物省エネ法が、2015年7月に公布され、2017年4月に全面施行されました。また、住宅・建築物の省エネ性能の一層の向上を図るため、建築物の規模・用途ごとの特性に応じた実効性の高い対策として、省エネ基準への適合義務の対象となる建築物の範囲を中規模建築物に拡大することや住宅トップランナー制度の対象に注文戸建住宅及び賃貸アパートを追加することなどを内容とする「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第4号)」が、2019年5月に公布され、2021年4月に全面施行されました。改正した建築物省エネ法の円滑な施行に向け、住宅・建築物の関連事業者等に対して、全国各地域で改正内容等についての講習会を実施しました。
(8) 環境・ストック活用推進事業【2020年度当初:90.7億円】
住宅・建築物の省エネ対策を促進するため、先導的な省CO2技術を導入する住宅・建築物リーディングプロジェクト、建築物の省エネ改修及び住宅・建築物の省エネ性能に係る診断・表示、複数の住宅・建築物の連携により高い省エネ性能を実現するプロジェクト等に対して支援を行いました。
(9)住宅に係る省エネルギー改修税制【税制】
既存住宅において一定の省エネ改修(高断熱窓への取替等)を行った場合で、当該改修に要した費用が一定額以上のものについて、所得税の税額控除及び固定資産税の特例措置が講じられています。このうち、固定資産税の特例措置について、「令和2年度税制改正大綱」及び税制改正大綱を踏まえた「改正地方税法」に基づき、適用期限を2022年3月まで延長しました。
(10)優良住宅整備促進事業【 2020年度当初:287.0億円の内数】
住宅金融支援機構が行う証券化支援事業の枠組みを活用し、省エネ性能に優れた住宅を取得する際の金利の引下げを行う「フラット35S」を実施しました。
(11)住宅性能表示制度等の効果的運用【制度】
住宅の性能について消費者等の選択を支援するため、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)」に基づき、省エネ性能を含む住宅の性能を分かりやすく表示する「住宅性能表示制度」の普及に加え、建築物を室内等の環境品質・性能の向上と省エネ等の環境負荷の低減という両面から総合的に評価し、分かりやすく表示するシステムである建築環境総合性能評価システム(CASBEE)の開発及びその普及を推進しました。
また、建築物省エネ法における誘導措置(2016年4月施行)として、省エネ性能の優れた建築物の認定制度及び省エネ基準適合認定マーク、省エネ性能表示のガイドラインに従った「建築物省エネルギー性能表示制度(BELS:Building-Housing Energy-efficiencyLabeling System)」の普及促進を図っています。
(12)低炭素住宅・建築物の認定【制度】
「都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)」に基づき、省エネ基準より高い省エネ性能を有し、低炭素化に資する措置等が一定以上講じられている認定低炭素建築物の普及促進を図りました。
(13)家庭における脱炭素ライフスタイル構築促進事業【 2020年度当初:0.5億円】
各家庭で省エネ・省CO2化を促進するためには、ライフスタイルに応じた具体的なアドバイスが効果的です。
そこで、さらなる脱炭素ライフスタイルへの転換を促進し、家庭部門からの削減を実現することを目的に、「家庭エコ診断制度」を実施し、民間企業や地方公共団体等のネットワークを活用して、家庭における着実な省エネを推進しました。
(14)エネルギー小売事業者の省エネガイドラインの検討
一般消費者が家庭において適切に省エネを進めることができるよう、省エネ法ではエネルギー供給事業者に対して、一般消費者へ省エネに資する情報を提供するよう努力義務を求めています。2016年4月から電力、2017年4月からはガスの小売全面自由化が始まり、エネルギー供給事業者が多様なサービスを提供するようになっており、家庭でのエネルギーの使用方法も大きく変化してきています。現在はエネルギー小売事業者に対して、省エネ情報の提供に関する指針や、ガイドラインを提示しているところです。2020年度には、一般消費者へのアンケート調査等も実施し、省エネ行動をより一層促すための情報提供の在り方について議論を行いました。
(15)地方公共団体カーボン・マネジメント強化事業【2020年度当初:47.16億円】
「地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)」に基づく地方公共団体実行計画(事務事業編)のエネルギー起源CO2の排出削減に係る企画・実行・評価・改善のための体制を強化し、省エネ設備等を導入する事業を支援しました。
(16) 低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)等による家庭等の自発的対策推進事業【2020年度当初:30億円】
①ナッジ等を活用した家庭等の自発的対策推進事業
行動科学の理論に基づくアプローチ(ナッジ(nudge:そっと後押しする)やブースト(boost:ぐっと後押しする)等)により、国民一人ひとりの行動変容を情報発信等を通じて直接促進し、ライフスタイルの自発的な変革・イノベーションを創出する、費用対効果が高く、対象者にとって自由度のある新たな政策手法を検証しています。
