第1節 資源供給国との関係強化と上流進出の促進

1. 石油・天然ガスの安定的かつ低廉な確保に向けた取組

石油・天然ガスのほぼ全量を海外からの輸入に頼る日本にとって、石油・天然ガスの安定的かつ低廉な確保は重要な課題です。さらに、東日本大震災以降、天然ガスをはじめ、火力発電のエネルギー源としての化石燃料需要は高い水準で推移しており、その確保の重要性は高まっています。また、昨今、中東情勢が緊迫化している中で、日本は原油の約9割、天然ガスの約2割を中東地域から輸入していることを踏まえれば、チョークポイントであるホルムズ海峡を通らない輸入先の確保など、供給源の多角化を進めることや中東産油国をはじめとする資源供給国との良好な関係を深化させることが重要です。

(1)供給源の多角化に向けた取組

供給源の多角化を進めるという観点から見れば、ロシアは日本と地理的にも近接し、豊富な石油・天然ガスの埋蔵量を有する、世界でも有数の産油・産ガス国であり、極めて重要な国です。日本は既にロシアから石油・天然ガスを輸入しているものの、総輸入量に占める割合はそれぞれ10%以下に留まっており、日本にとって今後大きなポテンシャルを有する国であるといえます。このため、日露両政府は、ロシアにおける石油・天然ガス分野のプロジェクトの進展に向けた取組を進めています。なかでも、北極圏における第二のLNGプロジェクトである北極LNG2プロジェクトには、2019年9月の東方経済フォーラムにおいて世耕経済産業大臣、ノヴァク・エネルギー大臣立ち合いの下、本プロジェクトの最終投資決定がなされました。本プロジェクトの実現により、日本にとって新たな石油・天然ガスの輸送ルートである北極海航路の利用が拡大され、日本のエネルギー安定供給の確保に貢献することが見込まれています。本プロジェクトをはじめとして、エネルギー分野における協力関係を一層強化するため、2020年9月に梶山経済産業大臣とノヴァク・エネルギー大臣との間でオンライン会議を行い、日露間のプロジェクトの方向性について議論しました。引き続き、様々なプロジェクトや協力を実現していくことを通じて、ロシアからの安定的かつ低廉な石油・天然ガス供給が増加していくことが期待されます。

日本企業が複数のLNGプロジェクトに参画しているインドネシアについては、2019年6月のG20軽井沢会合において、世耕経済産業大臣とジョナン・エネルギー・鉱物資源大臣立ち合いの下、インドネシア政府と日本企業による、マセラ鉱区での天然ガス開発プロジェクトに関する基本合意書の締結が実現しました。

日本への新たなLNG供給源として期待されるモザンビークについては、2019年6月に、日本企業も参画するLNGプロジェクトの最終投資決定が行われました。また、2019年9月のLNG産消会議において、ザカリアス国家石油院総裁と牧原経済産業副大臣との会談の冒頭、JOGMEC、国家石油院、同国国営石油会社の3社による、同国における石油・天然ガス分野の人材育成に関する署名交換式を行いました。日本にとって最大のLNG供給国である豪州も重要な存在です。国際石油開発帝石株式会社(INPEX)がオペレータとして主導・操業する初の大型プロジェクトであるイクシスLNGプロジェクトには、JOGMECをはじめ国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)による金融支援を行っており、2018年10月に日本に向けたLNGの出荷が開始されました。このプロジェクトにより、日本の天然ガス需要の約7%に相当する年間約570万トンのLNGが日本向けに輸出される予定であり、日本のエネルギーの安定的な供給に大きく貢献するプロジェクトとして期待されています。

(2)中東諸国との資源外交の強化に向けた取組

日本で消費される原油の大半を中東地域の諸国から輸入している現状を踏まえれば、安定供給の確保に向け、中東産油国との友好関係を深化させていくことは重要です。

世界最大の原油輸出国であり、日本にとっても最大の原油供給国であるサウジアラビアとの間では、2017年3月に安倍総理とサルマン・サウジアラビア国王との首脳会談において合意した「日・サウジ・ビジョン2030」を新たな戦略的パートナーシップの羅針盤として幅広い分野での協力を進めており、2020年12月に第5回日・サウジ・ビジョン2030閣僚会合を開催しました。そのほかにも、同年8月には、梶山経済産業大臣が、アブドルアジーズ・エネルギー大臣との間でオンライン会議を行い、原油の安定供給について確認するとともに、カーボンリサイクルを含むエネルギー分野における両国の関係強化について議論しました。また、同年11月には、菅総理大臣が、ムハンマド皇太子との間で電話会議を行い、原油の安定供給及び二国間の更なる関係強化についてのコミットメントが示されました。