具体的には、家庭、運輸部門等を対象に、エネルギー消費やCO2排出実態に係るデータを収集、解析し、ナッジやブースト等の行動インサイトとAI/IoT等の先端技術を組み合わせたBI-Techにより、一人ひとりにパーソナライズされたメッセージをフィードバックすることで、脱炭素型の行動変容を促しています。
家庭部門では、行動科学の知見に基づく省エネアドバイス等を記載したレポートを一般世帯に送付したところ電気やガスの使用量に約2%の省エネ・省CO2効果が確認され、送付停止後の効果の継続性を検証したところ省エネ・省CO2効果の持続が確認されました。他にも、メッセージ配信によりマイバッグの利用を促すナッジを行い、マイバッグ利用率やレジ袋辞退率の増加が確認されました。「みんなでチャレンジ」と呼びかけて、「結果を定期にフィードバックする」内容が最大の効果を生むことや、追跡調査により効果の持続性が確認されました。
②日本版ナッジ・ユニット
ナッジを含む行動科学の知見に基づく取組が早期に社会実装され、自立的に普及することを目標に、2017年4月より環境省のイニシアチブの下、産学政官民連携による日本版ナッジ・ユニット「BEST」を発足しています。2017年度から計25回の連絡会議を開催し、行動科学に関する環境省及び地方公共団体の取組やエビデンス(科学的根拠)に基づく政策立案(Evidence-based policymaking, EBPM)、様々な分野の社会課題の解決に行動科学の知見を用いた取組等について議論しています。
2. 運輸部門における多様な省エネ対策の推進
運輸部門は2015年に策定したエネルギーミックスにおいて最も大きい省エネ量を見込んでいる部門です。エネルギーミックスの省エネ見通しを確実なものとするためには、乗用車やトラック等輸送機器単体のエネルギー消費効率を進めるとともに、貨物輸送事業者と荷主の連携等による面的な省エネ努力の両輪で取組を進める必要があります。
<具体的な主要施策>
(1)自動車の燃費基準【規制】
乗用車・トラック等の燃費改善については、省エネ法に基づくトップランナー制度(自動車メーカー等に対し、目標年度までに販売車両の平均燃費値を基準値以上にすること等を求める制度)による規制とエコカー減税等の支援策により、トップランナー制度の基準策定当初の見込みを上回り、特に乗用車の燃費は大幅に改善してきました。例えばガソリン乗用車の平均燃費は1996年度12.1km/Lだった燃費は、2019年度には22.6km/Lとなっています。
電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の次世代自動車の普及を前提とした、2030年度を目標とする新たな乗用車の燃費基準を策定し、2020年4月に関係する法令を施行しました。
(2)自動車重量税の軽減措置【税制】
2021年度税制改正において、自動車重量税のエコカー減税については、燃費性能がより優れた自動車の普及を促進する観点から、目標年度が到来した2020年度燃費基準を達成していることを条件に、2030年度燃費基準の達成度に応じて減免する仕組みに切り替えた上で、適用期限を2年間延長することとなりました(2021年5月から2023年4月末まで)。その際、2回目車検時の免税対象について電気自動車等やこれらと同等の燃費性能を有するハイブリッド車等に重点化が図られます。また、クリーンディーゼル車の取り扱いについても見直しを行いました。
(3)自動車税・軽自動車税の減免措置【税制】
自動車税及び軽自動車税の環境性能割については、燃費性能に応じた税率区分を設定し、その区分を2年ごとに見直すことにより燃費性能がより優れた自動車の普及を促進するものであり、2020年度末が見直しの時期に当たることから、目標年度が到来した2020年度燃費基準の達成状況も考慮しながら、2030年度燃費基準の下で税率区分が見直されました。
また、自動車税・軽自動車税の軽減措置(グリーン化特例(軽課))については、クリーンディーゼル車を対象から除くとともに、適用対象を電気自動車等に限定する等した上で2年間延長することとなりました。
(4)クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金【2020年度当初:130.0億円、2020年第3次補正予算:117.0億円(経済産業省37.0億円、環境省80.0億円)】
電気自動車や燃料電池自動車等のクリーンエネルギー自動車の普及を促進し、運輸部門における二酸化炭素の排出抑制や石油依存度の低減を図るとともに、災害時に電気自動車や燃料電池自動車等の外部給電機能の活用を促進することによりレジリエンスの向上を図りました。また、第3次補正予算においては、グリーン社会の実現を進めるため、電気自動車・燃料電池自動車等の導入拡大と同時に、日常・非常時ともに活用できる充放電設備/外部給電器の普及や、再エネ電力と電気自動車・燃料電池自動車等をセットにしたゼロカーボン・ドライブの普及促進を図り、移動の脱炭素化を目指します。
(5) 配送拠点等エネルギーステーション化による地域貢献型脱炭素物流等構築支援事業【2020年度当初予算:10.0億円】
配送等にかかる車両を電動化するとともにバッテリー交換式とし、配送拠点等を災害時にも稼働しうるエネルギーステーション化することで、脱炭素物流モデルと配送拠点等の防災拠点化を同時実現する地域貢献型の新たな脱炭素物流モデルを構築する事業に対する補助を行いました。
(6) 脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業【2020年度当初予算:80.0億円】
新たなライフスタイルにあわせたEVのシェアリングサービスを活用した脱炭素型地域交通モデル構築に対する補助や、地域再エネと動く蓄電池としてのEV等を組み合わせて、再エネ主力化とレジリエンス強化の同時実現を図る自立・分散型エネルギーシステム構築に対する補助を行いました。
(7)交通需要マネジメントの推進
道路交通渋滞を緩和し、道路交通の円滑化を図るため、バイパス・環状道路の整備や交差点の改良等の交通容量の拡大策等に加えて、既存ネットワークの輸送効率を向上させるために、情報提供の充実などの交通量の時間的・空間的平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)を推進しました。
(8)自動走行の実現に向けた取組の推進
車両の効率的な走行を可能とする自動走行技術の社会実装を実現し世界に先駆けて省エネを推進するため、安全性評価手法の研究開発を進めるとともに、高度な自動走行システムの実証等を実施しました。
(9)道路交通情報提供事業の推進
交通管制システム等で収集した道路交通情報を積極的に提供するほか、民間事業者が行う道路交通情報提供サービスの多様化・高度化を支援することにより、渋滞緩和及び環境負荷低減を図りました。
(10)違法駐車対策の推進【規制】【制度】
都市における円滑な交通流を阻害している違法駐車を防止し排除するため、駐車規制の見直し、地域の実態に応じた取締り活動ガイドラインに基づく取締り等による駐車対策を推進しました。
(11)路上工事の縮減
電気・通信・上下水道等のライフラインをまとめて収容し、道路の掘り返しを抜本的に縮減する共同溝整備を推進するとともに、複数の占用企業者等が工事実施時期を合わせて施工する共同施工の実施等、効率的な道路工事を推進しました。また、年末年始・年度末、観光シーズン及び地域の行事等の工事抑制を実施するなど、地方公共団体や占用企業者等とともに、地域の道路利用を踏まえたきめ細やかな路上工事対策を実施しました。
(12)交通安全施設等の整備【予算】【 2020年度当初215.0億円】
交通管制システムの高度化及び信号機の改良等を推進し、交差点における発進・停止回数を減少させること等により道路交通の円滑化等を図るとともに、消費電力が電球式の約6分の1以下であるLED式信号機の整備を推進しました。
(13)道路施設の省エネ化
道路照明灯の新設及び既設の高圧ナトリウム灯等の更新に当たり、省エネ対策や環境負荷の低減に資するLED道路照明灯の整備を実施しました。
(14)モーダルシフト、物流の効率化等
鉄道・内航海運等のエネルギー消費効率が優れた輸送機関の活用を進めるため、「モーダルシフト等推進事業」において、荷主企業と物流事業者が協力して行う事業への支援を実施するとともに、「グリーン物流パートナーシップ会議」において、荷主企業、物流事業者等の関係者の連携による、物流分野における環境負荷の低減、物流の生産性向上等持続可能な物流体系の構築に資する優れた取組を行った事業者に対して国土交通大臣表彰、経済産業大臣表彰等を授与しました。あわせて、貨物輸送における環境にやさしい鉄道・海運の利用促進を図ることを目的とした「エコレールマーク」・「エコシップマーク」の普及等によりモーダルシフトを推進しました。
また、物流の効率化に資するよう、トラックの大型化・トレーラー化によるトラック輸送の効率化、国際物流に対応した道路ネットワークの整備、IoT機器等を活用した港湾における省エネ化の取組や港湾のターミナルの整備、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成17年法律第85号)」による支援等を進めることを通じて、効率的な物流体系の構築を推進しました。
さらに、船舶分野のさらなる低炭素化に向けて、LNG燃料船におけるCO2排出削減効果最大化のための技術実証を推進しました。
(15)鉄道分野のさらなる環境性能向上に資する取組
鉄道分野におけるさらなる省エネ化・低炭素化の取組を推進するため、鉄道事業等のネットワーク型低炭素化促進事業により、エネルギー効率の良い車両の導入など環境負荷軽減に計画的に取り組む鉄・軌道事業者を支援しました。また、エネルギー効率の良い新造車両等の導入については固定資産税の特例措置も講じられていますが、令和3年度税制改正により、適用期限が延長されることとなりました(2023年3月末まで)。
(16)公共交通機関の利用促進
鉄道・バス等公共交通機関については、混雑緩和、輸送力増強、速達性の向上等を図ることが重要です。鉄道については、三大都市圏において混雑緩和や速達性向上のための都市鉄道新線等の整備を推進しました。また、貨物線の旅客線化等の既存ストックの高度利用を推進するとともに、駅施設の改良やバリアフリー化を支援することによる利用者利便の向上施策を講じました。
一方、バスについては、公共車両優先システム(PTPS)の整備、バス専用・優先レーンの設定等により、定時運行の確保を図るとともに、バスロケーションシステムの整備等に対する支援措置による利用者利便の向上施策を講じました。また、事業所単位でのエコ通勤の取組支援として、エコ通勤優良事業所認証制度により758事業所を認証・登録(2021年3月末現在登録数)し、マイカーから公共交通等への利用転換の促進を図りました。