また、日本にとって第2位の原油供給国であるアラブ首長国連邦(UAE)には、日本企業が保有する石油権益が最も集中しています。こうした権益を引き続き確保していくため、UAE政府及びアブダビ首長国に対するハイレベルでの継続的な働きかけや、石油・天然ガス等のエネルギー分野を中心に、同国側の関心の高い教育・医療・農業等を含む広範な分野での協力・交流等を行いました。こうした働きかけや取組の結果、2018年2月、世界有数の埋蔵量を誇る下部ザクム油田権益(10%)等のアブダビ海上油田権益をINPEXが再獲得し、また2019年3月には、同社がアビダビの新規鉱区探鉱権益を獲得しました。特に、下部ザクム油田の権益の再獲得は、日本のエネルギーの安定供給に大きく貢献するものであり、資源外交の大きな成果といえます。

日UAEエネルギー関係のさらなる強化・拡大を目指し、2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、首脳級、閣僚級等のハイレベルな往来ができない中、オンライン会議等を活用した連携強化を図りました。首脳級では、2020年12月に菅総理大臣とムハンマド・アブダビ皇太子との間でオンライン会議を行い、「包括的・戦略的パートナーシップ・イニシアティブ(CSPI)」の下、エネルギー分野のみならず、様々な分野で二国間の協力を深めることで一致しました。閣僚級では、梶山経済産業大臣とジャーベル・アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEO兼産業・先端技術大臣との間で、2020年8月及び2021年1月にオンライン会議を実施し、梶山大臣から上流資源開発分野やエネルギー・インフラ分野における日本企業の投資参画について働きかけを行いました。また、2021年1月のオンライン会議においては、梶山大臣とジャーベルCEO立会いのもと、経済産業省とADNOCとの間で、燃料アンモニア及びカーボンリサイクルに関する協力覚書(MOC)を締結し、脱炭素社会の実現に向けて両国間で緊密に連携していくことで一致しました。

こうした閣僚級で緊密に働きかけを行った成果もあり、2021年2月10日に、コスモエネルギー開発株式会社は、アブダビの新規陸上探鉱鉱区をADNOCから獲得しました。

中東地域からのエネルギー供給を確保するため、サウジアラビアやUAEに加えて、その他の中東資源国との関係を幅広く強化・拡大することが重要です。例えば、カタールは、日本にとって第3位の原油供給国であるとともに、世界最大のLNG輸出国であり、日本にとっても第3位のLNG供給国でもあるため、LNGの安定供給の観点からも重要なパートナーです。2020年10月にオンラインで開催されたLNG産消会議においては、世界最大のLNG消費国である日本の梶山経済産業大臣と世界最大のLNG輸出国であるカタールのアルカービ・エネルギー大臣が、主に①供給国と需要国双方に裨益する持続可能なLNGの価格メカニズムの追求、②LNGバリューチェーンの中における脱炭素化の追求、といった2つのテーマで、産消国双方がWin-Winとなるべく議論をリードしました。また同月、梶山経済産業大臣とアルカービ・エネルギー大臣との間でオンライン会議を実施し、LNG分野をはじめとするエネルギー分野全般に関する二国間関係強化について議論を行いました。このほか、日本にとって第4位の原油供給国であるクウェートとの間では、2020年12月、資源エネルギー庁とクウェート石油公社(KPC)との間で50万KLの共同石油備蓄事業を開始する合意文書に署名しました。

以上のように引き続き、中東各国との資源外交を多角的に展開するとともに、水素・アンモニア等の脱炭素分野を含む包括的な資源外交を展開していきます。

2.石炭の安定供給確保に向けた取組

石炭は、石油や天然ガスとの比較において、利用に当たり温室効果ガスを多く排出する一方、供給の安定性や経済性の面で優れるエネルギー資源です。近年、中国やインド、東南アジア諸国を中心とした新興国における輸入量増加により、世界の石炭海上貿易による日本の割合は低下しています。こうしたアジア新興国での石炭需要は、今後も伸びていくことが見込まれており、石炭調達をめぐる国際競争はより一層激しくなっていくことが予想されます。日本が必要とする石炭を中長期にわたり、安定的かつ安価に調達するためには、供給源の多角化を進めることや産炭国との良好な関係を深化させることが重要です。