加えて、多様な交通モードが選択可能で利用しやすい環境を創出し、人とモノの流れや地域活性化のさらなる促進のため、バスを中心とした交通モード間の接続(モーダルコネクト)の強化を推進しています。
2016年4月に開業したバスタ新宿では、トイレ及びベンチの増設等の待合環境の改善や国道20号の線形改良及び左折レーン延伸等の渋滞対策に取り組んできました。今後は、バスタ新宿や品川駅及び神戸三宮駅等をはじめとして、官民連携を強化しながら、道路事業による戦略的な集約型公共交通ターミナル「バスタプロジェクト」の整備を全国で展開していきます。
(17)エコドライブの普及・推進
警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省で構成する「エコドライブ普及連絡会」において、行楽シーズンであり自動車に乗る機会が多くなる11月を「エコドライブ推進月間」とし、シンポジウムの開催や全国各地でのイベント等を連携して推進し、積極的な広報を行いました。あわせて、当該連絡会が策定した「エコドライブ10のすすめ」の普及・推進に努めました。
(18) 貨物輸送事業者と荷主の連携等による運輸部門省エネルギー化推進事業費補助金【 2020年度当初:62.53億円】
トラック事業者と荷主等の連携による省エネ効果を実証するため、トラック事業者に対して、車両動態管理システム等の導入に必要な経費を支援しました。また、自動車の点検整備に係るビッグデータを分析すること等により、予防整備等が適切に行われる環境を整備し、使用過程車の実燃費の改善を図るため、整備事業者に対して、不具合情報の外部出力が可能なスキャンツールの導入に必要な経費を支援しました。さらに、船舶の省エネ効果を実証するため、内航海運事業者等に対して、革新的省エネ技術のハード対策と運航計画や配船計画の最適化等のソフト対策を組み合わせた省エネ船舶の設計・建造等の経費等を支援しました。
(19) 省エネ法に基づく運輸分野の省エネルギー措置【規制】
省エネ法では、輸送事業者及び貨物を貨物輸送事業者に輸送させる企業等(荷主)を規制対象とし、輸送事業者及び荷主に対して省エネ取組を実施する際の目安となる判断基準(省エネに資する輸送用機械器具の使用、省エネに資する輸送方法の選択、エネルギー消費効率の改善目標(中長期的にみて年平均1%以上低減)等)を示すとともに、一定水準以上の輸送能力を有する輸送事業者及び一定量以上の輸送を行わせる荷主にはエネルギーの使用状況等を毎年度報告させ、省エネ取組が不十分な場合には指導・助言等を行うこととしています。また、2018年6月に成立、同年12月に施行された改正省エネ法により、複数の事業者間の連携強化によってさらなる省エネに取り組むための計画認定制度を創設するとともに、荷主が決定した輸送方法等の下で、到着日時等を指示することができる荷受側等を準荷主と位置づけ、省エネへの取組を求めています。
(20) 輸送機器の抜本的な軽量化に資する新構造材料等の技術開発事業【 2020年度当初:32.5億円】
軽量化による輸送機器の省エネ化を目指し、部素材・製品メーカー、大学等が連携して強度、加工性等の複数の機能を向上した革新的な鋼材、アルミニウム材、マグネシウム材、チタン材、炭素繊維及び炭素繊維強化樹脂等の高性能軽量材料開発や、高効率モーターのための従来以上に強力な磁石材料の開発等を行うとともに、マルチマテリアル化実現のための異種材料の接着を含めた接合技術の開発等を行いました。
(21)革新型蓄電池実用化のための基盤技術の開発事業【2020年度当初:34.0億円】
現行のリチウムイオン電池の性能限界をエネルギー密度の観点で大幅に上回り、ガソリン車と同等の航続距離を電気自動車等で可能とする革新型蓄電池のプロトタイプを、2030年に車載・実用化するための共通基盤技術の開発を行いました。
(22) 省エネ型電子デバイス材料の評価技術の開発事業【2020年度当初:26.8億円】
電池・素材メーカー間のすりあわせを高度化し、電池の新材料が全固体電池材料として有用かを評価するため、標準電池の開発を行うととともに、標準電池の一部分を新材料に入れ替えて性能評価する共通基盤の構築に取り組みました。
(23)炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発【 2020年度当初:6.6億円】
木質バイオマスを原料とするセルロースナノファイバーについて、社会実装・市場拡大の早期実現に向け、製造プロセスにおけるコスト低減、製造方法の最適化、量産効果が期待できる用途に応じた複合化技術・加工技術等の開発を促進し、同時に安全性評価に必要な基盤情報の整備を行いました。
3. 産業部門等における省エネの加速
産業部門においては、省エネ法に基づく規制や省エネ設備導入支援予算等の支援措置等を通じ、個々の事業者単位で省エネ取組が進んできましたが、エネルギー消費効率の改善は足踏み状況であり、省エネ法の特定事業者の約3割が対前年度比で悪化している状況です。経済成長と両立する徹底した省エネを進めるためには、更なる省エネ設備投資の促進や、複数事業者の連携による省エネ等、省エネ手段の多様化により、事業者のエネルギー消費効率改善を促すことが必要です。
<具体的な主要施策>
(1) 省エネ法に基づくエネルギー管理の徹底【制度】