日本は、石炭資源のほとんどを海外からの輸入に頼っており、その中でも豪州とインドネシアからの輸入は全体の7割を超えます。特に豪州は、日本で主に使われる高品位炭の埋蔵量の他、輸送距離、インフラ整備の状況や政策の動向など、いずれの要素を見ても引き続き日本にとって最も安定した供給国です。一方で、2017年には豪州に上陸したサイクロンにより、炭鉱と石炭輸出港をつなぐ鉄道に大きな被害が発生し需給がひっ迫するなど、過度な依存状態はリスクになる可能性があります。また、近年、産炭国では資源ナショナリズムの高まりもあり、ベトナムやインドネシアでは石炭輸出を制限するような動きも起きています。

このため、資源エネルギー庁では、JOGMECを通じて、カナダ、コロンビアなどで地質構造の調査やベトナム、インドネシアなどで石炭産業人材の育成等を実施しています。

さらに、2020年度は、人材育成支援として、リモート環境を用いた技術指導や石炭政策を共有し、産炭国との関係強化を図りました。

3.レアメタル等の鉱物資源の確保に向けた取組

鉱物資源は、省エネルギー・再生可能エネルギー機器等に必要不可欠な原材料である一方、その供給のほぼ全てを海外に頼っているなど調達面で脆弱性があります。このため、中長期的に日本企業による投資を促進し、鉱物資源の供給源の多角化・安定供給確保につなげていくことが大切です。日本にとって重要かつ政治的安定性の高い鉱物資源の供給国や、鉱物資源のポテンシャルは大きいもののインフラや鉱業政策面など投資環境に課題を有する地域との継続的な関係構築に取り組んでいます。

特に、各国において本格普及に向けた取組が進められつつある次世代自動車に用いられるリチウムイオン電池や電動モーター用ネオジム磁石の製造には、銅、リチウム、コバルト、ニッケル、レアアース等の鉱物資源が必要です。今後、次世代自動車の需要増加に伴い、これらの鉱物資源の安定供給を確保していくことは、日本の製造産業にとって非常に重要な課題です。このため、2020年3月に資源エネルギー庁が策定した「新国際資源戦略」では、鉱種ごとの戦略的な資源確保策の策定を推進することが示されました。

また、日本向けの主要な鉱物資源供給国を対象に、環境保全活動協力事業として鉱害防止等の持続的な鉱山開発についての研修を実施しました。ニッケル、コバルトの主要供給国であるフィリピンについては2021年2月に環境天然資源省等を対象に、銅の主要供給国であるペルーについては2021年3月にエネルギー鉱山省等を対象にオンライン研修を実施しました。こうした事業を通して、新型コロナウイルス感染症流行下においても対象国との関係強化を図りました。

さらに、2020年11月には、米国・エネルギー省、欧州委員会と共同で、第10回日米欧三極クリティカルマテリアル会合がオンラインにて開催されました。本会合では、政府関係者による日米欧のクリティカルマテリアル(重要鉱物)に関する政策、研究開発等の取組、及び今後の課題等について情報交換を行い、今後もクリティカルマテリアルの安定確保等に向けて連携した取組を推進していくことを確認しました。

以上のように、鉱物資源供給国と日本との継続的な関係を構築することで、中長期的な鉱物資源の安定供給につながる機会の拡大を目指していきます。

4.資源権益獲得に向けたリスクマネー供給

日本は、2018年に改定したエネルギー基本計画において、引き続き、原油・天然ガス及び石炭の自主開発比率をそれぞれ2030年に40%以上、60%以上、また、金属鉱物では銅などベースメタルの自給率を2030年に80%以上に引き上げる目標を掲げ、取組を進めています。