省エネ法では、工場・事業場の設置者に対し、省エネの取組を実施する際の目安となるべき判断基準(設備管理の基準やエネルギー消費効率改善の目標(中長期的にみて年度平均1%以上低減)等)を示すとともに、一定規模以上の事業者(年度で1,500kl以上のエネルギー(原油換算)を使用する事業者として経済産業大臣が指定する「特定事業者」、「特定連鎖化事業者」及び「認定管理統括事業者」。2020年9月現在で約12,000者を指定。)にはエネルギーの使用状況等の報告を求め、省エネ取組が不十分な場合には指導・助言等を行っています。
また、事業者が自らの省エネの取組の立ち位置を把握するとともに、省エネ進捗度合いに応じたメリハリのある省エネ取組を促進するため、「事業者クラス分け評価制度(SABC評価制度)」に基づき、全ての特定事業者等を、当該報告の結果を踏まえてS・A・B・Cの4段階にクラス分けしています。Sクラス事業者については、経済産業省ホームページに事業者名などを公表するとともに、Bクラス事業者については、注意喚起文書を送付しています。また、Bクラス事業者のうち、立入検査・現地調査等を経て省エネ取組が不十分と認められた事業者は、Cクラス事業者に分類の上、省エネ法に基づく指導・助言等を行っています。2019年度には、SABC評価制度の見直しを実施し、ベンチマーク達成状況によるS評価付与が適切になされるように運用を見直しました。また、事業者のベンチマーク目標達成に向けての省エネの取組を評価するため、省エネ取組をまとめている中長期計画書の記載内容の実施状況を定期報告書にて報告する仕組みを導入することとしました。
さらに、2017年8月に取りまとめられた総合資源エネルギー調査会省エネルギー小委員会の意見において、「定期報告や中長期計画を多角的に整理・加工し、各事業者の省エネ取組を客観的に評価できるデータベースとして整備・提供すべき」と示されたことを受け、定期報告書等に係るデータを、より特定事業者等のニーズに沿った形でフィードバックするための検討を行い、2020年3月に省エネ法定期報告書情報提供システムを公開しました。
(2) 複数企業の連携によるさらなる省エネルギーの促進【制度】
エネルギーミックスの実現に向け、事業者単位の取組に加えて複数の企業が連携する省エネ取組を促進するため、省エネ法の改正法案を第196回国会に提出し、2018年6月に成立、12月1日に施行されました。この改正により、複数企業が連携する省エネ取組を「連携省エネルギー計画」として認定し、省エネ量を企業間で分配して報告することを認めるとともに、一定の資本関係のある複数の事業者が一体的に省エネの取組を推進する場合、その管理を統括する事業者を「認定管理統括事業者」として認定し、当該事業者が定期報告等を一体的に行うことを可能としました。
(3) 省エネ法に基づく産業部門ベンチマーク制度の見直し【制度】
2020年度には、事業者の更なる省エネ取組を促すため、産業部門のベンチマーク制度について、一部業種の指標・目標値の見直しを行いました。今後は、ベンチマーク制度の目標年度である2030年度に向けて、支援策も活用しながら事業者の省エネの取組を促します。
また、電力供給業におけるベンチマーク制度については、2018年7月に閣議決定された第5次エネルギー基本計画において、非効率な石炭火力に対して、新設を制限することを含めたフェードアウトを促す仕組み等を講じていくことが明記されたことを踏まえ、総合資源エネルギー調査会電力・ガス基本政策小委員会、省エネルギー小委員会が合同で石炭火力検討ワーキンググループを開催し、石炭火力発電設備に対する規制的措置について議論しました。
(4) 省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(エネルギー使用合理化等事業者支援事業)【2020年度当初:459.5億円の内数】
工場・事業場における省エネ投資を進めてエネルギー消費効率の改善を促すため、省エネ効果の高い設備の入替えや、複数の事業者間における生産設備の統合やユーティリティ設備の共有等の一体的な省エネの取組を支援しました。2020年度についても、中小企業を重点的に支援するため、申請が容易な設備単位事業を設けています。
(5) 生産設備におけるエネルギー使用合理化等事業者支援事業費補助金【2019年度補正:50億円】
中小企業等の工場・事業場等における生産性及び省エネ性能の高い生産設備投資を支援することで、エネルギーコストの低減及び生産性の向上の促進を支援しました。
(6)省エネ再エネ高度化投資促進税制 <高度省エネルギー部分>【税制】
エネルギーミックスにおける省エネ対策の実現に向けて、①省エネ法の規制対象事業者が行う中長期的な計画に基づく省エネ投資及び②「連携省エネルギー計画」の認定を受けた事業者が行う当該計画の実施に必要な設備投資に対する税制措置を行いました(対象:法人税等、措置:特別償却20%又は税額控除7%(中小企業のみ))。「2050年カーボンニュートラル」という高い目標の実現に向けて、企業の投資を促進するため、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制を創設することから、省エネ再エネ高度化投資促進税制(うち省エネ関係)の特別償却又は税額控除制度は発展的に解消し、2021年3月31日をもって廃止されました。
(7) 低炭素社会実行計画の推進・強化【制度】
2016年5月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」では、低炭素社会実行計画を産業界における対策の中心的役割と位置づけ、2030年度削減目標の達成に向けて産業界による自主的かつ主体的な削減貢献の取組を進めていくこととしています。政府としても、透明性・信頼性・目標達成の蓋然性の向上の観点から、低炭素社会実行計画の2019年度実績について、審議会による厳格な評価・検証を実施しました。具体的には、目標達成の蓋然性を確保するため、2019年度に実施した取組を中心に各業種の進捗状況を点検し、①2020年度及び2030年度の目標達成に向けて着実に対策が実施されていること、②2019年度の審議会による進捗点検等を踏まえ、PDCAサイクルの推進が図られていることを確認しました。また、自らの国内企業活動における削減だけでなく、低炭素製品・サービス等による他部門での削減貢献、優れた製品や技術、素材、サービスの普及等を通じた国際貢献、革新的技術の開発や普及による削減貢献といった各業種の取組についても深掘りし、可能な限り定量化することにより、貢献の可視化とベストプラクティスの横展開等を促進しました。現在、115業種がこの自主的取組に参画し、国内事業活動における排出削減だけでなく、低炭素製品・サービスや優れた技術・ノウハウの普及により、地球規模での削減に貢献しています。より多くの業種の参加促進や、審議会における業種横断的な意見交換を通じたベストプラクティスの競い合いや主体間連携の促進、国内外に向けた各業種の取組内容の積極的な発信、審議会による厳格な評価・検証を通じて、引き続き産業界の削減貢献の取組を後押しします。
(8)革新的な省エネルギー技術の開発促進事業【2020年度当初:72,5億円】
省エネ技術の研究開発や普及を効果的に推進するため、開発リスクの高い革新的な省エネ技術について、シーズ発掘から事業化まで一貫して支援を行う提案公募型研究開発事業を実施しました。「省エネルギー技術戦略2016」に掲げる重要技術(2019年7月改定版)を軸に、技術開発の段階に応じてインキュベーション研究開発フェーズ4件、実用化開発フェーズ1件、実証開発フェーズ3件の計8件を新規採択しました。
(9) 高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発事業【2020年度当初:94.2億円】
IoT社会の到来により増加した膨大な量の情報を効率的に活用するため、ネットワークのエッジ側で動作する超低消費電力の革新的AIチップに係るコンピューティング技術や、新原理により高速化と低消費電力化を両立する次世代コンピューティング技術(量子コンピュータ、脳型コンピュータ等)等の開発を実施しました。
(10) 超低消費電力型光エレクトロニクスの実装に向けた技術開発事業【 2020年度当初:18.4億円】
クラウドコンピューティングの進展等により課題となっているデータセンタの消費電力抑制に向けて、電子回路と光回路を組み合わせた光エレクトロニクス技術の開発を実施しました。
(11)グリーン購入及び環境配慮契約の推進【制度】
国等における環境物品等の率先的な調達や環境に配慮した契約の実施は、日本全体の省エネ等の推進に資するものであり、国等は、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号)」(以下、「グリーン購入法」という。)及び「国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成10年法律第107号)」(以下、「環境配慮契約法」という。)を踏まえ、照明や空調設備等の物品等を調達する際には、率先して省エネ機器・設備を導入するとともに、電力の供給を受ける契約や自動車を調達する契約等において環境配慮契約の推進に取り組みました。
また、2020年度は、グリーン購入法において、自動車等の特定調達品目に係る判断の基準について、乗用車については最低でも次世代自動車、可能な限り電動車等を率先調達の対象とする等の見直しを行うとともに、環境配慮契約法においても、電力調達における入札参加資格の要件を強化する等の見直しを行いました。
(12) 国内における温室効果ガス排出削減・吸収量認証制度の実施委託費【 2020年度当初:3.8億円】
J-クレジット制度の運営に取り組みつつ、同制度を利用した省エネ・再エネ設備の導入を促進するため、同制度でクレジットを創出・活用する企業・自治体等に対して制度利用支援等を実施しました。あわせて、同制度におけるクレジット需要を開拓するため、各種制度との連携を図りつつ、クレジット制度利用の推進事業を行いました。
(13) 省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金【 2020年度当初:12.7億円】
新設・既設事業所における省エネ設備の導入等を行う際、民間金融機関等から融資を受ける事業者に対し、融資に係る利子補給事業によって支援するとともに、さらなる利用拡大のために金融機関と連携した制度利用の推進を行いました。
(14) 中小企業等に対する省エネルギー診断事業費補助金【2019年度当初:10.7億円】
中小企業等に対し、省エネ診断事業を実施するとともに、自治体や学校が実施する省エネ関連セミナーに講師を派遣しました。また、多くの診断事業で得られた優良事例や省エネ技術を様々な媒体を通じて情報発信しました。加えて、全国46都道府県に自治体、金融機関、中小企業団体等と連携する「省エネお助け隊」(省エネルギー相談地域プラットフォーム)を構築し、きめ細かな省エネ診断や省エネ支援を通じて省エネの取組を促進しました。また、これまでの成果事例を取りまとめ、情報発信を行いました。