2019年度の石油・天然ガス自主開発比率は約34.7%、石炭自主開発比率は56.4%となりました。また、2018年度の金属鉱物の自給率は50.2%です。

資源権益の獲得のための投資には、探鉱リスクやカントリーリスク等、様々な事業リスクがあり、また、巨額の資金を要しますが、日本企業は、資源メジャーと呼ばれる海外企業等と比べると大幅に資金力が弱い状況にあります。石油・天然ガスについては、中東地域における緊張の高まりや世界のエネルギー供給構造の変化等、国際市場が大きく変革する中、さらなる供給源の多角化等が必要となっており、日本企業による資源権益の獲得を推進するべく、資源外交の推進による相手国との関係強化とともに、資金面での支援がより一層必要となります。2021年3月には、2020年3月に資源エネルギー庁が策定した「新国際資源戦略」における具体的な取組となるプロスペクト摘出前採択スキームの第1号案件として、アブダビにおける探鉱事業の出資案件を新たに採択しました。金属鉱物については、JOGMECが本邦企業とともに出資を行った豪州の案件において、レアアースの日本向け供給強化を盛り込んだ契約変更を行う等、重要鉱物の安定供給確保に寄与する実績を上げました。また、2020年6月に独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法を含む法律が改正され、石油・天然ガスについては、JOGMECによる、LNGの安定供給確保の観点から国際LNG市場形成に資するロシア、アジア各国等におけるLNG受入基地事業や、生産されたLNGを日本に供給するために必要なLNG積替基地事業への出資・債務保証業務が可能となりました。金属鉱物については、上流権益確保の強化を図るため、鉱山開発事業を対象とする出資業務、及び採掘事業と切り離された製錬所単独の案件への出資・債務保証業務が可能となりました。また、2020年4月には債務保証案件の採択審査の合理化に向け保証予約による運用を追加しました。このようなJOGMECのリスクマネー供給強化を通じて、日本企業の権益獲得支援を推進していきます。

<具体的な主要施策>

(1)石油天然ガス田の探鉱・資産買収等事業に対する出資金【2020年度当初:565.0億円、2020年度産投:250.0億円、2020年度補正:250.0億円】

JOGMECにおいては、日本資源開発会社等による石油・天然ガスの探鉱・開発や油ガス田の買収等を資金面で支援するため出資及び債務保証を行っています。2020年度は、2019年度に引き続き、北極LNG2やモザンビークLNGプロジェクトに対して出資等を行いました。

(2)金属鉱物に係る探鉱出資・債務保証等【2020年度産投:94.0億円】

JOGMECにおいては、日本法人の海外における鉱物資源の探鉱プロジェクト等を資金面で支援するため出資及び債務保証等を行っています。2020年度は日本企業が参画する米国における亜鉛プロジェクト等に対し探鉱融資等を行いました。

(3)政府系金融機関による資源金融(国際協力銀行(JBIC))【金融】

日本企業が、長期引取契約に基づく資源輸入や、自ら権利を取得して資源開発を行う場合、さらには資源開発に携わる日本企業の競争力が強化される場合または資源確保と不可分一体となったインフラ整備等、日本にとって重要な資源の海外における開発及び取得を促進する場合に、国際協力銀行は輸入金融や投資金融による支援を行いました。

(4)貿易保険によるリスクテイク(日本貿易保険(NEXI))【金融】

海外における重要な鉱物資源またはエネルギー資源の安定供給に資する案件に関し、日本貿易保険(NEXI)は通常よりも低い保険料率で幅広いリスクをカバーする資源エネルギー総合保険等を通じて、日本の事業者が行う権益取得・引取等のための投融資に対し支援を行っています。

資源エネルギー総合保険の適用対象を2018年10月に、我が国事業者による本邦向けに限定した長期引取契約がないプロジェクトにも拡大したところ、2020年に第一号案件としてモザンビークにおけるLNGプロジェクトについて保険の引受けを実施しました。なお、本プロジェクトは2019年LNG産消会議にて発表された、5年間で日本から100億ドルのファイナンス供与を行うというコミットメントにも該当する案件です。また、ロシアにおいて開発が進む北極LNG2プロジェクトへの我が国事業者の出資参画について海外投資保険の引受を行うなど、LNG分野への支援を強化しています。

さらに、膨大なインフラ投資需要に対応するため、機関投資家を含めた新たな資金提供者を呼び込むことを目的にインフラファンドやプロジェクトボンドへの貿易保険による支援を開始しており、リスクマネー供給に取り組んでいます。

また、NEXIでは2020年に新たにLEADイニシアティブを創設し、カーボンニュートラル・デジタル分野等の産業競争力の向上、外国政府等との国際連携推進や社会課題解決に寄与する案件については、積極的に融資保険の適用を行うこととしました。2020年12月にNEXIはサウジアラビア王国財務省と協力覚書を締結しましたが、これは、LEADイニシアティブのもとで、我が国にとって最大の原油輸入先国であり、エネルギー安全保障上重要な同国との関係強化を図るもので、同国における本邦企業のビジネス機会の拡大に繋がることも期待されます。

(5)海外投資等損失準備金制度【税制】

本制度は、海外における資源探鉱・開発に当たり、プロジェクト失敗等リスクに備えるための準備金の積立て及び損金算入を認めるものであり、2020年度税制改正において、適用期限が2022年3月31日まで延長されました。2020年度はベトナムやインドネシアといった国で本制度を活用したプロジェクトが進められました。