(15)環境調和型プロセス技術の開発事業【2020年度当初:42.0億円】
我が国の鉄鋼業は、排熱回収利用等の主要な省エネ設備を既に導入しており、製鉄プロセスにおけるエネルギー効率が現在、世界最高水準であることから、既存技術の導入によるエネルギーの削減ポテンシャルは少ない状況です。他方で、高炉法による製鉄プロセスでは鉄鉱石を石炭コークスで還元するため、多量のCO2が排出されることは避けられません。このため、製鉄プロセスにおける大幅なCO2排出削減、省エネを目指し、①水素還元活用プロセス技術(COURSE50)、②フェロコークス技術の開発を行いました。①については、製鉄所から発生する二酸化炭素の約3割を削減することを目指して、コークス製造時の副生ガスに含まれる水素を用いて鉄鉱石を還元するための技術開発及び製鉄プロセスにおける未利用排熱を用いた二酸化炭素の分離回収のための技術開発を行いました。②については、製鉄プロセスから約10%の省エネを目指して、金属鉄を含んだコークス(フェロコークス)を用いて鉄鉱石の還元反応を低温化・高効率化するための技術開発を行いました。
(16) 計算科学等による先端的な機能性材料の技術開発事業【2020年度当初:24.8億円】
従来技術の延長線上に無い機能を有する超先端材料の創製とその開発スピードの劇的な短縮を目指し、計算科学、プロセス技術、計測技術から成る革新的な材料開発基盤技術の開発を行いました。
(17) 高効率・高輝度な次世代レーザー技術の開発事業【2020年度当初:20.0億円】
本事業では、これまでにない高効率かつ高輝度なレーザー技術を開発することにより、燃料消費・温室効果ガス排出の削減を図るとともに、我が国のものづくり産業の競争力強化を図ります。2020年度は、様々な加工条件に合わせて効率良く、付加価値の高い加工等を行うために、短波長領域の高輝度・高効率レーザーシステム開発、キロジュール級の高輝度・高効率レーザーシステム開発、次世代高輝度・高効率レーザー光源開発に取り組みました。また開発技術の加工への応用実証や加工現象のメカニズム解明など、効率的な加工を実現するための基盤研究も併せて行いました。
(18) 高温超電導実用化促進技術開発【2020年度当初:1.6億円】
大きな市場創出が期待される高磁場コイル分野や送配電分野において、高温超電導技術を世界に先駆けて社会実装することを目指し、MRI用高磁場安定コイルの技術開発を行い、製作した2分の1サイズ3テスラマグネットを用いて、撮像実証を行うとともに、鉄道き電線用長距離冷却システムの開発、及び宮崎実験線(2km)において、鉄道き電線用長距離冷却システムを構築し、評価に取り組みました。
(19) 次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発【 2020年度当初:17.0億円】
人工知能技術とその他関連技術による産業化に向けて、人工知能モジュールやデータ取得のためのセンサー技術、研究インフラ等を統合し、従来の人による管理では達成できないさらなる省エネ効果を得るとともに、人工知能技術の社会実装を加速し、将来の新たな市場シェアのいち早い獲得を目指します。2020年度は、人工知能技術の社会実装に向けた研究開発・実証、人工知能技術の導入加速化技術、製造業の設計や製造現場に蓄積されてきた「熟練者の技・暗黙知(経験や勘)」の伝承・効率的活用を支え、生産性向上による抜本的な省エネ化を実現する人工知能技術の研究開発を行いました。
(20) 省エネ型化学品製造プロセス技術の開発事業【2020年度当初:22.0億円】
我が国が国際的に強みを有する触媒技術を活用することで、資源利用の高度化と製造プロセスのエネルギー消費量削減を目指し、①二酸化炭素と水を原料に太陽エネルギーでプラスチック原料等の基幹化学品を製造する製造プロセス技術(人工光合成)、②砂から有機ケイ素原料を直接合成し、同原料から次世代LED封止材等の高機能有機ケイ素部材を製造する製造プロセス技術、③機能性化学品の製造手法を従来のバッチ法からフロー法へ置き換え、廃棄物排出量を大幅削減する革新的な省エネ型の化学品製造プロセス技術の開発を行いました。
(21) 未来社会創造事業(大規模プロジェクト型)【予算】【2020年度当初:77.3億円の内数】
環境中の熱源(排熱や体温等)をセンサー用独立電源として活用可能とする革新的熱電変換技術の研究開発を推進しました。
4. 部門横断的な省エネの取組
各部門における徹底した省エネだけでなく、部門横断的に省エネを促していくことも重要です。そのため、事業者や消費者といった対象を特定せず、広く積極的な省エネを促す取組を行いました。
<具体的な主要施策>
(1)省エネルギー促進に向けた広報事業委託費【予算】【2019年度当初:2.6億円】
国民の皆様から省エネに対する理解と協力を得るため、例えば積極的な省エネを実践していただくためのきめ細かなキャンペーンなどを実施するなど、省エネに関する客観的な情報提供を行いました。また、産業・業務部門向けに、省エネへの理解を深めてもらうため、WEBページ等による情報提供を行いました。さらに、一般消費者に向けて、省エネ家電への買換えについて、省エネルギーのみならず他の価値(QOL等)も併せながらナッジを活用した情報を発信することで行動変容を促し、ナッジを活用した情報発信の在り方について調査検討を行い、小売事業者への活用を促しました。
(2)脱炭素型の地域づくりの推進
「地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)」(地球温暖化対策推進法)に基づき、都道府県及び市町村は、その区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策を策定及び実施するように努めるものとされ、特に都道府県、政令指定都市及び中核市(施行時特例市を含む)は、単独で又は共同して、区域における再生可能エネルギーの利用促進、省エネの推進等を盛り込んだ地方公共団体実行計画(区域施策編)の策定が義務付けられています。また、2021年3月2日に閣議決定された地球温暖化対策推進法の一部改正法案においては、地方公共団体実行計画(区域施策編)について、再エネの利用促進等の施策の実施目標が記載事項に追加されたほか、中核市未満の市町村について同計画の策定を努力義務とする規定が盛り込まれました。さらに、同法案においては、市町村が、地方公共団体実行計画において、再エネを活用した地域脱炭素化促進事業の促進区域などを設定し、同区域における認定事業に関係法令の特例措置を講じること等により、地域の円滑な合意形成を図りつつ、地域の経済・社会的課題の解決に資する事業を推進していくための新たな制度が盛り込まれました。
政府においては、「地域の多様な課題に応える脱炭素型地域づくりモデル形成事業」により、地域資源である再エネ等を活用し、温室効果ガス排出削減と地域課題の同時解決を図る地域のモデル事例を構築するとともに、それらを体系的に整理し広く普及・展開させることを目的として、当該取組を実施しようとする地方公共団体を対象に、排出削減に関連する行政計画との整合を図りつつ、地方公共団体実行計画に位置付ける具体的施策について事業計画の策定や実現可能性調査を支援しました。
加えて、地方公共団体の戦略的な参画又は関与の下、市民、地元企業、地域金融機関などの地域の資金による出資を促し、地域の再生可能エネルギー等から得られる脱炭素な電力供給を主導する小売電気事業とあいまって地域の脱炭素化等を推進する仕組みを構築する事業体を普及させることを目的とした「地域脱炭素化推進事業体設置モデル事業」を実施しました。
さらに、都市の低炭素化の促進を図り、もって都市の健全な発展に寄与するため、都市機能の集約や、それと連携した公共交通の利用促進、建築物の低炭素化等の施策を講じる「都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)」が2012年12月に施行され、同法に基づく市町村による低炭素まちづくり計画の作成や各種の事業、取組に対して、財政措置等を通じ、低炭素まちづくりの実現に向けた総合的な支援を行いました。
(3) 地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例(地球温暖化対策のための税)
我が国で排出される温室効果ガスの8割以上は、エネルギー利用に由来するCO(2 エネルギー起源CO2)となっており、今後温室効果ガスを抜本的に削減するためには、中長期的にエネルギー起源CO2の排出抑制対策を強化していくことが不可欠です。
このため、2012年10月から施行されている地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例の税収を活用して、省エネ対策、再生可能エネルギー普及、化石燃料のクリーン化・効率化などのエネルギー起源CO2排出抑制の諸施策を着実に実施していきます。
(4) 低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業
我が国の経済・社会の持続的発展を伴う、科学技術を基盤とした明るく豊かな低炭素社会の実現に貢献するため、望ましい社会の姿を描き、その実現に至る道筋を示す社会シナリオ研究を推進しました。2020年度は、我が国が強みを有する太陽光発電や蓄電池システム等に関するイノベーション政策立案のための提案書を23本作成し、国の施策等に活かすための政策提言を行いました。
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- トップランナー制度の対象機器のうち、家庭で使用される機器を中心に、トップランナー制度に基づく省エネ基準の達成率等を表示し、基準を達成している機器であることを消費者に分かりやすく表示するためのJIS に基づくラベルです。2021年3 月現在、特定エネルギー消費機器29 機器のうちテレビジョン受信機、エアコンディショナー等を始めとする19 機器が対象となっています。
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- トップランナー制度の対象機器のうち、家庭で使用される機器でエネルギー消費が大きい6機器(エアコンディショナー、照明器具、テレビジョン受信機、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気便座)について、省エネルギーラベルや、市場における製品の省エネ性能を1.0から5.0で表示した多段階評価点(エアコンディショナー及びテレビジョン受信機については、5つ星から1つ星で表示した多段階評価)、年間の目安電気料金等を表示したラベルです。