(6) 探鉱準備金・海外探鉱準備金制度及び新鉱床探鉱費・海外新鉱床探鉱費の特別控除制度(減耗控除制度、海外減耗控除)【税制】

鉱業を営んでいる者が、鉱業所得等を探鉱費に充てるための準備金として積み立てた時に損金算入できる制度、及びその準備金を取り崩して実際に新鉱床探鉱費に充てた場合等には特別控除できる制度です。2019年度税制改正において、海外探鉱準備金制度の国内鉱業者に準ずる法人等の要件のうち、国外鉱山を有する国外子会社の持分割合に関する要件(持分割合50%以上)を議決権割合とするなどの措置を講じた上、適用期限が2022年3月31日まで延長されました。

(7) 石油天然ガスの権益確保に向けた海外の地質構造調査や情報収集等事業【2020年度当初:40.0億円】

事業リスクが高く、日本企業が探鉱に踏み切れていない海外のフロンティア地域等において、JOGMECが地質構造調査を行い、優先交渉権の獲得等を目指しています。また、産油・産ガス国における資源開発に係る諸情勢を始め、専門性の高い情報の調査・分析を行い、日本企業へ情報提供することによって、日本企業による有望な石油・天然ガス権益の獲得等を支援しています。2020年度は、引き続きロシア、アゼルバイジャン、ベトナム等における地質構造調査を実施しました。

(8) 石油天然ガス権益・安定供給の確保に向けた資源国との関係強化支援事業費【2020年度当初:41.2億円】

資源国のニーズに対応して、石油分野のみならず、教育や医療など、幅広い分野での協力事業を実施するとともに、資源国に対する日本からの投資促進・事業展開等について支援を行い、資源国との戦略的かつ重層的な関係を構築し、石油・天然ガス権益の確保や安定供給の確保を実現しています。2020年度は、引き続き、サウジアラビア、UAEなどとの間で、産学の連携強化を行うとともに、教育・農業、医療等の広範な分野での協力事業を実施し、二国間関係の更なる強化を図りました。加えて、ブルネイ、カタールなどにおける新規協力事業を実施し、供給源の多角化に向けた取組を行っています。

(9)海外炭の開発支援事業【2020年度当初:8.7億円】

日本企業の権益獲得を支援し、自主開発比率の向上を図るため、海外の産炭国において、日本企業が行う探鉱活動等への支援や炭鉱開発に不可欠なインフラ調査等を実施しました。

(10) 産炭国に対する石炭採掘・保安に関する技術移転等事業【 2020年度当初:13.5億円】

日本の優れた炭鉱技術を、採掘条件の悪化が予想される海外産炭国へ移転するため、リモート環境を用いた海外研修生の研修事業、日本の炭鉱技術者による海外炭鉱研修事業等を実施しました。

(11) 鉱物資源開発の推進のための探査等事業【 2020年度当初:18.7億円】

省エネルギー機器や再生可能エネルギー関連設備の製造に必要不可欠な銅、コバルト、レアアース等の鉱物資源の安定供給を確保するため、最新の鉱床地質学の成果等を活用した初期段階からの資源探査等を実施しました。

(12)希少金属資源開発推進基盤整備事業【 2020年度当初:2.5億円】

自動車、IT製品等の特に付加価値の高い工業製品の製造に必須の希少金属資源の安定供給を確保するため、最新の鉱床地質学の成果等を活用した初期段階からの資源探査等を実施しました。

(13)大型船の受入れ機能の確保・強化

国土交通省では、国際バルク戦略港湾政策として、大型船が入港できる港湾を拠点的に整備し、企業間連携による大型船を活用した共同輸送を促進するなど、資源・エネルギー等の安定的かつ効率的な海上輸送網の形成に向けた取組を推進しました。

(14)JICAの機能強化【制度】

2015年5月に「質の高いインフラパートナーシップ」、同年11月に「質の高いインフラパートナーシップのフォローアップ」、2016年5月に「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」を発表し、円借款や海外投融資の制度改善を行ってきました。具体的には、円借款の迅速化とともに、ドル建て借款やハイスペック借款の創設、円借款の本邦技術活用条件(STEP)に係る制度改善、及びO&Mに係る新しい支援パッケージの構築を行いました。また、海外投融資については、融資対象拡大や、出資比率規制の柔軟な運用・見直しを行うとともに、被援助国のニーズに応じてユーロ建てや現地通貨建て海外投融資の検討を可能にしました。さらに2020年11月、海外投融資の利便性向上のため、案件採択・審査プロセスの迅速性・予見可能性・透明性の強化を図りました。